睡眠負債
睡眠負債︵すいみんふさい、英: Sleep debt︶は、William C. Dement 教授︵スタンフォード大学︶により提唱された言葉で、日々の睡眠不足が借金のように積み重なり、心身に悪影響を及ぼすおそれのある状態である[1][2][3]。
わずかな睡眠不足が積み重なり﹁債務超過﹂の状態に陥ると、生活や仕事の質が低下するだけでなく、うつ病、がん、認知症などの疾病に繋がるおそれがあるとされる[4][1]。
日本人のおよそ4割は睡眠時間が6時間未満で、睡眠不足の状態にある。しかしこれを自覚できていないケースもあり、睡眠不足が蓄積していってしまう[4][3]。
2003年にペンシルベニア大学が行った研究によれば、6時間睡眠を2週間続けた被験者グループの脳の働きは、2晩徹夜したグループと同程度まで低下している[1][3]。
負債の返済[編集]
睡眠負債のリスクを取り除く根本的な方法は、不足している睡眠時間を増やすことである。ただし週末などに﹁寝だめ﹂をするのは、日常の生活リズムを崩すことになり、逆効果となる場合がある[1][2]。早稲田大学研究戦略センターの枝川義邦は、寝だめにより生活リズムが崩れることで、﹁ブルーマンデー﹂に繋がるおそれがあると指摘する[4]。 2013年にペンシルベニア州立大学の研究者らが30人の被験者に行った13泊の睡眠実験では、寝だめなど短期間の長時間睡眠では、眠気が解消されることはあるが、注意力や集中力の回復は期待できないことが示されている[5]。 また、睡眠の先行投資としての仮眠[2]、日中に15分程度の昼寝をすること、メラトニン分泌のために朝の日光を浴びること、夜間のブルーライトを避けることなども有効とされる[4][1]。睡眠のリン酸化仮説[編集]
理化学研究所・東京大学の上田泰己らは、CaMKIIαとCaMKIIβが睡眠促進リン酸化酵素であることを初めて同定し、睡眠のリン酸化仮説を提唱した[6][7][8][9][10]。出典[編集]
(一)^ abcde“放送した内容・リスクチェック結果|睡眠負債が危ない|NHKスペシャル”. NHK. 2017年6月29日閲覧。
(二)^ abc“睡眠負債って何??”. 東京西川. 2017年6月29日閲覧。
(三)^ abc“﹁睡眠負債﹂の恐ろしさ 自覚症状ないまま脳にダメージ蓄積”. NEWSポストセブン (2017年6月27日). 2017年6月29日閲覧。
(四)^ abcd“﹁睡眠負債﹂をためない方法10分昼寝も効果的だが”. NIKKEI STYLE (2017年6月25日). 2017年6月29日閲覧。
(五)^ ““睡眠負債”は、週末に返済できる?”. 日経トレンディネット (2014年12月5日). 2017年12月8日閲覧。
(六)^ Tatsuki et al. (April 2016). “Involvement of Ca(2+)-Dependent Hyperpolarization in Sleep Duration in Mammals”. Neuron 90 (1): 70–85. doi:10.1016/j.neuron.2016.02.032. ISSN 1097-4199. PMID 26996081.
(七)^ Tatsuki et al. (May 2017). “Ca2+-dependent hyperpolarization hypothesis for mammalian sleep”. Neuroscience Research 118: 48–5. doi:10.1016/j.neures.2017.03.012. ISSN 1872-8111. PMID 28433628.
(八)^ Ode et al. (June 2017). “Fast and slow Ca2+-dependent hyperpolarization mechanisms connect membrane potential and sleep homeostasis”. Current pinion in Neurobiology 44: 212–221. doi:10.1016/j.conb.2017.05.007. ISSN 1873-6882. PMID 28575719.
(九)^ Shi and Ueda (January 2018). “Ca2+ -Dependent Hyperpolarization Pathways in Sleep Homeostasis and Mental Disorders”. BioEssays: News and Reviews in olecular, Cellular and Developmental Biology 40 (1). doi:10.1002/bies.201700105. ISSN 1521-1878. PMID 29205420.
(十)^ Ode and Ueda (October 2020). “Phosphorylation Hypothesis of Sleep”. Front Psychol. 2020 Oct 2;11:575328. doi:10.3389/fpsyg.2020.575328. PMID 33123055.