精選版 日本国語大辞典 「こま」の意味・読み・例文・類語 こま 〘 名詞 〙 猫(ねこ)の古名「ねこま」の略。猫の愛称としても用いられた。〔日葡辞書(1603‐04)〕[初出の実例]「うるはしひ声てこまこまこまと呼ひ」(出典:雑俳・柳多留拾遺(1801)巻八上) こま 〘 名詞 〙① 植物「ちしゃ(萵苣)」の異名。〔字鏡集(1245)〕② 植物「まこも(真菰)」の異名。〔藻塩草(1513頃)〕 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
日本大百科全書(ニッポニカ) 「こま」の意味・わかりやすい解説 こまこま / 独楽 心棒または軸を中心に、円形の胴が回転運動する玩具(がんぐ)。材料には木、竹、貝殻、金属、プラスチック、ガラスその他が用いられ、形状がさまざまで種類が多い。その発生は、どんぐりの実などを回して遊んだ自然玩具から、さらにくふうを加えて発達したものと思われる。その回転で遊ぶほか、吉凶を占う具に用いられたりした。現在残っている最古のこまは、紀元前2000~前1400年ごろの古代エジプトで用いられた手回しのもので、木、石などでできている。手回しのものが最初につくられ、やがてむちで回転力を加える﹁たたきごま﹂が現れたと思われる。16世紀の画家、ブリューゲルの﹁児童と遊戯﹂の図にも、子供たちのむちごま遊びが描かれている。19世紀末期には、ひねりごま、鳴りごま、糸引きごまなどのほか、ジャイロスコープや磁石を使ったものなどが登場してきた。こま遊びは、ヨーロッパ、アジア、南北アメリカ、オセアニアなど、世界各地に広くみられる。 ﹇斎藤良輔﹈ 歴史 こまが文献に現れた最初は、﹃日本書紀﹄雄略(ゆうりゃく)天皇紀に、﹁高麗(こま)王即発軍兵、屯聚筑足流城、遂歌儛興楽﹂とあるのがそれで、楽は﹁独楽﹂であるという。唐時代の中国から朝鮮の高麗︵高句麗(こうくり)︶を経て日本に渡来したので、﹁こま﹂とよんだという。奈良時代初期に雑戯散楽として伝えられ、朝廷行事の余興として用いられたが、平安時代には貴族の間の遊戯として行われるようになった。10世紀に書かれた﹃倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)﹄︵源順(みなもとのしたごう)︶には、﹁独楽和名古末都玖利 有孔者也﹂とあり、当時﹁こまつくり﹂とよばれていた。孔(あな)のある形から、最初行われたのは唐(とう)ごま︵唸(うなり)ごま︶と考えられる。12世紀の﹃大鏡﹄には、﹁こまつぶり﹂とあり、一条(いちじょう)天皇が幼少のおり、音をたてて狂い回るこまに興じられたことが記されている。平安時代の貴族の手からしだいに民間の子供の遊び道具に移行し、江戸時代に入ると、広く庶民の遊び道具となって、さまざまな種類のものが登場してきた。手回し、むちでたたいて回すもの、あるいは変形の手車︵ヨーヨーに似たもの︶、輪鼓(りゅうご)︵鼓(つづみ)ごま、デアボロ︶などが数えられた。それぞれの形によって遊び方も多様化され、子供遊びのほかに、賭(か)け事や見せ物興行としても流行した。同時に風俗的な弊害︵賭博(とばく)行為やこま回しを職とする者の売色︶も生じた理由から、こまの販売、使用の禁令もしばしば発せられた。伝承的な作品は現在も郷土玩具として全国各地にみられる。 ﹇斎藤良輔﹈ 種類 歴史の古い﹁唐ごま﹂は、長さ12、13センチメートルほどに切った竹筒の上下を板でふさぎ、竹の心棒を通したもの。筒に長方形の穴があり、こまが回転すると風が入って鳴る。竹製、木製があり、伊勢(いせ)の竹鳴りごま、東北各地の木地ごまなどがそのおもかげを伝えている。﹁博多(はかた)ごま﹂は、1702年︵元禄15︶ころ九州博多を中心に発達した。仕掛けのある鉄の細い心棒をもった木胴ごまで、曲(きょく)ごまとして見せ物興行に用いられた。幕末には松井源水が、歯みがきを売る客寄せに曲ごまを演じて名人といわれ、その使用した朱塗り鉄心の木ごまを玄水︵源水︶ごまといい、以後この形を継承するこまの総称となった。また竹沢東次が見せ物小屋で曲ごま芸を演じて人気を集めたが、これを模してさまざまな﹁からくりごま﹂が商品化された。その流れをくむ﹁江戸ごま﹂が現在も郷土玩具としてみられる。子供遊びの﹁貝(ばい)ごま﹂は、巻き貝のニシの殻の中に溶かした鉛や砂を入れてつくったものである。心棒がなく、糸むちでたたいて回す。東京では﹁ばい﹂をなまって﹁べいごま﹂という。明治末期には、これにかわって鉄の鋳物製のものが現れてきた。貝ごまから派生したものに﹁たたきごま﹂がある。貝殻のかわりの挽物(ひきもの)の木製で、むちでこまの腹を打って回転力を与える。﹁鉄胴(かなどう)ごま﹂は木製胴に鉄輪などをはめて、回転力と攻撃力を強めている。そのほか手回しごまや種々の変わりごまがある。 ﹇斎藤良輔﹈ こまの科学 剛体︵力を加えても、たやすくは形質の変わらない物質︶を回転軸の周りに回転させると、慣性の法則によって、その回転速度ばかりでなく、回転方向、すなわち回転軸の方向まで一定に保たれようとする。こまはこの原理を利用したおもちゃである。通常こまは、回転軸の一端が地面などと接触しているが、特殊な場合には地面と接触しない場合もある。この例としてはヨーヨーや、曲技などで用いられる空中ごまなどがある。 一般の剛体では、回転軸の周りの慣性モーメントをI、角速度をω、剛体に働く力のモーメントをNとすると、 なる式が成り立つ。こまが地上に対して鉛直な軸の周りに回転するときは、力のモーメントNは0となり、ωは一定である。すなわち、こまは永久に回転し続ける。これはねむりごまとよばれる。 軸が、鉛直方向からθだけ傾くと、くび振り運動、すなわち歳差(さいさ)運動がおこる。これは、重力による力のモーメントが発生し、そのため軸が回転し、角運動量Iωが変化するためである。こまの歳差運動の角振動数ωと回転軸の周りの回転の角振動数Ωの比は、こまの質量をM、重力加速度をg、固定点からこまの重心までの距離をrとすると、 となる。慣性モーメントの小さいこまほど、歳差運動は激しい。こまの軸との摩擦力が微妙に働くと、これに対する力のモーメントのために、こまが逆立ちするという現象がおこる。これは起き上がりごま、逆立ちごまとよばれる。 ﹇大槻義彦﹈ ﹃菅野新一監修﹃日本の木地玩具﹄︵1976・文化出版局︶﹄▽﹃大槻義彦著﹃こまとスピン﹄︵1977・共立出版︶﹄ [参照項目] | 歳差運動 こま遊び 松井源水の曲独楽 刀の刃先の上でこまを回す源水。﹃職人尽絵詞﹄ 第2軸︵部分︶ 原図は、鍬形蕙斎︵北尾政美︶画、杏花園︵蜀山人︶詞書国立国会図書館所蔵"> 松井源水の曲独楽 貝独楽 貝独楽は、巻き貝の殻の中に溶かした鉛や砂を入れてつくったもの。茣蓙の上で貝独楽を打ち合わせて勝負する﹁ばいまわし﹂も大流行した。﹃絵本御伽品鏡﹄ 長谷川光信画 1739年︵元文4︶刊国立国会図書館所蔵"> 貝独楽 津軽のずぐりごま 青森県©Shogakukan"> 津軽のずぐりごま 佐世保こま 長崎県©Shogakukan"> 佐世保こま 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「こま」の意味・わかりやすい解説 こま 心棒を対称軸とする回転対称形で,心棒を固定点として回転させて遊ぶ玩具。独楽とも書く。世界的に古くから分布する。こまの名は,奈良時代以前,回すと音の出る鳴りごまが高麗︵こま。→高句麗︶から日本に伝来したことに由来するとみられる。原形は木の実,貝殻などと考えられるが,轆轤︵ろくろ︶細工の木のこま,貝︵べい︶に似せた鋳鉄のべいごま,竹製の鳴りごまなど多くの種類がある。回し方も,心棒を指でひねるもの,胴にひもなどを巻いて投げるようにして回転させるもの,中国大陸に多いむち打ちによって回転させるもの,また輪鼓︵りゅうご︶のようにヨーヨーに似たものなどがある。日本では曲ごま,からくりごまなどもよく発達し,寄席芸︵→寄席︶として今日に伝えられる。 出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
デジタル大辞泉プラス 「こま」の解説 こま けん玉の技のひとつ。けん先に玉をさした状態から、親指で玉に回転を与えつつ玉を前方に振りだし、回転が止まる前に再度引き上げてけんにさす。2000年、日本けん玉協会により「けん玉の技百選」に選定された。 出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報