日本大百科全書(ニッポニカ) 「しょうゆ」の意味・わかりやすい解説
しょうゆ
しょうゆ / 醤油
小麦と大豆を原料とするしょうゆ麹(こうじ)に食塩水を加え、発酵させて絞った液体調味料。日本で独自に発達し、しかも日常的に用いられる代表的調味料である。味つけのもととなることから「下地(したじ)」、またその色から「紫」などともよばれる。日本以外に、中国、韓国をはじめとして、東南アジア諸国や欧米でも調味料として用いられ、欧米ではソイsoy、ソイ(ア)・ソースsoy(a) sauceとよばれる。
[河野友美・山口米子]
歴史
生産と消費
種類
濃口しょうゆ
淡口しょうゆ
溜しょうゆ
再仕込みしょうゆ
甘露(かんろ)しょうゆともいい、通常のしょうゆ醸造のときに使用する塩水のかわりに、火入れをしていないしょうゆを使う。しょうゆを二度醸造する形になるのでこの名がある。味が濃厚に仕上がり、刺身・すし用しょうゆとして、また煮物にも使用される。材料が2倍近く必要であるのと、2回の手間をかけるので、価格が高くなるが、うま味が強いので、高級なしょうゆとされている。濃口しょうゆとあわせて使うこともある。
[河野友美・山口米子]
白しょうゆ
名古屋地方特有の料理用しょうゆ。味は淡泊で甘味が強く色は非常に薄い。小麦を主原料とし、炒(い)った大豆とともに麹にし、塩水を加えて仕込んでつくる。汁物、吸い物、鍋物(なべもの)、煮物などに用いられる。
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魚醤
魚を原料にしてつくったしょうゆで、秋田のしょっつるはその代表的なものである。小魚に塩をして熟成させ、液状になったものを濾過(ろか)してつくる。淡色であるが、特有のにおいと強いうま味をもつ。主として秋田名物のしょっつる鍋の味つけに用いられる。その他いかなごしょうゆ(香川県)なども魚醤の仲間である。ベトナムのニョクマン(ヌクマム)、タイのナンプラーなどもこの一種である。しょっつるの造り方は、桶にイワシ、アジ、小サバ、ハタハタなどの魚と塩を交互に堆積(たいせき)させ、上には重石(おもし)をのせ、目張りをして1年間くらい放置する。内臓とともに漬けるので、内臓に多く含まれる酵素や微生物によって自己消化がおこり、魚体は柔らかくなる。上に浮く脂肪を取り去り、柔らかくなった魚に、塩と水を加え、十分に煮たのち濾(こ)し分け、殺菌して製品に仕上げる。
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加工しょうゆ
規格
しょうゆは、製法および品質などによりJASの製品規格がある。製法については、本醸造方式、新式醸造方式、アミノ酸液や酵素処理液の混合方式の3種に分かれ、各醸造法ごとに、こいくちしょうゆ、うすくちしょうゆ、さいしこみしょうゆ、たまりしょうゆ、しろしょうゆの5種が含まれる。品質についても、特級、上級、標準品の三つがある。
本醸造は、完全に醸造のみによったもので、化学分解したアミノ酸などを加えてはならないことになっている。この方法が、しょうゆ製造の主流を占めている。新式醸造は、脱脂加工大豆や小麦グルテンを酸分解あるいは酵素分解して、これに麹菌をつけて熟成させ、さらに本醸造のしょうゆを加えたものである。混合方式は、文字どおり酸分解あるいは酵素分解してつくったアミノ酸液と、本醸造あるいは新式醸造でつくったしょうゆを混合したものである。
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製法
保存
しょうゆは塩分濃度が高いのと、乳酸などを含有するため、保存性は比較的よい調味料であるが、一般用にはアルコールを添加して、保存性をよくしたものが多い。また加工用には保存料を用いたものもある。しかし、空気による酸化により、色調、風味などの変化が大きい。また、酸化したものは粘性も増加する。酸化による変化は開栓後急速に進むが、塩分濃度の高いしょうゆほど、また保存温度の低いほど進行は遅い。濃口しょうゆの場合、30℃の気温のとき、約15日でほぼ初めの2倍の色濃度となる。これに対し、5℃で保存したときは、開栓後1か月でも5割程度色が濃くなるにすぎない。したがって、開栓後は、冷蔵庫など冷暗所に保存するほうがよい。また開栓しなくても、1~2年も保存するとかなり色が濃くなる。
[河野友美・山口米子]
『地方史研究協議会編『日本産業史大系 4関東地方編・6近畿地方編』(1959、60・東京大学出版会)』▽『佐藤真編『醤油・味噌資料集成』(1963・野田興風会図書館)』▽『河野友美著『しょうゆ風土記』(1974・毎日新聞社)』▽『市山盛雄著『野田の醤油史』(1980・崙書房)』▽『林玲子著『醤油醸造業史の研究』(1990・吉川弘文館)』▽『吉羽和夫著『自然味の職人たち――砂糖・塩・醤油』(1993・新日本出版社)』▽『常世田令子著『醤油屋ばなし・海女がたり』(1994・崙書房)』▽『森浩一編『味噌・醤油・酒の来た道』(1998・小学館ライブラリー)』▽『林玲子・天野雅敏著『東と西の醤油史』(1999・吉川弘文館)』▽『アスペクト編・刊『至宝の調味料1 醤油』(1999)』▽『林玲子・天野雅敏編『歴史文化ライブラリー187 日本の味 醤油の歴史』(2005・吉川弘文館)』