デジタル大辞泉
「モーメント」の意味・読み・例文・類語
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モーメント
(一)〘 名詞 〙 ( [英語] moment )[ 異表記 ] モメント
(二)① 非常に短い時間。瞬間。刹那(せつな)。
(一)[初出の実例]﹁其瞬間(モオメント)に瞥見したばかり﹂(出典‥二人女房︵1891‐92︶︿尾崎紅葉﹀上)
(三)② 契機。きっかけ。
(一)[初出の実例]﹁氏の全貌を語る上に、それは、一つのモメントを提供するに過ぎない﹂(出典‥敗北の文学︵1929︶︿宮本顕治﹀三)
(四)③ 要素。
(一)[初出の実例]﹁俳句には矢張実に巧みに﹃声の影法師﹄を取り入れた実例が多い。例えば︿略﹀﹃物うりの尻声高く名乗すて﹄は喜劇中のモーメントである﹂(出典‥映画時代︵1930︶︿寺田寅彦﹀)
(五)④ ある点Pにおけるベクトル量と原点からP点に向かう位置ベクトルとのベクトル積を、ベクトル量の原点のまわりのモーメントという。ベクトル量が力のときは、力のモーメントといい、原点のまわりのトルクの大きさになる。
(六)⑤ 一対の正負の電荷があるとき、負の電荷から正の電荷に向かう位置ベクトルと電荷量の積を電気双極子モーメントという。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
モーメント
moment
能率ともいう。図のように軽い棒の両端に重さがW1,W2の物体をつるし,中間で支えてつりあわせるには,l1W1=l2W2となる点を支えることが必要である。このとき重力W1が棒を左へまわそうとする働きと,W2が棒を右へまわそうとする働きがつりあうからと考えられる。このことは,力Fが物体を回転させようとする働きが,力の大きさFだけでなく,支点と力の作用線︵力が働いている点をとおり力の方向にひいた直線︶の間の距離にも比例することを示す。そこで,物体に力Fが作用しているとき,点OからFの作用線に下ろした垂線の長さhと力の大きさFの積hFのことを,O点のまわりの力Fのモーメント︵の大きさ︶と定める。これは回転させようとする働きの大小を示す。さらに,その回転軸の方向︵力FおよびOと作用点Pを結ぶベクトルの両方に垂直︶および向き︵右ねじの進む向きと約束する︶をこれに付与してベクトルで表すと便利なので,そのようなベクトルをOに関するFのモーメントと呼ぶ。ベクトル積の記号を使うとN=r×Fと表される。同様に,点Pでベクトル量Aが定められるとき,r×Aのことを,Oに関するAのモーメントという。例えば質点がPで運動量pをもっているとき,運動量のモーメントl=r×pというものを考えることができるが,これを角運動量と名づけている。またモーメントはスカラー量にも用いることがある。例えば位置r1,r2,……に点電荷q1,q2,……が存在するとき,P=q1r1+q2r2+……のことをその系の電気双極子モーメントという。とくに等量の正負の電荷q,-qがdだけ隔たって存在する電気双極子では,P=qr1+︵-q︶r2=qdとなる。磁気︵双極子︶モーメントは,±qmの磁気量をもった磁極が dだけ離れて存在するときにm=qmdによって定義される。 また慣性モーメントのように,回転軸からの距離riの2乗と質量mi︵慣性の大小︶の積の和で定義されるような量もある。
執筆者‥小出 昭一郎
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モーメント(物理)【モーメント】
能率とも。︵1︶任意のベクトルAに,一点OからAの作用線に下した垂線の長さと,Aの大きさとの積。Aが力のとき力のモーメント,運動量のときは運動量のモーメントであるが,これは角運動量と呼ばれる。これに対して,回転運動に対する抵抗の大小を表すのが慣性モーメント。︵2︶偶力,双極子など大きさが等しく方向や符号の反対の量が並んでいるとき,偶力では力の大きさと作用線の距離の積,双極子では電荷︵磁荷︶の大きさと双極子の間の距離の積。
→関連項目角運動量保存の法則|軸|伝動軸|トーションバランス|トルク
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モーメント
モーメント
moment
原点Oから点Pに至る位置ベクトルrと,Pにおけるベクトル量Gのベクトル積r × Gを,原点Oのまわりのモーメントという.Gが力ならば力のモーメントであり,運動量ならば角運動量である.また,原点からの二つの位置ベクトル r1と r2の位置に異なる符号で同じ電荷qと-qがあるとき,
q(r1 - r2)
を電気双極子モーメントあるいは電気双極子能率という.電荷のかわりに磁気量が入れば磁気モーメントである.もし,電荷の位置に反対方向の力Fが入れば
(r1 - r2) × F
はトルク,すなわち,偶力のモーメントになる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
モーメント
moment
積率ともいう。ある資料の度数分布表が,階級値 x1,x2,…,xn ,度数 f1,f2,…,fn で,資料の総数は N=f1+f2+…+fn であったとする。このとき
を原点のまわりの1次,2次,…次のモーメントといい,
を,平均値 のまわりの1次,2次,…次のモーメントという。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
モーメント
もーめんと
moment
能率、力のモーメント、またはトルクともいい、ある点または軸の周りに運動を引き起こす能力のことである。てこの原理でよく知られているように、力のモーメントは、力の大きさだけでなく、支点からの距離にも依存する。正確には、回転中心から力の作用点へ引いた位置ベクトルrと力Fとのベクトル積r×Fで与えられる。一般に、力に限らず物理量Xに対して、Xのモーメントをr×Xで定義することもある。より一般的には、ある点からの距離に応じて、たとえば、距離の1乗または2乗などの重みをつけた量を、その点の周りのモーメントとよぶことがある。広がりのある固い物体︵物理学では剛体という︶の回転運動の記述に現れる慣性モーメントなどはその例である。
﹇阿部恭久﹈
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
世界大百科事典(旧版)内のモーメントの言及
【積率】より
…モーメントともいう。統計学で度数分布や確率分布の散布の大きさを測り,分布を特徴づけるのに役だつ。…
※「モーメント」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」