亀姫 (妖怪)
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亀姫︵かめひめ︶は、福島県猪苗代町の猪苗代城︵亀ヶ城︶に住みついていたとされる妖怪。江戸時代中期の奇談集﹃老媼茶話﹄の3巻﹁猪苗代の城化物﹂に名が見られる[2]。
概要[編集]
﹃老媼茶話﹄には、以下のような亀姫の奇談が述べられている[2]。 1640年︵寛永17年︶。当時の猪苗代城の城主は会津藩の第2代藩主・加藤明成であり、堀部主膳という者が城代を務めていた。 12月のある日、堀部主膳が一人でいるところへ見知らぬ禿頭の子供が現れ﹁お前はまだ城主に挨拶をしていない。今日は城主が会ってやるとのことだから、急いで準備をしろ﹂と言った。 主膳は﹁この城の主は我が主人・加藤明成、城代はこの主膳であり、他に城主などいない﹂と言い返して睨みつけた。すると子供は笑い﹁姫路のおさかべ姫と猪苗代の亀姫を知らないのか?お前の命運はすでに尽きた﹂と言い残して姿を消した。 年が明け、正月の朝。主膳が城の広間へ行くと、自分の席には棺桶や葬儀の道具などが置かれていた。家来たちに尋ねても、何者の仕業かはわからなかった。その日の夕方には、どこからか大勢で餅をつくような怪音が響くなどの怪異があった。その正月の18日、主膳は便所で倒れ、2日後に息を引き取った。 同年の夏のこと。7尺︵約2.1メートル︶もの大入道が田のそばで水を汲んでいた。それを見た城の武士が一刀のもとに斬り捨てると、それは大きな狢だった。以来、城で怪異が起ることはなかったという。 ﹁姫路のおさかべ姫﹂とは姫路城の天守に住んでいたとされる妖姫・長壁姫のことであり、亀姫は長壁姫の妹とされている[3]。この話をもとにした泉鏡花の戯曲﹃天守物語﹄でも、亀姫は主人公・富姫︵長壁姫︶の妹という設定であり、姫路城の姉のもとへ遊びに行く際、男の生首を土産に持参するなどの描写がみられる[4]。脚注[編集]
(一)^ 水木しげる﹃妖鬼化﹄ 5巻、Softgarage、2004年、19頁。ISBN 978-4-86133-027-8。
(二)^ ab三坂春編 著﹁老媼茶話﹂、高田衛、原道生責任編集 編﹃近世奇談集成﹄ 1巻、国書刊行会︿叢書江戸文庫﹀、1992年︵原著1742年︶、61-62頁。ISBN 978-4-336-03012-2。
(三)^ 礒清﹃民俗怪異篇﹄磯部甲陽堂︿日本民俗叢書﹀、1927年、65-47頁。 NCID BN15330230。
(四)^ 山田野理夫﹃怪談の世界﹄時事通信社、1978年、157-162頁。 NCID BN07310191。