昭和100年問題
昭和100年問題︵しょうわひゃくねんもんだい︶とは、日本固有の元号に基づくコンピュータシステムの年問題で、システム上昭和が現在まで継続しているものとして扱った際、昭和100年にあたる2025年に昭和100年を昭和0年と誤って認識することによる問題である。西暦2025年に発生することが懸念されているため﹁2025年問題﹂とも呼称される[1]。
概要[編集]
官公庁や金融機関などを中心に、アプリケーションソフトウェア内部で、年を昭和2桁で表現しているシステムが存在している︵平成以降も、内部的に昭和として扱う︶。 日本の公文書においては年を記載する際、全てにおいて西暦でなく昭和を用いることにより、同じ2桁でも25年先まで表現できるという利点があった。しかし、﹁昭和100年︵2025年︶=昭和0年﹂として認識されることで正しく扱うことができず、2000年問題と類似した誤動作を起こす恐れがある[2]。 昭和期のコンピュータシステムがどれだけ稼働しているのかを疑問視する意見もあるが、元号が昭和から平成に移行した際に、UNIX時間や西暦から平成としての年号を計算するのではなく、内部処理は昭和の年号のままで実施し、表示のみそこから63を引いた数を平成としての年号とするような改修もされたため、この問題は古いシステムをマイグレーションしているシステムに内在している可能性がある。 他にも以下のような内部構造を持っているシステムもあり、 ●顕在化した2000年問題にも同様の疑問が持たれていた。 ●平成期以降に開発されたシステムであっても、他の古いシステムとの互換性を維持するために年を昭和で表現する設計になっている場合がある。 ●システムの中核を担う汎用機を中心として、ハードウェアを更新してもソフトウェアは更新せずそのまま使う例もある。 ●ソフトウェアを更新しないことで開発コストや作業者への教育コスト、システム障害のリスクを低減し、短い試験運用期間で迅速に処理能力を向上できるため、汎用機においては古いソフトウェアをそのまま動作させられることが機種選定の条件となる場合がある。 などの要因を考えれば、決して無視できる問題ではない。 西暦と共に民国紀元を使用している台湾でも、民国100年を迎える2011年に同様の問題が発生する懸念が出た︵民国100年問題︶。 対策としては、﹁桁数を増やす﹂、﹁西暦に改める﹂などが考えられる︵公文書では事実上元号の記載が義務づけられているが、表示時に変換すればよいため内部的に元号を用いる必要は必ずしもない︶。 2019年5月1日に実施される﹁令和﹂への改元を控え、同年4月1日に新元号の発表を行い、1か月の猶予を与えてシステム改修を促した[3][4]。ただし、同年4月30日までの行政書類・運転免許証については﹁平成﹂で通用する特例があり、元号が変わってから必要に応じての訂正作業とすることとなっている[5]。一方で、昭和100年問題はソフトウェア内部での処理の問題であり、新たな元号に対応するアップデートと共に、前述の対策のような、内部処理の桁数増加や西暦への変更をしなければ、昭和100年問題の解決にはならない。脚注[編集]
(一)^ 第148回 ﹁コンピュータの2038年問題﹂の話 - 日立システムズネットワークス
(二)^ “昭和100年問題 “すでに起きている未来” に対応できているか?”. ニッセイ基礎研究所 (2015年4月28日). 2018年1月7日閲覧。
(三)^ “新元号﹁令和﹂ システム対応いよいよ大詰め”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2019年4月1日). オリジナルの2019年4月1日時点におけるアーカイブ。 2019年4月23日閲覧。
(四)^ “﹁令和﹂システム改修など円滑移行へ万全期す 官房長官”. NHK NEWSWEB (日本放送協会). (2019年4月2日). オリジナルの2019年4月2日時点におけるアーカイブ。 2019年4月23日閲覧。
(五)^ “﹁平成﹂表記も有効扱い 政府方針 改元後の行政書類”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2019年4月2日). オリジナルの2019年4月2日時点におけるアーカイブ。 2019年4月23日閲覧。