デジタル大辞泉
「検査役」の意味・読み・例文・類語
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けんさ‐やく【検査役】
(一)〘 名詞 〙
(二)① 検査をする役目。また、その人。
(一)[初出の実例]﹁当然来るべき筈のものが来た。検査役の手で一切が明るみに出てしまったのである﹂(出典‥鳥羽家の子供︵1932︶︿田畑修一郎﹀)
(三)② 株式会社の設立手続きまたは営業や財産などの状況調査を行なう臨時的な役員。裁判所または株主総会などにより選任される。
(一)[初出の実例]﹁正副社長、常議員、検査役等の重役に関する事項を議定し﹂(出典‥東京日日新聞‐明治二一年︵1888︶三月二四日)
(四)③ 大相撲の審判委員の旧称。勝負検査役。
(一)[初出の実例]﹁協会の重役には、取締二名、検査役八名あり﹂(出典‥東京風俗志︵1899‐1902︶︿平出鏗二郎﹀下)
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検査役 (けんさやく)
株式会社または有限会社で,取締役の提出した書類,監査役の報告書類の調査などのため臨時に選任されることのある機関。たとえば,会社を設立したり増資をするときに,一定規模以上の現物出資などがある場合は,裁判所の選任する検査役の検査を受けなければならない︵商法173,181条,280条ノ8︶。会社の経営が不正に行われている疑いがあるときには,発行済株式総数の10分の1以上を持つ株主が裁判所に申し立て,会社の業務・財産状況を調査する検査役を選任してもらうことができる︵商法294条。なお,有限会社法45条︶。株主総会の招集手続や議事が適正に行われそうにない場合などにも,6ヵ月前から100分の1以上の株式を持つ株主が裁判所に申し立て,それらの手続を調査する検査役を選任してもらうことができる︵商法237条ノ2︶。このほか,株主総会が検査役を選任することもある。たとえば,取締役が総会に提出した書類などを調査する必要があるような場合である︵商法238条。なお,有限会社法41条︶。員数や資格に制限はない。裁判所は弁護士や公認会計士を検査役として選任することが多い。
執筆者‥龍田 節
相撲の検査役
相撲の検査役現在は審判委員という。1968年にそれまでの勝負検査役を改称した。土俵下に4人または5人すわり,行司の勝負判定に疑問が生じたとき︿ものいい﹀をつけ,土俵上で協議し,行司の判定をより正しくする役目。現在定員20人。ほかに部長1人,副部長2人をおく。
執筆者‥池田 雅雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
検査役
けんさやく
法定の事項を調査するために臨時に選任される株式会社の機関。一定の要件を備える者による申立てにより、裁判所が選任する。ここでいう法定の事項の調査とは以下の三つである。(1)変態設立事項・現物出資の調査︵会社法33条、207条、284条︶、(2)総会の招集手続・決議方法の調査︵同法306条、325条︶、(3)会社の業務・財産状況の調査︵同法358条︶。(1)は発起人や会社に申立て義務があり、(2)(3)は一定の少数株主に申立て権限があり、(2)は会社も申立てができる。検査役の資格は法定されていないが、弁護士が選任される場合が多い。
旧商法では株主総会で選任する検査役があったが、会社法では、それは検査役とよばれていない。株主総会等の決議によって、株主総会提出資料等の調査者を選任することが認められている︵同法316条、94条、325条︶。このほかに、特別清算における会社の業務・財産状況の調査等をするため、一定の者の申立てまたは職権により裁判所が選任する調査委員制度もある︵同法522条、533条︶。
﹇戸田修三・福原紀彦﹈
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検査役【けんさやく】
(1)株式会社の設立手続または株式会社・有限会社の業務および財産状況の調査を権限とする臨時的監督機関。計算の正否および一定手続または業務執行の適法性のみを調査する。その選任は取締役,少数株主等の申立てまたは職権により裁判所がする場合と株主総会,創立総会がする場合とがある。会社との関係は準委任。(2)相撲の勝負検査役。土俵の四方にすわって勝負を見守り,行司の誤判を正す。年寄のうちから選任。現在は審判委員。
→関連項目変態設立|発起設立
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検査役
けんさやく
inspector
の調査などを職務とする臨時的監査機関。法定の場合に臨時に選任されるが,創立総会,株主総会,種類株主総会が選任する場合と,裁判所が選任する場合とがある。
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世界大百科事典(旧版)内の検査役の言及
【株式会社】より
…その後,発起設立であれば発起人による払込取扱銀行に対する株金の払込み,発起人による取締役・監査役の選任が行われ(170条),取締役・監査役による設立手続の調査(173条ノ2)が行われた後,本店所在地で設立登記を行うことにより会社は成立する(57,188条)。定款に現物出資,財産引受けなどの変態設立事項を定めることもできるが(168条1項5号,6号),それには原則として裁判所の選任する検査役の調査を経なければならないため(173条),実際にはあまり利用されない。募集設立であれば,上記のほか,発起人以外の株主を募集し(174~179条),創立総会を招集して取締役・監査役の選任等を行う(180~187条)だけ制度が複雑になる。…
※「検査役」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」