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「共済組合」の意味・読み・例文・類語
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共済組合 (きょうさいくみあい)
組合員相互の扶助や福祉を目的として,その構成員が一定の掛金を事前に納入し,掛金の積立金から災害,失業その他の不幸や事故を受けた組合構成員に一定額の給付を行って救済しようとする非営利的な相互扶助組織をいう。イギリスでは17世紀ころから友愛組合が発展し,労働組合が非合法とされた時代には友愛組合の形態のもとで共済組合が組織された。ドイツでも17世紀ころ,職人・徒弟のツンフト金庫や鉱夫共済金庫が各地で生まれた。他のヨーロッパ諸国でも18世紀後半から共済組合の発展がみられ,各国において国レベルの社会保険が発達して今日に至るまで,共済組織から発展した自主的管理機関に社会保険の管理運営をゆだねる方式がとられている。日本における共済組合の萌芽は江戸時代の鉱夫社会の友子,職人の相互共済組織にみられる。明治以降欧米式の共済制度が導入されたが,その多くは温情主義的経営方式の産物としての企業内共済制度であった。共有舎︵山口県のセメント会社従業員共済組合。1890設立︶をはじめ,秀英舎,鐘紡共済組合,三菱造船所援護基金が有名である。また帝国鉄道庁職員救済組合︵1907︶に始まり明治末から大正期にかけて陸海軍工厰をはじめ官業・官公庁の共済組合が所轄庁別に続々と結成された。その後,健康保険法施行︵1926︶に当たって,民間大企業の共済組合の医療給付を健保事業の主体としての健康保険組合に吸収させたので,民間企業の共済組合活動はその存在意義を失った。しかし官業官公庁共済組合は存続し,第2次大戦中の政府職員共済組合令︵1940公布︶や教職員共済組合令︵1941公布︶の統制的統合を経て戦後に及んだ︵︿恩給﹀の項参照︶。
戦後,日本国憲法のもとで制定された国家公務員法︵1947公布︶は,戦前の官吏,雇用人の区別なくすべての政府被用者を公務員として扱い,旧国家公務員共済組合法︵1948公布︶は従来の各省庁の共済組合などが実施してきた退職年金制を一本化し法人格を賦与したが,恩給法はそのまま存続した。しかし国家公務員共済組合法︵1958公布︶,地方公務員等共済組合法︵1962公布︶により,約1世紀存続した恩給は公務員共済組合の長期給付に移行することになった。これらの2法に加え,沿革的に関連の深い職員を対象とする公共企業体職員等共済組合法︵1956公布︶のほか,私立学校教職員共済組合法︵1954公布︶,農林漁業団体職員共済組合法︵1958公布︶が制定された。その後,1983年12月の法改正によって公共企業体職員等共済組合法は廃止,国家公務員共済組合法は国家公務員等共済組合法となって公共企業体関係の共済組合をその適用対象に加えた︵1984年4月施行︶。これらの公務など特殊職域を対象とする共済組合は,戦前からの企業・職域中心の慈恵的な日本型社会保障の中心的形態として位置づけられる。支給開始年齢や給付水準などの点で民間被用者対象の社会保険よりも有利な反面,公務員の労働者性,労使対等の原則は制約されたまま,相互扶助精神により︿公務の能率的運営に資する﹀︵国家公務員共済組合法1条︶ものと規定され,憲法25条に基づく社会保障制度の一環として位置づけられている。国家公務員等共済組合法など公務関係の共済組合法は,︵1︶その人的適用範囲︵組合員,被扶養者の定義︶,︵2︶組織運営主体の性格,設立要件,︵3︶事業としての給付内容,その運用の方法,︵4︶費用負担,財政の管理運用,︵5︶運営のための審議機関や審査請求などの点で,おのおのに共通ないし類似した原則により構成されている。国家公務員関係では,総理府,大蔵省など非現業の各省庁ごとに計20単位組合,郵政省,林野庁など四現業の4組合で合計24の単位組合が設けられた。公共企業体職員関係では国鉄,専売,電電公社の3組合︵1984年4月から国家公務員等共済組合法の適用対象となった︶,地方公務員関係では各都道府県職員による地方職員共済組合,公立学校共済組合など8種に大別され,さらに細分されて90余の単位共済組合が設けられた︵1984年現在︶。共済組合の事業内容,給付には,︵1︶長期給付として,︵a︶退職年金など退職給付,︵b︶廃疾給付,︵c︶遺族給付があり,︵2︶短期給付として,︵a︶療養の給付など保健給付,︵b︶休業給付,︵c︶災害給付,︵d︶付加給付,︵3︶福祉事業として,︵a︶保養所や宿泊施設の運営,︵b︶住宅資金貸付け,︵c︶医療機関,保育所の経営,などがある。これらの給付のうち,とくに退職年金に関して官民格差批判が加えられ,1979年12月に支給開始年齢の引上げ︵55歳から60歳へ︶,天下り高級官僚への給付制限など大幅改正が加えられた。さらに人口高齢化に伴う公的年金財政の悪化,国の行財政改革の視点から,共済年金相互間の財政調整,被用者年金制一本化,公的年金制統合論などが提案された。
1986年4月実施の公的年金制技本改革により,すべての公的年金は︿基礎年金﹀制で一元化され,厚生年金と共済年金を含む被用者年金は基礎年金に上積みされる2階部分の年金として位置づけられた。民営化が実施された国鉄,専売公社,電電公社については,JR共済,JT︵日本たばこ︶共済,NTT︵日本電信電話︶共済のいずれも,97年4月から厚生年金に統合された。国家公務員等共済組合など4共済組合は,将来において2階部分の被用者年金として一元化されるものと予測される。4共済組合は2階部分の被用者年金として厚生年金と並存するが,それらの独自性は失われ,厚生年金を代行する制度になってきている。社会保険の一環として,法律に基づき設立される各種の共済組合とは別に,民間産業の企業内福利厚生としての共済組織や,労働者団体による自主共済も,第2次大戦後に独自の発展をとげてきている。1956年に総評,全労会議,中央福対協,日本生協連,全国労金協会が中心となって全国労働者共済協議会が結成され,これを母体として57年には各都道府県の地域労済を会員とする全国労働者共済生活協同組合連合会︵労済連︶が設立された。労済連は,︵1︶各都道府県労働者共済生活協同組合の指導,︵2︶新しい共済種目の開発,︵3︶未設置の府県での労働者共済生協の設置を目ざして活動し,生命・火災・交通災害共済を中心に労働者の共済要求にこたえ,その活動範囲を拡充している。都道府県単位の地域労済とは別に,労働組合が組織強化を目的としてみずから共済事業を実施しており,1989年10月総評の解散のあと,新たに結成された︿連合﹀の主導のもとで,これらの地域別,職種別の民間共済組織は再編成されている。
→医療保険 →年金
執筆者‥坂本 重雄
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共済組合
きょうさいくみあい
公務員等の職域における社会保険の仕組みによる共済制度。社会保険の前段階で存在した同種の職業または同業の事業などに従事する者の自主的な相互扶助組織をいうこともある。
公務員等の職域では、明治時代の初期より旧軍人や官吏が退職または死亡した場合に公費によって年金または一時金を支給する恩給制度が存在したが、その特権的性格に対する批判が高まり、1950年代後半から1960年代前半にかけて廃止され、共済組合に統合された。
共済組合の起源は明治末期から大正期にかけて創設された官業労働者の共済組合である。第二次世界大戦後は公務員等の職域における医療︵短期給付︶・年金︵長期給付︶・福祉の三事業を担い、かつては国家公務員、地方公務員、公共企業体︵日本国有鉄道・日本専売公社・日本電信電話公社︶、私立学校、農林漁業団体︵医療の事業は実施せず︶のそれぞれにつき共済組合が存在した。しかし、公的年金制度の公平化・安定化を目ざした一元化の流れのなかで、年金部門については大きな変貌(へんぼう)を遂げることになり、日本鉄道共済組合︵JR共済︶、日本たばこ産業共済組合︵JT共済︶、日本電信電話共済組合︵NTT共済︶は1997年︵平成9︶に、農林漁業団体職員共済組合は2002年︵平成14︶に厚生年金に統合され、2012年の被用者年金一元化法により2015年には国・地方・私学の共済年金もすべて厚生年金に統合された。現在の共済組合は、医療・福祉の事業のほか、年金については一元化前の加入期間についての旧職域年金部分と民間企業の退職給付との均衡を図る観点から新設された﹁年金払い退職給付﹂を行う。
﹇山崎泰彦 2016年7月19日﹈
﹃関根繁雄著﹃年金一元化後の公務員のあたらしい年金制度――公務員に適用される厚生年金給付・退職等年金給付﹄︵2015・共済組合連盟︶﹄▽﹃関根繁雄著﹃よくわかる共済制度︵医療・年金︶ガイドブック﹄各年版︵共済組合連盟︶﹄▽﹃地方公務員共済年金制度研究会編﹃地方公務員共済年金制度の解説﹄各年版︵ぎょうせい︶﹄
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共済組合
きょうさいくみあい
mutual benefit association
互助的救済組合のこと。共済とは相互扶助,相互救済を目的とし,主として職業,職場,生活上の地域を同じくする人々が組合を組織し,一定の掛け金を負担して基金をつくり,疾病や死亡などに際して給付を受ける仕組みをいう。17世紀以降イギリスに生れた職人層の友愛組合 friendly societyが発展してきたもの。日本では社会保障制度の未発達を代替する意味もあって,明治40年代に海軍工廠などで官業共済組合が発足し,現在は国家公務員共済組合,地方公務員共済組合,私立学校教職員共済組合,農林漁業団体職員共済組合があり,いずれも強制加入することとなっている。なお,最近は労働組合が組合員の福祉共済を重視し,労働者共済を組織したほか,農業協同組合が取扱う農協共済や全国生活協同組合連合会が扱う県民共済などもある。
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共済組合【きょうさいくみあい】
同一職業に従事する労働者が掛金を拠出し,失業,傷病,死亡,災害などの事故発生に際して相互扶助を行う組織。起源は17世紀後半英国で作られた職人層の友愛組合。日本ではむしろ社会保険の代替物として登場し,現在,国家公務員等共済組合法はじめ各種の共済組合法に基づいて設置されている。
→関連項目共済年金|国家公務員共済組合|障害補償|全国共済農業協同組合連合会
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共済組合
国家公務員、地方公務員等を対象として、一般の社会保険と同様の給付を行うための組織を指します。各省庁ごとの共済組合、都道府県の地域ごとの市町村職員共済組合、私立学校教職員共済組合、農林漁業団体職員共済組合などがあります。
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世界大百科事典(旧版)内の共済組合の言及
【医療保険】より
…船員(漁船乗組員を含む)は[船員保険]に加入するが,この制度は医療保険のみならず年金制度,失業保険を一括して扱う総合的保険制度という特徴をもってきた(ただし,年金制度は86年から厚生年金保険に統合)。公務員関係は[共済組合]であるが,これも年金制度と医療保険をあわせた制度となっている。 まず,民間企業の被用者は健康保険(健康保険法にもとづく医療保険,つまり[組合管掌健康保険]および[政府管掌健康保]険をいう。…
【共済事業】より
…同一の組織に属する者あるいは同一の職業または事業に従事する者が,共済組合,協同組合などの組合を組織し,一定の技術的基盤に立ち,特定あるいは不特定の期間中,経済的な危険や不測の事故に対する相互の救済を目的として行う事業をいう。いろいろな組合により各種の共済が行われており,加入者の自動車事故,傷害,死亡,疾病,火災などに対して給付を行う。…
【年金】より
…日本の公的年金は,従来8制度に分立しているといわれ,三つのグループに大別されてきた。第1は共済組合グループで,主として公務員がこれに属する。第2は厚生年金グループで,民間の給料生活者が対象である。…
※「共済組合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」