「カルメル派修道女の対話」の版間の差分
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20世紀のドイツのカトリック文学を代表する女流作家{{仮リンク|ゲルトルート・フォン・ル・フォール|en|Gertrud von Le Fort}}が[[1931年]]に発表した小説『{{仮リンク|断頭台下の最後の女|de|Die Letzte am Schafott}}』を、[[ジョルジュ・ベルナノス]]が台本化した。<ref>『オペラ鑑賞辞典』P364</ref> [[リブレット (音楽)|リブレット]]の起源は「[[コンピエーニュ]]の16修道女殉教者」([[:en: Martyrs of Compiègne |英語]])というカルメル会修道女の処刑という史実のなかで、生き残ったマザー・マリーが書き残した『証言(報告)』が[[1906年]]に出版され、ル・フォールがこ |
20世紀のドイツのカトリック文学を代表する女流作家{{仮リンク|ゲルトルート・フォン・ル・フォール|en|Gertrud von Le Fort}}が[[1931年]]に発表した小説『{{仮リンク|断頭台下の最後の女|de|Die Letzte am Schafott}}』を、[[ジョルジュ・ベルナノス]]が台本化した。<ref>『オペラ鑑賞辞典』P364</ref> [[リブレット (音楽)|リブレット]]の起源は「[[コンピエーニュ]]の16修道女殉教者」([[:en: Martyrs of Compiègne |英語]])というカルメル会修道女の処刑という史実のなかで、生き残ったマザー・マリーが書き残した『証言(報告)』が[[1906年]]に出版され、ル・フォールがこの実話に基づいて小説化した。[[レジスタンス]]運動で活躍した[[オーストリア]]の神父{{仮リンク|ブルックベルガー|en| Raymond Leopold Bruckberger }}がこれを映画化しようということで、当時のカトリック文学の重鎮ベルナノスが指名され、映画の[[シナリオ]] が作成された。なお、末期癌と闘っていたベルナノスはこれを書き上げた直後に死亡してしまい、原稿は死後彼の書斎で発見された。このシナリオは当初映画には不向きとされ、戯曲として舞台上演された。映画製作にはさらに時間がかかり、オペラ化のほうが先行することになった。プーランクはこのリブレットを読み、すぐに気に入りオペラ化できる確信を持つに至った。主役には{{仮リンク|ドゥニーズ・デュヴァル|fr|Denise Duval }}を想定して作曲を進めた。なお、映画自体は{{仮リンク|フィリップ・アゴスティニ|en|Philippe Agostini}} 監督とブルックベルガーにより[[1960年]]に『[[:en: Martyrs of Compiègne | Le Dialogue des carmélites(英語)]]』として、[[ジャンヌ・モロー]]、[[アリダ・ヴァリ]]、[[ピエール・ブラッスール]]らの配役で完成している<ref>『新グローヴ オペラ事典』P233</ref>。既に世界的に高い評価を得ているが、『オペラ名曲百科』の著者 [[永竹由幸]]は「恐ろしいほど冴えきった名曲。現代フランス・オペラでは最高峰であろう」と評している<ref>『オペラ名曲百科 上 増補版 イタリア・フランス・スペイン・ブラジル編』P498</ref>。 |
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== 楽曲 == |
== 楽曲 == |
2019年1月6日 (日) 18:09時点における版
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/5f/Carm%C3%A9litesComp02.jpg/260px-Carm%C3%A9litesComp02.jpg)
概要
1957年1月26日に、ミラノ・スカラ座にて初演され、成功をおさめた。ニーノ・サンツォーニョが指揮を担当し、この時はイタリア語で歌われた。フランス語版初演は同年6月21日に、パリ・オペラ座にて行われ、指揮はピエール・デルヴォーであった。本作が最初にイタリアでイタリア語によって上演された理由は、このオペラの依頼者である 楽譜出版会社リコルディとの契約によるものである[1]。プーランクの他のオペラはコミカルな﹃ティレジアスの乳房﹄︵1947年︶、ソプラノ一人によるモノオペラ﹃人間の声﹄︵1958年︶の2作がある。このオペラは19世紀に多く作られた恋愛を中心としたロマンティックな愛憎劇とは全く異なり、シリアスな内容となっている。また、本作はプーランクの音楽の集大成と言える内容となっており、作曲者本人の過去の作品からの部分的引用が多く使われている。具体的には、 ミサ曲ト長調、オルガン、弦楽とティンパニのための協奏曲 ト短調、ピアノ協奏曲 嬰ハ短調、﹃夜想曲﹄第1番、歌曲集﹃冷気と火﹄︵第3曲 全ては消え去り︶、﹃小象ババールの物語﹄、﹃2つのクラリネットのためのソナタ﹄などである[2]。リブレット
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/41/Gertrud_v_Le_Fort_c1935.jpg/180px-Gertrud_v_Le_Fort_c1935.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/46/Georges-Bernanos.jpg/150px-Georges-Bernanos.jpg)
楽曲
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/49/Elin_Rombo_as_Sister_Blanche_in_Dialogues_of_the_Carmelites_2011.jpg/260px-Elin_Rombo_as_Sister_Blanche_in_Dialogues_of_the_Carmelites_2011.jpg)
初演後
1957年の初演の後、同年 9月20日にアメリカ初演はサンフランシスコ歌劇場にて行われた。出演はL・プライス、ターナーら、指揮はエーリヒ・ラインスドルフであった。イギリス初演は1958年 1月16日にロンドンのコヴェント・ガーデンロイヤル・オペラ・ハウスにて行われた。出演はモリソン、ジョーン・サザーランド、ワトソンら、指揮はラファエル・クーベリックであった[11]。日本初演は1990年に日本オペラ振興会オペラ歌手育成部により日本都市センターホールにて行われた[12]。登場人物
人物名 | 声域 | 役 | ミラノ世界初演時の配役 (1957年1月26日) 指揮: ニーノ・サンツォーニョ |
フランス初演時の配役 (1957年6月21日) 指揮: ピエール・デルヴォー |
---|---|---|---|---|
ブランシュ・ド・ラ・フォルス | ソプラノ | 架空の侯爵家フォルス家の令嬢 カルメル会修道院に入る。 |
ヴィルジニア・ゼアーニ | ドゥニーズ・デュヴァル |
ド・ラ・フォルス侯爵 | バリトン | ブランシュの父 妻が民衆の暴動に巻き込まれ 命を落とした。 |
スチーピオ・コロンボ | グザヴィエ・ドプラ |
騎士フォルス | テノール | ブランシュの兄 ブランシュの身を案じる。 |
ニコラ・フィラクリーディ | ジャン・ジロドー |
コンスタンス | ソプラノ | 明るい性格の修道女 ブランシュの友人 |
ユージェニア・ラティ | リリアーヌ・ベルトン |
クロワシー夫人 | コントラルト | 現修道院長 ブランシュに修道院の 何たるかを教える。 |
ジアンナ・ペデルチーニ | ドゥニーズ・シャルレィ |
リドワーヌ夫人 | ソプラノ | 次期修道院長 | レイラ・ジェンチェル | レジーヌ・クレスパン |
マザー・マリー | メゾソプラノ | 副修道院長 | ジリオラ・フラッツォーニ | リタ・ゴール |
マザー・ジャンヌ | コントラルト | 修道女長 | ヴィットリア・パロンビーニ | ジャニーヌ・フーリエ |
シスター・マチルド | ソプラノ | 修道女 | フィオレンツァ・コッソット | ジゼル・デムティール |
礼拝堂神父 | テノール | - | アルヴィーノ・マネッリ | ミシェル・フォレル |
将校 | バリトン | - | ミケーレ・カッツァート | ジャック・マルス |
- 合唱:その他の修道女たち、将校、囚人、民衆、教徒、その他
楽器編成
演奏時間
約2時間45分︵70分、50分、45分︶。あらすじ
第1幕
第1場 ド・ラ・フォルス侯爵の書斎。 書斎でうたた寝していたド・ラ・フォルス侯爵は、騎士ド・ラ・フォルスから、ブランシュの乗る馬車が群衆に取り囲まれて身動きできないとの知らせを聞き、ブランシュの身を案じていた。程なくしてブランシュは戻り侯爵は安堵するが、ブランシュはコンピエーニュの修道院へ入りたいと言い出す。 第2場 カルメル会修道院の応接間。 数週間後、ブランシュは、修道院長のクロワシー夫人に修道院へ入れて欲しいと頼む。修道院長は、修道院は世俗の危険から逃れるために入るものではないと咎めるが、ついにはブランシュを受け入れることにした。 第3場 修道院内。 ブランシュは、いつも明るい修道女コンスタンスに対し、修道院長が病身なのに不謹慎だと責める。コンスタンスは、修道院長のためならこの身を捧げても良いと返し、さらに、自分とブランシュが若くして同じ日に死ぬ夢を見たと語った。 第4場 修道院の病室。 死に瀕した修道院長は修道女長マリーを呼び、ブランシュを支えるよう頼んだ。入ってきたブランシュにも直接諭すが、ブランシュが退出した直後、修道院長は病の苦痛に耐えきれず錯乱する。ブランシュが再び入ってきたとき、修道院長は正気を取り戻し、そのまま亡くなっていった。第2幕
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/65/MartyrinnenComp-HJSb.jpg/240px-MartyrinnenComp-HJSb.jpg)
第3幕
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/4e/Our_Lady_of_Mount_Carmel_Church%2C_Quidenham%2C_Norfolk_-_Windows_-_geograph.org.uk_-_1084822.jpg/260px-Our_Lady_of_Mount_Carmel_Church%2C_Quidenham%2C_Norfolk_-_Windows_-_geograph.org.uk_-_1084822.jpg)
音楽
劇中で用いられる聖歌 ●墓よりラザロを蘇らせし御方‥第2幕第1場。 ●アヴェ・マリア‥第2幕第2場。 ●アヴェ・ヴェルム・コルプス‥第2幕第4場。 ●サルヴェ・レジーナ‥第3幕第4場。 ●来たり給え、創造主なる聖霊よ︵en:Veni Creator Spiritus︶‥第3幕第4場。主な全曲録音・録画
年 | 配役 ブランシュ・ド・ラ・フォルス コンスタンス リドワーヌ夫人 クロワシー夫人 マリー |
指揮者、 管弦楽団および合唱団 |
レーベル |
---|---|---|---|
1958 | ドゥニーズ・デュヴァル リリアーヌ・ベルトン レジーヌ・クレスパン ドゥニーズ・シャーリィ リタ・ゴール |
ピエール・デルヴォー パリ・オペラ座管弦楽団 パリ・オペラ座合唱団 |
CD: EMI ASIN: B0001O3YBW |
1990 | カトリーヌ・デュボスク ブリジット・フルニエ ラシェル・ヤカール リタ・ゴール マルティーヌ・デュピュイ |
ケント・ナガノ リヨン歌劇場管弦楽団 リヨン歌劇場合唱団 |
CD: Virgin B000FVR5FW |
1999 | アンヌ=ソフィー・シュミット パトリシア・プティボン ナディーヌ・ドゥニーズ ヴァレリー・ミロー ヘトヴィヒ・ファスベンダー |
ジャン・レイサム=ケーニック ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団 ラン歌劇場合唱団 演出:マルト・ケラー |
DVD: ArteHouse ASIN: B000053GTD |
2004 | ダグマー・シェレンベルガー ローラ・エイキン グヴィン・ゲイヤー アニヤ・シリア バーバラ・ディヴァー |
リッカルド・ムーティ ミラノ・スカラ座管弦楽団 ミラノ・スカラ座合唱団 演出:ロバート・カーセン |
DVD: ArteHouse ASIN: B000TJBNOE |
2008 | アレクシア・ヴルガリドゥ ヤーナ・ビュヒナー アン・シュヴァネウィルム キャスリン・ハリーズ ガブリエーレ・シュナウト |
シモーネ・ヤング ハンブルク国立歌劇場管弦楽団 ハンブルク国立歌劇場合唱団 演出:ニコラス・レーンホフ |
DVD: ArteHouse ASIN: B003RS7QRC |
2010 | スーザン・グリットン エーレヌ・ギルメット ソイレ・イソコスキ シルヴィー・ブリュネ スサネ・レースマーク |
ケント・ナガノ バイエルン国立管弦楽団 バイエルン国立歌劇場 合唱団 演出:ディミトリ・チェルニャコフ |
DVD: Bel Air ASIN: B01I05LVJ0 |
2011 | サリー・マシューズ ヘンドリッケ・ファン・ケルクホーフ デボラ・ポラスキ ハイディ・ブルンナー ミケーレ・ブリート |
ベルトラン・ド・ビリー ウィーン放送交響楽団 アルノルト・シェーンベルク合唱団 |
CD: Oehms Classics ASIN: B0069TWD9C |
2013 | パトリシア・プティボン サンドリーヌ・ピオー ヴェロニク・ジャンス ロザリンド・プロウライト ソフィー・コッシュ |
ジェレミー・ロレール フィルハーモニア管弦楽団 シャンゼリゼ劇場 合唱団 演出:オリヴィエ・ピィ |
DVD: Erato ASIN: B00NT2NFPI |
脚注
- ^ 『ラルース世界音楽事典』P435
- ^ 『プーランクを探して』P300
- ^ 『オペラ鑑賞辞典』P364
- ^ 『新グローヴ オペラ事典』P233
- ^ 『オペラ名曲百科 上 増補版 イタリア・フランス・スペイン・ブラジル編』P498
- ^ 『ラルース世界音楽事典』P435
- ^ 『プーランクを探して』P299
- ^ 『プーランクを探して』P299
- ^ 『フランス・オペラの魅惑 舞台芸術論のための覚え書き』P232
- ^ 『新グローヴ オペラ事典』P235
- ^ 『オックスフォードオペラ大事典』P178
- ^ 外国オペラ作品322の日本初演記録
参考文献
- 『新グローヴ オペラ事典』 白水社(ISBN 978-4560026632)
- 『プーランクを探して』春秋社 (ISBN 978-4393935736)
- 『フランス・オペラの魅惑 舞台芸術論のための覚え書き』澤田 肇 (著)、出版社: ぎょうせい (ISBN 978-4324094037)
- 『オペラ鑑賞辞典』(東京堂出版)(ISBN: 978-4490102710)
- 『オペラ名曲百科 上 増補版 イタリア・フランス・スペイン・ブラジル編』 永竹由幸 著、音楽之友社(ISBN 4-276-00311-3)
- 『ラルース世界音楽事典』福武書店
- 『オックスフォードオペラ大事典』ジョン・ウォラック、ユアン・ウエスト(編集)、大崎滋生、西原稔(翻訳)、平凡社(ISBN 978-4582125214)
- 『パリ・オペラ座-フランス音楽史を飾る栄光と変遷-』竹原正三 著、芸術現代社(ISBN 978-4874631188)