日本大百科全書(ニッポニカ) 「うわぐすり」の意味・わかりやすい解説
うわぐすり
glaze
正しくは釉(ゆう)といい、釉薬(ゆうやく)ともいう。陶磁器が液体やガスを吸収しないように、器物を覆ったり線をつけたりするために用いる不透性の、一般にガラス質の材料であり、また各種の装飾を保護するものである。釉はつねに熱の作用で素地の上に生成されるもので、熱を用いない場合にはラッカーまたはワニスという。
﹇素木洋一﹈
分類
性質
沿革
うわぐすりの発明は中国と西アジアだけで行われた事績であり、他の地域や民族が行った施釉(せゆう)陶磁は、すべてこの2地域から直接間接に技術を受容したのであった。しかもこの2地域は高級な文明の発祥地として知られるとおり、製釉技法もまさしくこの高級文明の土壌のうえに開花したのである。西アジアでは最初にソーダガラスがつくられ、これを素焼の土器に施すことから施釉が始まったが、中国では窯を築いて高火度で土器を焼成している間に、燃料の灰が素地のケイ酸を溶かして自然釉をつくることに着想を得て、灰釉(かいゆう)が人為的に案出されるという経過の相違がある。今日では、焼物はケイ酸工業に属することからも知られるとおり、素地や釉中のケイ酸を溶かすために、溶媒材は各種各様の金属が使われるが、そこまで展開させたのもおおむね中国人と西アジア人であったことを忘れてはならない。
﹇矢部良明﹈