日本大百科全書(ニッポニカ) 「国立図書館」の意味・わかりやすい解説
国立図書館
こくりつとしょかん
national libraries
機能
イギリス
アメリカ
ドイツ
1990年10月の東西ドイツ統一の結果、フランクフルト・アム・マインの旧ドイツ図書館Deutsche Bibliothekおよびライプツィヒの旧ドイッチェ・ビュッヘライDeutsche Büchereiが統合して実現したドイツ国立図書館Deutsche Nationalbibliothekのほかに、ベルリン国立図書館Staatsbibliothek zu Berlin(旧、国立プロイセン文化財団図書館)およびバイエルン州立図書館Bayerische Staatsbibliothekがその役割を担っている。
ドイツ国立図書館はドイツ語図書の納本図書館で、蔵書は4000万冊(2020年時点)あり、全国書誌の機械化の実績がある。ベルリン国立図書館は外国研究の中央図書館であり、また、バイエルン州立図書館は戦災を免れたみごとな古書コレクションをもつ。
[藤野幸雄・野口武悟 2021年1月21日]
フランス
歴史的に中央集権の体制をとってきたフランスでは、パリの国立図書館Bibliothèque nationale de France(BNF)が、すべての図書館活動の中心である。起源は15世紀にさかのぼることができ、納本制度を実施し、「全国書誌」を始めたのも世界でもっとも古い。アルスナル図書館Bibliothèque de l'Arsenal、オペラ座図書館Bibliothèque de l'Opéraも組織としては国立図書館に属す。蔵書は約1300万冊(2013年)。
[藤野幸雄・野口武悟 2021年1月21日]
ロシア
国立中央図書館にあたるのはモスクワのロシア国立図書館Российская Государственная Библиотека/Rossiyskaya Gosudarstvennaya Biblioteka(旧、レーニン図書館)であるが、「全国書誌」の仕事はロシア図書院が行っている。ロシア科学アカデミー図書館は全国的に独自のネットワークをつくっている。また旧ソ連邦を構成していて、1991年に独立した各民族共和国にはそれぞれ中央図書館がある。国立図書館は全国の大衆図書館の指導本部で、図書館学の研究機関でもある。複数部の納本を受け取り、その一部は国際交換にあて、外国資料を収集する。蔵書は約2000万冊(2012年)。図書館は全国民に開かれるとのたてまえから、18歳以上であれば、だれでも利用できる。またサンクト・ペテルブルグには、歴史が古く蔵書数1500万冊(2012年)のロシア国立図書館(旧、シチェドリン図書館)がある。
[藤野幸雄・野口武悟 2021年1月21日]
中国
蔵書数約3000万冊(2013年)といわれる中国国家図書館は北京(ぺキン)にある。ここには古書や貴重書を扱う古籍館が設置されている。出版物の納本を受け、「全国書誌」を提供している。セミナーの開催等を通じて、全国の図書館員の養成にもあたっている。
[藤野幸雄・野口武悟 2021年1月21日]
その他
歴史と現在の事情により各国は自分の国にあった国立図書館を設けている。フィンランドでは、ヘルシンキ大学図書館が国立図書館の役目を果たしている。また各国の国立図書館では、国内の図書館ネットワークをいかに組み立てるか、隣接地域または国際的な協力をいかに実現するかが課題である。そのためにチェコでは、首都プラハにあるカレル大学、経済中央研究所図書館等を合体させ、1959年国立図書館を設立。またスカンジナビア四国の図書館の中央事務局であり、地域図書館協力の実をあげているストックホルム(スウェーデン)の王立図書館の例もある。言語を同じくするラテンアメリカ諸国では、書誌刊行、図書館員養成の相互協力も図っている。
[藤野幸雄・野口武悟 2021年1月21日]
国立図書館のコンピュータ化
1990年代に入ると、インターネット上にホームページを設け、どの国からでも情報や目録検索などを可能にしている国立図書館が増えてきた。2000年代以降は、資料そのものを画面上で見ることができる電子図書館サービスの提供も広がっている。情報化の進むなか、出版物のデジタル化やオンラインでの情報検索システムの拡大において、各国の国立図書館の果たす役割は、いっそう増大していくことになろう。
[藤野幸雄・野口武悟 2021年1月21日]
『鈴木平八郎著『国立図書館』(1984・丸善)』▽『藤野幸雄著『現代の図書館――図書館概説』(1998・勉誠社)』▽『国立国会図書館訳・編『21世紀の国立図書館――国際シンポジウム記録集』(1997・日本図書館協会)』▽『藤野幸雄著『アメリカ議会図書館――世界最大の情報センター』(中公新書)』