日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律
ちょうじゅうのほごおよびかんりならびにしゅりょうのてきせいかにかんするほうりつ
目的と定義
本法律は、鳥獣の保護および管理を図るための事業を実施するとともに、猟具の使用による危険を予防することにより、鳥獣の保護および管理ならびに狩猟の適正化を図り、これによって生物の多様化の確保、生活環境の保全および農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保および地域社会の健全な発展に資することを目的としている︵1条︶。
﹁鳥獣﹂とは、鳥類または哺乳(ほにゅう)類に属する野生の動物と定義されている。ネズミ・モグラ類・一部の海棲(かいせい)哺乳類も本法の対象である。環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣︵イエネズミ3種︶と他の法令により適切な保護管理がなされている鳥獣︵ニホンアシカ・アザラシ5種・ジュゴン以外の海棲哺乳類︶については、鳥獣保護管理法の対象外とされている︵80条︶。
﹇竹内俊雄 2016年9月16日﹈
基本指針
環境大臣は、鳥獣の保護および管理を図るための事業︵鳥獣保護管理事業︶を実施するための基本的な指針を定めるが、この基本方針においては、次に掲げる事項について定めるものとする。(1)鳥獣保護管理事業を実施するために必要な事項、(2)鳥獣保護管理事業計画における計画期間を定めるに当たって遵守すべき基準その他当該鳥獣保護管理事業計画の作成に関する事項、(3)希少鳥獣の保護に関する事項、(4)指定管理鳥獣の管理に関する事項、(5)その他、鳥獣保護事業を実施するために必要な事項︵3条︶。
都道府県知事は、当該都道府県の区域内において生息数が著しく減少し、生息地の範囲が縮小している鳥獣がある場合、当該鳥獣の生息の状況その他の事情を勘案して、当該鳥獣の保護を図るためにとくに必要があると認めるときは、当該鳥獣︵第一種特定鳥獣︶の保護に関する計画︵第一種特定鳥獣保護計画︶を定めることができる。逆に、その生息数が著しく増加し、生息地の範囲が拡大している鳥獣がある場合は、当該鳥獣︵第二種特定鳥獣︶の管理に関する計画︵第二種特定鳥獣管理計画︶を定めることができる。
﹇竹内俊雄 2016年9月16日﹈
狩猟免許・登録・罰則
狩猟をしようとする者は、知事の行う狩猟免許試験に合格して、狩猟免許を受けなければならない。ただし、(1)網猟・わな猟免許にあっては、18歳に満たない者、第一種・第二種銃猟免許にあっては、20歳に満たない者、(2)精神障害または発作による意識障害をもたらし、その他狩猟を適正に行うことに支障を及ぼすおそれがある病気にかかっている者、(3)麻薬、大麻、阿片(あへん)または覚醒剤(かくせいざい)の中毒者、などは免許取得が認められていない︵40条︶。
狩猟を行う場合は、狩猟をしようとする区域を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならず︵55条︶、その際には、狩猟免許の種類、狩猟をする場所、住所、氏名、生年月日、その他環境省令で定める事項を記載した申請書を提出する︵56条︶。
狩猟鳥獣以外の鳥獣の捕獲と鳥類の卵の採取は原則として禁止されており︵8条︶、これに違反したときは、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる︵83条1項1号︶。
﹇竹内俊雄 2016年9月16日﹈
制定の背景・沿革
1873年︵明治6︶、太政官布告により﹁鳥獣規則﹂が定められ、狩猟が免許鑑札制とされ、その期間と場所が規制された。これは、野生生物の減少によるものであった。1892年に﹁狩猟規則﹂︵勅令︶が定められ、指定保護鳥獣15種類の捕獲禁止と網猟・わな猟が規制された。1895年﹁狩猟法﹂︵明治28年法律第20号︶が制定された。これは、明治の末から大正にかけて、森林の開発や狩猟人口の増加などによって、野生動物が激減したことによる。1918年︵大正7︶、新﹁狩猟法﹂︵大正7年法律第32号︶が制定されて、指定狩猟鳥獣以外の鳥獣の捕獲が原則として禁止されることになった。狩猟法は、1963年︵昭和38︶に﹁鳥獣保護及狩猟に関スル法律﹂と改称された。2002年︵平成14年︶には全面的に改正され﹁鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律﹂︵平成14年法律第88号︶が制定された。この際に、条文が文語体から口語体へと改められた。ここでは、鳥獣の違法捕獲が規制され、捕獲許可手続きの合理化などがなされた。2014年、現在の名称に変更され︵題名に﹁管理﹂が追加された︶、希少鳥獣保護計画、指定管理鳥獣捕獲等事業、認定鳥獣捕獲等事業者制度、住居集合地域等における麻酔銃猟の許可条項などが追加されている。
﹇竹内俊雄 2016年9月16日﹈
[参照項目] |
| | | |