デジタル大辞泉
「自己資本」の意味・読み・例文・類語
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じこ‐しほん【自己資本】
- 〘 名詞 〙 企業の総資本のうち株主が持分を有する資本。企業の株主が出資した部分と、企業の経営活動の結果生み出された利益のうち、企業内に留保された部分とからなる。内部資本。〔国民百科新語辞典(1934)〕
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自己資本 (じこしほん)
Eigenkapital[ドイツ]
従来の一般的な用語法としては,企業に投下されている総資本のうち,貸借対照表資本の部に記載される純資産額︵=資産総額-負債総額︶に相当する部分をいう。これに対して,総資本のうちのそれ以外の部分,すなわち負債総額に相当する部分は,他人資本Fremdkapitalと称される。こうした用語法は,つぎのような考え方に由来する。すなわち,企業がさまざまな源泉から調達しかつさまざまな形態で運用している資金を,その調達源泉の局面からみて︿総資本﹀または単に︿資本﹀︵広義︶ととらえるとともに,その運用形態の局面からみて︿総資産﹀または単に︿資産﹀ととらえたうえで,その資本︵広義︶については,さらに,これを事業主ないし株主という資本主の観点からみて,資本主みずからが拠出した部分もしくは資本主みずからに帰属するとみなされる部分を︿自己資本﹀と称し,それ以外の部分は他人が拠出した部分もしくは他人に帰属するとみなされる部分であるから,これを︿他人資本﹀と称する,という考え方である。このような考え方は,資産=他人資本︵負債︶+自己資本︵狭義の資本︶という恒等式,すなわち貸借対照表等式に象徴されている。これは,株式会社の比重の高まりという企業形態の変化がもたらした企業観の変化を反映する考え方といえよう。というのは,会社財産と株主の私有財産とが明確に識別されるようになった結果,負債はもはや資本主としての株主の消極財産とは考えられなくなり,会社それ自体にとっては,株主からの拠出資本と同様に資金調達の一つの方法でしかない,と考えられるようになったからである。この意味で,企業が社会のさまざまな人々から資金を調達する局面のすべてを広義の資本としてとらえ,これを自己資本と他人資本とに2大別する考え方は,相対的にみて,近代的な考え方であるといいうる。
現代企業の資本構成についての考え方
しかしながらこの考え方は,高度に発達した株式会社中心の現代企業社会では,その重要性をしだいに失いつつあるといわなければならない。というのは,その考え方は,自己資本と他人資本という用語法に象徴されているように,︿企業は資本主の所有物である﹀という資本主中心の企業観を相変わらず継承しており,純資産額のすべてを資本主の持分︵請求権︶とみなす考え方に立脚している。しかし,高度に発達した株式会社のなかには,企業の支配構造が大きく変化し,株主が無機能資本家と化したために,そのような企業観ないし資本構成観がもはや適合しなくなっている会社も生じているからである。そのような会社にあっては,株主持分は純資産額の一部分である拠出資本︵株式資本金と株式払込剰余金︶を中心にして限定的に考えられ,それ以外の純資産額は,会社の存続を前提にして,会社それ自体の持分︵主体持分︶として考えられるようになってきた。この結果,現代企業の資本構成についての考え方としては,大別して,︵1︶流動負債から構成される短期調達資本︵資金︶,︵2︶長期借入金,社債,株主からの拠出資本などから構成される長期調達資本︵資金︶,および︵3︶企業が経営活動を通じてみずから稼得した利潤を主たる源泉とする自己捻出資本︵資金︶,の三つに分けることが合理的であろう。
日本企業の自己資本比率
従来,日本の企業は欧米先進諸国の企業に比べて自己資本比率が極端に低いことが指摘され,その比率を高めるように資本構成を是正すべきであるとの声が大であった。しかし上述した長期調達資本︵資金︶と自己捻出資本︵資金︶との合計額の構成比率を求めて国際比較してみると,各国の企業間に大きな差は生じていない,ということが明らかになる。自己資本比率について大差が生じるのは,各国の企業をとりまく諸条件︵たとえば,各種の金融制度,資本市場の発達の度合,主として資本コストに影響する税制,産業構造,投資リスクに対する嗜好を中心にした国民性など︶の違いが複合して働くとともに,この比率の存在意義を減少させるような企業支配構造の変化の度合にも違いがあるからであろう。これに対して,企業が長期的に運用しうる資金の調達度合をみれば大差が生じていないということは,日本の企業だけが不合理な資金の調達・運用を行っているわけではないことを物語るとみてよいであろう。
→資本 →負債
執筆者‥杉本 典之
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自己資本
じこしほん
自己資本とは、会社(企業)の総資本のうち、資本主に帰属する部分をいう。株式会社において自己資本は株主資本という。法的には、自己資本概念は広義から狭義まで、次の三つに分けて考えられる。(1)貸借対照表の純資産の部に計上される全額とする(会社計算規則73条1項3号)。(2)純資産の部の株主資本に係る項目に計上される全額とする(同規則76条1項1号イ)。(3)この株主資本に係る項目のうち資本金の項目に計上される全額とする(同規則76条2項1号)。これに対し、会計学上では、単なる資本をもって自己資本とすることが多い。なお自己資本をとくに他人資本と対比させていう場合があり、この場合は貸借対照表の純資産の部が自己資本に、負債の部が他人資本に相当するものと考えられる。このように純資産および負債という言い方をせず、あえて自己資本および他人資本という呼び方をする場合は、ともに貸借対照表貸方に表示される企業の資金の調達源泉として、同質のものと考えるからである。すなわち資産および負債を、正および負の財産とみて両者の差額を自己資本と考えるのではなく、他人資本および自己資本の双方を、資金の運用形態である資産と対置して考えるのである。
[岸田雅雄]
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自己資本
狭義において、株主資本と同義である。自己資本は、貸借対照表における貸方項目を構成する要素のひとつで、貸方項目は、他人資本と自己資本に分けられる。自己資本は、他人資本とは異なって、株主資本など中核となる自己資本がそうであるように、返済の義務がなく、また確実性があるものである。経営の安定性上、自己資本の充実は、株主等の出資者に対して信認を確保するために、非常に重要である。近年は、高度な金融技術を使うなど、自己資本の要件を満たした新しい自己資本が創出され、これらの自己資本に占める比率が上昇している。日本においては、自己資本は、本来確実性があるものでなければならないが、税効果資本などそうではない自己資本が、占める比率が上昇しており、懸念事項となっている。BIS規制の定義による自己資本は、商法の計算書類規則である「資本の部」に、保有する株式の含み益の一定割合などを加えたものをいう。詳細は、資本金・法定準備金・利益剰余金などの「基本的項目」(Tier1)と、有価証券含み益の45%・不動産含み益の45%・貸倒引当金・劣後ローンなどの「補完的項目」(Tier2)を加えたものの総称をいう。銀行は、平成16年から、自己資本比率規制上、時価で評価した対象株式の保有総量(評価損が生じている場合には、これを控除)について、基本的項目(Tier1)を超える株式を保有できなくなる。このことは、現在、銀行が持ち合い株式の売却を急いでいる理由ともなっている。
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自己資本
じこしほん
owner's capital
企業の資金調達を分類する概念で,他人資本と対をなす。出資者から調達した資本金と,内部留保 (剰余金) から成る。借入金や社債などの外部資本と違い,返済の義務はない。一方,資本金も外部から調達したものであるとの見地から,これを他人資本とともに外部資金とし,内部留保のみを内部資金として分類する方法もある。
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世界大百科事典(旧版)内の自己資本の言及
【株式会社】より
… 現在の日本においては,他の先進資本主義諸国に比べて,大企業における経営者支配の傾向が顕著に強いと指摘する見解もある。その原因としては,諸外国では,機関投資家が大株主として存在し,機関投資家は利益配当と株価の値上がりを期待しているので,そうした大株主の期待に反した経営者はTOB([株式公開買付け])等により経営者としての地位を追われる危険にさらされているため,株主の利益を最優先に考えざるをえないのに対して,日本の大株主はおもに取引先である事業法人・金融機関であるため,大株主は取引の機会さえ確保できれば配当・株価に関しては無関心であり,むしろ大会社の経営者は株式安定工作と呼ばれる[株式相互保有]を通じて互いに地位を保障しあっているため,株主の利益を代表する立場の強力な者がいないこと,経営者と従業員が一体という日本的経営の理念からいくと株主は会社内ではよそ者であって力が弱いこと,あるいは自己資本比率が低いため金融機関の力に比べて株主の力が弱いこと,等があげられている。(3)株主の利益を守るための法制度 経営者支配のもとにある大規模な株式会社では,大衆投資家である株主の利益が適切に守られないおそれがある。…
【資本】より
…この意味の資本は従来,別のことばでもさまざまに呼称されてきた。たとえば純資産([資産]と[負債]との差額という意味),正味財産(資産としての積極財産と,負債としての消極財産との差額という意味),自己資本(資本主みずからが拠出し,みずからに帰属する資本という意味。これに対し負債を他人資本といい,両者を合わせて総資本とし,総資産に対比させる),資本主持分(資本提供者の一人としての資本主にかかわる持分という意味。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」