ストーク (人力飛行機)
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ストーク
(NM-75 STORK)
ストーク (STORK) は、1976年に日本大学理工学部学生らにより製作された人力飛行機。
1976年に日本記録446メートル、同年12月31日に飛行時間の世界記録4分43秒[3]を達成。また1977年1月2日には日本航空協会公式立会人立会いの下に世界記録2093.9メートル[4][3]︵海上自衛隊下総基地︶を飛んだ[3]。
日本大学理工学部では航空科学生の卒業研究として、木村秀政が1963年から人力飛行機の設計・製作を取り入れ、リネットシリーズ[4]、イーグレットシリーズの後、ストークが完成した。日本大学の人力飛行機は、それまでにリネットシリーズで5機種、イーグレットシリーズで3機種、改良を加えながらおおむね1年に1機のペースで製作された[5]。それぞれの最高飛行距離は、リネットIIが91メートル、イーグレットIIIが203メートルを記録した。
1975年度の卒業研究は、木村秀政がチーフ設計者として石井潤治を指名、1975年4月より開始された設計・製作・飛行試験の全工程は、チーフ設計者の厳重な計画管理下で進められ、ストークは1976年2月29日にロールアウトした。﹁STORK﹂︵コウノトリ︶は木村秀政による命名である。外皮全体に手漉き雁皮紙を使用するなど、石井潤治による独創的なアイデアと空気力学的に洗練を極めた設計に加え、0.5mm厚バルサ材による組み木構造を強度部品に応用することによって、航空機として必要な強度と剛性を保持しつつ、総重量35.9㎏という驚異的な軽量化を実現し、1976年3月に中禮一彦の操縦で日本記録を更新した。翌年1976年度の卒業研究では、メンバーの学生は後輩に入れ替わり、石井潤治のみ副手という大学職員の立場で継続、機体も同じ機体を継続使用し、記録更新に目標を置いた。1976年度ではパイロットの筋力訓練に力点をおくと同時に、表面の平滑化やコクピット形状、駆動系などに改良を加え、1977年1月2日に加藤隆士の操縦で世界記録を更新した。その後ストークは国立科学博物館の所蔵[6]、永久保存の機体となった。1979年1月に国立科学博物館に入館後、同年11月1日から1998年11月3日まで航空宇宙館︵後におれんじ館と改称︶で一般公開されたが、おれんじ館の閉館とともに公開終了となった。その後は、国立科学博物館筑波研究施設に保管されていたが2021年に新設された科博廣澤航空博物館(茨城県筑西市)に貸与、再展示が決定した。この再展示に向けて、ストーク主設計者の石井潤治を中心とした1975年度と1976年度の有志の卒業研究メンバーたちによって大修復[7]が成され、2024年2月11日よりザ・ヒロサワ・シティ内のテーマパーク﹁ユメノバ﹂の科博廣澤新航空博物館で一般公開が始まっている[8][9]。ストークには数種類の呼び名があるが、機体そのものは1機のみである。卒業研究年度が替わったこともあり、便宜上、日本記録更新時にはストークA、世界記録更新時にはストークBと、同一の機体を呼び分けている。また、1977年の世界記録樹立後、電動モーターを搭載し、電動飛行にも成功、この電動飛行時はストークCと呼ぶ。なおストークの世界記録は国際航空連盟が人力飛行機の公認ルールを制定する前だったため、イギリスのパフィンやジュピターと等しく、公式な世界記録であり、ストークの世界記録にだけ特記事項であるかのようにわざわざ未公認を明記することは当時の日本のマスコミの誤解による悪しき慣習である[3]。
諸元[編集]
| 長さ | 全幅(m) | 21.00[3] |
| 全長(m) | 8.85[3] | |
| 全高(m) | 2.40[10] | |
| 水平尾翼幅(m) | 3.44[10] | |
| 面積 | 主翼(m2) | 21.70[3] |
| 補助翼（合計）(m2) | 2.52 | |
| 垂直安定板(m2) | 0.81 | |
| 方向舵(m2) | 0.35 | |
| 水平安定板(m2) | - | |
| 水平尾翼(m2) | 1.71[10] | |
| 主翼縦横比 | 20.3 | |
| 胴体断面積(m2) | 0.80 | |
| 水平尾翼容積 | 0.535 | |
| 主翼 | 翼型 | FX61-184~FX63-137 |
| 翼厚(%) | 18.4 - 13.7 | |
| アスペクト比 | 20.3 | |
| テーパー比(外翼） | 2.36:1 | |
| 上反角(外翼） (°) | 7 | |
| 捩り下げ(外翼）(°) | 8 | |
| プロペラ | 型式 | 2翔固定ピッチ |
| 直径(m) | 2.50[10] | |
| 羽根角(°)（半径の75%で） | 25.0 | |
| 巡航プロペラ回転数(rpm) | 210 | |
| 同ペダル回転数(rpm) | 70 | |
| 巡航速度(m/s) | 8.6 | |
| 重量 | 自重(kg) | 35.9[3] |
| パイロット(kg) | 58.0 | |
| 総重量(kg)（離陸重量） | 93.9 | |
| 翼面荷重(kg/m2) | 4.33[10] | |
| 重量内訳
|
主翼(kg) | 19.9 |
| 水平尾翼(kg) | 1.0 | |
| 胴体(kg）
操縦システム(kg) |
7.4 | |
| 降着装置(kg) | 1.0 | |
| プロペラ(kg) | 1.0 | |
| 伝導装置(kg) | 5.6 | |
| 計(kg) | 35.9 | |
| 性能 | 巡航速度(CL=0.94)(m/sec) | 8.60 |
| 制限速度(CL=0.45)(m/sec) | 12.43 | |
| 失速速度(CL=1.36)(m/sec) | 7.14 | |
| 必要パワー（高度2m）hp | 0.33[10] | |
| 必要パワー（高度3m）hp | 0.35[10] | |
| 強度 | 終極荷重倍数 | 2.7 |
脚注[編集]
(一)^ ab日本大学理工学部航空研究会 編﹃あすも飛ぶ 日本大学理工学部人力飛行機の50年﹄デザインエッグ、2016年2月26日、11頁。ISBN 978-4-86543-537-5。
(二)^ Taylor, John W.R., ed (1977). Jane's All the World's Aircraft 1977–78. London: Macdonald and Jane's. p. 502. ISBN 0531032787
(三)^ abcdefgh木村秀政、田中祥一﹃日本の名機百選﹄中日新聞、1985年7月19日、206-207頁。ISBN 4806201626。
(四)^ ab“日本航空界の重鎮 木村 秀政 | 日本大学の歴史”. www.nihon-u.ac.jp. 日本大学. 2020年9月14日閲覧。
(五)^ 木村秀政、晃, 内藤﹁人力飛行機﹂﹃日本航空宇宙学会誌﹄第32巻第360号、日本航空宇宙学会、1984年、18頁、doi:10.2322/jjsass1969.32.15、ISSN 0021-4663、NAID 130003782592。
(六)^ 日本航空宇宙工業会﹁日本の航空宇宙工業50年の歩み﹂編纂委員会 編﹃日本の航空宇宙工業50年の歩み﹄日本航空宇宙工業会、東京、2003年5月、343頁。
(七)^ 石井潤治 (2022年1月～). “よみがえれ、ストーク！”. ラジコン技術 第62巻1号・通巻836号～: 56.
(八)^ ﹃茨城県筑西市に新航空博物館誕生 国立科学博物館所有の重要航空資料の一般公開に向けて﹄︵プレスリリース︶独立行政法人 国立科学博物館、2021年3月8日。2021年3月20日閲覧。
(九)^ ﹁ＹＳ11や零戦展示、茨城・筑西に航空博物館…年内開館目指す﹂﹃読売新聞オンライン﹄、2021年3月5日。2021年3月20日閲覧。
(十)^ abcdefg木村秀政﹁人力飛行機STORK B﹂﹃nagare﹄第10巻第2号、日本流体力学会、1978年、1-2頁、doi:10.11426/nagare1970.10.2_1、ISSN 0286-7540、NAID 130004283091。
