ATPアーゼ(読み)エーティーピーアーゼ(英語表記)ATPase

翻訳|ATPase

デジタル大辞泉 「ATPアーゼ」の意味・読み・例文・類語

エーティーピー‐アーゼ【ATPアーゼ】

生体内でATPアデノシン三燐酸りんさん)をADPアデノシン二燐酸)と無機燐酸に加水分解する酵素の総称。この際、1モル当たり7~10キロカロリーエネルギーが放出され、筋肉の収縮やさまざまな化学反応などに利用される。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ATPアーゼ」の意味・わかりやすい解説

ATPアーゼ
えーてぃーぴーあーぜ
ATPase


ATPADPATP1710ATP

 ATPP-ATPATPCa2+-ATPCa2+Ca2+()Na+, K+-ATPNa+K+H+, K+-ATPH+ABCATP()ATP

 ATPAAA-ATPATP1()ATPATPATPDNAATPRecAATPDNA

 ATPATP()ATPATPATPATPF0F1-ATPATPH+H+ATPATPATPATP



ATP1986  1989199019906 1990199120002000

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改訂新版 世界大百科事典 「ATPアーゼ」の意味・わかりやすい解説

ATPアーゼ (エーティーピーアーゼ)
ATPase

アデノシントリホスファターゼadenosine triphosphataseの略称。ATP(アデノシン三リン酸)をADP(アデノシン二リン酸)と無機リン酸に加水分解する酵素の総称。ATPアーゼ作用を示すタンパク質(酵素)はいずれも,生体内においては同時になんらかの機械的仕事(運動),浸透圧的仕事(能動輸送)などをおこなう機能タンパク質である。すなわち生体は,常になんらかの物理的仕事に対するエネルギーの供給と共役したかたちでATPを分解するように造られており,ATPがむだに加水分解されることはない。たとえば筋肉の収縮タンパク質であるミオシンは機械的仕事と共役したATPアーゼの一つであり,反応過程におけるそれ自身の高次構造変化やアクチンとの相互作用などを通じて,ATPのエネルギーを筋収縮の仕事に変換する機能をもっている。一方,筋小胞体と呼ばれる筋肉の細胞器官の膜に大量に存在する別種のATPアーゼは,ATPの分解に先立って細胞質中のCa2⁺イオンを強く結合し,小胞体内のCa2⁺濃度が細胞質より高い場合でも,ATPの分解とともにそれを膜の内腔に輸送する性質を示す。収縮した筋肉が再び弛緩するのは,このCa2⁺輸送ATPアーゼの働きで筋細胞質内のCa2⁺濃度が低下するためである。細胞膜に存在し,Na⁺およびK⁺によって活性化されるNa⁺,K⁺-ATPアーゼもやはりこれらの1価カチオンの能動輸送をおこなうタンパク質で,細胞膜の興奮性や細胞内イオン環境の維持に重要な役割を果たしている。これらはいずれも,ATPのエネルギーを浸透圧的エネルギーに変換する機能タンパク質である。また,ミトコンドリアの内膜に存在し,H⁺の能動輸送をおこなうF1-ATPアーゼは酸化的リン酸化の共役因子であり,生理的条件のもとでは,呼吸鎖電子伝達反応によって形成された膜内外のH⁺の濃度勾配(こうばい)を利用して,ATPの合成,すなわちATP加水分解の逆反応をおこなう。この酵素は好気的代謝をおこなうすべての細胞に存在し,生体のエネルギー代謝において極めて重要な働きをする酵素である。
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栄養・生化学辞典 「ATPアーゼ」の解説

ATPアーゼ

 ATPモノホスファターゼ,アデノシントリホスファターゼともいう.ATPを加水分解する酵素で,ATPを使って仕事や化学反応を行うATP利用系のATPアーゼから,ATP合成系のミトコンドリアのATPアーゼなど,非常に多くの酵素がある.

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化学辞典 第2版 「ATPアーゼ」の解説

ATPアーゼ
エーティーピーアーゼ
ATPase

[同義異語]アデノシントリホスファターゼ

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のATPアーゼの言及

【能動輸送】より


106molCa2103molCa2NaKATPHATPCa2ATPATP(ion pump)()ATP

【ホスファターゼ】より


ATP(ATP)(NaKATP) 

※「ATPアーゼ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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