野外手術システム
特徴 編集
現在の野外手術システムは1988年︵昭和63年︶に導入されたものである。車台は73式大型トラック︵現・3 1/2tトラック︶をベースとしており、手術車、手術準備車、滅菌車、衛生補給車の4つの車両で1セットになっている。またシステムに必要な電源・水の供給のため、出力15キロボルトアンペアの発電機2台(21/2tトレーラ、1tトレーラ)と1t水タンクトレーラ1台を、手術車を除く各車で牽引している。実際に使用される際は、所要床面積確保のため、手術車は約2倍に拡幅できる[1]。また手術車と手術準備車の側面が通路で連接されて一つの部屋のようになる。衛生補給車には、実働の際に用いられる医療機器や薬剤等が搭載されている。なお、これらのシェルターは卸下して展開することもできる。
開胸、開腹、開頭など救命のための初期外科手術に対応でき、1日10~15人の手術に対応可能とされている[1]。なお自衛隊衛生の体制では、本システムを含む収容所・野外病院では、後方病院への後送に耐えうるようにダメージコントロール手術または処置を実施することとされており、専門的な治療は、戦場から離れた地域において、比較的安全で設備も整った医療機関で行われることとされている[2]。
重要影響事態の際には、戦場近くに展開し、実動するとされる後方支援連隊の衛生部隊︵師団収容所、野外病院など︶に配置される[3]。大量の負傷者が出た場合は手術前に病院天幕でトリアージの判定が行われ、治療後に病院天幕に移送し看護を行う[4]。
設備内容 編集
- 手術車
- 電動手術台、X線撮影装置、無影灯(5灯式)、スポット灯、麻酔器、電気メス、患者監視装置
- 手術準備車
- 簡易血算器、血液ガス分析、血液迅速分析装置(生化学検査)、遠心分離機、双眼顕微鏡、X線フィルムの現像、手術用器材及び薬品の保管
- 滅菌車
- 手術用機材の滅菌・洗浄
- 衛生補給車
- 医薬品、血液、衛生用品の保管・補給
必要とされる要員 編集
災害派遣・人道支援復興活動など、主な活動実績 編集
自衛艦での運用 編集
「おおすみ型輸送艦 (2代)#医療機能」も参照
スマトラ島沖地震国際緊急援助隊派遣後の2005年6月、おおすみ型輸送艦﹁しもきた﹂の車両甲板上に野外手術システムを展開する技術試験を行った結果、複数の野外手術システムの展開が可能とされ、災害時におおすみ型輸送艦を病院船として活用することになった。2006年度以降、野外手術システムの電源を艦内から取るための艦内改装工事が行われ、2013年8月には、﹁しもきた﹂に陸上自衛隊の野外手術システム︵コンテナ式医療モジュール5つ︶を搭載し、災害派遣医療チーム︵DMAT︶やドクターヘリとも連携して、病院船︵医療モジュール搭載船︶の実証訓練が行われた[5][6]。
また2015年9月には、西部方面衛生隊の保有機材をうらが型掃海母艦﹁うらが﹂の艦上に展開しての協同訓練が行われ、運用の適合性が確認された[7]。
脚注 編集
(一)^ abcde﹃自衛隊装備年鑑 2011-2012﹄朝雲新聞社、2011年、178頁。ISBN 978-4750910321。
(二)^ 防衛省 (2015年4月). “自衛隊の第一線救護における適確な救命について” (PDF). 2015年7月23日閲覧。
(三)^ 日本文化チャンネル桜が2010年に北部方面隊隷下師団の野外手術システムを取材した際の情報
(四)^ 陸上自衛隊朝霞駐屯地 東部方面衛生隊
(五)^ 防衛省 (2013年8月31日). “平成25年度﹁防災の日﹂総合防災訓練について”. 2013年9月1日閲覧。
(六)^ NHKオンライン (2013年8月31日). “沖合の﹁病院船﹂で治療訓練”. 2013年9月1日閲覧。
(七)^ “平成27年度第2次 隊錬成訓練﹁海上自衛隊との協同訓練﹂”. 鎮西新聞. 西部方面総監部総務部広報室. (2015年11月30日) 2016年1月7日閲覧。