千曲川旅情の歌
﹃千曲川旅情の歌﹄︵ちくまがわりょじょうのうた︶は、島崎藤村の詩。この詩に作曲した歌曲も有名である。
懐古園にある歌碑
明治38年︵1905年︶に発行された﹁落梅集﹂が初出。同詩集冒頭に収められた﹃小諸なる古城のほとり﹄、後半の﹃千曲川旅情のうた﹄を、後に藤村自身が自選藤村詩抄にて﹃千曲川旅情の歌 一、二﹄として合わせたものである。この詩は﹁秋風の歌﹂︵若菜集︶や﹁椰子の実﹂︵落梅集︶と並んで藤村の秀作とされる。詩に歌われた小諸城址は、跡地の一隅が懐古園として整備され﹁小諸なる古城のほとり﹂の歌碑が建立されている[1]。
稲荷山にある碑
佐久市臼田の稲荷山公園内には﹁千曲川旅情のうた﹂の碑が建立されている[2]。
幾度と無く曲が付けられ、多くの歌い手に歌われてきた。特に、﹁小諸なる…﹂に作曲した弘田龍太郎の歌曲作品﹁千曲川旅情の歌﹂︵﹁小諸なる古城のほとり﹂︶は広く演奏され、NHKのTV番組名曲アルバムなどでもたびたび放送されている。弘田は後半の﹁昨日またかくてありけり﹂にも作曲している。
詩[編集]
「小諸なる古城のほとり」 -落梅集より- 島崎藤村 小諸なる古城のほとり 雲白く遊子(いうし)悲しむ 緑なすはこべは萌えず 若草も藉(し)くによしなし しろがねの衾(ふすま)の岡辺(おかべ) 日に溶けて淡雪流る あたゝかき光はあれど 野に満つる香(かをり)も知らず 浅くのみ春は霞みて 麦の色わづかに青し 旅人の群はいくつか 畠中の道を急ぎぬ 暮行けば浅間も見えず 歌哀し佐久の草笛(歌哀し) 千曲川いざよふ波の 岸近き宿にのぼりつ 濁(にご)り酒濁れる飲みて 草枕しばし慰む 「千曲川旅情の歌」 -落梅集より- 島崎藤村 昨日またかくてありけり 今日もまたかくてありなむ この命なにを齷齪 明日をのみ思ひわづらふ いくたびか栄枯の夢の 消え残る谷に下りて 河波のいざよふ見れば 砂まじり水巻き帰る 嗚呼古城なにをか語り 岸の波なにをか答ふ 過し世を静かに思へ 百年もきのふのごとし(百年もきのふのごとし) 千曲川柳霞みて 春浅く水流れたり たゞひとり岩をめぐりて この岸に愁を繋ぐ(この岸に愁を繋ぐ)
脚注[編集]
- ^ こもろ観光局. “藤村と小諸城址・懐古園 | 信州・小諸|詩情あふれる高原の城下町|こもろ観光局”. www.komoro-tour.jp. 2022年3月10日閲覧。
- ^ “島崎藤村詩碑 | 佐久市ホームページ”. www.city.saku.nagano.jp. 2022年3月10日閲覧。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 小諸なる古城之本と里に誘われて[リンク切れ] - ゆかりの地を写真入りで紹介している