モアレ
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モアレまたはモワレ︵仏: moiré︶は、干渉縞ともいい、規則正しい繰り返し模様を複数重ね合わせた時に、それらの周期のずれにより視覚的に発生する縞模様のことである。
また、規則正しい模様を、デジタル写真などのビットマップ画像にした場合も、画像の画素解像度と模様の周波数のずれが原因で同様の縞模様が発生するがこれもモアレと呼ぶ。また印刷でも網点という点の集まりに画像を変換するので同様の現象が発生する。︵これらの詳細は下記参照︶
モアレそのものも周期を持ち、この周期は元になる模様の周期の組み合わせで決まる。物理学的にいうと、モアレとは二つの空間周波数のうなり現象といえる。様々な形態で発生するため、モアレにもいろいろなものがある。モアレを望ましからぬものとして取り除く対象にする場合もあり、逆に発生したモアレを有用なものとして利用する分野もある。
色ごとのスクリーン角度のパターン
印刷では、写真のような階調を表現するために、網点を用いる。すなわち色の濃さを規則正しく配置された点それぞれの大きさで表現する。このため、印刷された写真をもとに原版を作成して再び印刷すると、網点のピッチの違いや、ピッチが同じでもわずかな傾きによってモアレが発生することがある。またカラー印刷では、複数の色版の網点を重ねて印刷するため、周期的な色模様がみえる場合がある。このため、各版はモアレが最も目立たないとされる角度に網点を傾けて印刷している。 単色では45度、CMYKでは、モアレが目立つCMKの3色のうち1色を45度に置き、これに対して他の版をそれぞれ30度ずつ離しておくのが伝統的な角度である。そしていずれか2色の中間にモアレがめだちにくいY版を置くようにする。︵例としてM版を15度、K版を45度、C版を75度、Y版を30度︶。モアレの出た写真は極めて見栄えが悪いため印刷においては注意して避けるべき点の一つである[1]。
元の画像。
上の画像を不適切に縮小したことにより発生したモアレ。
コンピュータによる画像処理においても、画像は画素とよばれる縦横に周期的に配置した点に分解して表現することから、印刷と同様なモアレが発生する可能性がある。
画像処理の過程では、縦横画素数を整数分の1以外の大きさに縮小・変形した場合に発生しやすい。グラフィックソフトウェアにおいて縮小が単なる間引き処理であると、ありもしない模様が発生 (偽解像) する。これは折り返し雑音の一種である。これを防ぐためには、縮小後の画素位置周辺の縮小前の複数画素からの距離と強度で重み付けするリサンプリング処理などが有効である。
デジタルカメラでは、画素が縦横に規則的に配列されているため、画素ピッチの1/2を超えるピッチの明暗模様を撮影すると偽解像する。レンズの解像度がこれより低い場合や光路で干渉によるボケ (小絞りボケなど) が生じる場合は問題にならないが、一般的にこれを解決するアプローチとして、撮像素子の手前にローパスフィルタ (画素ピッチ程度にぼかすフィルタ) を入れるのが普通である。なおフィルムカメラでは、画素にあたる感光粒子が不規則に配列しているため、この問題は生じない。
網点印刷された写真などをスキャナで入力する場合にも、写真とスキャナの分解能の差次第でモアレが発生する。スキャナの光学的な分解能が高い場合には、網点のピッチ以上の解像度でスキャンした後、グラフィックソフトウェアにおいて必要とする分解能まで落とす (間引きではなく補間する) アプローチが有効である。例えば縦3000pxでスキャンした画像を、縦1600pxの解像度のモニターで見るとモアレが発生するため、画像の解像度を縦1500~1600px程度まで落とすことでモアレを回避できる。
表示においては、処理する解像度と表示する解像度が異なる場合にも発生することがある。グラフィックソフトウェアなどで縮小表示するときに、やはり表示分解能で補間するフィルタ処理が必要であるが、高速表示のためにこれを省いているグラフィックソフトウェアも多い。
モアレはヨーロッパにおいてサッシュによく用いられた
モアレの元来の意味は織物︵古くは絹織物であるが、毛織物や合成繊維にも用いられる︶にあらわれた波型の模様で、杢目模様︵もくめ~︶あるいは水模様という。このパターンはふたつ、あるいはそれ以上の平行な繊維を重ねることにより発生するものである。
モアレという語はもともとアラビア語/ペルシア語でアンゴラ羊の毛織物製の衣料を意味する。英語に取り入れられた後、フランス語にも mouaire として登場する。1660年には英語に再輸入されて moire あるいは moyre となった。一方フランス語では mouaire が動詞 moirer︵巻きずれや圧力で水模様を発生させる︶に変化し、1823年には形容詞 moire を派生させた。英語では moire と moiré とは同義語として扱われている。
ふたつのパターンが重なっている図。
ふたつの、平行かつ等間隔なパターンを考える。第一パターンの間隔をp、第二パターンの間隔をp+δpとする。ただし、0<δp<pである。
図の左端でふたつのパターンの線が重ね合わせられたとしたら、右にいくほどずれは増加していく。ある数だけ右にいくと、パターンは﹁向かい合う﹂。つまり、第二パターンの線は第一パターンの線の間に位置する。これを遠くから眺めたとすると、線が重なり合っている部分は空白が広く見えるため淡く見え、線が向かい合っている部分は暗く見える。
ひとつめの暗部の中間点は、ずれがp/2に等しくなった点である。第二パターンのn番目の線は、第一パターンの線からn・δpだけずれているので、ひとつめの暗部の中間点は、
n・δp = p/2
に相当する。すなわち、
である。淡部と暗部の中間点の距離dは、
であり、ふたつの暗部の中間点の距離︵もしくは淡部の中間点の距離︶は、
である。この式から、次のことがわかる。
●線間隔が大きいほど、淡部と暗部の距離は大きくなる。
●ずれδpが大きいほど、淡部と暗部の距離は小さくなる。つまり、淡部と暗部が大きく離れているということは、ふたつのパターンの間隔が近いということになる。
もちろん、δp = p/2のときは、コントラストのない一様に灰色な図が得られる。
モアレの原理はノギスに類似している。