暫し（読み）シバシ

デジタル大辞泉 「暫し」の意味・読み・例文・類語

しばし【▽暫し】

［副］《「しまし」の音変化》少しの間継続するさま。しばらく。「歓声は暫し続いた」「暫しの別れ」「待て暫し」
[類語]暫しばらく・少し・ちょっと・やや・一時いっとき・一頻ひとしきり・暫時ざんじ・少時しょうじ・寸時・須臾しゅゆ・束の間・時の間・瞬く間・見る間に・刹那・咄嗟とっさ・一時ひととき・半時・寸陰・短時間・一時・一時的・かりそめ・短日月・短時日・一朝・一朝一夕・寸刻・寸秒・片時かたとき・瞬時・瞬間・一瞬・数刻・たまゆら・須臾しゅゆ・電光石火・はかない・あっと言う間・間髪を容いれず

しまし【▽暫し】

［副］《上代語》「しばし」の古形。
「奈呉の海に舟―貸せ沖に出でて波立ち来やと見て帰り来む」〈万・四〇三二〉

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精選版 日本国語大辞典 「暫し」の意味・読み・例文・類語

しば‐し【暫し】

 

(一)〘 副詞 〙 ( ﹁しまし︵暫━︶﹂の変化した語 )
 (二)(イ) 限られた短時間内の意を表わす。ちょっとのま。少しの間。わずかの時間。暫時。当分。
(一)[初出の実例]﹁且(シハシ)待ちたまへ。吾有所言(ものまうさむ)﹂(出典‥日本書紀︵720︶景行二七年一二月︵寛文版訓︶)
 (二)﹁いささかに雨降る。しばしありてやみぬ﹂(出典‥土左日記︵935頃︶承平五年一月一三日)
 (三)(ロ) ( 相手の行動を制止させるのに用いる ) しばらく待て。
(一)[初出の実例]﹁陶山、暫(シバシ)と制しけり﹂(出典‥太平記︵14Ｃ後︶八)

暫しの語誌


(1)上代には﹁しまし﹂﹁しまらく﹂があり、その﹁しまし﹂が中古以降転じて﹁しばし﹂となった。ほぼ同時に﹁しまらく﹂から転じた﹁しばらく﹂も併用されるが、和歌や女流文学などの和文にはもっぱら﹁しばし﹂が用いられ、漢文訓読体では﹁しばらく﹂が用いられた。
(2)中世以降になると﹁しばし﹂は雅語としては残るが、口語としては衰えて、﹁しばらく﹂が専用されるようになる。なお、中古以降、類義語﹁とばかり﹂ももっぱら和文で用いられた。
 

しま‐し︻暫し︼

 

(一)〘 副詞 〙 ( ﹁しばし﹂の古形 ) 限定された少時間内の意を表わす。わずかの間。少時。当分。しばし。
(一)[初出の実例]﹁ほととぎす間(あひだ)之麻思(シマシ)置け汝が鳴けば吾が思ふ心いたも術無し﹂(出典‥万葉集︵8Ｃ後︶一五・三七八五)
 (二)﹁﹃父(てて)よしまし、今行くは﹄とて︿略﹀山路をさして行くところに﹂(出典‥御伽草子・高野物語︵室町末︶)
  

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