情報処理の一分野で、知識を利用するコンピュータシステムに関する工学をいう。ファイゲンバウムEdward A. Feigenbaum(1936― )がアメリカのスタンフォード大学における「ヒューリスティック(発見的)プログラミング研究プロジェクト」(HPP)の成果に基づいて提唱した。
[米澤明憲・大澤一郎]
プロダクション・ルールに基づいて動作するシステムは一般にプロダクションシステムとよばれ、その原型は1943年に数学者ポストE. Postによって提案された。プロダクションシステムは、プロダクション・ルールの集合を保持する「プロダクション・メモリー」、プロダクション・ルールによって参照あるいは更新される事実の集合を記憶する「ワーキング・メモリー」、およびシステムの実行を制御する「インタープリター」から構成される。一般にプロダクションシステムは、ワーキング・メモリー内に記憶されている事実が、あるプロダクション・ルールの条件部を満足すると、そのルールの行動部の指定に従ってワーキング・メモリーを書き換えるという動作をインタープリターの制御によって繰り返す。DENDRALやMYCINなどの多くのエキスパートシステムがプロダクションシステムをベースにして作成されている。
[米澤明憲・大澤一郎]
このように、知識工学の成果に基づいて知識を利用した強力な実用システムがいくつかの専門領域において開発されているが、一方では、実用になるシステムの開発がそれほど容易ではないことも認識されてきている。このことから、人間のもつ知識のあいまい性をモデル化する「ファジー理論」、知識の非単調性を表現する「非単調論理」、定性的に推論を行う「定性的推論」、および知識のモジュール性を利用して知識の適切な分散を行う「オブジェクト指向」などの新しい知識表現モデルの枠組みが研究されている。また、システムが必要とする知識を効率よく獲得する方法として、システム自体が自動的に知識を獲得あるいは合成する「学習」に関する研究も行われている。
[米澤明憲・大澤一郎]
『上野晴樹著『知識工学入門』(1989・オーム社)』
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…これは,人工知能研究の中で開発された理論と技術の現実問題への適用を目指す点,対象領域の専門家の知識が問題解決に重要な役割を果たす点において,それ以外のコンピューターシステムと異なっている。エキスパートシステムに関する研究は,知識工学と呼ばれ,その特徴は〈知識は力である〉というスローガンに集約されている。 エキスパートシステムでは,従来ならプログラムに埋め込まれる問題解決に必要な専門知識をプログラムの外で明示的に記述する。…
※「知識工学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
タコノキ科の常緑高木。小笠原諸島に特産する。幹は直立して太い枝をまばらに斜上し,下部には多数の太い気根がある。葉は幹の頂上に密生し,長さ1〜2m,幅約7cmで,先は細くとがり,縁には鋭い鋸歯(きょし)...