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井上の小説の中でのジャンルとしては、自伝的なものに属する。井上沼津中学校3 - 4年の頃がモデルとなっており、﹃しろばんば﹄︵小学生時代︶の次、﹃北の海﹄︵高校受験浪人︶の前である。﹃しろばんば﹄で登場する、三島の伯母、祖父文太、かみきの家の蘭子、れい子、母七重︵会話のみ︶が、再び登場する。
﹃あすなろ物語﹄との関係は、2節の﹁寒月がかかれば﹂と時期的に一致し、寺の娘雪枝︵実名‥幸子、夏草冬濤では郁子︶が登場するなど共通点がある。
﹃しろばんば﹄では、小学校卒業までが記されているが、井上は、一浪後、名門浜松中学校に首席で入学する。その後、父の転勤に伴い、沼津中学校に転校し、三島の伯母︵父の姉︶の家から通う事になる。﹃夏草冬濤﹄は、その3年の夏からスタートするが、当初、秀才型だった洪作︵井上︶が、詩や文学を好む一見不良ぽい上級生に魅かれて行き、徐々に成績が落ちて行く過程が描かれている。
小説中に登場する沼津市下河原の日蓮宗妙覚寺︵﹃夏草冬濤﹄では妙高寺︶には石碑があり、井上の歌で、
思うどち 遊び惚けぬ そのかみの 香貫 我入道 港町 夏は夏草 冬は冬濤
がある。題名はそこから採ってきたものと思われる。
また、藤尾︵実名‥藤井︶の詩、﹁カチリ﹂﹁石英の音﹂﹁秋﹂も記されているが、井上は後に、この詩を見せられた時に衝撃を受け、文学を志すきっかけとなった、と語っている。
以下、小説中の人物と実名の対応関係を記す。
- 藤尾 - 実名:藤井
- 木部 - 実名:岐部
- 金枝 - 実名:金井
- 郁子 - 実名:幸子