デジタル大辞泉
「浮世風呂」の意味・読み・例文・類語
うきよぶろ【浮世風呂】[書名]
1813︶刊。銭湯に集まる江戸庶民の会話を通して、当時の生活の諸相を描いている。
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うきよ‐ぶろ【浮世風呂】
(一)[1] 〘 名詞 〙 ( ﹁浮世﹂は当世・享楽の意 )
(一)① 近世初期、湯女(ゆな)と称する遊女を置き、客に入浴・遊興させた遊女屋。
(一)[初出の実例]﹁江戸のはしばしなるあちこちにて妓女をもて世をわたりし茶屋︿注﹀世にこれを浮世風炉といへり﹂(出典‥随筆・兎園小説別集︵1826‐32︶中)
(二)② 当世の浴場。銭湯。
(一)[初出の実例]﹁神祇釈教恋無常みないりごみの浮世風呂(ウキヨフロ)﹂(出典‥滑稽本・浮世風呂︵1809‐13︶前)
(二)[2] 江戸後期の滑稽本。式亭三馬作。北川美丸、歌川国直画。四編九冊。﹁諢話(おどけばなし)﹂の角書(つのがき)を持つ。文化六~一〇年︵一八〇九‐一三︶刊。江戸町人の社交場でもあった銭湯での会話や老若男女さまざまな人物像を活写して、庶民生活の種々相を浮きぼりにしている。
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浮世風呂 (うきよぶろ)
滑稽本。4編9冊。式亭三馬作。北川美丸︵よしまる︶・歌川国直画。前編1809年︵文化6︶,二編10年,三編12年,四編13年刊。外題,内題は︿諢話︵おどけばなし︶浮世風呂﹀。前編と四編が男湯,二編と三編が女湯の世界である。︽浮世床︾とともに三馬の滑稽本の代表作である。江戸庶民の社交場であった銭湯を舞台に,そこに登場する雑多な人物の生態を,会話を中心に克明に描いている。男湯と女湯に分け,各編の季節に変化をもたせている。作者は咄家︵はなしか︶三笑亭可楽の銭湯の落語にヒントを得て執筆したと言っているが,前編は伊藤単朴作の教訓的滑稽本︽銭湯新話︾︵1754︶と,山東京伝作の黄表紙︽賢愚湊︵けんぐいりこみ︶銭湯新話︾︵1802︶の影響が大きい。落語の話芸と洒落本以来の描写の技術を吸収して,徹底した平面描写で類型的な江戸の庶民像を描いている。
執筆者‥神保 五弥
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浮世風呂
うきよぶろ
式亭三馬(しきていさんば)作の滑稽本(こっけいぼん)。4編9冊。1809~13年︵文化6~10︶刊。﹃諢話(おどけばなし)浮世風呂﹄とも。江戸庶民の社交場であった銭湯を舞台に、そこに集まる雑多な人物の動作を、会話を主として克明に描いた作品である。前編・四編は男湯、二編・三編は女湯、また三編は正月、他は秋の季節とし、各編早朝から夕刻に至る間の情景を写す。凡例によれば、作者が三笑亭可楽(さんしょうていからく)の銭湯に関する落語を聞き、本屋の勧めで前編を執筆したというが、前編には山東京伝(さんとうきょうでん)の黄表紙(きびょうし)﹃賢愚湊銭湯新話(けんぐいりこみせんとうしんわ)﹄の影響が指摘できる。各編とも一貫した筋はなく、ときにわざとらしい趣向もあるが、人物の行動を克明に写して、おのずから笑いが確保されている。﹃浮世床﹄とともに三馬の代表作で、徹底した写実は国語資料としての価値も大きい。
﹇神保五彌﹈
﹃中村通夫校注﹃日本古典文学大系63 浮世風呂﹄︵1957・岩波書店︶﹄
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浮世風呂
うきよぶろ
作。4編9巻。前編文化6 (1809) 年,二編同7年,三編同9年,四編同10年刊。前編は男湯,二編と三編は女湯,四編は男湯の補遺という構成。三馬の出世作。初代三笑亭可楽の銭湯の落語や,山東京伝の黄表紙﹃賢愚湊 (けんぐいりこみ) 銭湯新話﹄ (02) などが着想に影響している。江戸下町の銭湯という庶民の社交場を舞台に,朝湯,昼湯,午後と時間を定め,そこに来る客同士のやりとりをいきいきと描く。中風の男,職人,隠居,医者,番頭,子供,女郎上がりの女,おしゃべりな女房,江戸の女,上方の女など,それぞれの登場人物を,風俗,動作の描写は軽くし,克明な会話の写実に重点をおくことによって性格づけようとしている。
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浮世風呂【うきよぶろ】
―1813年刊。角書(つのがき)︿諢話(おどけばなし)﹀。前編と4編が男湯,2編・3編が女湯の世界で,銭湯の客の会話を通し江戸市民たちの生態を生き生きと描く。︽浮世床︾と並ぶ三馬の代表作。
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浮世風呂
うきよぶろ
江戸後期の滑稽本。4編。式亭三馬作,歌川国直・北川美丸画。前編「男湯」1809年(文化6),2編「女湯」10年,3編「女中湯之遺漏」12年,4編「男湯再編」13年刊。歌川豊国宅で三笑亭可楽の銭湯の落語を聞いて,その「柳巷花街の事を省きて俗事のおかしみを増補」したものと巻頭でのべている。湯屋を舞台としていろいろな人物の動作や会話を徹底的に精密に描写する。先行作品として伊藤単朴(たんぼく)の談義本「銭湯新話」(1754)や山東京伝の黄表紙「賢愚湊銭湯新話(けんぐいりこみせんとうしんわ)」(1802)などがある。「新日本古典文学大系」所収。
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浮世風呂
うきよぶろ
江戸後期,式亭三馬の滑稽本
1809〜12年刊。4編9冊。髪結床・芝居小屋と並んで江戸庶民の社交機関であった銭湯を舞台として,落語的構成と話術を用いて,生活の種々相を写実的に描出した。三馬の代表作で滑稽本の名作にあげられる。『浮世床』の姉妹編。外題は『諢話 (おどけばなし) 浮世風呂』。
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『浮世風呂』
式亭三馬作。江戸後期の滑稽本。文化六(一八〇九)年から文化一〇(一八一三)年にかけて刊行。江戸庶民の社交場でもあった銭湯を舞台に、様々な人物の多様なやりとりを通じて、生活、風俗の諸相を写し出す。
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世界大百科事典(旧版)内の浮世風呂の言及
【将棋】より
…江戸時代の後半になると町人,職人,農民にも将棋は広まり,都市部の湯屋(公衆浴場)の階上は将棋会所のようであった。将棋の流行を反映した戯作として式亭三馬の《浮世風呂》(1809)はその代表的なもので,庶民の将棋の楽しみをこっけいに描いている。また,川柳に将棋の機微を扱った作品が多数つくられた。…
※「浮世風呂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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