四四式騎銃、日本のカービン
本来のカービンとは、馬上での取り回しを考慮し、短縮軽量化の上で背負いやすいように、吊り環の位置を変更するなどした小銃であった。また、ボルトアクション式カービンでは、ボルトハンドルが他の装具に引っかかりにくいように下方に屈曲させ、閉鎖状態で銃の側面に密着するようにしたものも多かった。
小銃に比べて小型軽量化されたカービンは取り回しが良く、場所をとらないという利点がある一方、射撃時の反動・マズルブラスト・発射音が激しくなり、肝心の命中精度が低下するという欠点が生じ、銃自体の寿命も短くなるとされた。
現在ではおおむね﹁小型のライフル﹂を意味する分類で、小銃を持たない下級将校や車両乗員、空挺部隊などの装備に制限のある特殊部隊、市街戦や森林戦など至近距離での戦闘が想定される地域の兵士などに装備されている。
日本の防衛省では、Carbineの英単語に対応する語として﹁騎銃﹂を当て、﹁小銃の一種で、歩兵銃に比べて銃身長が短い銃﹂と定義している[1]。
現在、大抵の国で制式小銃はアサルトライフルであり、アサルトライフルをより短縮した派生型をアサルトカービンやカービンモデルなどと呼称する。
アメリカ特殊作戦軍(SOCOM)やイギリス特殊部隊(UKSF)などに代表される世界各国の特殊部隊では必ずと言っても良いほどにアサルトカービンが配備されている。ほかにも車両乗員などが個人防衛火器(PDW)として装備している事も多い。
1997年、アメリカ軍は主力小銃M16A2アサルトライフルのカービンモデルであるコルト・コマンドーを改良し、M4カービンとして採用した。M4カービンは現代における代表的なカービンであり、取り回しの良さから近接戦闘や特殊作戦用の銃器として世界中の軍・警察で使用されている。
1998年、アメリカ陸軍ではM16A2アサルトライフルの後継装備としてM4カービンが選定され、現在では一般の兵士を含むほとんどの部隊でM16A2ライフルをM4カービンへ更新したとされる。
一方、多くの軍隊では同種のアサルトカービンのような軽量小銃の標準化に対して反発が起きており、そのような国では大抵の一般部隊は通常のアサルトライフルを装備している。さらに彼らに加えて、旧来型の大口径・長射程・高威力の小銃(いわゆるバトルライフル)を装備した選抜射手と呼ばれる、アサルトライフル・アサルトカービンとスナイパーライフルのギャップを埋めるような兵士を配置することもある。
カービンの一種として拳銃弾を使用するものがあり、これらはピストルカービン(Pistol Carbine)、またはPistol-Caliber Carbineの略称からPCCと呼称される。金属製薬莢が普及し始めると、ピストルカービンは真っ先に登場した。これらは当時人気だったリボルバー式拳銃と同じ弾薬を使用する"仲間"(companions)として、より高い初速と射撃精度を実現するべく開発された。西部開拓時代にはカウボーイや保安官によって広く使われ、.44-40弾あるいは.38-40弾を使用するウィンチェスターレバーアクションカービンとコルトリボルバーの組み合わせが最も良く見られた。
20世紀になると、より強力なリボルバー用銃弾が開発され、ウィンチェスター社やマーリン社では.38スペシャル/.357マグナム弾及び.44スペシャル/.44マグナム弾を使用するレバーアクションカービンを開発した。また、特殊な例としてはデ・リーズル カービンがある。この銃は特殊作戦用に開発されたもので、.45ACP弾を使用する。
現代にも同種のカービンは存在し、スターム・ルガー社のルガー・ポリス・カービン(採用中止[誰によって?])は同社の拳銃用弾倉を使用する。同様にマーリン社のキャンプ・カービン(採用中止[誰によって?])ではM1911拳銃の弾倉を使用している。ベレッタ社のベレッタCx4はベレッタPx4拳銃と相補的に運用することを見越しており、各種のベレッタ拳銃と弾倉を共有出来るように設計されている。ハイポイント社の995カービンは同社のC-9[要曖昧さ回避]拳銃と弾倉を共有し、またアメリカ国内における最も安価なカービンの一つでもある。その他、ケルテック社(Kel-Tec)のSUB-2000シリーズは、グロック、ベレッタ、スミス&ウェッソンなどの9mm或いは.40S&W弾を使用する拳銃をカービン化したものである。このような製品から、近年になって拳銃と弾薬を共有するコンパニオン・カービン(companion carbines)の需要は高まっていると見られる。
ピストルカービンの主な利点は、銃床や長銃身の為に発砲炎や反動が抑制され、高初速と高エネルギー及びそれに伴う殺傷力や貫通力が期待できる点である。またピストルカービンは銃声も小さく、屋内のような閉所で発砲したとしても聴覚に異常を来し難いとされる。一方で.223弾や7.62x39弾を用いる通常のライフルあるいはカービンと比べて、ピストルカービンは有効射程が短く弾道も不安定で、威力も劣る。さらに、とくに軍事用途としては、小銃弾とは別に拳銃弾を多量に用意せねばならないため運用上の不便や兵站への負担が大きくなるというデメリットもある。
ルガーP08アーティラリ・モデル
20世紀初頭、銃床や長銃身を取り付けられる拳銃が何種類か設計された。これらはしばしばカービンの役割を代用した。例えばルガーP08には、アーティラリ・モデル(砲兵型)と呼ばれる派生型がある。これは長銃身とタンジェント・サイト、及び木製銃床を備えたもので、しばしばMP18と共有出来る32連発弾倉が装填された。
モーゼルC96は標準的にタンジェント・サイトを備えており、木製銃床を装着することが可能であった。フルオート射撃が可能な改良型M712が、第二次世界大戦中のドイツ空軍降下猟兵や武装親衛隊によって短機関銃あるいはカービンの代用品として使用された。その他、ブローニングHPや南部大型自動拳銃大型(甲)なども木製銃床を取り付けるなどしてピストルカービン化することが可能であった。
近年ではM1911やグロック向けに、ブローバック動作をボルト動作に変換し、長銃身と銃床を取り付けるカービン化キットが市場に登場している。これを取り付けると本来の装弾機構とトリガーメカニズムを利用したカービン銃となるのである。
短機関銃のうち、フルオート射撃機能を廃して銃身を延長するなどしたモデルもまた、ピストルカービンと呼ばれる事がある。これはアメリカにおけるアサルト・ウエポン規制法など銃の所持・使用を規制する法律に従ったもので、民生用カービンとして市販されたり、警察などの公機関で使用される。
H&K MP5シリーズの民生用カービンHK94は、銃身長とセレクタが2段式(セミオート、セーフティのみ)になっている点を除いて、MP5との外見上の差はほとんど無い。
●アサルトライフル - 現代におけるカービン銃は、アサルトライフルの発展型として、アサルトライフルを短くしたものが圧倒的に多い。
●短機関銃 - 国や時代によっては、カービンを﹃サブマシンガン﹄と呼称する場合がある。また逆に短機関銃の中にもカービンと呼称されるものがある。
●PDW - いわゆるPDWの中には新型アサルトライフルを短縮化したもの、すなわちカービン銃も含まれている。
●カラビナ - 語源はドイツ語の﹁Karabiner﹂で、カービン銃のこと。
●カラビニエリ - イタリアの国家憲兵。設立当初にカービン銃を装備していたため、カービン銃を名称の語源としている。