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糸曽 賢志︵いとそ けんじ、1978年5月30日 - ︶は、広島県広島市出身の映画監督、経営者、投資家。
大阪成蹊大学芸術学部長・教授、早稲田大学招聘研究員。
東京造形大学卒業。早稲田大学大学院 修士課程修了。慶應義塾大学大学院 博士課程単位取得後自主退学。
大学在学中から商業アニメーション制作に参加。同時期に読切漫画を多数執筆し少年ジャンプの新人賞にて評価される。1998年にスタジオジブリが公募した東小金井村塾に合格し[1]、アニメ監督の宮崎駿に師事。この面接試験時に宮崎駿と交わされた﹁トトロは肉食﹂エピソードが話題となり、TVのクイズ番組にて出題されたほか、当時の再現ドラマVTRが全国放映された[2]。
﹁遊☆戯☆王オフィシャルカードゲーム﹂﹁機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-﹂等のヒット作品に参加後、渡米を機に活動の幅を広げる。2006年に大林宣彦のプロデュースをうけ﹁セイキロスさんとわたし﹂で初監督。2007年には東京都からの支援によりオリジナルアニメ﹁コルボッコロ﹂を企画。ほぼ個人作業として約30分の映像を完成させ、石原慎太郎元都知事、小池百合子元環境大臣より表彰を授与された。自身でラジオ番組のパーソナリティを務めたり、講演を行ったりと比較的メディア露出の機会は多い。
アニメプロデューサーの丸山正雄からの誘いで今敏監督の長編アニメーション﹁夢みる機械﹂に演出として参加後、2012年にSMAP全国ツアーで上映する映像を監督したほか、駐日フィンランド大使館の公式キャラクター﹁フィンたん﹂をデザインし、 ユルキ・カタイネン元首相と面会した[3]。その縁で2017年には、フィンランド独立100周年に際しての公式ロゴデザインと、フィンたんを主役にしたアニメーションを担当。また2013年にはキューバの公式キャラクターデザインを担当し、同キャラクターは2013 ワールド・ベースボール・クラシック・キューバ代表の応援キャラクターとしても起用された[4]。
教育者、研究者としての一面も持ち、32歳で大阪成蹊大学芸術学部の教授に就任し、39歳で同大学の学科長、41歳で芸術学部長に就任した。大学では産学連携プロジェクトにも積極的に取り組み、学生に現場体験をさせる学びを提供している。YOASOBIのミュージックビデオをディレクションした際には、希望学生たちを制作に参加させ、メンターをつけながらアニメ制作を実践的に学べる状況を作り話題となった[5]。
クラウドファンディングを活用したオリジナル作品製作に造詣が深く、﹁Kickstarter﹂にて4度の資金調達に成功、2019年にはSony Bank GATE、Makuakeにて資金調達に成功しており、クラウドファンディング累計調達金額は約8.5億円を記録している。メインメンバーとして参加した﹁シェンムーⅢ﹂では、募集開始8時間半で約2億4000万円以上の資金を集め、最も速く資金を集めたゲームとしてギネス世界記録へ登録された。
SONYのスマートフォン﹁Xperia﹂のテレビCMへ出演し、自身で監督・編集するなど、独自のスタイルで多くの役職を担うことが多い。オリジナルアニメ﹁サンタ・カンパニー﹂では全額自己出資して作品制作を行い、関連書籍の執筆や商品展開・配給業務といった資金回収のプロデュースも担当。同作品は自主制作にもかかわらず著名スタッフやキャストが集結したこと、アニメ素材を教材化して教育機関に販売するユニークな手法で、公開前に製作費を全額回収したことでも話題となった[6]。同作品は2019年に長尺化され﹁サンタ・カンパニー ~クリスマスの秘密~﹂として全国の映画館で公開、2021年にはスピンオフSDGs作品﹁サンタ・カンパニー ~真夏のメリークリスマス~﹂が全世界で配信となり、これら作品も自己資金を投資し著作権を自身で保有して教材へ二次利用する座組を形成している[7]。
TVアニメ﹁炎炎ノ消防隊 弐ノ章﹂にて、アニメとして鑑賞した世界をそのまま体験できる作品を作りたいとゲーム化を見越して企画を提案。ゲームエンジンUnreal Engine4を活用しアニメーションを制作しながら、同素材をそのままの世界観でゲーム化し無料配信。作品ブランディングにも寄与する例を見ないその制作手法にも注目があつまり、CGWORLDに掲載されたメイキング記事は人気1位を獲得した[8]。
監督作品は﹁カンヌ国際映画祭﹂にて紹介されたほか、経済産業省主催﹁CMTアワード﹂大賞・国際賞、﹁東京国際アニメフェア﹂主催﹁東京アニメアワード﹂企業賞、﹁ゆうばり国際ファンタスティック映画祭﹂北海道知事賞、﹁KINOTAYO映画祭︵フランス-パリ︶﹂招待上映、﹁JAPAN FILM FESTIVAL︵アメリカ-ロサンゼルス︶﹂招待上映、﹁東京国際映画祭﹂招待上映等、国内外の映画祭で評価を受けており、2006年度文化庁新進芸術家に認定されている。