日本大百科全書(ニッポニカ) 「高知」の意味・わかりやすい解説
高知(県)
こうち
自然
地形
気候
歴史
先史・古代
中世
近世
近代
産業
農林業
水産業
水産物生産額、漁船数、漁港数は全国の10位前後で、人口1人当り生産額は長崎県に次いで高い。かつては、砂浜海岸の地引網、岩石海岸の定置網(とくに明治期以降のブリの大敷網)、宿毛湾のイワシ網などや沿岸釣り漁業も盛んであったが、現在、沿岸漁業はシラス網漁業、宿毛湾・野見湾などのハマチ養殖などを除いては不振である。黒潮にのって回遊してくるカツオは『延喜式(えんぎしき)』の土佐の貢ぎ物にみられるように、古くから土佐の水産物を代表するものであった。近世以降もカツオ漁は捕鯨業とともに漁業の中心をなした。また、かつお節加工も紀州(和歌山県)からの技法を取り入れ、土佐節の名で知られた。現在、カツオ漁は1月の台湾沖から秋の三陸沖までの近海一本釣りが中心で、県内では、土佐清水市、土佐市宇佐などがその根拠地。近海延縄(はえなわ)から発展した遠洋マグロ漁業は、室戸港などを根拠地として、南太平洋、インド洋、大西洋などに出漁したが、1970年代半ば以降衰退している。
[大脇保彦]
鉱工業
交通
社会・文化
教育文化
生活文化
文化財
政治、文化の中心地から遠隔地にあるため文化遺産は多くない。国指定重要文化財のうち、四国最古の建造物である大豊町豊楽寺(ぶらくじ)薬師堂(1151年ごろ)と日高村小村神社(おむらじんじゃ)の金銅荘環頭大刀拵(こんどうそうかんとうたちこしらえ)・大刀身(古墳時代)は国宝。建造物には高知城、土佐神社本殿・拝殿など、竹林寺(ちくりんじ)本堂、朝倉神社本殿、関川家住宅(以上高知市)、国分寺金堂(南国市)、鳴無(おとなし)神社(須崎市)社殿、旧立川番所書院(大豊町)など、彫刻に運慶作の薬師如来像、湛慶(たんけい)作の毘沙門天(びしゃもんてん)像(高知市雪蹊寺)などがある。
国史跡には、高知城跡(高知市)、土佐国分寺跡(南国市)、比江廃寺塔跡(南国市)、宿毛貝塚(宿毛市)、不動ガ岩屋洞窟(どうくつ)(佐川町)などがある。天然記念物のうち、「杉の大スギ」(大豊町)、ミカドアゲハとその生息地(高知市)や、土佐のオナガドリ(地域を定めず)などは特別天然記念物に指定されている。
[大脇保彦]
伝説
「大師伝説」が弘法大師の遍歴の跡を伝えるのは四国全域にあるが、高知県には大師が足摺岬からカメにのって土佐湾を渡ったという豪壮な伝説がある。室戸岬の七不思議は大師の霊験を伝えたもの。貴種流離譚(たん)もいくつかある。尊良親王(たかながしんのう)は元弘(げんこう)の変後、土佐へ配流されたが、後を追った妃(きさき)の船が難破し、妃の小袖(こそで)だけが幡多(はた)郡黒潮町の月見ヶ浜に漂着した。その後、浜では小袖に似た模様の貝がとれるようになったという。四万十市大屋敷の井森社は土御門(つちみかど)上皇の皇子の妃「千代鶴姫(ちよづるひめ)」を祀(まつ)る。皇子を慕ってきた妃がこの地でオオカミに襲われたと伝える。壇ノ浦(だんのうら)から徳島県祖谷山(いややま)へ逃れたという安徳(あんとく)帝が、祖谷山から土佐の高岡郡横倉山へ行在所(あんざいしょ)を移し、23歳で世を去ったといい、横倉山は御陵伝説地になっている。同郡越知(おち)町千立野(せんだつの)に「耳なし地蔵」の伝説がある。その由来は「耳なし芳一(ほういち)」と同工のもので、琵琶(びわ)法師が横倉山の平家の亡霊に耳を切られたというもの。平家伝説は高知市の山間部、鏡(かがみ)地区・同市土佐山地区、同所に続く七ツ淵などに多い。いの町の「平家平(へいけだいら)」では、正月、盆の16日に落人(おちゅうど)の怨霊(おんりょう)がさまようといって、山入りを堅く禁じている。長者伝説では四万十市中鴨川(なかかもがわ)の「炭の倉さま」が有名であるが、筋立ては大分県の蓮城寺(れんじょうじ)観音堂の黄金発見の縁起(えんぎ)「炭焼小五郎(すみやきこごろう)」と同じである。伝説伝播者が運んで諸国に流布したものとみられる。四国山地を流れる吉野川、仁淀川、物部川、四万十川などのつくる峡谷の淵(ふち)には、ヘビにまつわる伝説が数多くある。また、池や淵の底に乙女(おとめ)がいて機(はた)を織るという「機織淵」の伝説もある。これも全国的に広く分布する伝説であるが、香美市物部町では、機織りの道具を頭にのせた物売りの乙女が、蔓橋(つるばし)を渡ろうとして誤って川に落ち、それから橋の下で機を織る音が聞こえるようになったという。「七人みさき」も各地にある伝説で、非業の死を遂げた7人の亡魂に出会うと高熱を発して死に至るという。土佐郡、高岡郡、幡多郡、安芸郡などの山間の塚や祠(ほこら)にまつわる伝説である。
[武田静澄]
『『高知県史』全10冊(1968~1977・高知県)』▽『山本大著『高知県の歴史』(1969・山川出版社)』▽『坂本正夫・高木啓夫著『日本の民俗39 高知』(1972・第一法規出版)』▽『『日本歴史地名大系40 高知県の地名』(1983・平凡社)』▽『『角川日本地名大辞典39 高知県』(1986・角川書店)』▽『高知県高等学校教育研究会編『新版 高知県の歴史散歩』(2006・山川出版社)』
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