ソーシャルワーク
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(社会福祉援助技術から転送)
ソーシャルワーク︵Social work︶とは、社会に対しては①社会変革︵social change︶、②社会開発︵social development︶、③社会的結束︵social cohesion︶を、個人に対しては①エンパワーメント︵empowerment︶、②解放︵liberation︶を促進する実践を意味する。また、その実践を発動・継続する根拠︵原理︶は①社会正義(social justice)、②人権︵human right︶、③集団的責任︵collective responsibility︶、④多様性の尊重︵respect for diversities︶であり、その対象は、①社会の様々な構造、②実践を必要とする人々である。︵2014年7月のIFSWのグローバル定義から︶
ソーシャルワークは本来、民間のボランタリーな活動であり、あらゆる国家や思想、権力、組織などから独立した学問を基礎とする実践である。
個人、家族、カップル、グループ、コミュニティ、特に社会的な不利益︵権利侵害、貧困など︶の中にある人のクオリティ・オブ・ライフ︵QOL︶およびウェル・ビーイングを目指し、必要に応じ、 研究、政策策定、共同体開発、各種技法及び危機介入などの手法、社会的不公正に対して社会改革や社会的結束を図る等の実践を基本とする専門的職業および学問分野である[1]。
日本では、﹁社会福祉援助技術﹂や﹁相談援助﹂と同じ意味として捉えられることもあるが、厳密には社会福祉援助技術や相談援助は﹁日本国憲法第25条の理念に基づいて、①日本国民の最低限度の生活の保障あるいは生存権の保障を目的として、国の定める法律に基づく福祉制度を通して、様々な施策︵社会福祉サービス︶を、国民に公平・公正に提供する実践の総称﹂であるのに対し、﹁ソーシャルワーク﹂は、日本国のみならず、あらゆる国の政治体制や思想、団体等から独立して、社会や個人の課題や様々な構造に対し、普遍的方法︵非暴力など︶をもってはたらきかける実践を意味している。 両者は、人間の福祉を求める理念上の共通点はがあるが、その成立根拠・組織・適用範囲・方法論等において大きな違いがある。
定義[編集]
国際的なソーシャルワーカーの組織である﹁国際ソーシャルワーカー連盟﹂と国際的なソーシャルワーク教育機関の組織である﹁International Association of Schools of Social Work (IASSW)﹂は、ソーシャルワークの定義を行い、日本のソーシャルワーク関連団体の連合組織である﹁社会福祉専門職団体協議会︵社専協︶国際委員会﹂︵現‥日本ソーシャルワーカー連盟︶が2005年に和訳を行っている。[2]。
(一)1982年版﹁ソーシャルワークの定義﹂
ソーシャルワークは、社会一般とその社会に生きる個々人の発達を促す、社会変革をもたらすことを目的とする専門職である。
ソーシャルワーク専門職は、人間の福利︵ウェルビーイング︶の増進を目指して、社会の変革を進め、人間関係における問題解決を図り、人びとのエンパワーメントと解放を促していく。
(二)2000年版﹁ソーシャルワークの定義﹂
※モントリオールにおけるIFSW総会において2000年7月27日に採択された。
ソーシャルワーク専門職は、人間の福利︵ウェルビーイング︶の増進を目指して、社会の変革を進め人間関係における問題解決を図り、人びとのエンパワメントと解放を促していく。ソーシャルワークは、人間の行動と社会のシステムに関する理論を利用して、人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である。
(三)2014年版﹁ソーシャルワーク専門職のグローバル定義︵GLOBAL DEFINITION OF THE SOCIAL WORK PROFESSION︶﹂[2]
ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。
社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。
ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学および地域・民族固有の知を基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける。
この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい。
Social work is a practice-based profession and an academic discipline that promotes social change and development, social cohesion, and the empowerment and liberation of people.
Principles of social justice, human rights, collective responsibility and respect for diversities are central to social work.
Underpinned by theories of social work, social sciences, humanities and indigenous knowledge, social work engages people and structures to address life challenges and enhance wellbeing.
The above definition may be amplified at national and/or regional levels.
(四)これまでのソーシャルワークの定義は、発祥の地であるヨーロッパやアメリカが主役であったが、︵特に︶今世紀になり、国際ソーシャルワーカー連盟︵International Federation of Social Workers、通称‥IFSW︶が中心となり、アジア、アフリカ、南アメリカの諸国を含めたより普遍的な定義が模索され、2014年7月の国際会議で﹁ソーシャルワーク専門職のグローバル定義︵Global Definition of the Social Work Profession︶﹂として採択された。その後各国のソーシャルワーカー団体は、採択された定義を受け入れ表明し、現在に至っている。
歴史[編集]
詳細は「en:History of social work」を参照
源流は19世紀末におけるイギリスの慈善組織協会の各種慈善活動とされる。アメリカに概念が渡って後、同国にてジェーン・アダムズ、メアリー・リッチモンドやフェリックス・P・バイステック、ヘレン・ハリス・パールマンらによって理論が体系化されていく。19世紀中期、当初は慈善活動による実践主義・前例主義的な実践であったが、20世紀初頭から、米国において精神分析や心理学等の影響を受けて発展していく。さらに、その発展の過程においてソーシャルワーク固有の手法が開発され、専門職としての地位が確立されてくる。しかし、国際サーシャルワーカー連盟の充実に伴い、ソーシャルワークにグローバルな視点が導入され、2000年には﹁ソーシャルワークの定義﹂が採択された。さらに2014年﹁グローバル定義の改定﹂の際に、アジア・アフリカ・中南米の国々お視点を取り入れ、従来の欧米中心の理論や学問︵心理学や精神分析学中心︶視点に加え、少数民族やそれぞれの地域で培われた﹁民族固有の智﹂︵知識、技術、考え方︶を含めた方法論として定義され位置づけられた。