日本大百科全書(ニッポニカ) 「マスネ」の意味・わかりやすい解説
マスネ
ますね
Jules Massenet
(1842―1912)
フランスの作曲家。モントー生まれ。パリ音楽院で作曲をトマに学び、1863年に新進作曲家のコンクールでローマ大賞を受賞、3年間ローマに留学。パリに帰ったのちはオペラの作曲に力を注ぎ、﹃ラオールの王﹄︵1877初演︶などで名声を確立した。彼のオペラは未完、あるいは死後上演のものを含め36曲に及ぶが、ヒロインの愛や生涯を親密な雰囲気と叙情性のなかで描いたものが多く、甘美な旋律、外面的効果よりも情緒表現を重視した管弦楽の用法により、とくに80年代、90年代に愛好された。代表作はアベ・プレボーの小説による﹃マノン﹄︵1884初演︶、コルネイユの戯曲に基づく﹃ル・シッド﹄︵1885初演︶、ゲーテによる﹃ウェルテル﹄︵1892初演︶、﹁タイスの瞑想(めいそう)曲﹂でも有名な﹃タイス﹄︵1894初演︶などである。また、彼の歌曲は、フランス近代歌曲の創始者グノーとドビュッシーとを結ぶ位置にあり、フランス語の自然な抑揚と旋律美との融合に新領域が開かれている。1878年以後パリ音楽院の作曲の教授を務め、多くの優れた作曲家を育成し、パリに没した。
﹇美山良夫﹈
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