火炎崇拝
火炎崇拝︵かえんすうはい︶とは、火・炎を神格化して崇拝の対象︵火神︶とすること、あるいは火を神聖視し、または神の象徴と見て宗教儀式に用いることなどをいう。
起源[編集]
これらは世界のいろいろな宗教に広く見られ、次のような火の属性に基づくものと見られる。 ●人間の日常生活に必要不可欠であるが、その一方で人間を死にも至らしめる恐ろしい存在である。 ●不浄なものを焼き尽くし清浄にする。 ●闇を照らし善または智恵の象徴とされる光の源である。 ●常に上に燃え上がり、あるいは燃やしたものを煙として立ち上らせる。 火を神格化した火神は、主神とされた例は多くないが、太陽神や火山の神と同一視された例は多い。またローマのウェスタや日本の竈神︵荒神・三宝荒神と習合された︶のような家庭の守り神、あるいは鍛冶神などと見られた例も多い。沖縄ではヒヌカン︵火の神︶といって、家の守護神として人々には身近な神である。アーリア人の拝火[編集]
﹁火炎崇拝﹂あるいは﹁拝火﹂という言葉はまずゾロアスター教︵通称・拝火教︶と結び付けて考えられるが、ゾロアスター教は火自体を崇拝したわけではない。ゾロアスター教における火とは、光すなわち清浄・正義・真理の象徴であると考えられている。火を神聖視するこの信仰はゾロアスター教以前に遡る。 ヴェーダ宗教では火神アグニが人間と神々を仲介し、火により人間の供物と祈りが天上にもたらされると考えられた。この思想はヒンドゥー教にも伝えられ、さらに仏教︵大乗仏教の密教︶にも取り込まれて護摩の儀式となった。なお、アグニは文字通り﹁火﹂の意味と考えられ、ラテン語やスラヴ語にも同系の語がある。 アーリア人の火炎崇拝の源流としては、考古学的には紀元前1500年頃のフョードロヴォ文化︵アンドロノヴォ文化の一環︶に火葬と火炎崇拝の痕跡が見出されている。火葬はヒンドゥー教では一般的となったが、ゾロアスター教では神聖な火を汚すことは禁じられたため、火葬は行われなかった。聖書での象徴化[編集]
ユダヤ教では神ヤハウェはしばしば火のイメージで語られた︵出エジプト記の燃え盛る柴や、ヘブライ人を導く火の柱など︶。キリスト教でも聖霊が﹁炎のような舌﹂︵使徒行伝︶に例えられている。火神の例[編集]
- 日本:軻遇突智神、竈神
- 琉球 : ヒヌカン
- アイヌ:アペフチ
- ポリネシア:ペレ
- インド:アグニ
- イラン:アータル
- スラヴ:スヴァローグ
- ギリシア:ヘーパイストス、プロメーテウス(人間に火を与えた文化英雄)
- ローマ:ウゥルカーヌス、ウェスタ