アメリカ文学
アメリカ文学史[編集]
英語によるアメリカ文学の歴史は、1776年に独立してから本格的に始まった。それ以前の文学史は、ある程度かつての宗主国イギリスに求めることになるが、現在では移民の記録や日記、詩なども、アメリカ文学の一部として認められており、アメリカ文学の発生点は単純には決めがたい。植民地時代の文学[編集]
独立後[編集]
特異なアメリカスタイル[編集]
アメリカの詩[編集]
詳細は「アメリカ合衆国の詩」を参照
19世紀アメリカの二人の偉大な詩人は気質もスタイルもほとんど異なったものと言うことができる。ウォルト・ホイットマン︵1819年 - 1892年︶は、労働者、漂泊者、南北戦争では志願看護士であり、詩の革新者だった。その代表作﹃草の葉﹄︵Leaves of Grass[23]︶は、不規則な長さをもつ自由に流れる行でできており、アメリカ的民主主義の全的包括性を表している。この主題を一歩進め、自分勝手にならずに幅広いアメリカ人の体験を自身のものと同一視している。例えば、﹃草の葉﹄の中心で長い詩、﹃ぼく自身の歌﹄︵Song of Myself[24]︶では、﹁あらゆる年齢とあらゆる土地の全ての人は私にとって新しいものではないという思想が実際にある﹂と書いている。
ホイットマンはまた自分で﹁電気の身体﹂と呼んだように肉体の詩人でもあった。イギリスの小説家D・H・ローレンスはその﹃アメリカ文学古典の研究﹄の中で、ホイットマンは﹁精神の男が肉体の男よりも幾らか﹁優れて﹂﹁上に﹂あるという古い道徳観に最初に打撃を与えた﹂と記した。
若かりし日のエミリー・ディキンソン。1846年か1847年
一方、エミリー・ディキンソン︵1830年 - 1886年︶は、マサチューセッツ州の小さな町アマーストで上品な未婚の女性として、保護された人生を送った。その詩は形式的構造の中で独創的で機知に富み、優美に練り上げられ、心理的な洞察力がある。その作品は当時としては型破りであり、生前はほとんど出版されることも無かった。
ディキンソンの詩の多くは意地の悪いひねりを伴う死について論じている。例えば、﹃私は死について考えるのを止められないから﹄︵Because I could not stop for Death[25]︶は、﹁彼が親切にも私を止めさせた﹂で始まっている。ディキンソンの別の詩の冒頭は男性が支配する社会に生きる女性、かつ認められていない詩人としてのその立場を、﹁私は誰でもない!貴方は誰?貴方も誰でもないの?﹂と弄んでいる。
アメリカの詩は20世紀初期から半ばにそのピークを迎えたと考えられるが、その著名な詩人としては、ウォレス・スティーブンス︵1879年 - 1955年︶、シルヴィア・プラス︵1932年 - 1963年︶、アン・セクストン︵1928年 - 1974年︶、エズラ・パウンド︵1885年 - 1972年︶、T・S・エリオット︵1888年 - 1965年︶、ウィリアム・カルロス・ウィリアムズ︵1883年 - 1963年︶、スティーブン・ビンセント・ベネット︵1898年 - 1943年︶、ロバート・フロスト︵1874年 - 1963年︶、カール・サンドバーグ︵1878年 - 1967年︶、ロビンソン・ジェファーズ︵1887年 - 1962年︶、ハート・クレイン︵1899年 - 1932年︶、E・E・カミングス︵1894年 - 1962年︶、ジョン・ベリーマン︵1914年 - 1972年︶、アレン・ギンズバーグ︵1926年 - 1997年︶、ロバート・ローウェル︵1917年 - 1977年︶、エドナ・ミレイ︵1892年 - 1950年︶など多くいる。
マーク・トウェイン、1874年
マーク・トウェイン︵1835年 - 1910年、本名はサミュエル・ラングホーン・クレメンズ︶はアメリカ東海岸とは離れて︵ミズーリ州の州境︶生まれたアメリカ人作家としては初めての重要人物だった。その土地を舞台にする傑作は自伝﹃ミシシッピの生活﹄︵Life on the Mississippi[26]︶と小説﹃ハックルベリー・フィンの冒険﹄︵Adventures of Huckleberry Finn[27]︶である。トウェインのスタイルはジャーナリズムの影響を受け、方言を取り入れ、直接的で飾り気が無いが高度に感情に訴えるものがあって不敬にもユーモラスである。これがアメリカ人の言語を書く方法を変えた。その登場人物は方言と新しく発明した言葉や地域のアクセントまで使って実在の人物のように話し、明らかにアメリカ人のように聞こえる。その他地域的な違いや方言で興味ある作家としては、ジョージ・W・ケーブル︵1844年 - 1925年︶、トマス・ネルソン・ペイジ︵1853年 - 1922年︶、ジョーエル・チャンドラー・ハリス︵1848年 - 1908年︶、メアリー・ノアイユ・マーフリー︵1850年 - 1922年、筆名チャールズ・エグバート・クラドック︶、サラ・オーン・ジューエット︵1849年 - 1909年︶、メアリー・E・ウィルキンス・フリーマン︵1852年 - 1930年︶、ヘンリー・カイラー・バナー︵1855年 - 1896年︶およびウィリアム・シドニー・ポーター︵1862年 - 1910年、筆名オー・ヘンリー︶がいる。
ウィリアム・ディーン・ハウェルズも、﹃サイラス・ラパムの出世﹄︵The Rise of Silas Lapham︶のような小説や﹁アトランティック・マンスリー﹂の編集者としての仕事を通じてリアリストの伝統を代表する者である。
ヘンリー・ジェイムズ︵1843年 - 1916年︶は旧世界と新世界について直接書くことでそのジレンマに直面した。ジェイムズはニューヨーク市で生まれたが成人してからの大半はイングランドで過ごした。その小説の多くはヨーロッパに住んでいるか旅しているアメリカ人を描いている。ジェイムズの小説は、その錯綜し高度に抑えられた文章と感情と心理のあやに対する分析とで、人を怯えさせるものがある。ヨーロッパに来た魅力的なアメリカ人少女を描いた小説﹃デイジー・ミラー﹄︵Daisy Miller[28]︶や謎のような怪談﹃ねじの回転﹄︵The Turn of the Screw[29]︶がまだとっつきやすい作品である。
アーネスト・ヘミングウェイ、第一次世界大戦の軍服姿
20世紀の始めにアメリカの小説家は小説の社会的領域を上流から下流まで広げていき、時にはリアリズムの自然はにも結びついた。エディス・ウォートン︵1862年 - 1937年︶は短編や小説で、彼女が育ったアメリカ東海岸の社会である上流階級を観察した。その傑作の中でも﹃無知の時代﹄︵The Age of Innocence[30]、1920年︶は、魅力ある部外者よりも伝統的で社会的に受容される女性との結婚を選ぶ一人の男を主題にしている。これと同じ頃、南北戦争の小説﹃赤い武功章﹄︵The Red Badge of Courage︶で知られたスティーヴン・クレイン︵1871年 - 1900年︶は、﹃街の女マギー﹄︵Maggie:A Girl of the Streets、1893年︶でニューヨークの娼婦の生涯を描いた。またセオドア・ドライサー︵1871年 - 1945年︶は﹃シスター・キャリー﹄︵Sister Carrie、1900年︶でシカゴに移転し、愛人になる田舎娘を描いた。ハムリン・ガーランド︵1861年 - 1940年︶とフランク・ノリス︵1870年 - 1902年︶は自然主義者の観点からアメリカの農夫の抱える問題など社会的問題について書いた。
さらに直接に政治的な書物が社会問題と企業の力を論じた。エドワード・ベラミー︵1850年 - 1898年︶の﹃顧みれば﹄︵Looking Backward︶のような作品では別に考えられる政治や社会の枠組みを描いた。アプトン・シンクレア︵1878年 - 1968年︶は食肉加工業を題材にした小説﹃ジャングル﹄︵The Jungle [31]︶で最も有名になったが社会主義を提唱した。その他この時代の政治的作家としては、エドウィン・マーカハム︵1852年 - 1940年︶、ウィリアム・ボーン・ムーディ︵1869年 - 1910年︶がいた。イーダ・ターベル︵1857年 - 1944年︶やリンカーン・ステフェンス︵1866年 - 1936年︶などジャーナリスト批評家はマクレイカー︵醜聞を暴く人︶と渾名された。ヘンリー・ブルックス・アダムズ︵1838年 - 1918年︶も教育制度と現代生活を辛辣な表現で描いた。
スタイルや形態における実験が主題における新しい自由さに加わってきた。1909年、ガートルード・スタイン︵1874年 - 1946年︶はパリの海外居住者となっていたが、キュビスム、ジャズなど当時の美術と音楽の動きに親しんだことで影響された革新的小説である﹃3人の女﹄︵Three Lives[32]︶を出版した。 スタインは1920年代と1930年代をパリで暮らしたアメリカ文学の著名人集団を﹁失われた世代﹂と名付けた。
詩人のエズラ・パウンド︵1885年 - 1972年︶はアイダホ州で生まれたが、成人してからの生涯の大半をヨーロッパで過ごした。その作品は複雑であり、ときには曖昧で、西洋と東洋両方の他の芸術形態や広い範囲の文学に何度も言及している。パウンドは他の多くの詩人、特にもう一人の海外居住者だったT・S・エリオット︵1888年 - 1965年︶に影響を与えた。エリオットは、象徴の濃密な構造で進められる簡潔で知性に訴える詩を書いた。その作品﹃荒地﹄︵The Waste Land[33]︶では、第一次世界大戦後の社会の僻んだ考え方を崩壊し悪夢に付きまとわれたイメージに表現した。パウンドの作品に似てエリオットの詩は高度に暗示的であり、﹃荒地﹄のある版は詩人その人によって補われた脚注が備えられた。1948年、エリオットはノーベル文学賞を受賞した。
アメリカの作家は第一次世界大戦後の幻滅も表現した。F・スコット・フィッツジェラルド︵1896年 - 1940年︶の短編や小説は1920年代の落ち着けない、喜びに飢えた反抗的なムードを捕らえていた。フィッツジェラルドの特徴的主題は﹃グレート・ギャツビー﹄︵The Great Gatsby[34]︶で痛烈に表現されており、若者の金色の夢が失敗と失望の中で消えていく風潮である。フィッツジェラルドはまた、20世紀初期の社会の圧力で酷く脅威を与えられている側面である自由、社会の統合、良い政府と平和などアメリカ独立宣言に盛り込まれていたアメリカの重要な理想の幾つかが崩壊したことも示した。シンクレア・ルイス︵1885年-1951年、1930年ノーベル文学賞︶とシャーウッド・アンダーソン︵1876年 - 1941年︶もアメリカ人の生活を批評的に表現した小説を書いた。ジョン・ドス・パソス︵1896年 - 1970年︶は戦争について書き、世界恐慌にまで伸びた﹁アメリカ合衆国三部作﹂も書いた。
F・スコット・フィッツジェラルド、カール・ヴァン・ヴェクテン撮影、 1937年
パール・S・バック (1892年 - 1973年) は生後間もなく中国に渡った女性作家で、中国農村が舞台の大地 (1931年) でピューリツァー賞 (1932年) とノーベル賞 (1938年) を受賞した。アーネスト・ヘミングウェイ︵1899年 - 1961年︶は第一次世界大戦の救急車運転手として暴力と死を身近に体験し、大虐殺によって抽象的な言葉が最も空虚で人を惑わすものだと確信させられた。その著作から不要な言葉を削り、文章構造を単純化し、具体的な対象と行動に集中させた。圧力の下での優美さを強調する道徳律に固執し、その主人公は強く寡黙な男だが女性の扱いはぎこちないことが多い。﹃日はまた昇る﹄︵The Sun Also Rises︶と﹃武器よさらば﹄︵A Farewell to Arms︶が一般にその傑作と考えられている。ヘミングウェイは1954年にノーベル文学賞を受賞した。
ヘミングウェイよりも5年早い1949年に、ウィリアム・フォークナー︵1897年 - 1962年︶がノーベル文学賞を受賞していた。フォークナーは彼が創作したミシシッピ州のヨクナパトーファ郡における非常に大きな範囲の人物模様を描き出した。﹁意識の流れ﹂と呼ばれる手法で、心理状態を表現するために長ったらしくてまとまりのないように見える登場人物の話を記録した︵実際にこれらの文章は丁寧に組み立てられ、その混乱したような構造は多層の意味を隠している︶。フォークナーは時間の流れもごちゃ混ぜにし、過去である奴隷を所有していた時代のディープサウスが現在にどう繋がっているかを示している。﹃響きと怒り﹄︵The Sound and the Fury[35]︶、﹃アブサロム、アブサロム!﹄︵Absalom, Absalom!︶、﹃行け、モーセ﹄︵Go Down, Moses︶および﹃征服されざる人々﹄︵The Unvanquished︶が著名である。
ノーマン・メイラー、カール・ヴァン・ヴェクテン撮影、1948年
第二次世界大戦が終わり、おおまかに1960年代後半や1970年代前半までの時代は、アメリカ史の中でも最も人気ある作品の幾つかが出版された時だった。より現実的なモダニズム文学の最後の数人と共に幅広くロマンティックなビートニクスがこの時代を支配し、アメリカが第二次世界大戦に関わったことへの直接の反応が彼らに注目すべき影響を与えた。
カナダで生まれシカゴで育ったソール・ベロー︵1915年 - 2005年︶が第二次世界大戦後の数十年間で最も影響力あるアメリカの小説家になった。﹃オーギー・マーチの冒険﹄︵The Adventures of Augie March︶や﹃雨の王ヘンダソン﹄︵Henderson the Rain King︶といった作品で、ベローはアメリカの都市の生き生きとした肖像とそこに住む典型的な人々を描いた。ベローは1976年にノーベル文学賞を受賞することになった。
J・D・サリンジャー︵1919年 - 2010年︶の﹃ナイン・ストーリーズ﹄︵Nine Stories︶と﹃ライ麦畑でつかまえて﹄ ︵The Catcher in the Rye︶から、シルヴィア・プラス︵1932年 - 1963年︶の﹃ベル・ジャー﹄︵The Bell Jar︶まで、アメリカの狂気は国民の文学表現の前線にまで置かれた。﹃ロリータ﹄︵Lolita︶を書いたウラジーミル・ナボコフ︵1899年 - 1977年︶のような移民作家がその主題で台頭し、ほとんど同じ頃にビートニクスはその失われた世代の先達から離れて申し合わせたような一歩を踏み出した。
ビート・ジェネレーションの詩や小説は、大半がニューヨーク市のコロンビア大学周辺に形成された知識人のサークルから生まれ、幾らか後にサンフランシスコで明確に確立され、時代のものとなった。﹁ビート﹂という言葉は全く同時にジャズシーンの反体制文化的リズムにも使われ、戦後社会の保守的ストレスに関する反逆の意味で、またドラッグ、アルコール、哲学および宗教、特に﹁禅﹂を通じた新しい形の精神的な体験における興味にも使われた。アレン・ギンズバーグ︵1926年 - 1997年︶はホイットマン流の作品であるその詩﹃吠える﹄︵Howl︶で、﹁私は狂気によって破壊された私の世代の最良の心を見た﹂で始め、この動きの調子を定めた。これと同時にその親友であるジャック・ケルアック︵1922年 - 1969年︶はビートのはしゃぎ回り、おおらかで気まぐれな生活様式を、多くの作品の中でも傑作で最も人気のあった小説﹃路上﹄︵On the Road︶で祝した。
具体的に戦争小説に関して、第二次世界大戦後の時代にアメリカでは文学的な爆発があった。ノーマン・メイラー︵1923年 - 2007年︶の﹃裸者と死者﹄︵The Naked and the Dead、1948年︶、ジョゼフ・ヘラー︵1923年 - 1999年︶の﹃キャッチ=22﹄︵Catch-22、1961年︶およびカート・ヴォネガット︵1922年 - 2007年︶の﹃スローターハウス5﹄︵Slaughterhouse-Five, or The Children's Crusade、1969年︶などの作品が良く知られたものである。バーバラ・ガーソン︵1941年 - ︶が書いた﹃マクバード﹄︵MacBird︶は戦争の愚かさを白日に曝したもう一つの作品として受け入れられた。
対照的にジョン・アップダイク︵1932年 - ︶はアメリカ人の生活のより牧歌的な側面と呼べるものを出し、静かにだが破壊的でもある文体で迫った。その1960年に出した﹃走れウサギ﹄︵Rabbit, Run︶は、その性格描写とアメリカ中流階級の詳細によってその発売と同時に新しい地平を切り開いた。その叙述に現在時制を用いたことでは最初の小説の一つとされてもいる。
ラルフ・エリソン︵1914年 - 1994年︶の1953年の小説﹃見えない人間﹄︵Invisible Man︶は終戦直後の最も力にあふれ世間をあっと言わせる作品の中にあると即座に認められた。この小説は北の都会における黒人の話であり、国内でまで一般的だった抑圧されることの多かった人種問題をむき出しにし、実存的な性格描写としても成功している。
フラナリー・オコナー︵1925年 - 1964年︶もマーク・トウェインやアメリカ文学史の中で他の指導的作家にとって大切だったアメリカ文学における﹁南部﹂という主題を開拓し発展させた。その作品は﹃賢い血﹄︵Wise Blood、1952年︶、﹃烈しく攻むる者はこれを奪う﹄︵The Violent Bear It Away、1960年︶や最も良く知られた短編である﹃すべて上昇するものは一点に集まる﹄︵Everything That Rises Must Converge︶、さらに死後の1965年に出版されたオコナー短編集がある。
リアリズム、トウェインとジェームズ[編集]
世紀の変わり目[編集]
世界恐慌時代の文学[編集]
世界恐慌時代の文学はその社会批判において無遠慮で直接的だった。ジョン・スタインベック︵1902年 - 1968年︶はカリフォルニア州サリナスで生まれ、そこを小説の多くの舞台にした。そのスタイルは単純で示唆に富み、読者の共感を呼んだが批評家はそうではなかった。スタインベックはしばしば貧しい労働者階級とまともで正直な生活を送るための奮闘を書いた。おそらく当時の最も社会的に目覚めた作家だった。傑作と考えられている﹃怒りの葡萄﹄︵The Grapes of Wrath︶は、オクラホマ州出身でより良い生活を求めてカリフォルニア州に旅する貧しい家族であるジョード家の話を語る強く社会指向の小説である。その他にも﹃おけら部落﹄︵Tortilla Flat︶、﹃二十日鼠と人間﹄︵Of Mice and Men︶、﹃キャナリー・ロウ﹄︵Cannery Row︶および﹃エデンの東﹄︵East of Eden︶などを書いた。スタインベックは1962年にノーベル賞を受賞した。プロレタリアート派の一部と考えられるその他の小説家として、ナサニエル・ウェスト︵1903年 - 1940年︶、オリーブ・ティルフォード・ダーガン︵1869年 - 1968年︶、トム・クロマー︵1906年 - 1969年︶、ロバート・キャントウェル︵1908年 - 1978年︶およびエドワード・アンダーソンがいた。 ヘンリー・ミラー︵1891年 - 1980年︶は、パリで書いて出版した半自叙伝的小説がアメリカ合衆国で発禁になった時に、1930年代のアメリカ文学界で特異な存在となった。主要作品である﹃北回帰線﹄︵Tropic of Cancer︶と﹃暗い春﹄︵Black Spring︶は1962年までアメリカ国内での販売と出版が認められなかったが、この時点で既にその主題とスタイルの革新性はアメリカの次の世代の作家達に大きな影響を残していた。第二次世界大戦後[編集]
現代のアメリカ小説[編集]
おおまかに言って1970年代初めから現在まで、最も良く知られた文学の分野は、ポストモダニズムであろうが、その呼び方には様々に異論がある。時代の知識人に受け入れられた︵必ずしもポストモダンではない︶作家としては、トマス・ピンチョン︵1937年 - ︶、ティム・オブライエン︵1946年 - ︶、ロバート・ストーン︵1937年 - ︶、ドン・デリーロ︵1936年 - ︶、ポール・オースター︵1947年 - ︶、トニ・モリスン︵1931年 - ︶、フィリップ・ロス︵1933年 - ︶、コーマック・マッカーシー︵1931年 - ︶、レイモンド・カーヴァー︵1939年 - 1988年︶、ジョン・チーバー︵1912年 - 1982年︶、ジョイス・キャロル・オーツ︵1938年 - ︶、アニー・ディラード︵1945年 - ︶、リチャード・パワーズ︵1957年 - ︶らが挙げられる。一般的にポストモダニズムとされる作家達は、大衆文化とマスメディアが平均的アメリカ人の世界に冠する概念と経験に影響を与えた多くの方法を扱い、また今日でも直接扱っている。それはアメリカ政府さらには多くの場合アメリカ史であるが、特に平均的アメリカ人自身の歴史感と共に批判されることが大変多い。 多くのポストモダン作家は郊外あるいはショッピングセンターのファストフード・レストランを舞台とすることでも知られている。彼らはドラッグ、美容整形手術およびテレビのコマーシャルについて書いている。ときにはこれらの表現がほとんど称賛のようにも見える。しかし同時にこの派の作家達はその主題に対して知ったかぶり、自意識過剰、当て擦り、および︵ある批評家に拠れば︶へりくだった態度を取る。このような傾向にある者のなかでおそらく最も知られているのは、ブレット・イーストン・エリス︵1964年 - ︶、デイブ・エッガーズ︵1970年 - ︶、チャック・パラニューク︵1962年 - ︶およびデヴィッド・フォスター・ウォレス︵1962年 - 2008年︶であろう。その他のジャンル[編集]
ノーベル文学賞を受賞したアメリカ人[編集]
- 1930年 - シンクレア・ルイス
- 1936年 - ユージン・オニール
- 1938年 - パール・S・バック
- 1949年 - ウィリアム・フォークナー
- 1954年 - アーネスト・ヘミングウェイ
- 1962年 - ジョン・スタインベック
- 1976年 - ソール・ベロー
- 1978年 - アイザック・バシェヴィス・シンガー (イディッシュ語で創作)
- 1987年 - ヨシフ・ブロツキー (ソヴィエト連邦からの亡命者。主にロシア語で創作)
- 1993年 - トニ・モリソン
- 2016年 - ボブ・ディラン
- 2019年 - ルイーズ・グリュック
上記以外の著名作家[編集]
- チャールズ・ブロックデン・ブラウン (1771年 - 1810年)
- ルイーザ・メイ・オルコット (1832年 - 1888年)
- ホレイショ・アルジャー (1832年 - 1899年)
- アンブローズ・ビアス (1842年 - 1914年?)
- ジャック・ロンドン (1876年 - 1916年)
- ジーン・ウェブスター (1876年 - 1916年)
- ローラ・インガルス・ワイルダー (1867年 - 1957年)
- シャーウッド・アンダーソン (1876年 - 1941年)
- ジョセフ・ハーガスハイマー (1880年 - 1954年)
- デイモン・ラニアン (1884年) - (1946年)
- ヒューゴー・ガーンズバック (1884年 - 1967年)
- リング・ラードナー (1885年 - 1933年)
- レイモンド・チャンドラー (1888年 - 1959年)
- ユージン・オニール (1888年 - 1953年)
- コンラッド・エイケン (1889年 - 1973年)
- ハワード・フィリップス・ラヴクラフト (1890年 - 1937年)
- キャサリン・アン・ポーター (1890年 - 1980年)
- ゾラ・ニール・ハーストン (1891年 - 1960年)
- ダシール・ハメット (1894年 - 1961年)
- エドマンド・ウィルソン (1895年 - 1972年)
- ナサニエル・ウェスト (1903年 - 1940年)
- アースキン・コールドウェル (1903年 - 1987年)
- エラリー・クイーン (フレデリック・ダネイ 1905年 - 1982年、マンフレッド・B・リー 1905年 - 1971年)
- フレドリック・ブラウン (1906年 - 1972年)
- W・H・オーデン (1907年 - 1973年)
- ロバート・A・ハインライン (1907年 - 1988年)
- ポール・ボウルズ (1910年 - 1999年)
- テネシー・ウィリアムズ (1911年 - 1983年)
- ジョン・チーヴァー (1912年 - 1982年)
- アーウィン・ショー (1913年 - 1984年)
- ジョン・ベリーマン (1914年 - 1972年)
- バーナード・マラマッド (1914年 - 1986年)
- ラルフ・エリソン (1914年 - 1994年)
- ウィリアム・S・バロウズ (1914年 - 1997年)
- R・A・ラファティ (1914年 - 2002年)
- アーサー・ミラー (1915年 - 2005年)
- シャーリイ・ジャクスン (1919年 - 1965年)
- アイザック・アシモフ (1920年 - 1992年)
- レイ・ブラッドベリ (1920年 - 2012年)
- マリオ・プーゾ (1920年 - 1999年)
- パトリシア・ハイスミス (1921年 - 1995年)
- ウィリアム・ギャディス(1922年 - 1998年)
- アヴラム・デイヴィッドスン (1923年 - 1993年)
- ジョーン・エイケン (1924年 - 2004年)
- ロイド・アリグザンダー (1924年 - 2007年)
- ウィリアム・H・ギャス (1924年 - )
- ジェイムズ・ボールドウィン (1924年 - 1987年)
- トルーマン・カポーティ (1924年 - 1984年)
- ゴア・ヴィダル (1925年 - )
- ウィリアム・スタイロン (1925年 - 2006年)
- フィリップ・K・ディック (1928年 - 1982年)
- フランク・マコート (1930年 - )
- ゲーリー・スナイダー (1930年 - )
- ジョン・バース (1930年 - )
- ドナルド・バーセルミ (1931年 - 1989年)
- ジーン・ウルフ (1931年 - )
- ジャージ・コジンスキー (1933年 - 1991年)
- スーザン・ソンタグ (1933年 - 2004年)
- ハーラン・エリスン (1934年 - )
- E・アニー・プルー (1935年 - )
- リチャード・ブローティガン (1935年 - 1984年)
- ケン・キージー (1935年 - )
- スー・グラフトン (1940年 - )
- アン・タイラー (1941年 - )
- ジョン・アーヴィング (1942年 - )
- エリカ・ジョング (1942年 - )
- マイケル・クライトン (1942年 - )
- スティーヴン・ミルハウザー (1943年 - )
- アリス・ウォーカー (1944年 - )
- トム・ジョーンズ (1945年 - 2016年)
- トム・クランシー (1947年 - )
- スティーヴン・キング (1947年 - )
- ウィリアム・ギブスン (1948年 - )
- ジャメイカ・キンケイド (1949年 - )
- スティーヴ・エリクソン (1950年 - )
- リービ英雄 (1950年 - )
- エイミ・タン (1952年 - )
- ジョン・グリシャム (1955年 - )
- キャサリン・アサロ (1955年 - )
- ジェイ・マキナニー (1955年 - )
- ジャック・ウォマック (1956年 - )
- ジル・マコークル (1958年 - )
- ウイリアム・T・ヴォルマン (1959年 - )
- ニコラス・スパークス (1965年 - )
- シャーマン・アレクシー (1966年 - )
アメリカ文学の研究者[編集]
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ 『バージニアで起こったような事件や事故の真実の関係』(1608年)と『バージニア、ニューイングランドおよびサマー諸島の歴史概観』(1624年)full text
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- ^ Uncle Tom's Cabin, available at Internet Archive. Scanned, illustrated original editions.
- ^ Twice-Told Tales, available at Internet Archive (scanned books original editions illustrated)
- ^ The original text of The Scarlet Letter hosted by the University of Virginia
- ^ Power Moby-Dick, Online version with notes to help the reader.
- ^ Online version of Billy Budd at Bibliomania
- ^ a b c 平石 2010, p. 277.
- ^ 平石 2010, pp. 16–17.
- ^ The Whitman Archive--contains all editions of Leaves of Grass published in Whitman's lifetime, including text and page images.
- ^ The University of Toronto's full text, with line numbers
- ^ Because I could not stop for Death
- ^ Life on the Mississippi
- ^ Adventures of Huckleberry Finn. Digitized copy of the first American edition from Internet Archive.
- ^ First book version of Daisy Miller (1878)
- ^ The Turn of the Screw reproduced online
- ^ The Age of Innocence, 1920 first edition, scanned book via Internet Archive
- ^ The Jungle
- ^
- ^
- ^ The Great Gatsby, from Project Gutenberg Australia, plain text.
- ^ Hypertext edition of The Sound and the Fury
参考文献[編集]
- New Immigrant Literatures in the United States: A Sourcebook to Our Multicultural Literary Heritage by Alpana Sharma Knippling (Westport, Connecticut: Greenwood, 1996)
- Asian American Novelists: A Bio-Bibliographical Critical Sourcebook by Emmanuel S. Nelson (Westport, Connecticut: Greenwood Press, 2000)
- 平石貴樹『アメリカ文学史』松柏社、2010年。