動詞
言語学の品詞
動詞の一般的性質
動詞の分類
結合価による分類
動詞はそれがとる項の数によって分類される。
●自動詞‥ 主語のみをとる動詞。日本語では﹁立つ﹂﹁落ちる﹂など。
●他動詞‥ 主語および目的語をとる動詞。﹁読む﹂﹁壊す﹂など。
●二重他動詞‥ 主語、直接目的語、間接目的語の3つをとる動詞。﹁渡す﹂﹁入れる﹂など。
このほか項をまったく取らない動詞︵たとえば﹁雨が降る﹂を意味するイタリア語の piove やスペイン語の llueve など︶や、3つ以上の項をとる動詞も考えられる。
●再帰動詞‥ 本来他動詞または二重他動詞であるが、直接目的語または間接目的語が主語と同じである場合、項が1つ減ることになる︵意味的にも自動詞と考えられるものも多い︶。再帰代名詞︵英語の -self︶を動詞につけた形で、ロマンス語で特によく用いられる。
●能格動詞‥ 他動詞と、他動詞の場合の目的語=内項を主語に据えた自動詞︵他動詞の場合の主語=外項を消した表現︶のいずれにも、同じ形のまま使える動詞。日本語の﹁開く﹂、英語の open など。
相による分類
動詞の相︵アスペクト︶の特性から動詞を分類することができる。動作の持続する時間に基づいた継続動詞/瞬間動詞、ある状態への変化を意味するかどうかに基づいた目標動詞/非目標動詞などいくつかの観点からの分類が可能である。ヴェンドラーによる次の4分類がよく知られている。
●状態動詞 (state): 原形のまま状態を表し、進行形をとらない。like,live,haveなど。
●活動動詞 (action): 進行形で動作の継続を表し、着点や結果や動作の限界点をもたない。runなど。
●到達動詞 (achievement): ある状態が実現される瞬間的な出来事を表す。動作の過程は表さない。arriveなど。
●達成動詞 (accomplishment): 継続的な動作の結果、ある状態を実現することを表す。makeなど。
日本語に関しては、同様の視点による金田一春彦の4分類︵状態動詞、継続動詞、瞬間動詞、第四種の動詞︶がある。金田一とヴェンドラーの違いは、ヴェンドラーが進行形︵V-ing︶に基づいて分類しているのに対して、金田一は動詞を﹁~ている﹂に基づいて分類している点である。なお、金田一の分類はヴェンドラーに先駆けて提案されており、また、ヴェンドラーと同様の分類はアリストテレスが行っているという。
意志による分類
●意志動詞 (volitional verb) - 人間などの意志による動作を表す動詞。希望・可能・命令・禁止などの形をとれる。
●無意志動詞 (non-volitional verb) - 意志によらない動作などを表す動詞。希望・可能・命令・禁止などの形態をもたない。
視点による分類
●主体動作動詞 - 主体の動作をとらえている動詞。書く・食べる…など。自動詞も他動詞もある。﹁いる﹂をつけると動作の進行を表す。
●主体変化動詞 - 主体の変化をとらえている動詞。立つ・結婚する・開く・壊れる…など。ほとんどが自動詞である。﹁いる﹂をつけると結果の持続を表す。
●主体動作・客体変化動詞 - 主体からは動作を、客体からは変化をとらえている動詞。すべて他動詞である。開ける・壊す…など。能動態と受動態に対立があり、﹁いる﹂を能動態につけると動作の進行を表し、受動態につけると、結果の残存を表す。
日本語の動詞
分類
言語学では、日本語の動詞を形態により3種類に分ける。五段動詞、一段動詞、不規則動詞︵﹁する﹂と﹁来る﹂︶である。五段動詞を、-u 動詞、グループ1動詞、子音動詞、強変化動詞とも呼ぶ。一段動詞を、-ru 動詞、グループ2動詞、母音動詞、弱変化動詞とも呼ぶ。この呼び名は、語幹と語尾に基づいている。
●五段動詞
語幹が子音で終わる。原形は -u で終わる。
●kak-u, kak-imasu, kak-anai
●hanas-u, hanas-imasu, hanas-anai
●一段動詞
語幹が母音 (i, e) で終わる。原形は -ru で終わる。
●mi-ru, mi-masu, mi-nai
●tabe-ru, tabe-masu, tabe-nai
●不規則動詞
﹁する﹂と﹁来る﹂のみ。
●s-uru, sh-imasu, sh-inai
●k-uru, k-imasu, k-onai
助動詞
国文法
日本語動詞の活用の種類 | |
---|---|
文語 | 口語 |
四段活用 ナ行変格活用 ラ行変格活用 下一段活用 |
五段活用 |
下二段活用 | 下一段活用 |
上一段活用 上二段活用 |
上一段活用 |
カ行変格活用 | |
サ行変格活用 |
動詞の活用形
複合動詞
﹁押し続ける﹂﹁作り上げる﹂のように2つの動詞を結合したものを複合動詞という。前の動詞︵連用形︶を前項動詞、後続の動詞を後項動詞という。
意味的には、﹁切り倒す﹂﹁ふりかける﹂のように2つの動詞の意味をほぼ対等に結合した複合動詞もあるが、上例のように前項動詞が基本的な意味を担い、後項動詞が主として文法機能を果たす複合動詞も多い。
特に前項動詞の種類に対する制限の少ない後項動詞﹁始める﹂、﹁続ける﹂、﹁尽くす﹂、﹁過ぎる(前に形容詞・形容動詞の語幹もとれる)﹂、﹁お・・・する(謙譲語)﹂などは補助動詞としても扱われ、﹁押され続ける﹂のように2つの動詞の間に助動詞が介入できることもある。中には﹁かねる(不可能などを表す)﹂のように、独自の意味を失いほぼ文法機能のみを担う、助動詞的な後項動詞もある︵丁寧の助動詞﹁ます﹂も後項動詞形式の補助動詞﹁参らする﹂に由来する︶。
英語の動詞
英語では、補語を伴って状態を表すbe動詞 (SVC) とそれのみで動作を表したり副詞句を伴ったりする自動詞 (SV) と目的語や目的格補語を伴う他動詞 (SVOO, SVOC) がある。また "give up" (諦める)や "take care of" (世話する)のように副詞や前置詞、名詞などを伴い句動詞となることもある。
朝鮮語の動詞
最敬体、過去形などの変化をする。また日本語同様に文末に用いられることが多い。形容詞が動詞の一種とされることがある。