デジタル大辞泉
「比丘」の意味・読み・例文・類語
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びく【比丘】
(一)〘 名詞 〙
(二)① ( [梵語] bhikṣu [パーリ語] bhikkhu の音訳。苾蒭(びっしゅ・びしゅ・びっすう)とも音訳 ) 仏語。出家して具足戒を受けた男子。転じて、一般に僧をいう。乞士(こっし)。比丘僧。
(一)[初出の実例]﹁但是時に針間国に、有脱衣高麗老比丘名恵便与老比丘尼名法明﹂(出典‥東南院文書‐天平宝字五年︵761︶造法華寺金堂所解案)
(二)[その他の文献]︹大智度論‐三︺
(三)② 誤って、比丘尼(びくに)をいう。
(一)[初出の実例]﹁此びくおやの追善をなされたくおぼしめせども、ひんせんの身なればかなはず﹂(出典‥虎明本狂言・牛博労︵室町末‐近世初︶)
(四)③ 女子を卑しめていう。小娘。
比丘の補助注記
もとの梵語は、﹁乞士﹂﹁除士﹂﹁破煩悩﹂﹁除饉﹂﹁怖魔﹂などとも訳され、狭義には﹁乞食﹂﹁托鉢修行者﹂をいう。
びく︻比丘︼
(一)〘 名詞 〙
(二)① 和船の船尾両側に突出する寄掛(よりかか)りの別称。
(一)[初出の実例]﹁ひくの長さ、床の并(はば)弐木半にきり申候﹂(出典‥瀬戸流秘書︵1663︶船之法筒之目録)
(三)② 特に、①の先端。
(一)[初出の実例]﹁一、びく之間 壱丈壱尺﹂(出典‥船作法覚日記︵1824︶千石積之法)
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比丘 (びく)
サンスクリットのbhikṣu,パーリ語のbhikkuの音訳。︿苾蒭﹀とも書く。乞士︵こつし︶,除士,破煩悩と訳される。仏教に帰依して出家入道した男子で,女子は比丘尼である。沙門︵しやもん︶,桑門というのもおなじで,沙弥︵しやみ︶,沙弥尼が20歳に達して具足戒を受ければ比丘,比丘尼となる。比丘となれば乞食︵こつじき︶して仏道修行するので,乞食する︵bhikṣ︶者の意で比丘と呼ばれるのである。その生活は,在家を出て髪をそり,三衣一鉢のほかいっさいの所有を捨て,食は托鉢により,衣は捨てられた布を拾った糞掃衣︵ふんぞうえ︶を着る。また樹下石上を住居とした。初期の仏教教団︵僧伽︶は,このような比丘と比丘尼のほかに在家信者の優婆塞︵うばそく︶・優婆夷︵うばい︶の四衆から成り立っていた。しかし仏教が北方の寒冷地帯に広まり,帝王の厚い保護を受けるようになると,比丘の生活も変化した。大伽藍に住み,美衣美食をむさぼるようになって,ただ戒律僧だけが比丘の伝統をまもった。また日本では,山岳修行者が比丘以上の禁欲生活を送るようになった。
→僧
執筆者‥五来 重
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比丘
びく
仏教における男性の出家修行者。女性は比丘尼(びくに)。仏教僧。パーリ語のビックbhikkhuの音写。サンスクリット語ではビクシュbhik
uという。もとは、﹁食を乞う者﹂の意。インドで紀元前約6世紀ごろから、出家して托鉢(たくはつ)する修行者が現れ、釈迦(しゃか)もその一人であった。仏教教団の成立とともに、比丘はそのもっとも重要な成員として、信徒の指導と教団の維持を果たす。出家して綿密な戒︵具足(ぐそく)戒とよばれる︶を受け、それを保ち続け、仏道修行に専念して、無一物であるために、午前のみの食事などは在家信者の布施(ふせ)によったところから、この名がある。
﹇三枝充悳﹈
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比丘【びく】
サンスクリットのビクシュニーの音写,乞食(こつじき)するものの意。乞士・破煩悩(ぼんのう)などとも訳。出家して具足戒を受けた男子。これに対して女子を比丘尼といい,尼・尼僧と通称。日本では中世以降,熊野に詣(もう)で仏法を絵や音楽で勧めて歩いた尼を歌比丘尼・勧進比丘尼・熊野比丘尼などと称したが,江戸時代には俗化して売女となった。
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比丘
びく
パーリ語で bhikkhu,サンスクリット語で bhikṣuの音写。仏教に帰依して,具足戒を受けた成人男子の称。修行僧。 (→四衆 )
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比丘
びく
出家得度 (とくど) して具足戒をうけた男子の僧侶
具足戒は通常250戒。出家して十戒を守っているが,具足戒をうけない者は沙弥 (しやみ) という。なお,女子の場合は比丘尼という。
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普及版 字通
「比丘」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典(旧版)内の比丘の言及
【サンガ】より
…【山崎 元一】 スリランカ系の[上座部]仏教が広まった東南アジアでは,もっぱら出家者教団のみをサンガと呼び,在家者はこれに含めないのが普通である。パーリ律227戒を守るビク(比丘)と,20歳未満で10戒のみを守るサーマネーラ(沙弥)をその成員とする。サンガは,ただ1人の首長(サンガラージャ)によって統轄される全国規模の統一組織である場合(タイ),複数の自立的出家教団(ニカーヤ)が並列的に存在し,それらを統一する上部機構としてのサンガ組織を欠く場合(現在のスリランカ,ミャンマーなど)など,その存在形態は一様でない。…
【出家】より
…仏門に入って僧尼となることである。仏教徒の集団を構成する七衆のうち在家の[優婆塞︵うばそく︶・優婆夷]︵うばい︶を除く,[比丘]︵びく︶,[比丘尼],式叉摩那︵しきしやまな︶,[沙弥]︵しやみ︶,沙弥尼の五衆は出家のなかに入る。鬚髪︵しゆはつ︶を剃り,墨染など壊色︵えしき︶に染めた衣をまとう状態になるので剃髪染衣︵ていはつぜんえ︶といい,とくに王侯貴族の出家は落飾︵らくしよく︶という。…
【僧】より
…サンガは元来,集団,共同体の意味で,修行者の集り,教団を指すが,中国では転じて個々の修行者を僧とよぶにいたった(その複数形をあらわす僧侶もまた,日本では個人を指す語に転化した)。
﹇インド﹈
教団の構成員は出家修行者たる比丘︵びく︶,比丘尼︵びくに︶と在家信者たる優婆塞︵うばそく︶,優婆夷︵うばい︶の4種で,合わせて四衆とよぶ。また,修行者のうち未成年者を沙弥︵しやみ︶,沙弥尼といい,女性で入団1年未満のものを式叉摩那︵しきしやまな︶とよび,これらを別出して七衆ともいう。…
※「比丘」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」