改訂新版 世界大百科事典 「ジュリアン」の意味・わかりやすい解説
ジュリアン
Camille Julien
生没年:1859-1933
フランスの歴史家。エコール・ノルマル・シュペリウール出身。1891年ボルドー大学教授,1905年からはコレージュ・ド・フランスの教授となり,古ガリア史の講座を担当して,歴史学界の中心的存在となった。24年にはアカデミー・フランセーズの会員に選出されている。フュステル・ド・クーランジュを師と仰ぎ,厳密な実証主義の方法を継承したが,同時に,ミシュレから豊かな想像力を受け継ぎ,生気を欠いた講壇歴史学に列しながら,鋭い批評眼と豊かな感受性で群を抜いている。フランス文化の基層をケルト文化のうちに求める立場をとり,主著︽ガリア史︾8巻︵1906-26︶は今日でも基本的文献として評価が高い。また史学史の領域でもすぐれた仕事を残した。19世紀フランスの代表的歴史家の選集を編み,その序論として︽近世仏蘭西史学概観Extraits des historiens français du XIXe siècle︾︵1896。邦訳1941︶を著したが,すぐれた精神史的叙述として今日まで読み継がれている。
執筆者‥二宮 宏之
ジュリアン
Stanislas Julien
生没年:1799-1873
フランスの中国学者。アベル・レミュザをついで1832年コレージュ・ド・フランスの中国語学教授となり,多方面な語学的才能と厳密な文献学的方法によって当代ヨーロッパ随一の中国学者とされた。︽大慈恩寺三蔵法師伝︾︵1853︶,︽大唐西域記︾︵1857-58︶,︽突厥関係中国史料︾︵1864︶,︽譬喩因縁経︾︵1859︶,︽景徳鎮陶録︾︵1856︶の訳注をはじめ,︽語順にもとづく中国語新構文論︾︵1869-70︶,︽アジアの地理およびシナ-インド文献学論集︾︵1864︶や,養蚕を主とする︽中国古今の産業︾︵1869︶の紹介のほか,︽趙氏孤児︾︵1834︶,︽西廂記︾︵1872-80︶など俗文学の訳も少なからず出版している。
執筆者‥川勝 義雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報