デジタル大辞泉
「老視」の意味・読み・例文・類語
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出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
老視(老眼)
ろうし(ろうがん)
Presbyopia
(眼の病気)
老視とは、年をとるにしたがって近くの物が見えにくくなることをいいます。近くの物を見る時には、眼は水(すい)晶(しょ)体(うたい)︵カメラのレンズのようなはたらきをする部分︶の厚みを増加させる﹁調節﹂という機能によりピントを合わそうとします。しかし、年齢とともに水晶体は硬くなるので変形しにくくなります。そのため、近くの物にピントを合わせられなくなります。調節力の変化を図74に示しますが、読書に必要な調節力はおよそ3~4D︵ディオプターという単位で表す︶なので、だいたい45歳くらいから老視の症状が出てきます︵正視の場合︶。
遠視の人は近くを見るのにより調節力が必要なため老視になる年齢が早く、反対に近視の人では遅めになります。よく﹁近視の人は老眼にならない﹂と誤解されていますが、正しくは﹁元々近くにピントが合っているので調節する必要がない﹂ために、﹁見かけ上、老眼になっていない﹂ようにみえるだけなのです。
老視に気がつく症状としては、①本や新聞の字が見えにくくなる︵とくに夕方や雨の日など薄暗いところで︶、②眼が疲れやすい、③頭痛・眼痛、④肩こり、⑤近見作業中に遠くを見る時や、遠くから近くに目を移した時にピントが合いにくい、などがあります。
眼鏡やコンタクトレンズで調節力の衰えを補います。老眼鏡︵近用眼鏡︶には、近用のみのタイプ︵単焦点レンズ︶と遠近両用タイプ︵多焦点レンズや累進焦点レンズ︶があります。比較的長時間の近見作業が多い人は、近用のみのタイプを使用するほうが疲れません。
一方、遠近両用タイプはレンズの上の部分で遠くを、下の部分で近くを見るようにデザインされています。近視でかつ老眼の人には大変便利なのですが、近見時には眼鏡の下方に視線をずらさなければいけない、はっきり見える視野が狭いので目が疲れやすい、また、階段を降りる時はどうしても視線が下にずれるため、足元が見えにくくて危ないという欠点があります。
老眼鏡は、個人の屈折状態、近見作業距離に合わせて作成された眼鏡処方箋に基づいたものを使用するのが理想です。しばしば、﹁市販の眼鏡︵プラス1.0D、プラス2.0Dなどと記載されて売られているような︶を使用してもかまわないでしょうか?﹂と聞かれますが、市販の老眼鏡では乱視の矯(きょ)正(うせい)はされませんし、屈折と近見作業距離の兼ね合いや、眼の左右のバランスが考慮されていないため、やはり快適な近見視力が得られにくいと考えられます。あくまで﹁間に合わせ眼鏡﹂と考えるほうがよいでしょう。
また、眼鏡処方箋を作成してもらう際に眼の検査・診察を受けて、老視以外に視力低下の原因がないかどうか確かめるようにすることも大切です。
近年、若いころからコンタクトレンズを装用している世代が老視を自覚する40代になってきたことにより、遠近両用のコンタクトレンズも一般的になってきています。しかし、遠近両用のコンタクトレンズは遠くも近くも見えるとはいえ、単焦点のコンタクトレンズよりは﹁見え方の質﹂が悪いため満足できない人もいます。どのくらい近見作業が必要なのか、車を運転するかどうかなど、個人の生活環境が遠近両用コンタクトレンズになじめるかどうかに大きく影響しているようです。
二宮 さゆり
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
老視
ろうし
presbyopia
老眼ともいう。水晶体の弾性が減弱し,近くを見るために必要な調節を営むことができない状態をいう。老化現象の一つ。水晶体は年齢とともに硬さを増し,網膜の後方でしか結像しなくなるので,読書や近接作業では明視できなくなる。凸レンズのめがねで矯正する。
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世界大百科事典(旧版)内の老視の言及
【屈折異常】より
… 調節力は年齢によって違い,子どもでは大きく,年をとるにしたがって小さくなる。中年になって,水晶体の弾性が弱まって,近いところを見るときに必要な調節ができなくなった状態を老視(一般には老眼)という。42~43歳で発生する人が多い。…
【目∥眼】より
…42~43歳になると調節に必要な水晶体の弾性が低下し,近いところを見るときに水晶体が十分に厚くならず,近くが見えにくくなる。これが老視(いわゆる[老眼])である。調節が行われるためには神経が正常であるとともに水晶体の弾性も必要である。…
【眼鏡】より
…︿両眼の前に常用するに適合した光学器械﹀もしくは︿レンズまたは平板を細工して眼前に掛け視力の増進または眼の保護に用いるもの﹀と定義される。視力の増進とは,近視,遠視,乱視等の[屈折異常]を矯正したり,老視(俗に[老眼]という)による調節の衰弱を補ってやったりして,生活上不便をきたさない視力を得るという意味である。
﹇視力の増進用の眼鏡﹈
(1)近視 近視は屈折に比して眼軸が長いか,眼軸に比して屈折が強いかによって平行な入射光線が網膜前方に結像するような眼である。…
【老眼】より
…医学的には老視presbyopiaという。年をとって近くのものが見にくくなる現象。…
※「老視」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」