デジタル大辞泉 「説話」の意味・読み・例文・類語 せつ‐わ【説話】 ﹇名﹈(スル) 1 人々の間に語り伝えられた話で、神話・伝説・民話などの総称。﹁仏教説話﹂﹁民間説話﹂ 2 話をすること。ものがたること。また、その話。 ﹁口に順いて―することを習わしめ﹂︿中村訳・西国立志編﹀ [類語]昔話・民話・神話・物語・話(はなし)・叙事・ストーリー・お話・作り話・虚構・フィクション・小説・口(こう)碑(ひ)・伝え話・伝説・言い伝え 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「説話」の意味・読み・例文・類語 せつ‐わ【説話】 (一)〘 名詞 〙 (二)① ( ━する ) 口をきくこと。話すこと。ものがたること。また、その話。物語。 (一)[初出の実例]﹁恁麽の説話あらば、仏法、仏道はあきらめず、通ぜざりけるとしるべし﹂(出典‥正法眼蔵︵1231‐53︶仏教) (二)﹁その父それをして口に順て説話することを習はしめ﹂(出典‥西国立志編︵1870‐71︶︿中村正直訳﹀四) (三)② 広く神話、伝説、昔話などの総称。昔話。 (一)[初出の実例]﹁又一義には怨平湖(えんぴんこ)と云て唐土の説話なり﹂(出典‥三体詩幻雲抄︵1527︶) 説話の語誌 (1)中国では、宋代に﹁瓦子﹂と呼ばれる盛り場の演芸場で行なわれた語り芸をいうが、すでに唐代においても、世俗教化のために寺院が催す講筵・説経の場で行なわれる語り芸を称していたと考えられている。 (2)日本では中古・中世を通じてもっぱら①の﹁話す﹂意で用いられていたが、神話・伝説・昔話などの総称としても使われ、現代では﹁今昔物語集﹂などの説話集の類を構成する一話一話を指してもいうようになる。 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
改訂新版 世界大百科事典 「説話」の意味・わかりやすい解説 説話 (せつわ)shuō huà 中国では,まとまった物語を語る話芸を,かつて︿説話﹀と呼んだ。この場合,説話の︿話﹀とは物語を意味する。この語の用例は,すでに隋・唐代︵6~10世紀初め︶に見られるが,文学用語としては,そのような話芸が,専門の芸人によって語られ,芸能として定着した宋代におけるそれをもっぱら指す。 すでに唐代では,寺院などにおける宗教的説法から発展し通俗化した︿俗講﹀または︿変文﹀が行われていたが,宋代になると,商業経済の急速な発達と新しい市民階層の台頭によって,北宋の首都開封や,南宋の首都杭州のような大都会が繁栄し,盛場︵瓦子︶の芝居小屋︵勾欄︶では,簡単な劇や講談,軽業などのさまざまな演芸が演じられた。その中で,もっぱら話芸に属するものを説話,その芸人を︿説話人﹀,またその筆録を︿話本﹀といった。その具体的内容や芸人の名前は,開封のようすを書いた︽東京夢華録︾,杭州に関する記録である︽都城紀勝︾︽西湖老人繁勝録︾︽夢粱録︾︽武林旧事︾の諸書にみえ,とくに︽都城紀勝︾と︽夢粱録︾では,説話を4家に分類している。ただし,その分け方は明確さを欠き,いくつかの解釈が可能であるが,︿小説﹀︿説経﹀︿講史書﹀の3家は,どの解釈によっても共通する。 小説は一名︿銀字児﹀ともいい,市井のさまざまな物語を語る短編の話で,内容によって,さらに煙粉︵恋愛物︶,霊怪,伝奇,公案︵裁判物︶,鉄騎児︵軍記物︶などに細分される。宋・元代の小説の種本とおぼしい︽酔翁談録︾には,当時の小説の題目107種が列挙されており,また明代の︽清平山堂話本︾や︽三言︾は,宋・元代の小説の話本をもとに改作したものである。説経,または談経,唐代の俗講に由来するもので,︿仏書の演説﹀を内容とし,これにはさらに禅問答のまね事である︿説参請﹀,滑稽を主とする︿説諢経︵せつこんきよう︶﹀が含まれる。講史書は,三国史,五代史などの長編の歴史物語で,その筆録をとくに︿平話﹀といった。現存するものとして︽五代史平話︾︽宣和遺事︾︽三国志平話︾などがあり,のちの︽三国志演義︾などの長編小説へと発展していく。4家のうち,以上の3家を除く1家については,学者の間で説が分かれ,与えられた題により,その場で詩をつくる即興の芸である︿合生﹀︵合笙ともかく︶を採る説,合生となぞ解きの︿商謎﹀を採る説,滑稽話である︿説諢経﹀を採る説,または小説の中から公案と鉄騎児,あるいは鉄騎児のみを独立させる説などさまざまで一致をみない。なお,これらの諸芸はそれぞれ専門の芸人によって演じられ,また芸人たちは当時の慣行にしたがって,同業者組合を結成していた。宋代の説話人の組合としては,︿雄弁社﹀の名が知られる。 宋代の説話,とくに小説と講史書は,元代以降の小説の発展の母体となったもので,文学史上,重要な意味をもつ。またその話芸としての側面は,現代にまで受け継がれているが,現在一般には説話の名称は用いられず,︿説書﹀といわれている。 執筆者‥村松 暎 出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
日本大百科全書(ニッポニカ) 「説話」の意味・わかりやすい解説 説話せつわ 文字によらずに、口伝えによって継承される口承文芸のうち、散文で表現されるもの。歌謡の対。神話、伝説、昔話、世間話などが含まれる。体験的事実の報告ではなく、伝聞による報告であるところに特色がある。歌謡が表現の形式を重視し、おおむね音楽と一体になって歌われる文芸であるのに対して、説話はストーリーの展開に主眼を置いて語られる文芸である。沖縄県宮古(みやこ)列島では、説話に相当するものをユガタリ、歌謡に相当するものをアヤゴ︵アーグ︶とよぶ、文芸に関する語彙(ごい)体系がある。ユガタリは説話とまったく等しい概念で、神話、伝説、昔話、世間話を包括し、やはり伝聞の形で語るものであるという。文学史上では﹁物語﹂とよばれるものがほぼ説話に一致する。﹃今昔物語集﹄が﹁――と語り伝えたということである﹂と結んでいるのはその典型であるが、文学のほうでは、説話といった場合には短編の説話をさし、長編のものは物語とよぶのが普通である。 ﹇小島瓔﹈ 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例