アメリカ合衆国憲法
アメリカ合衆国憲法(アメリカがっしゅうこくけんぽう、英語: United States Constitution)は、アメリカ合衆国の憲法である。全7762文字で構成される[1]。
アメリカ合衆国憲法 | |
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United States Constitution | |
![]() アメリカ合衆国憲法の原本(1ページ目) | |
施行区域 |
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効力 | 現行法 |
成立 | 1787年9月28日 |
公布 | 1788年6月21日 |
施行 | 1789年5月4日 |
政体 | 連邦制、共和制、大統領制 |
権力分立 |
三権分立 (立法・行政・司法) |
元首 | 大統領 |
立法 | 議会 |
行政 | 大統領 |
司法 | 最高裁判所 |
改正 | 27 |
最終改正 | 1992年 |
旧憲法 | 連合規約 |
作成 | フィラデルフィア憲法制定会議 |
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/9d/Scene_at_the_Signing_of_the_Constitution_of_the_United_States.jpg/300px-Scene_at_the_Signing_of_the_Constitution_of_the_United_States.jpg)
沿革
編集連合規約での行き詰まり
編集憲法制定会議の動き
編集批准
編集日付 | 邦 | 投票 | ||
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賛成 | 反対 | |||
1 | 1787年12月7日 | デラウエア邦 | 30 | 0 |
2 | 1787年12月12日 | ペンシルベニア邦 | 46 | 23 |
3 | 1787年12月18日 | ニュージャージー邦 | 38 | 0 |
4 | 1788年1月2日 | ジョージア邦 | 26 | 0 |
5 | 1788年1月9日 | コネチカット邦 | 128 | 40 |
6 | 1788年2月6日 | マサチューセッツ邦 | 187 | 168 |
7 | 1788年4月28日 | メリーランド邦 | 63 | 11 |
8 | 1788年5月23日 | サウスカロライナ邦 | 149 | 73 |
9 | 1788年6月21日 | ニューハンプシャー邦 | 57 | 47 |
10 | 1788年6月25日 | バージニア邦 | 89 | 79 |
11 | 1788年7月26日 | ニューヨーク邦 | 30 | 27 |
12 | 1789年11月21日 | ノースカロライナ邦 | 194 | 77 |
13 | 1790年5月29日 | ロードアイランド邦 | 34 | 32 |
アメリカ合衆国憲法の思想的背景
編集権利章典の背景
編集構成
編集内容
編集前文 (Preamble)
編集We the People of the United States, in Order to form a more perfect Union, establish Justice, insure domestic Tranquility, provide for the common defense, promote the general Welfare, and secure the Blessings of Liberty to ourselves and our Posterity, do ordain and establish this Constitution for the United States of America. ︵われら合衆国の人民は、より完全な連邦を形成し、正義を樹立し、国内の平穏を保障し、共同の防衛に備え、一般の福祉を増進し、われらとわれらの子孫のうえに自由のもたらす恵沢を確保する目的をもって、アメリカ合衆国のために、この憲法を制定する。︶ 前文ではアメリカ合衆国憲法が13邦の主権を制限し、アメリカ合衆国が13邦の連合体で無く、それらを合邦した統一国家であることを宣言する。 また、国民の安全や防衛など、当該憲法を制定する目的が列挙されている。第1条 (Article I)
編集詳細は「アメリカ合衆国憲法第1条」を参照第1条は政府の立法府すなわちアメリカ合衆国議会を定義している。 これには下院と上院が含まれ、上下各院の議員選出の方法と資格付けについて規定している。さらに、議会における討論の自由を保障し、利己的な行動を制限し、立法の方法を概説し、また立法府の権限を示している。 第1条第8節に挙げられている権限は、そのままのものであるかということに関して議論がある。これらの権限は本来行政府か司法府の権限と考えられていたが、議会に明らかに認められたものとして列挙されている通りとも解釈される可能性がある。この解釈はさらに商業条項と必要適切条項の広い定義で支持されている。列挙された権限に関する議論は1819年のマカロック対メリーランド州事件のアメリカ合衆国最高裁判所判決まで遡ることができる。最終的に、この判決では連邦議会および州議会の権限を制限している。 ︵修正14条・16条・17条・20条により一部修正︶ 第6節2項の規定﹁上院および下院の議員は、その任期中に新設、または増俸された合衆国の文官職に、その選出された任期の間任命されてはならない。﹂は議員の政権入りにおいて何度か障害となっている。ウィリアム・タフト大統領によるフィランダー・ノックス上院議員の国務長官指名や、ビル・クリントン大統領によるロイド・ベンツェン上院議員の財務長官指名、さらにはバラク・オバマ大統領によるヒラリー・クリントン上院議員の国務長官指名[10]およびケネス・リー・サラザール上院議員の内務長官指名の際に、当該職が各議員の任期中に増俸されていて就任が問題とされた。第2条 (Article II)
編集詳細は「アメリカ合衆国憲法第2条」を参照第2条は行政機関としての大統領府に言及し、大統領の選出方法、資格付け、確認されるべき宣誓およびその任務の権限と義務を定義している。 また副大統領職についても定め、もし大統領が執務不能・死亡・辞職した場合は大統領職を引き継ぐとしている。 ただし、この引き継ぎが代行であるのか任期の間続くものであるのかは不明のままである。実際は大統領就任として常に扱われてきており、憲法修正第25条によって明らかに就任と決められた。第2条はまた、弾劾制度と大統領・副大統領・判事などの公職追放についても定義している。第3条 (Article III)
編集詳細は「アメリカ合衆国憲法第3条」を参照第3条は最高裁判所を含む司法制度について定義している。 合衆国最高裁判所と呼ばれる裁判所があるべきとしているが、議会はその裁量の中で下級裁判所を創出することができ、その判決と命令は最高裁によって審査されることができるとしている。あらゆる刑法事件では陪審制裁判を要求し、反逆罪を定義し、議会にはその罰則を決めるよう求めている。また連邦裁判所で審理される事件の種類を定め、そのような場合は最高裁判所が最初に審理すること︵第一審管轄権︶および最高裁判所によって審理される他の事件は上告によることが定められている。第4条 (Article IV)
編集詳細は「アメリカ合衆国憲法第4条」を参照第4条は州と連邦政府の関係および州の間の関係について定義している。 例えば、各州は他の州の公的な行動・記録および裁判の進行について十分な信頼と信用を置くことを要求している。議会はそのような行動・記録および進行の証拠が受け入れられる方法を立法化することが認められている。 ﹁特権と免除権﹂条項では州政府がその州の住人のために他の州の市民を差別することを禁じている︵例えば、ミシガン州内で犯罪を犯して有罪とされたオハイオ州の住人により重い罰則を科すこと︶。また州間の犯罪者の引渡しについて定め、州間の自由な移動と通行について法的な根拠を与えるよう定めている。 今日、この条項は特に州境に近く住む市民によって当然のことと取られているが、連合規約の時代は州境を越える事が大変難儀な︵また金の要る︶行動であった。第4条ではまた、新しい州の創設と合衆国への加盟の方法を定めている。領土条項は議会に連邦の財産を処分する規則を作る権限を与え、まだ州になっていないアメリカ合衆国の領土を統治する権限を与えている。第4条第4節では、アメリカ合衆国が各州に共和政体を保障し、各州を侵略や暴力から守ることを求めている。第5条 (Article V)
編集詳細は「アメリカ合衆国憲法第5条」を参照第5条は憲法の修正に必要な手続きを定めている。 連邦議会によるものと州によって請求された憲法議会によるものである。連邦議会による場合、上院と下院の投票で定足数︵全議員である必要は無い︶の3分の2によって修正を提案する。憲法議会による場合は州議会数の3分の2が連邦議会に憲法議会の開催を申し出た時に、連邦議会はその修正を検討する目的で会議を招集しなければならない。2007年までは第1の連邦議会による修正のみが行われてきた。 一旦修正が提案されると、上記のどちらの提案であっても修正案はその時の州の4分の3以上の州によって批准されれば有効となる。 連邦議会は批准が州議会によって行われるか、各州で開催される憲法会議で行われるかを選択することができる。会議による批准は修正第21条の時に唯一用いられた。第5条では現在修正の権限に一つだけ制限を設けている。それは、上院では各州から同数の代表を出すことになっているが、有る州からその同意無しにその平等を奪うことは出来ないということである。この憲法はその改正に当たり通常の法律の立法手続よりも厳格な手続を必要とする硬性憲法に分類される。憲法修正の規定について
編集憲法を起草した者達は、予測される国の成長に応じた変化に対応して憲法を持続していくならば、時を追って変わっていく必要性があることにはっきりと気付いていた。しかし、誤った考えを入れたり性急に修正をしたりしないように、そのような変更は容易であってはならないとも考えていた。この考え方のバランスを取るために、全会一致というような過度に硬直したような規定では民衆の大多数によって望まれるような行動も止めてしまうので、それを避けようとも考えた。その解決策は憲法を改定する手続きを2段階にすることであった。 他の国の憲法とは異なり、アメリカ合衆国憲法の修正は、主要条項の改定や挿入では無く、現行の条項に新しい条項を追加していくスタイルを採った。これまで、古く使われなくなった文章を消し去ったり無効にされたりした条項は修正21条による修正18条の廃止を除き無い。 アメリカ合衆国の人口動態で特に州間の人口格差の問題は、人口の4パーセントにも過ぎない州の集まりでも90パーセント以上によって望まれる修正を理論的には阻止できるということで、憲法の修正を難しいものにしていると指摘する者もいる。そのような極端な結果は起こりえないと感じる者もいる。しかし、これを少しでも改善しようとすれば憲法そのものを改定する必要がある。 憲法を修正する直接の方法とは別に、その実際的な効力を司法の判決や審査で変えることも可能である。アメリカ合衆国はイギリスのコモン・ローに根付く慣習法の国である。裁判所の判断は以前の事件に対する判例に基づいて行われる。 しかし、最高裁判所の判決が現行法に対して憲法の一部が適用されていると明確にした場合、その効力はあらゆる実行面で憲法の一部という意味合いを持つことになる。 憲法の発布からそれほど時を経ない1803年にマーベリー対マディソン事件の判決で、最高裁は議会の立法やその他の行動を検証しその合憲性を審査する権限があるという違憲立法審査権の原理を確立した。 この原理は裁判所に持ち込まれる特別な事件に対して憲法の規定を適用する時に、その条項の意味合いを説明する権限も含んでいる。そのような事件の場合、法的、政治的、経済的また社会的条件に影響を与えるので、憲法の条文を修正することなく実際面で憲法を適応させていく機能がある。長い間に、ラジオやテレビに対する政府の規制から刑事事件を告発する権利まで、憲法の条文そのものを変えないまでも、一連の判決が憲法の条項が解釈される筋道を変えて来た。 憲法の条項を実施に移すために成立した議会の法律、あるいはその実行の条件を変更するために採択された法律は、憲法の条文に与えられる意味合いを拡げたり微妙ではあるが変えたりする効果が有る。これまでにも連邦政府の多くの実行部局が作る規則や規制はそのような効果を挙げてきた。異議申し立ての場合は、裁判所の意見で、そのような規制や規則が憲法の条文に与えられる意味合いに合致しているかを審査される。第6条 (Article VI)
編集詳細は「アメリカ合衆国憲法第6条」を参照第6条は憲法と憲法に基づいて作られるアメリカ合衆国の法律と条約を国内の最高法と定義し、﹁各州での判断はそれらに基づいて行われ、各州の法や憲法に含まれる如何なるものもそれらと矛盾してはならない﹂としている。 また連合規約の下で作られた国債を有効とし、あらゆる議員・政府の役人および判事は憲法を支持する誓約または確認をすべきこととしている。これは州の憲法や法律が連邦憲法と矛盾してはならないことを意味し、もし論争になった場合は、州の判事が州の憲法や法律に対して連邦の憲法や法律を上位に置いて判断することを法的に強制したものである。 第6条はまた、﹁アメリカ合衆国では如何なる役職もまた公的な信託もその資格付けのために宗教的な審問を要求してはならない﹂としている。第7条 (Article VII)
編集詳細は「アメリカ合衆国憲法第7条」を参照第7条は憲法の批准に関する要求事項を定めている。
この憲法は少なくとも9つの邦(当時は13邦のみが存在)が特に批准の目的のために招集された各邦の会議で批准されるまでは有効にならないとした。
署名 (Signatures)
編集詳細は「アメリカ合衆国憲法の署名」を参照各邦代表の署名
修正条項
編集修正条項は修正第1条から修正第27条まである。第1修正から第27修正と訳する人もいる。最初の10か条は権利章典と呼ばれ、同時に修正が成立した。その後の17か条はそれぞれ異なる機会に修正が成立した。
権利章典(修正第1条-第10条)
編集- 修正第1条:信教・言論・出版・集会の自由、請願権
- 修正第2条:人民の武装権
- 修正第3条:軍隊の舎営に対する制限
- 修正第4条:不合理な捜索、逮捕、押収の禁止
- 修正第5条:大陪審の保障、二重の処罰の禁止、適正手続、財産権の保障
- 修正第6条:陪審、迅速な公開の裁判その他刑事上の人権保障
- 修正第7条:民事事件における陪審審理の保障
- 修正第8条:残虐で異常な刑罰の禁止など
- 修正第9条:人民の権利に関する一般条項
- 修正第10条:州または人民に留保された権限
その後の修正条項(第11条-第27条)
編集修正第11条以降の条項は多くの主題をカバーしている。その中でも個人の公民としての自由や政治的な自由を拡大したものが多く、いくつかは基本的な政府の構造を変えるものがある修正第18条は、修正第21条により廃止されたため、27か条の修正条項のうち、26か条のみが現在有効である。( )内は批准完了すなわち成立年を示す。
批准されていない修正案
編集ドナルド・トランプによるアメリカ合衆国憲法の終了発言
編集特徴
編集立憲連邦共和国
編集厳格な三権分立
編集アメリカ合衆国憲法は立憲主義をとっていることから権力分立制を採用しているが、イギリス法のように三権の分離が十分では無い(形式上は21世紀初頭まで、大法官が上院議長と終審裁判所長官も兼務していた)状況とは異なり、18世紀後半の建国当初から立法権・行政権・司法権は厳格に分離する三権分立をとっている。そのため、議会と大統領は別々に選挙されるが、大統領が議会を解散したり、議会が大統領を選出する権限などは無い。大統領には法案提出権も無く、毎年1月に行われる大統領の一般教書演説によって大統領の施政方針が示され、必要な立法が示唆される。ただし、副大統領は憲法の規定により上院議長を兼務している。
展開
編集連邦政府の権限拡大
編集司法裁判所による違憲審査制
編集アメリカ合衆国の裁判所には、連邦議会が制定した法律の憲法適合性を審査する権限(違憲立法審査権)があるとされる。この権限は憲法の明文上定められたものではなく、合衆国最高裁判所が1803年に出したマーベリー対マディソン事件判決 (Marbury v. Madison, 5 U.S. 137 (1803)) により、判例法上確立されたものである。合衆国最高裁判所は、この違憲立法審査権によって、アメリカ政治史上重要な憲法判断を行ってきた。
連邦最高裁判所による著名な判例
編集脚注
編集注釈
編集出典
編集関連項目
編集外部リンク
編集- アメリカ合衆国憲法(原本の写真あり) - アメリカ国立公文書記録管理局のサイト
- アメリカ合衆国憲法(日本語訳) - 駐日アメリカ合衆国大使館のサイト
- アメリカ合衆国憲法 - コーネル大学Legal Information Instituteのサイト
- アメリカ連邦最高裁・主要憲法判例 - 神戸大学国際文化学部・安岡正晴助教授のサイト