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黒の正方形

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『黒の正方形』
作者カジミール・マレーヴィチ
製作年1915年
種類油彩、カンバス
寸法79.5 cm × 79.5 cm (31.3 in × 31.3 in)
所蔵トレチャコフスキー美術館[* 1]、モスクワ

: Чёрный квадрат1915010[* 2]

背景

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20[* 3][1]

[2]

無対象の世界

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20[3][* 4][4]
新しい絵画のリアリズムはまさしく絵画のものである。なぜならそこには山のリアリズムも、空のリアリズムも、水のリアリズムもないからである。
これまで、物のリアリズムはあった。しかし、絵画の、色彩の諸単位のリアリズムはなかった。そうした単位は形態にも、色彩にも、相互の位置関係にも左右されないように構成されている。

[5][6]
対象的なものはそれ自体シュプレマティストには無意味である―意識の表象は無価値なのだ。
感覚とは決定的なものであり……それゆえ芸術は無対象表現に、シュプレマティズムに至るのだ。
芸術は感覚以外なにひとつみとめられない「砂漠」に逢着する[* 5]

「砂漠」に行き着いたマレーヴィチは、その後『赤の正方形』や『白の正方形』を製作すると、しばらく絵画から離れ、建築などのデザインに関わるようになる[7]

カジミール・マレーヴィチ

黒という沈黙

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グリッド

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大石雅彦は『黒の正方形』がグリッド(二次元における正方形)だけでなく、奥行きや「深層意識」のレベルからも考察されなければならないとしている[8]

科学的分析

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この作品は単なるコンセプトに留まらない、実際にカンバスに描かれた作品である。中央部にはおおきな「ひび割れ」があり、それは他の箇所にも散見される。また白地の部分は『黒い正方形』が完成したのちに塗り重ねられたものと考えられている。X線などをもちいた1990年の調査では、この絵には「深層」があることが明らかになった。『黒の正方形』の下には多彩な絵の具が塗り込められていることがわかった。

イコン画としての『黒の正方形』

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010[* 6][9]

影響

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白のカンバスの上の『白の正方形』(1918年)。

2007100350[10]


白い四角
のなか
の白い四角
のなか
の黒い四角
のなか
の黒い四角
のなか
の黄いろい四角
のなか
の黄いろい四角
のなか
の白い四角
のなか
の白い四角

—北園克衛「単調な空間」から[11]

脚注

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注釈

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(一)^ 4

(二)^ 2008p.379

(三)^ 1996p.105-106

(四)^ условность2008p.377

(五)^ 1996p.110 調

(六)^ 402008) p.380

出典

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  1. ^ 大石(2008)p.375
  2. ^ 大石(2008)p.377
  3. ^ 大石(2008)p.376
  4. ^ 桑野(1996)p.109
  5. ^ 大石(2008)p.383
  6. ^ 大石(2008)p.384-386
  7. ^ 大石(2008)p.378
  8. ^ 大石(2008)p.382-383
  9. ^ 桑野(1996) pp.142-143
  10. ^ 大石(2008)p.374
  11. ^ 『現代詩文庫1023 北園克衛』思潮社、1981年 pp.92-93

参考文献

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  • 大石雅彦『マレーヴィチ考 : 「ロシア・アヴァンギャルド」からの解放にむけて』人文書院、2003年
  • 大石雅彦「一枚の絵画」『文化の透視法 : 20世紀ロシア文学・芸術論集』南雲堂フェニックス、2008年(「マレーヴィチ考」の本作への論考を学生向けに要約したもの)
  • 桑野隆『夢みる権利 : ロシア・アヴァンギャルド再考』東京大学出版会、1996年
  • 五十殿利治編『コンストルクツィア : 構成主義の展開』国書刊行会、1991年