アメリカ空軍所属のF-111F(1972年)
ア メ リ カ 空 軍 は 1 9 5 8 年 に F - 1 0 5 の 後 継 と し て 使 用 す る 戦 闘 爆 撃 機 を 計 画 す る 。 当 初 最 高 速 度 マ ッ ハ 2 以 上 の V T O L 機 を 希 望 す る が 技 術 的 に 困 難 で あ る と し て 断 念 。 代 わ り に 最 高 速 度 マ ッ ハ 2 . 5 以 上 の 複 座 戦 闘 爆 撃 機 を 計 画 し た 。 検 討 の 結 果 、 こ ち ら の 計 画 は 実 現 可 能 と さ れ た た め 、 1 9 6 0 年 10 月 に 各 メ ー カ ー に 提 案 、 12 月 に は T F X ︵ T a c t i c a l F i g h t e r E x p e r i m e n t a l ︶ 計 画 と 命 名 さ れ た 。
こ れ と 同 時 期 、 ア メ リ カ 海 軍 は 長 距 離 空 対 空 ミ サ イ ル を 装 備 す る 艦 隊 防 空 用 戦 闘 機 ︵ F A D F ‥ F l e e t A i r D e f e n c e F i g h t e r ︶ と し て F 6 D を 開 発 し て い た が 、 こ れ を キ ャ ン セ ル し 、 仕 様 を あ ら た め て 再 度 開 発 を 計 画 し て い た 。 こ の 両 計 画 に 目 を つ け た マ ク ナ マ ラ 国 防 長 官 は コ ス ト 削 減 の た め 計 画 の 統 合 を 命 ず る 。 そ の 命 を 受 け た 空 海 軍 は 共 通 部 分 に つ い て の 検 討 を 行 う が 、 空 軍 の 要 求 は 低 空 を 音 速 で 駆 け 抜 け る こ と が で き る 機 体 、 海 軍 の 要 求 は 大 型 レ ー ダ ー を 装 備 す る 並 列 複 座 ︵ 前 後 で は な く 左 右 に 並 ぶ 複 座 ︶ の 機 体 で あ っ た 。 そ の た め 両 軍 は 、 結 果 共 通 部 分 は 複 座 、 ア フ タ ー バ ー ナ ー 付 タ ー ボ フ ァ ン 双 発 、 可 変 翼 ︵ VG 翼 ︶ の 3 点 の み で 計 画 全 体 の 統 合 は 不 可 能 と 結 論 付 け た 。
し か し マ ク ナ マ ラ 長 官 は 両 軍 か ら の 同 意 を 半 ば 無 理 や り 取 り 付 け て 計 画 の 統 合 を 推 し 進 め 、 1 9 6 1 年 10 月 に は 新 た に 重 量 制 限 な ど を 設 け た 要 求 を 各 メ ー カ ー に 提 案 し た 。 こ れ に 対 し て ボ ー イ ン グ 、 ジ ェ ネ ラ ル ・ ダ イ ナ ミ ク ス 、 ロ ッ キ ー ド 、 マ ク ダ ネ ル 、 ノ ー ス ア メ リ カ ン 、 リ パ ブ リ ッ ク の 6 社 か ら 設 計 案 が 提 案 さ れ 、 空 海 軍 と N A S A で 検 討 が 行 わ れ た 。 そ の 結 果 、 要 求 を 満 た さ な い ま で も ボ ー イ ン グ 案 と ジ ェ ネ ラ ル ・ ダ イ ナ ミ ク ス 案 が こ の 中 で は 優 れ て い る と さ れ 、 再 設 計 を 行 わ せ る こ と と し た 。 ち ょ う ど 同 時 期 に 正 式 名 称 が 空 軍 型 F - 1 1 1 A 、 海 軍 型 F - 1 1 1 B と 決 定 さ れ た 。
し か し そ の 後 2 回 の 再 設 計 を 行 う も 要 求 を 満 た す も の で は な い と さ れ 、 都 合 4 回 目 の 再 設 計 が 両 社 に 命 じ ら れ た 。 4 回 目 の 設 計 案 で 空 海 軍 と も に ボ ー イ ン グ 案 が 優 れ て い る と 判 断 し 、 採 用 に 向 け た 動 き が 出 て き た 。 し か し 国 防 総 省 は ジ ェ ネ ラ ル ・ ダ イ ナ ミ ク ス 案 の 採 用 を 決 定 す る 。 こ れ は ボ ー イ ン グ 案 は ジ ェ ネ ラ ル ・ ダ イ ナ ミ ク ス 案 に 比 べ て 費 用 の 見 積 が 杜 撰 で あ る と の 、 マ ク ナ マ ラ 長 官 の 判 断 に よ る 。 し か し そ の 事 が 理 解 さ れ ず 、 空 海 軍 を 無 視 し た 決 定 は 議 会 で も 問 題 と な り 、 査 問 委 員 会 が 開 か れ た が 、 国 防 総 省 は ジ ェ ネ ラ ル ・ ダ イ ナ ミ ク ス 案 の ほ う が 共 通 部 分 が 多 く 調 達 価 格 が 低 く な る と 主 張 し 、 一 応 そ の 主 張 が 認 め ら れ た 。 ま た 最 終 案 で は ジ ェ ネ ラ ル ・ ダ イ ナ ミ ク ス 案 の 性 能 も ボ ー イ ン グ 案 に 近 づ い て い た 。 し か し こ の 決 定 に つ い て は 、 ﹁ テ キ サ ス 州 を 地 盤 と し て い た 当 時 の リ ン ド ン ・ ジ ョ ン ソ ン 大 統 領 と そ の 派 閥 に よ る 政 治 的 な 圧 力 が あ っ た ﹂ な ど と 噂 さ れ 、 現 在 も そ れ を 信 じ て い る 者 も い る [ 2 ] 。
こ う し て ジ ェ ネ ラ ル ・ ダ イ ナ ミ ク ス 案 が 採 用 さ れ 実 際 に 製 作 さ れ る こ と と な っ た が 、 空 軍 と 海 軍 の 異 な る 二 つ の 要 求 を 同 時 に 満 た そ う と し た た め 、 機 体 重 量 は 予 定 を は る か に 超 え て し ま っ た 。 海 軍 は テ ス ト を 実 施 し た も の の 、 既 に こ の 時 点 で 採 用 の 意 思 を 失 っ て い た 。 ジ ェ ネ ラ ル ・ ダ イ ナ ミ ク ス 側 は た び た び 重 量 軽 減 を 行 っ た が 要 求 仕 様 を 満 た す に は 至 ら ず 、 一 方 の 海 軍 側 は 一 切 の 妥 協 を 行 わ な か っ た 。 1 9 6 8 年 に 予 算 が 認 め ら れ な か っ た こ と で 、 F - 1 1 1 B 計 画 は 最 終 的 に キ ャ ン セ ル さ れ た 。
1 9 6 4 年 10 月 15 日 に 初 公 開 さ れ た 3 番 目 の 前 生 産 機 ︵ 機 体 番 号 6 3 - 9 7 6 8 ︶
可 変 翼 を 動 か し て デ モ ン ス ト レ ー シ ョ ン し て い る と こ ろ
一 方 、 空 軍 型 の F - 1 1 1 A は 1 9 6 4 年 12 月 21 日 に 初 飛 行 を 行 う が 、 フ ラ ッ プ の ト ラ ブ ル の た め テ ス ト は 途 中 で 打 ち 切 ら れ た 。 こ の ト ラ ブ ル は 致 命 的 な 問 題 で は な か っ た た め 、 そ の 後 の テ ス ト は 予 定 通 り 続 け ら れ た 。 し か し な が ら 、 2 回 目 の テ ス ト で 、 よ り 高 速 域 で の 飛 行 テ ス ト を 行 お う と し た と こ ろ 、 亜 音 速 域 で エ ン ジ ン の コ ン プ レ ッ サ ー ス ト ー ル が 発 生 し た 。 当 初 T F 3 0 エ ン ジ ン に 原 因 が あ る も の と 思 わ れ エ ン ジ ン の 改 修 が 行 わ れ た が 、 コ ン プ レ ッ サ ー ス ト ー ル は 依 然 と し て 発 生 し 続 け た 。 そ の 後 の 調 査 の 結 果 、 エ ア イ ン テ イ ク の 形 状 に 問 題 が あ る こ と が 判 明 し 、 ジ ェ ネ ラ ル ・ ダ イ ナ ミ ク ス は 急 遽 ト リ プ ル ・ プ ラ ウ I と 呼 ば れ る エ ア イ ン テ イ ク の 改 良 型 を 開 発 、 こ れ に よ り F - 1 1 1 A は 音 速 を 超 え る こ と に 成 功 す る 。 し か し 、 こ の エ ア イ ン テ イ ク で も 高 速 域 に お け る コ ン プ レ ッ サ ー ス ト ー ル が 発 生 し た た め 、 ト リ プ ル ・ プ ラ ウ I を 使 用 す る 型 に は マ ッ ハ 2 . 2 ︵ 計 画 値 は マ ッ ハ 2 . 5 ︶ の 速 度 制 限 が つ け ら れ た 。 こ の 制 限 は 、 後 に 改 良 型 の ト リ プ ル ・ プ ラ ウ II が 開 発 さ れ る ま で 続 い た 。
そ の 後 、 1 9 6 8 年 に は ベ ト ナ ム 戦 争 に 参 戦 し た が 、 1 9 7 3 年 の 撤 退 ま で に 複 数 機 を 損 失 し 、 1 9 6 9 年 12 月 に は 急 降 下 爆 撃 の 訓 練 を 行 っ て い た F - 1 1 1 A の 主 翼 が 引 き 起 こ し の 際 外 れ る と い う 事 故 が 発 生 し た 。 F - 1 1 1 は 7 ヶ 月 間 の 飛 行 禁 止 と な り 、 そ の 間 F - 1 1 1 の 信 頼 を 取 り 戻 す べ く 徹 底 し た 検 査 と 改 修 が 行 わ れ た こ と で 、 F - 1 1 1 A は セ ン チ ュ リ ー シ リ ー ズ や F - 4 よ り も 高 い 安 全 性 を 得 る こ と と な っ た 。
F - 1 1 1 の 基 本 性 能 は 高 く 、 戦 術 航 空 軍 団 ︵ T A C ︶ だ け に は と ど ま ら ず 、 戦 略 航 空 軍 団 ︵ S A C ︶ で は 戦 略 爆 撃 機 と し て 採 用 さ れ た 。 電 子 戦 機 型 の E F - 1 1 1 A も 開 発 さ れ る な ど 、 い く つ か の 派 生 型 も 作 ら れ た 。 機 体 塗 装 は 、 初 期 に は 明 る い 灰 色 を 基 調 と し た ア メ リ カ 空 軍 色 だ っ た が 、 ベ ト ナ ム 戦 争 以 降 は 迷 彩 塗 装 ︵ い わ ゆ る ﹁ ベ ト ナ ム 迷 彩 ﹂ ︶ が 基 本 と な り 、 後 年 に は グ レ ー 単 色 と な る 機 体 が 多 く あ っ た 。 ま た 、 一 部 の F - 1 1 1 A が N A S A に 引 き 渡 さ れ 実 験 機 と し て 使 用 さ れ た こ と が あ っ た 。
ア メ リ カ 空 軍 で は 一 時 2 0 1 0 年 頃 ま で F - 1 1 1 を 使 用 す る 予 定 で あ っ た 。 し か し な が ら 、 維 持 費 が か さ む た め 、 通 常 攻 撃 型 は F - 1 5 E な ど に そ の 任 務 を 譲 り 、 1 9 9 6 年 に 第 27 戦 術 戦 闘 航 空 団 の F - 1 1 1 F が F - 1 6 C / D と 交 代 し た こ と に よ り 退 役 完 了 し た 。 E F - 1 1 1 A は 1 9 9 8 年 に 後 継 機 を 待 た ず し て ア メ リ カ 空 軍 か ら 退 役 し た 。 そ の 後 、 F - 1 1 1 を 運 用 し た の は オ ー ス ト ラ リ ア 空 軍 の み と な り 、 2 0 1 5 年 か ら 2 0 2 0 年 頃 の 退 役 を 想 定 し て い た が [ 3 ] 、 実 際 は 2 0 1 0 年 12 月 に 退 役 し た 。
他 に も 、 ジ ェ ネ ラ ル ・ ダ イ ナ ミ ク ス 社 は 日 本 に F - 1 1 1 F を 販 売 し た い と 国 務 省 東 ア ジ ア 局 日 本 課 に 申 し 入 れ て い た が 、 同 課 は ﹁ 我 々 は 、 日 本 に 対 し 本 質 的 に 攻 撃 的 な 装 備 を 売 る こ と は 重 大 な 誤 り だ と 考 え る 。 F - 1 1 1 F の 販 売 は 、 米 国 が 日 本 に 攻 撃 的 能 力 を 有 す る 兵 器 の 保 有 を 認 め 、 現 在 の 防 衛 政 策 を 変 更 す る よ う 説 得 す る 圧 力 と し て 日 本 側 に 解 釈 さ れ る ﹂ と し て 同 意 し な い 旨 明 ら か に し て い る [ 4 ] 。
F - 1 1 1 の 初 期 バ ー ジ ョ ン 。 当 初 2 3 5 機 が 計 画 さ れ た が 、 94 機 は E 型 に 変 更 さ れ た た め 、 生 産 数 は 前 生 産 機 ︵ テ ス ト 用 ︶ な ど を 含 め 1 5 8 機 に と ど ま っ た 。 後 に 42 機 が E F - 1 1 1 A へ と 改 造 さ れ て い る 。 3 機 の 前 生 産 機 は N A S A に 引 き 渡 さ れ 、 1 9 7 0 ~ 1 9 8 0 年 代 に か け て 様 々 な 試 験 を こ な す 実 験 機 と し て 使 用 さ れ た 。
1 9 9 1 年 に 退 役 し 、 多 く の 機 体 が ア リ ゾ ナ 州 の デ ビ ス モ ン サ ン 空 軍 基 地 に あ る A M A R G で モ ス ボ ー ル さ れ た 。
F-111B(1965年頃)
F - 1 1 1 B は 海 軍 向 け の 艦 上 戦 闘 機 型 で 、 7 機 が 製 作 さ れ た 。 艦 隊 防 空 と い う 任 務 と 航 空 母 艦 運 用 の た め 形 状 、 ア ビ オ ニ ク ス と も に 空 軍 型 と の 相 違 点 は 多 く 、 共 通 点 は 3 割 程 度 し か な い 。 着 艦 時 の 前 方 視 界 確 保 の た め 機 首 は 空 軍 型 よ り 約 2 m も 短 く 、 逆 に 主 翼 は 低 速 で の 操 縦 性 確 保 の た め 約 2 m 長 い 。 レ ー ダ ー も 空 軍 型 と は 違 い 、 地 形 追 従 レ ー ダ ー は 装 備 せ ず 、 A N / A W G - 9 を 装 備 し 、 こ の レ ー ダ ー と の 組 み 合 わ せ で 長 距 離 空 対 空 ミ サ イ ル A I M - 5 4 フ ェ ニ ッ ク ス を 装 備 す る 。 フ ェ ニ ッ ク ス は ウ ェ ポ ン ベ イ に 2 発 、 主 翼 下 に 4 発 の 計 6 発 が 装 備 可 能 。
当 初 、 要 求 よ り 10 ト ン 以 上 の 重 量 過 多 と な り 、 度 々 改 修 を 重 ね て 重 量 軽 減 を 図 っ た が 、 結 局 要 求 仕 様 を 満 た す 事 は で き な か っ た 。 海 軍 側 と し て は 既 に や る 気 を 失 っ て お り 、 要 求 仕 様 を 緩 和 す る と い っ た 歩 み 寄 り は 一 切 見 せ な か っ た の で あ る [ 2 ] 。 結 局 は 重 量 超 過 を 理 由 に 空 母 で の 運 用 は 困 難 と 判 断 さ れ 、 計 画 が キ ャ ン セ ル さ れ る 。 後 に 1 機 の F - 1 1 1 B ︵ 機 体 番 号 1 5 1 9 7 4 ︶ は F - 1 4 の 開 発 デ ー タ 収 集 に 使 用 さ れ 、 1 9 6 8 年 7 月 に 空 母 ﹁ コ ー ラ ル ・ シ ー ﹂ で 着 艦 試 験 を 行 っ た が 特 に 問 題 は 無 く 、 重 量 軽 減 に 対 す る 要 求 が 過 剰 で あ っ た 事 を 示 し て い る 。
た だ し 、 大 型 の 機 体 の た め 機 動 性 は 戦 闘 機 と し て は 極 め て 低 か っ た 。 つ ま り 、 先 に 開 発 し て い た F 6 D を わ ざ わ ざ 計 画 中 止 に し て 、 あ ら た め て 代 替 機 と し て 本 機 を 開 発 し た 意 味 が 小 さ い 事 を 意 味 し て い た 。 そ の 後 開 発 さ れ た F - 1 4 は 、 F - 1 1 1 B ほ ど で は 無 か っ た が 重 量 級 の 大 型 機 で あ っ た も の の 、 リ フ テ ィ ン グ ボ デ ィ 技 術 の 導 入 や 自 動 制 御 に よ る 可 変 翼 の 後 退 翼 最 適 化 な ど に よ り 、 機 動 性 は そ れ な り に 優 れ て い た 。
そ の 後 、 こ の 機 体 は ア メ リ カ 本 国 の モ フ ェ ッ ト ・ フ ィ ー ル ド に 移 送 さ れ 、 N A S A で 航 空 管 制 シ ス テ ム の た め の 風 洞 実 験 に 使 用 さ れ 、 1 9 7 0 年 に 現 地 で 解 体 さ れ た 。 他 の 機 体 も 2 機 が 墜 落 事 故 に よ り 喪 失 、 2 機 が 廃 棄 さ れ 、 現 在 は 部 品 取 り に 使 わ れ た 1 機 が モ ハ ー ヴ ェ 砂 漠 の ス ク ラ ッ プ ヤ ー ド に 、 も う 1 機 も モ ハ ー ヴ ェ 砂 漠 内 の チ ャ イ ナ レ イ ク 海 軍 基 地 に 保 管 さ れ て い る 。 な お 、 後 に 主 翼 は 後 述 す る 戦 略 爆 撃 機 型 の F B - 1 1 1 A で 用 い ら れ た 。
空母コーラル・シーにて試験を行うF-111B。
離艦するF-111B
着艦するF-111B
NASAの風洞実験に使用されるF-111B
旧塗装のF-111C1989年 1月1日 撮影
現塗装のF-111C(2006年頃)
オ ー ス ト ラ リ ア 空 軍 が イ ン グ リ ッ シ ュ ・ エ レ ク ト リ ッ ク キ ャ ン ベ ラ の 後 継 機 と し て 導 入 し た 型 。 当 初 、 オ ー ス ト ラ リ ア 空 軍 は イ ギ リ ス で 開 発 中 で あ っ た T S R . 2 を キ ャ ン ベ ラ の 後 継 機 と し て 導 入 を 検 討 す る が 、 T S R . 2 は 開 発 中 止 に な っ た た め 、 F - 1 1 1 A 1 8 機 、 R F - 1 1 1 A 6 機 の 導 入 を 決 定 し た 。 し か し こ の 計 画 は F - 1 1 1 A の 機 体 に F B - 1 1 1 A の 主 翼 と 高 強 度 降 着 装 置 を 組 み 合 わ せ た F - 1 1 1 C 2 4 機 の 導 入 に 変 更 さ れ た 。
F - 1 1 1 C は 1 9 6 8 年 に 初 飛 行 し 、 オ ー ス ト ラ リ ア 空 軍 に 引 き 渡 さ れ た 。 し か し 、 オ リ ジ ナ ル の F - 1 1 1 に 構 造 上 の 欠 点 が 発 見 さ れ た た め に 引 渡 し は 一 旦 中 止 さ れ 、 既 に 引 き 渡 さ れ た F - 1 1 1 C も 返 却 さ れ た 。 こ れ を 受 け 、 ア メ リ カ か ら は F - 4 E 24 機 が オ ー ス ト ラ リ ア 空 軍 に リ ー ス さ れ た 。 そ の 後 、 1 9 7 3 年 に 改 修 さ れ た F - 1 1 1 C の 引 き 渡 し が 再 開 さ れ 、 1 9 8 2 年 に は 損 傷 予 備 機 と し て F - 1 1 1 A 4 機 が 導 入 さ れ 、 F - 1 1 1 C 相 当 の 改 造 を 行 い 使 用 さ れ て い る 。
1 9 8 3 年 か ら 1 9 8 5 年 に か け て F - 1 1 1 C の う ち 18 機 が A N / A V Q - 2 6 ペ イ ブ ・ タ ッ ク ・ ポ ッ ド と G B U - 1 5 ︵ 英 語 版 ︶ 装 備 の た め の 改 修 を 受 け 、 対 艦 ミ サ イ ル の A G M - 8 4 ハ ー プ ー ン 空 対 艦 ミ サ イ ル や A G M - 8 8 H A R M 対 レ ー ダ ー ミ サ イ ル の 使 用 も 可 能 と な っ た 。 晩 年 に は 、 退 役 し た E F - 1 1 1 A / F - 1 1 1 D を 部 品 取 り と し 、 エ ン ジ ン を 流 用 す る な ど し て 延 命 を 図 っ て い た 。 F - 1 1 1 は ア メ リ カ 空 軍 か ら は 1 9 9 6 年 に 全 機 が 退 役 し た た め 、 オ ー ス ト ラ リ ア 空 軍 の 装 備 機 は 21 世 紀 に 入 っ て も 使 用 さ れ た 唯 一 の 機 体 で あ り 、 更 新 機 種 の F / A - 1 8 F の 配 備 が 始 ま る 2 0 1 0 年 ま で は 使 用 さ れ た 。
機 体 の 塗 装 は 一 部 の 試 験 用 機 を 除 き 、 導 入 か ら し ば ら く の 間 は ア メ リ カ 空 軍 の F - 1 1 1 と 同 様 に 東 南 ア ジ ア 迷 彩 を 施 し て い た が 、 F - 1 1 1 G の 引 き 渡 し 後 は F - 1 1 1 G と 同 様 の ガ ン シ ッ プ グ レ ー 単 色 に 変 更 さ れ た 。
機体側面より
編隊飛行を行うF-111C
KC-135 (奥)、
F-15 (下から3番目)と共に飛行するF-111C
アビオニクス をA型のMk IからMk IIに改修し、エンジンをTF30-P-9、エアインテイクをトリプル・プラウIIにするなどの改修が施された型。アビオニクスのトラブルに見舞われ、運用開始はF-111Eより遅れた。生産数は当初315機を予定していたが、トラブルによる価格上昇のため96機に縮小された。1992年に退役となり、デビスモンサン空軍基地のAMARGでモスボールされた。
F-111Aのエアインテイクをトリプル・プラウIIにし、超音速でのエンジンパフォーマンスの向上を図ったバージョン。アビオニクスはECM装置を除いてA型と同様。フライ・バイ・ワイヤ システムやB-1 の開発支援にも用いられた。生産数94機。
先 行 バ ー ジ ョ ン の 結 果 を 反 映 し た 、 最 終 生 産 型 。 ア ビ オ ニ ク ス を M k I I の 改 良 型 に 変 更 し 、 エ ン ジ ン を 高 出 力 の T F 3 0 - P - 1 0 0 に 換 装 し た 型 で 、 F - 1 1 1 シ リ ー ズ 中 で 最 も 高 性 能 な 機 体 と い え る 。
他 の 型 も 幾 度 か の 近 代 化 改 修 を 受 け て い る が 、 F - 1 1 1 F は そ の 中 で も 優 先 的 に 改 修 が 行 わ れ て お り 、 そ の 能 力 を 生 か し 実 戦 に も 多 く 参 加 し て い る 。 生 産 数 1 0 6 機 。 1 9 9 6 年 7 月 27 日 に 退 役 と な っ た 。
F B - 1 1 1 A 7 6 機 の う ち 30 機 か ら 、 戦 略 攻 撃 用 装 備 を 取 り 外 し て 再 配 備 し た 型 。 実 戦 で 使 用 さ れ る こ と は な く 、 主 に 訓 練 用 と し て 使 用 さ れ た 。 1 9 9 3 年 に は 退 役 し 、 う ち 15 機 は 1 9 9 4 年 に オ ー ス ト ラ リ ア 空 軍 に 売 却 さ れ た 。
T S R . 2 の 開 発 を 中 止 し た イ ギ リ ス 空 軍 が 、 キ ャ ン ベ ラ の 後 継 機 と し て 導 入 を 検 討 し た 型 。 1 9 6 6 年 に F - 1 1 1 K 4 6 機 、 T F - 1 1 1 K 4 機 の 導 入 を 決 定 す る が 、 1 9 6 8 年 に 財 政 難 を 理 由 に キ ャ ン セ ル さ れ 、 海 軍 の 艦 隊 航 空 隊 が 導 入 し て い た ブ ラ ッ ク バ ー ン バ ッ カ ニ ア を 導 入 し た 。 製 作 途 中 だ っ た K 型 2 機 分 の エ ア フ レ ー ム は 他 の 機 体 に 流 用 さ れ た 。 な お 、 F - 1 1 1 K と T F - 1 1 1 K と い う 名 称 で あ る が こ れ は ア メ リ カ 側 が 指 定 し た 型 式 で あ り 、 同 じ く ア メ リ カ 海 軍 の F - 4 K と F - 4 M が そ れ ぞ れ フ ァ ン ト ム F G . 1 ・ フ ァ ン ト ム F G R . 2 と イ ギ リ ス 軍 の 機 体 に 準 じ た 名 称 に 改 め ら れ て い る た め 配 備 さ れ た 場 合 同 じ 変 更 が あ っ た 可 能 性 が 高 い 。
編隊を組むFB-1111983年 12月1日 撮影
1 9 6 0 年 代 - 1 9 7 0 年 代 、 ソ ビ エ ト 連 邦 の 防 空 網 は 発 達 し て き て お り 、 そ れ 以 前 に 構 想 さ れ た よ う な 高 空 侵 攻 を 行 え ば 、 レ ー ダ ー に 発 見 さ れ 地 対 空 ミ サ イ ル や 戦 闘 機 の 餌 食 と な る の は 明 ら か で あ っ た 。 そ の た め 戦 略 航 空 軍 団 で は 、 レ ー ダ ー に 捕 捉 さ れ な い 地 表 す れ す れ の 低 空 を 飛 行 さ せ て 敵 地 に 侵 入 し 、 攻 撃 を 行 う こ と を 考 え た 。
し か し 当 時 使 用 さ れ て い た 戦 略 爆 撃 機 は 、 い ず れ も そ の よ う な 使 用 方 法 を 想 定 し た も の で は な か っ た た め 、 性 能 的 に は 不 十 分 で あ っ た 。 そ こ で 戦 略 航 空 軍 団 で は 、 地 形 追 従 レ ー ダ ー を 装 備 し 低 空 侵 攻 能 力 に 長 け た F - 1 1 1 の 戦 略 爆 撃 機 仕 様 を 開 発 し 、 運 用 す る こ と を 計 画 し た 。 F - 1 1 1 A か ら の 主 な 改 修 点 は 主 翼 と エ ン ジ ン で 、 主 翼 は 航 続 距 離 延 伸 の た め に F - 1 1 1 B で 使 用 さ れ て い た 長 い 主 翼 を 装 備 し 、 エ ン ジ ン は T F - 3 0 - P - 7 に 換 装 さ れ た 。
こ の 計 画 に 対 し 1 9 6 6 年 に は 開 発 予 算 が 認 め ら れ 、 マ ク ナ マ ラ の 推 奨 に よ り 2 1 0 機 の 大 量 生 産 が 決 定 さ れ た が 、 後 に B - 1 A の 開 発 が 決 定 さ れ た た め 、 F B - 1 1 1 A は そ れ ま で の つ な ぎ の 機 体 と さ れ て し ま い 、 76 機 に 削 ら れ て し ま っ た 。 し か し そ の B - 1 A の 開 発 が カ ー タ ー 大 統 領 の 命 令 に よ り 中 止 と な っ た た め 、 ジ ェ ネ ラ ル ・ ダ イ ナ ミ ク ス は 代 替 機 と し て F B - 1 1 1 A の 改 良 型 の F B - 1 1 1 B / C / G な ど を 提 案 し て ア プ ロ ー チ す る が 、 採 用 に 至 ら な か っ た 。 次 代 の レ ー ガ ン 大 統 領 に よ り ア メ リ カ が 軍 拡 路 線 に 転 ず る と 、 再 び 戦 略 爆 撃 機 開 発 の 機 運 が 高 ま り 、 ジ ェ ネ ラ ル ・ ダ イ ナ ミ ク ス は 再 度 の プ ラ ン と し て F B - 1 1 1 H ︵ 後 述 ︶ を 提 案 し た が 、 B - 1 B と の 競 争 に 敗 れ 、 採 用 に 至 ら な か っ た 。
F B - 1 1 1 A の 主 な 核 装 備 は 射 程 最 大 2 2 0 k m の 空 対 地 ミ サ イ ル A G M - 6 9 A S R A M ︵ 威 力 1 7 0 ~ 2 0 0 キ ロ ト ン ︶ 、 無 誘 導 核 爆 弾 の B 4 3 ︵ 7 0 - 1 , 4 5 0 キ ロ ト ン ︶ 、 B 6 1 ︵ 1 0 0 - 5 0 0 キ ロ ト ン ︶ の い ず れ か 6 発 で ウ ェ ポ ン ベ イ に 2 発 、 翼 下 に 4 発 装 備 す る 。 場 合 に よ っ て は 翼 下 に 燃 料 タ ン ク を 装 備 し 核 兵 器 は ウ ェ ポ ン ベ イ の み に 装 備 す る こ と も あ る 。 ま た B 2 8 、 B 5 7 、 B 8 3 な ど も 装 備 可 能 で あ る 。
1 9 9 1 年 に F B - 1 1 1 A は 戦 略 任 務 か ら 引 退 し た が 、 76 機 の う ち 30 機 は 戦 略 爆 撃 用 の 装 備 を 撤 去 し 、 F - 1 1 1 G と し て 再 配 備 さ れ た 。
1977年 6月にカーター政権下の軍縮によって開発中止されたB-1Aの代替として、ジェネラル・ダイナミクスが提案した型が、FB-111B/Cである。実際に製作はされていない。
計画では、FB-111Bは、FB-111Aから胴体を3 m延長して燃料と兵器搭載量を増大させ、エンジンはB-1A用に開発されたGE F101-GE-102 ターボファンエンジン2基(推力14,060kg)を搭載し、アビオニクスも最新のものに換装する。この改造により航続距離と最大離陸重量が飛躍的に増大する予定であった。同様の改造をF-111Dに対して行ったものがFB-111Cであり、加えて翼長をFB-111系統と同程度まで延伸する。結局このプランは採用されなかった。
レーガン政権下においても同様のプランが提案され、既存のFB-111A 65機をH型に改修し、80機を新造することを65億ドルで提案したが、B-1Bとの競争に敗れ、採用されなかった。
EF-111Aレイヴン
E F - 1 1 1 A は F - 1 1 1 を 元 に 開 発 さ れ た 電 子 戦 機 。 正 式 な 愛 称 は ﹁ レ イ ヴ ン ︵ R a v e n ‥ ワ タ リ ガ ラ ス の 意 ︶ ﹂ 。 非 公 式 な 愛 称 と し て ﹁ ス パ ー ク バ ー グ ︵ S p a r k V a r k ︶ ﹂ や ﹁ エ レ ク ト リ ッ ク ・ フ ォ ッ ク ス ︵ E l e c t r i c F o x ︶ ﹂ と も い わ れ る こ と が あ る 。
1 9 7 7 年 3 月 10 日 に 初 飛 行 し 、 1 9 8 1 年 に 運 用 が 開 始 さ れ た 。 生 産 さ れ た 42 機 全 て が F - 1 1 1 A か ら の 改 造 で 、 新 規 で の 製 造 は 行 わ れ て い な い 。
空 軍 唯 一 の 電 子 戦 機 と し て 湾 岸 戦 争 な ど で 活 躍 し た が 、 維 持 費 が か さ む た め 1 9 9 8 年 に 退 役 し た 。 2 0 0 8 年 時 点 で は 国 立 ア メ リ カ 空 軍 博 物 館 を は じ め 、 4 機 が 展 示 保 存 さ れ て い る 。
F-111Aに偵察能力を付与した俗に言う戦闘偵察機仕様。オーストラリア空軍も導入する予定だったが開発されずに終わった。
オーストラリア空軍の使用する偵察機型。F-111Cと同時に導入されるはずだったRF-111Aが開発中止となったため、F-111Aのウェポンベイに偵察キットを搭載し偵察機としたバージョン。それ以外の戦闘能力はF-111Cと同等である。
乗員:2名(操縦士1名 WSO(爆撃手) 1名)
全長:22.40 m
全幅
後退角16度:19.20 m
後退角72.5度:9.74 m
全高:5.22 m
翼面積
後退角16度:61.07 m2
後退角72.5度:48.77 m2
空虚重量:21,410 kg
最大離陸重量:45,360 kg
燃料容量:
発動機:プラット・アンド・ホイットニー 製 TF-30 -P-100(A/B 付きターボファンエンジン )×2
推力:111.57 kN
巡航速度:
最大速度:マッハ 2.5(A/B使用時)
離着陸距離:離着陸共に約910 m
航続距離 :約4,700 km(最大搭載量、内部燃料のみ)
戦闘半径:
実用上昇限度:18,288 m
固定武装:必要に応じてM61A1バルカン ×1(2,084発)
兵装:11,340 kgまで搭載可能。
『007 オクトパシー 』
西ドイツのアメリカ空軍基地(架空のフェルトシュタット・エアベース)の場面で、本機がハンガー の前に駐機している。
﹃ 影 の 戦 闘 隊 ﹄
補 充 器 材 と し て 影 の 戦 闘 隊 に 配 属 さ れ る 予 定 だ っ た が 、 移 送 中 に 敵 組 織 、 ス コ ー ピ オ ン に 奪 わ れ て 敵 機 と し て 登 場 す る 。
﹃ エ リ ア 88 ﹄
対 地 上 空 母 戦 の 準 備 段 階 な ど 、 作 品 の 端 々 で モ ブ 役 と し て 登 場 す る 。 戦 闘 シ ー ン は 特 に な く 、 主 要 キ ャ ラ ク タ ー も 搭 乗 し な い 。
『ロシアの核』
主人公の乗機として、架空の偵察機 型でSEAD 任務にも対応する「RF-111G ヴァンパイア 」が登場。ロシア がウクライナ とトルコ へ核攻撃したことを受け、ロシア国内へ偵察 とSEAD任務に出撃する。
﹃ W a r g a m e R e d D r a g o n ﹄
N A T O 陣 営 の N A T O デ ッ キ 、 ア メ リ カ 軍 デ ッ キ で 使 用 可 能 な 航 空 機 と し て 登 場 す る 。 N A T O デ ッ キ に は F - 1 1 1 G が 、 ア メ リ カ 軍 デ ッ キ に は F - 1 1 1 E ・ F - 1 1 1 F ・ E F - 1 1 1 A が 登 場 す る 。
﹃ 紺 碧 の 艦 隊 2 A D V A N C E ﹄
ア メ リ カ の 航 空 機 と し て 登 場 。 空 対 空 ミ サ イ ル や レ ー ザ ー 誘 導 爆 弾 を 装 備 し て い る 。
(一) ^ 戦 闘 爆 撃 機 に 分 類 さ れ る 事 が 多 い が 、 攻 撃 機 に 分 類 さ れ る 場 合 も あ る 。 ま た 派 生 型 と し て 戦 略 爆 撃 機 型 、 開 発 に 失 敗 し て い る が 艦 上 戦 闘 機 型 が あ る 。
(二) ^ た だ し 、 戦 闘 で の 損 失 は 敵 対 空 火 器 に よ る 1 機 の み で 、 他 は 電 子 機 器 や エ ン ジ ン の ト ラ ブ ル が 原 因 で あ っ た 。
(三) ^ こ の 空 爆 で カ ダ フ ィ 大 佐 の 末 娘 が 死 亡 し て い る 。
(四) ^ F - 1 5 E の 数 が 少 な か っ た 当 時 の 話 で あ り 、 現 在 で は F - 1 5 E が レ ー ザ ー 誘 導 爆 弾 を 使 っ た ミ ッ シ ョ ン や 地 形 追 従 飛 行 を 用 い る ミ ッ シ ョ ン を 担 当 し て い る 。
^ Knaack, Marcelle Size. Encyclopedia of US Air Force Aircraft and Missile Systems: Volume 1 Post-World War II Fighters 1945-1973 . Washington, DC: Office of Air Force History, 1978. ISBN 0-912799-59-5 .
^ a b 「世界の駄っ作機 4」岡部ださく 著 ISBN 4499229901
^ F-111 UPDATE Parts 1 and 2
^ Confidentialfrom R.A. Ericson, Jr. to Mr. Sipes, “Possible F-111-F Sales to Japan,” (February 14, 1972), Japan and the United States, Fiche 01512.