シャア・アズナブル
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シャア・アズナブル (Char Aznable) は、﹁ガンダムシリーズ﹂のうち、アニメ﹃機動戦士ガンダム﹄にはじまる宇宙世紀を舞台にした作品に登場する、架空の人物である。本名はキャスバル・レム・ダイクン (Casval Rem Deikun)。︵声‥池田秀一︶
モビルスーツパイロット・指揮官・思想家として、類い希な能力を発揮した人物。宇宙世紀を舞台とした﹁ガンダムシリーズ﹂の最重要人物の一人である。シリーズ一作目の﹃機動戦士ガンダム﹄では、自信に満ちた言葉とそれに見合う実力で当時の視聴者にインパクトを与えた。
注意‥以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。
経歴及び劇中での活躍
ガンダムシリーズには多数の派生作品があり登場人物の事蹟も異なる場合があるが、ここでは特に断りのない限り、﹁正史﹂とされるテレビアニメ﹃機動戦士ガンダム﹄、﹃機動戦士Ζガンダム﹄及びアニメーション映画﹃機動戦士ガンダム 逆襲のシャア﹄における事蹟を基準に記す。 一年戦争以前から一年戦争前半までの経歴は、主にテレビアニメ﹃機動戦士ガンダム﹄の企画時に作られた設定や富野由悠季著の小説﹃機動戦士ガンダム﹄による設定を整理して、アニメ版の設定に組み込んだ﹃モビルスーツバリエーション﹄ (MSV) などの書籍による。なお、小説版は完全にパラレルワールドにあたるため、そのまま参考にすることはできない。また、角川書店発行の漫画雑誌﹁ガンダムエース﹂創刊号より連載されている安彦良和の漫画﹃機動戦士ガンダム THE ORIGIN﹄は映像作品ではないため、サンライズにおける公式設定とはいえないが、扱いとしては近年の公式設定に最も近いものとはいえる。ただし、アニメ版と設定が大きく異なる部分も多いため、注意が必要である。 一年戦争終結後︵ア・バオア・クー脱出︶からエゥーゴ結成時代の映像化も特にされておらず、﹃機動戦士Ζガンダム﹄にてワンカットが描かれたのみである。そのため従来は文字による設定や、小説版﹃機動戦士Ζガンダム﹄おける細部の描写で判断するしかなかったが、﹁ガンダムエース﹂に連載された北爪宏幸の漫画﹃機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像﹄は本格的にこの期間を描いている。これも同様にアニメ作品ではないためサンライズにおける公式設定ではないが、やはり扱いは公式設定に最も近い。その他、ゲーム﹃機動戦士ガンダム ギレンの野望﹄シリーズやプレイステーションゲーム﹃機動戦士Ζガンダム﹄などでも短いながら映像が描かれている。 第一次ネオ・ジオン抗争から第二次ネオ・ジオン抗争開戦以前においても映像化されておらず、また、準公式的な扱いをされている作品もないため、諸説入り乱れている。一応はプレイステーションゲーム﹃機動戦士Ζガンダム﹄や﹃機動戦士ガンダム 逆襲のシャア﹄などでも短いながら映像が描かれている。生誕から幼少時代
宇宙世紀0059年、ジオン共和国創始者、ジオン・ズム・ダイクンとトア・ダイクン︵﹃THE ORIGIN﹄ではアストライア・トア・ダイクン︶の子として生まれる。セイラ・マス︵本名︷あるいは旧名︸アルテイシア・ソム・ダイクン︶は実妹。 宇宙世紀0069年、ジオン・ズム・ダイクンの死後、ザビ家による迫害を受け地球に逃れる。この頃は、父ジオンのよき理解者であったジンバ・ラルの庇護の下、南欧のマス家に養子入り︵あるいは、ジンバがマス家の名を購入して改名︶し、エドワゥ・マス (Edwow Mass) を名乗る。記録上、父ジオンは病死とされているが、実際はデギン・ソド・ザビらによる暗殺と見ており︵父がデギンを暗殺者として名指ししようとした動作を、後継者に指名したように装ったとジンバ・ラルやシャア︵およびセイラ︶は考えている︶、ザビ家への復讐を誓う。 エドワゥ・マスの名はTVシリーズ放映当時には設定されておらず、小説版で初めて登場した。また今のところ、以後の映像作品にも使われていない。 ﹃機動戦士ガンダム THE ORIGIN﹄では、ジオン・ズム・ダイクン急死、サスロ・ザビ暗殺などの政変により、サイド3︵この作品中では当初﹁ムンゾ自治共和国﹂と称していた︶に居場所を失ったキャスバルとアルテイシアの兄妹は、ランバ・ラルやクラウレ・ハモン一党の手助けによりジンバ・ラルと共に地球へ亡命する。しかし生母アストライア・トア・ダイクンとは生き別れとなってしまう。マス家当主テアボロ・マスの元に養子入りするが、ジンバが独断でクーデターを謀ったためにキシリア・ザビの刺客に襲われジンバは死亡、テアボロも重傷を負う。彼らの窮状を見かねたシュウ・ヤシマ︵ミライ・ヤシマの父︶の提案で、彼が所有するサイド5のテキサスコロニーへ移住することとなる。 なおこの頃のキャスバルの愛慕の対象は、神憑りな政治的扇動者である父ジオンではなく、彼とその命を狙うザビ家によって薄幸な人生を辿る母アストライアであり、彼女が最終的に報われぬ死を迎えたことでキャスバルはザビ家への憎悪を強めた、と安彦は解釈している。のちに見いだしたララァを愛したことも、彼女の中に母の面影を見たためであるとする。サイド3潜入時代
宇宙世紀0074年、シャア・アズナブルと再び名を変えサイド3に潜入、ジオン士官学校に入学。士官学校時代にガルマ・ザビと出会い親交を結ぶ。優秀な成績を修め、首席で卒業できたがガルマにそれを譲り次席で卒業する。宇宙世紀0078年、卒業とともにキシリア・ザビ揮下の教導機動大隊に入隊。 その後、ジオン公国国防軍がドズル・ザビ揮下の宇宙攻撃軍とキシリア・ザビ揮下の突撃機動軍の2軍に分裂したことに伴い、宇宙攻撃軍に入隊した。ジオン公国軍における軍籍番号は﹁PM0571977243S﹂である。 ジオン公国では正体がばれるのを隠すため、常に仮面をつけて顔を隠している。これは顔に火傷があるためと本人は説明しているが、実際に額にそのような傷は見られない。 なお誕生日は11月17日とされることが多いが、9月27日とする説もある。一説によれば11月17日がキャスバルの、9月27日が本物のシャア・アズナブルのものとされるが、キャスバルがシャアの戸籍をどのように手に入れたかは諸説入り乱れておりはっきりしない。一般的には死亡したシャア・アズナブルという人物の戸籍を不正に入手したとされるが、アズナブル家に養子に入ったなどとする説も存在する。 ﹃機動戦士ガンダム THE ORIGIN﹄では、キャスバルがシャアを名乗った理由として﹁シャア・アズナブルという人物が元々別に存在した﹂という説を取っている。ここで登場する﹁本物の﹂シャア・アズナブルはテキサスコロニーの管理者の息子で、キャスバルと瓜二つの風貌を持ち、同コロニーへ移住した際に出逢って友人となった。やがてシャアがサイド5の学校を中退しジオン士官学校を受験、合格にいたったのを知ったキャスバルは、彼に同行を申し出る。それを察知したキシリアは部下にキャスバルの暗殺を命じるが、既に承知していたキャスバルは旅立ちの日に空港で計略によってシャアと入れ替わる。結果本来のシャアはシャトル爆破工作でエドワゥ・マスとして命を落とし、キャスバルが以後シャア・アズナブルを名乗りジオン士官学校へ入学した。 やがて教練過程を経て予備任務に就くが、ある事件により連邦の治安部隊がジオンを制圧しようとした際、ガルマを焚き付けて同僚らとこれを奇襲、責任を負い学籍を抹消され除隊する。この時期に地球に降りてジャブロー建設工事の進んでいたアマゾン・マナウスに滞在、ジャブローの情報収集や建設反対派との関係構築、モビルスーツの前身であるモビルワーカーの操縦の習熟など後の行動の下準備を進めている。またここでララァ・スンと出会い彼女を保護している。その後モビルスーツのテストパイロットとして軍に復帰、ミノフスキー博士亡命事件の際には史上初となるモビルスーツ同士の戦闘にも参加している。一年戦争前半
宇宙世紀0079年1月、地球連邦政府との﹁一年戦争﹂が勃発。ドズル・ザビが率いる宇宙攻撃軍に所属し、モビルスーツのエースパイロットとして活躍。愛機初期量産型ザクII︵型式番号‥MS-06C︶をパーソナルカラーである赤に塗装し、ルウム戦役ではたった一人で5隻もの戦艦を沈め、﹁シャアの五艘飛び﹂と賞賛されるとともに赤い彗星の異名を得、その名は連邦軍の末端兵士にまで轟き恐怖の存在となる︵この伝説に関しては諸説あり、彼の戦功を妬む者達はより戦果を低く見積もる傾向にある︶。またこの功績により中尉から少佐に二階級特進する。 その後、ドズルがルウム戦役で旗艦としていたムサイ級旗艦型軽巡洋艦ファルメルを受領し、モビルスーツ中隊長の任に付いた。乗機も量産型ザクII︵型式番号‥MS-06F︶、指揮官用ザクII︵型式番号‥MS-06S︶とその時々の最新機種が与えられ、﹁通常の三倍の速度﹂の性能を引き出すと恐れられた。一年戦争後半︵﹃機動戦士ガンダム﹄︶
同年9月、サイド7で連邦軍が極秘にモビルスーツと新艦を開発しているとの情報をつかむ。偵察に出した部下が、ザクもろともガンダムに撃破︵史上初となる武装モビルスーツ同士の戦闘︶されると、自らコロニーに潜入しホワイトベースに避難し従軍していた妹のアルテイシア︵セイラ︶と再会、そして生涯のライバルとなるアムロ・レイのガンダムと初対決を繰り広げる。この時シャアは始終アムロを圧倒するものの、ガンダムを目のあたりにしその性能に驚嘆する。その後、ホワイトベースとガンダムの奪取もしくは破壊を命じられ、サイド7を脱出したホワイトベースを追跡。ホワイトベースの逃げ込んだ連邦軍宇宙要塞ルナツーへ潜入し破壊工作を行うなど、幾度となく攻撃を仕掛けるが失敗。多数の部下とザクを失う。しかし、ホワイトベースの大気圏突入を狙った奇襲の際、友軍を壊滅させられながらもジオン勢力下に降下させることに成功する。 地球降下後シャアは幼馴染のガルマ・ザビと共にホワイトベースの撃破を目指し、共闘するがザビ家への遺恨はけっして忘れようとせず隙を見て彼を謀殺する。そのさい敵のホワイトベースとガンダムを利用している。ガルマの死は彼を溺愛していたドズルの怒りを買い、ガルマを守れなかった責任により宇宙攻撃軍を罷免、左遷される。なお、この頃にはすでにキシリアからの使いが彼と接触している。 富野の原作では左遷され各地を転々としていた際、インドにてララァ・スンと出会い、ニュータイプの素質を見いだしたとされる。このことについては富野由悠季著の小説﹃密会 アムロとララァ﹄にて詳しく書かれている。シャアは、ララァの中に見出した母性に思慕の情を抱くと共に彼女を寵愛し、また優れたニュータイプである彼女を傍に置くことによって、自分の感覚を研ぎ澄ませようとした。しかし、後にパプテマス・シロッコに﹁ニュータイプのなりそこない﹂と言われたように︵能力が劣っているという意味かどうかはわからないが︶、アムロにニュータイプとしての能力に差をつけられるようになり、またララァもそのアムロとより強く惹かれ合うようになる。シャアはそのことに対して嫉妬を覚え、後述するように、やがて三者は悲劇的な結末を迎えることになる。 同年11月、キシリア・ザビの手解きでキシリア率いる突撃機動軍に編入、大佐昇進とともにマッドアングラー隊の司令に就任する。ベルファストおよび大西洋上でのホワイトベース隊との戦闘︵シャア自身は攻撃には直接参加していない︶の後、追尾し、連邦軍本部があるジャブローへの進入口を発見。この情報をもとにジオン軍はジャブローへ総攻撃を仕掛けるが、連邦軍とホワイトベース隊の反撃に遭い、失敗に終わる。シャア自身は潜入部隊をのせたアッガイ数機を率いて︵目立つ赤いパーソナルカラーのズゴックに搭乗し、いつもの軍服のまま︶ジャブローへと潜入。破壊活動を行っていた際に偶然セイラと二度目の再会を果たし、彼女に軍から離れるよう諭して別れる。この後連邦軍守備隊と交戦し彼らを圧倒するものの、アムロのガンダムとの戦闘で腕部を破壊され、バランサーに不具合が生じたため撤退。ガンダムのパイロットの成長に驚きながらジャブローを後にする。 ﹃機動戦士ガンダム THE ORIGIN﹄では、オデッサとジャブローのエピソードが前後した関係でシャアの遍歴も変化している。ガルマ戦死の責により除隊した後、ジャブロー近辺でキシリアに捕えられ、原隊復帰の交換条件としてジャブローへの突破口を開く事を申し出る。ジャブロー反対派の原住民の手引きによりジャブローへ潜入、攻撃隊を侵攻させる事に成功する。その後マッドアングラー隊を率いてベルファストへ向かうホワイトベースを追い、再度赤いザクでガンダムに挑むも撃破されて脱出、マッドアングラー隊も解散したためオデッサでは不参戦となった。 同年12月、ホワイトベースを追ってザンジバルで地球を離脱。かつての部下ドレンの率いるキャメル艦隊と共にホワイトベースを挟撃しようとするが、同艦隊はシャアが駆けつける前に全滅。シャアのザンジバルも攻撃を開始するものの被弾し、撃破にはいたらなかった。サイド6においてアムロと初めて直接対面するが、シャアは彼がガンダムのパイロットである事に気づかなかった。12月末、テキサスコロニーでマ・クベとアムロの戦いを見る。マ・クベが敗れるのを見届けた後、アムロと交戦するも撤退する。この頃からニュータイプに覚醒しつつあるアムロに一方的にやられるようになる。またテキサスでは、セイラとも再会し、自分の形見として金塊を贈る。その後、ララァ・スンのモビルアーマー・エルメスと共に出撃するがアムロには敵わず、ララァは、ガンダムのビームサーベルからシャアをかばい戦死する。この出来事はシャアとアムロの大きな遺恨となり、その後の二人の人生と、彼らの間の確執を決定づける。 宇宙要塞ア・バオア・クーでの決戦では、彼もニュータイプとして覚醒してきたためかモビルスーツ・ジオングでガンダムと互角に戦い相討ちになる。そして要塞内部でアムロと生身で戦うが駆けつけたセイラの説得中に爆発に巻き込まれ、戦いは中断される。この戦いでアムロの剣を額に受け︵ヘルメットを被っていたため致命傷は免れる︶、その傷跡は第二次ネオ・ジオン抗争で消息不明になるまで消えることは無かった。そして、やはりザビ家の人間を許せぬと判断したシャアはバズーカを持ってキシリアの元へ。要塞から脱出し始めたザンジバルの司令室にキシリアがいることを知ると、船外から指令室の真正面に飛び立ち、指令席に座ったキシリアに敬礼をする。キシリアはシャアを確認するのだが、その直後にシャアにバズーカで狙撃されて頭を吹き飛ばされてしまう。その後シャアは生死不明となる。劇場版﹃機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編﹄では、キシリア殺害後に敗残兵とともに要塞を脱出、グワジン級戦艦に乗り逃亡している。ア・バオア・クー脱出
ア・バオア・クーからの脱出に関しては、1986年に勁文社より発売された山口宏著のゲームブック﹃機動戦士ガンダム 最期の赤い彗星﹄と、漫画﹃機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像﹄にて詳しく描かれているが、いずれも解釈は異なる。ア・バオア・クー攻略戦の時点におけるマ・クベの生死から、前者はテレビアニメ版を、後者は劇場版をベースにしている。 ﹃最期の赤い彗星﹄では数人の部下と共にマ・クベの旗艦アサルムを奪取しア・バオア・クーを脱出。キシリアの腹心であるトワニングの送り出すペズンモビルスーツの追撃をかわしながらグラナダを経由してアクシズに向かっている。対して、﹃機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像﹄では、マ・クベと協力してミネバ・ザビを警護しながらア・バオア・クーを脱出し、直接アクシズへ向かっている。 逃亡に使用したグワジン級は、﹃めぐりあい宇宙編﹄の絵コンテではグワランとされるが、﹃最期の赤い彗星﹄ではアサルムとされ、ラポート発行の書籍﹃機動戦士Ζガンダム大辞典﹄でもこちらの説を採っている。 また、岩田和久著の漫画﹃機動戦士Ζガンダム 宇宙を超える者﹄︵講談社発行の漫画雑誌﹃ガンダムマガジン﹄2号に収録︶によれば、ア・バオア・クー脱出の際にガンダムの破片を持ち帰っており、後にガンダリウムγの開発に寄与することとなる。アクシズ時代
宇宙世紀0081年3月、一年戦争の終結の後に連邦に投降しなかった残軍の最大のグループであるシャア達は、火星と木星の間︵アステロイド・ベルト︶にある、小惑星基地アクシズへ逃亡、潜伏する。ここでミネバを補佐していたニュータイプの少女ハマーン・カーンと恋仲になる。 宇宙世紀0083年頃にはアクシズが地球連邦軍による襲撃を受け、戦闘に参加している。このことは近藤和久著の漫画﹃JUPITER[ZEUS] IN OPERATION TITAN U.C.0083﹄︵単行本﹃新MS戦記 機動戦士ガンダム短編集﹄に収録︶や﹃機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像﹄にて描かれているが、いずれも解釈は異なる。 宇宙世紀0083年8月、指導者であったハマーンの父マハラジャ・カーンが死没すると、その後継者としてハマーンを推挙する。ハマーンがミネバの摂政に就任してザビ家の再興を進めるが、2人は政治的に意見が対立するようになり、ついに地球圏の偵察を名目にアクシズを離れる。 アクシズ離脱については﹃機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像﹄でも描かれている。水原賢治の漫画﹃機動戦士ガンダム0084 Psi-Trailing﹄︵バンダイ発行の雑誌﹃MS SAGA﹄2号に収録︶でも描かれているが、公式設定とは矛盾がある。エゥーゴ結成時代
宇宙世紀0084年9月、アクシズで開発されたモビルスーツの新素材ガンダリウムγを携えて地球圏に帰還し、非合法にクワトロ・バジーナ (Quattro Vageena[1]) という戸籍と連邦軍の軍籍︵大尉︶を取得。エゥーゴ︵反地球連邦政府組織︶に加わる。なお、クワトロはイタリア語で4を意味しており、キャスバル、エドワウ、シャアに次ぐ﹁4番目の名前﹂であることを示唆している。 高橋昌也の小説﹃THE FIRST STEP﹄︵大日本絵画発行の書籍﹃ガンダムウォーズ プロジェクトΖ﹄に収録︶によれば、ブレックス・フォーラと共にエゥーゴを結成したのも彼であるとされ、アクシズ離脱の時期や理由も違う。これは現在の公式設定とは解釈が大きく異なる。 エゥーゴでは、境秀樹の小説﹃モビルスーツコレクション・ノベルズAct.5 宿敵の幻影﹄︵﹃大河原邦男コレクション﹄ (M-MSV) に付属する小説、バンダイ発行の雑誌﹃SDクラブ﹄12号に収録︶によれば、γガンダム︵リック・ディアス︶の開発に関わり、また同作と小説版﹃機動戦士Ζガンダム﹄によれば、γガンダムにリック・ディアスと命名したのも彼である。 その後、最新艦アーガマに配属されモビルスーツ隊隊長となる。ただ、クワトロ=シャアであるということは薄々感付かれていたようである。またアポリー・ベイ、ロベルトは一年戦争時代からの部下で、彼と共にアクシズから来たともいわれている。 さらにこの時期、﹃機動戦士Ζガンダム 宇宙を超える者﹄によれば、リック・ディアスII︵リック・ディアス改︶にて大気圏突入の実験も行っている。グリプス戦役︵﹃機動戦士Ζガンダム﹄︶
宇宙世紀0087年3月、アポリーとロベルトを率いてリック・ディアスでサイド7・グリーン・ノア1に潜入し、ティターンズの新型モビルスーツガンダムMk-IIの奪取を図る。グリーン・ノア1の民間人であるカミーユ・ビダンの協力もあり奪取に成功。この事件が引き金となりエゥーゴとティターンズとの間で本格的な武力抗争が始まる︵グリプス戦役︶。 その後、サイド1・30バンチで、ティターンズのやり方に疑念を抱いてアーガマへ投降したエマ・シーンに対し、ティターンズの横暴を説く。また月面都市アンマンで、部下のキグナンからアクシズが地球圏に向かっていることを知らされる。 同年5月、連邦軍本部ジャブローへの攻撃に参加するため地球に降下するが、連邦本部はすでに移動していたため、目的が果たせず作戦は失敗。作戦後は、支援組織カラバと合流し地球からの離脱を図る。その中で、7年ぶりに再会したアムロの支援によって地球を離脱する。 同年8月、ティターンズのアポロ作戦阻止に動くが作戦は失敗。その後、エゥーゴの指導者であるブレックス・フォーラと共に議会に出席するが、政府の腐敗ぶりを目の当たりにし、失望する。さらにブレックスがティターンズに暗殺され、死の間際のブレックスから﹁シャア・アズナブル﹂としてエゥーゴを託される。 同年10月、地球圏に帰還したアクシズと結盟するため、使節団の一員としてグワダンに赴くが、ハマーンの歪んだ教育を受け、傀儡君主と化したミネバの姿に憤慨し、確執が表面化して交渉は決裂する。 同年11月、衛星軌道上からカラバによるキリマンジャロ基地へ対する攻撃を支援する予定であったが、ヤザン・ゲーブルが率いるハンブラビ隊の奇襲を受け、地球への降下を余儀なくされる。降下後、アウドムラをはじめとするカラバの攻撃隊と合流し、攻略戦を指揮。キリマンジャロを制圧した後、世論を味方につけるためカラバ・ルオ商会の協力を得てダカールの連邦議会を占拠して全世界にテレビ中継で演説を行う。この時シャアは自らがジオン・ズム・ダイクンの遺児である事を明らかにする。これにより自身の発言と行動に絶大な説得力を与え、ティターンズの非道を糾弾し、エゥーゴの正当性を訴えた。この演説によって、議員だけでなく地球の一般市民、さらにはティターンズ内部にまでもティターンズに対する不信感が生まれ、戦局はエゥーゴに傾く。 宇宙世紀0088年2月、エゥーゴ・ティターンズ・アクシズの三つ巴の戦いとなる。最終局面、グリプス2︵コロニーレーザー︶内で、ハマーンのキュベレイとシロッコのジ・Oと激戦を繰り広げるが、グリプス2を守り抜きティターンズ艦隊を撃破する。しかし、その後のハマーンとの交戦の際、乗機である百式は大破し、戦艦の爆発に巻き込まれ、行方不明となる。第一次ネオ・ジオン抗争及びそれ以降
この時期のシャア・アズナブルは行方が知られておらず、アニメ﹃機動戦士ガンダムΖΖ﹄にも登場していないため、詳細は不明である。 当初の予定では、﹃ΖΖ﹄後半において温存していた友軍とともに、ハマーン・カーンに反旗を翻す予定となっていたが、映画﹃機動戦士ガンダム 逆襲のシャア﹄制作が急遽決定されたため、反乱を起こす役はグレミー・トトが担うこととなった、という経緯はある。 ただ、グリプス戦役終結時に行方不明となってからその後の第一次ネオ・ジオン抗争終結までの間に、ネオ・ジオン軍内部のダイクン派を介してミネバ・ラオ・ザビを匿ったというのが通説である。このことは、プレイステーションゲーム﹃機動戦士Ζガンダム﹄において、わずか数秒ではあるが映像化されている。 第一次ネオ・ジオン抗争終結後、宇宙世紀0090年頃にはネオ・ジオンの再興を開始しており、軍備の増強を行っていた。この時期については草野直樹および日高誠之著のゲームブック﹃機動戦士ガンダム シャアの帰還﹄、長谷川裕一著の漫画﹃機動戦士VS伝説巨神 逆襲のギガンティス﹄、近藤和久著の漫画﹃機動戦士ガンダム ジオンの再興﹄などで描かれているが、いずれも公式設定とは解釈が異なるようである。 ﹃シャアの帰還﹄では、宇宙世紀0090年5月、旧ジオン公国軍においてランバ・ラルと並び称されたというダンジダン・ポジドン率いるネオ・ジオン残党軍と接触し掌握。ネオ・ジオンの再興を開始する。﹃ジオンの再興﹄や﹃新MS戦記﹄では宇宙世紀0092年、フレデリック・ブラウンら率いる旧ネオ・ジオンの地上残党軍に対し、宇宙に撤退するよう命令している。第二次ネオ・ジオン抗争︵﹃機動戦士ガンダム 逆襲のシャア﹄︶
宇宙世紀0092年12月、新生ネオ・ジオンの総帥シャア・アズナブル︵小説ではシャア・ダイクンとも名乗っている︶として再び姿を現し、幾度にも渡る戦争を経験しながら、旧態依然としてスペースノイドに弾圧を続ける地球連邦政府に対しての攻撃を示唆する。ここでもジオン・ダイクンの遺児にして旧ジオンのエース﹁赤い彗星﹂でもあった彼の名声は絶大で、旧ネオ・ジオン軍の残党や、ナナイ・ミゲル、ギュネイ・ガス等の優秀な士官を集め、小規模であるが精鋭ともいえる戦力を保持する。そして、しばらく戦火から遠ざかっていた連邦政府に対し、自らの艦艇をもって地球圏にスウィート・ウォーターの占拠を宣言する。 宇宙世紀0093年2月末、テレビのインタビューで連邦政府に事実上の宣戦布告をする。 同年3月、艦隊を率いてスウィート・ウォーターを出発。アムロ・レイやブライト・ノアが所属する連邦軍・外郭新興部隊﹁ロンド・ベル﹂の抵抗に遭うものの、自らモビルスーツ・サザビーで出撃し、小惑星5thルナを連邦軍本部所在地であるチベットのラサに落下させることに成功する。 その後、サイド1のロンデニオンにて連邦軍高官アデナウアー・パラヤと、武装解除を条件にアクシズを譲り受けるという偽の和平交渉を行うと、直ちにルナツーを強襲し配備されていた核兵器を奪取。そして、地球に核の冬をもたらすべく、地球へのアクシズ落としを決行する。アクシズを守るため、自分を慕うクェス・パラヤも戦わせるなどロンド・ベルと必死の激戦を繰り広げる。 宇宙世紀0093年3月12日、νガンダムを駆るアムロと最後の決着をつけるべくサザビーで戦うが敗れる。その際、脱出ポッドを捕まえられ、アクシズの落下を抑えるアムロと共にサイコフレームの光の中に消えていく。そしてアクシズは軌道を変え、作戦は失敗に終わる。その後の二人の行方は一切不明とされている︵劇中でアムロとシャアの最期が描かれていない為﹁行方不明﹂とされているが、後の富野と古谷徹との対談では、富野が﹁死にましたよ﹂と両者の死を広言している[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を﹁date=yyyy年m月﹂形式で記入してください。間違えて﹁date=﹂を﹁data=﹂等と記入していないかも確認してください。︶。シャアを取り巻く人々
周囲への影響力
シャアは、そのずば抜けた実力で部下からは絶対的な信頼と畏怖を受けており、後にはその出自も加わって絶大なカリスマ性をも身につけている。これによって第二次ネオ・ジオン抗争では多くの新生ネオ・ジオン兵士を魅了した。
シャアが消息を絶ってからも彼の影響は少なからず残り、特にスペースノイドの間にはシャアを連邦の圧政に対抗した英雄と見なす傾向もあった。これを元にした富野の小説があり、﹃機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ﹄ではシャアの思想を受け継ぐマフティー・ナビーユ・エリンなる人物が登場する。皮肉にもその正体はブライトの息子ハサウェイ・ノアであった。またシャアの時代から100年以上も後の時代を書いた﹃ガイア・ギア﹄には、彼の記憶をコピーしたチップを埋め込まれた、﹁メモリー・クローン﹂として作られたアフランシ・シャアという人物が登場する。
友人関係
シャアはその性格もあって、真の親友といえる間柄の人物は存在しなかった。ガルマ・ザビに対しては親友であるかのように装っていたが、それはザビ家への復讐の一手段に過ぎず、むしろガルマを見下していた感がある。そのあまりに抜きんでた技量もあって、シャアのライバルたり得た︵そしてシャアもそう認めた︶のは、モビルスーツパイロットとしてはアムロ・レイ、指揮官としてはブライト・ノア、ニュータイプとしてはカミーユ・ビダンぐらいであった。カミーユに対しては同じエゥーゴ所属であることから接する機会が多く、彼のニュータイプへの成長を見守ってきた。しかし、カミーユの精神崩壊が後の﹃逆襲のシャア﹄での他の友たる者たちとの決別へとつながっていく。(PSゲーム﹃機動戦士Ζガンダム﹄シャアモード終盤より)
女性関係
シャアの女性関係に後々まで多大な影響を及ぼしたのは、明らかにララァ・スンである。彼女との出会いがシャアがニュータイプ主導の世界を志すようになった原点であり、また彼女の死がアムロとの確執の一因である。単なる女性関係だけではなく、人生の方向性を決定付けたのはララァに他ならない。エゥーゴ所属中、レコア・ロンドと一時期に接触はあったが、彼女の想いを受け止めることはできなかった。ハマーン・カーンとはニュータイプ同士として惹かれ合い、共にニュータイプ主導の世界を望んだが、その方針の違いが原因で決別してしまった。第二次ネオ・ジオン抗争時の副官ナナイ・ミゲルはシャアの愛人でもあったが、シャアの心にあったのはあくまでララァであった。そしてララァの面影を感じさせたクェス・パラヤに愛情を抱いたが、自分に父親代わりを求める彼女を最終的には拒否している。
シャアの子孫
シャアの子孫については、その後の時代を描いた作品において明らかにそうである人物は登場しない。﹃機動戦士Vガンダム﹄の主人公ウッソ・エヴィンの母の名がミューラ・ミゲルということから、その先祖をたどるとナナイ・ミゲルとシャアに行き着くのではないかとファンの間で噂されたことがあるが、監督の富野由悠季は否定している。詳しくはウッソ・エヴィンの項目を参照。また、﹃機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像﹄では、ナタリー・ビアンキ中尉がシャアの子を身籠もるが、母親ごと死亡している。
コスチューム
仮面 一年戦争時代のシャアの外観上の最大の特徴は、仮面で常に顔を隠していることである。これはもちろんジオン・ダイクンの遺児キャスバルである事を周囲︵特にザビ家︶に隠す為のものであったが、表向きは﹁顔に醜い傷︵あるいは火傷の痕︶があるのを隠すため﹂と釈明しており、そのためか周囲に咎められることもなく、むしろジオンのプロパガンダにおいては﹁赤い彗星﹂のヒーロー性を高めるものとして歓迎されていた模様である︵劇中では唯一コンスコンのみが﹁何故奴は仮面を付けているんだ﹂と疑問を口にしている。また最終話では彼の素顔を見たジオン士官が﹁噂の火傷はございませんな﹂と発言している︶。 小説版では実際に自ら傷を付けており、士官学校時代にフェンシングの試合でガルマに付けられた傷だとする描写もあり[2]、一方で終盤で同志となったホワイトベースのクルーに﹁仮面はプロパガンダの道具﹂と釈明するシーンがある。劇場版IIIでは、サイド6でララァと寛いでいた時は素顔を晒しており、またキシリアとの会見で素性を明かした時も、自ら仮面を外して素顔を見せている。ア・バオア・クーにてアムロとの生身の決闘で額に剣を受けて仮面を損傷した後は素顔で行動している。 ﹃機動戦士ガンダム THE ORIGIN﹄では虹彩異常を補うサンバイザーと説明しており、元々は士官学校時代に同期生がサングラスでは戦闘中に危険だろうと申し出て用意したものである︵アニメ版と違って瓜二つの身代わりを立てたためか、シャア自身には顔を隠そうという意図はあまり見られない︶。 エゥーゴ時代には普段は広面積のサングラスを着用しているが︵前述のアムロの剣により本当に傷が付いたのを隠すため︶、ノーマルスーツ時は裸眼であった。ネオ・ジオン時代は既にジオンの遺児キャスバルおよびかつてのジオン軍の英雄シャアとしての正体を公表しているため、素顔で行動している。 軍服 ジオン軍では将校に軍服の色や装飾にある程度のカスタマイズが認められており、シャアも特注の真っ赤な軍服を着用していた。なおジャブローに潜入工作を行った際も、同行した赤鼻ら工作員が目立たない色の潜入用スーツ姿であった中、ひとりだけどう見ても目立つその軍服を着ていたことから、しばしばパロディのネタにされる︵﹃機動戦士ガンダムさん﹄など︶。ヘルメットも特注の白色に角飾りの付いた物で、シャアはマスクと共に素顔を隠すためにほとんど常にこれを被っていた。またノーマルスーツは乗機塗装色と同じピンク色となっており、やはりヘルメットには角飾りが付いている︵ただし後述の様に出撃時もほとんど着用していない︶。 シャアであることを隠していたエゥーゴ時代もやはり連邦軍制服を赤色・立て襟・ノースリーブなどにカスタマイズした物を着用、ノーマルスーツもやはりピンク色にしている。もっとも、キャラデザインの段階でノースリーブなもののシャアはアンダースーツくらい着用している、と言外に匂わせていた安彦良和は、上腕を露わにしたスタイルに少なからず驚いたと語っている。ネオジオン時代は軍服はやはり赤だが、ノーマルスーツは何故か黄色であった。 モビルスーツ搭乗時の服装 一年戦争時のシャアの奇妙な習慣の一つに、モビルスーツ搭乗時にノーマルスーツを付けず、通常の赤い軍服姿でコクピットに座っていたことが挙げられる。特にTV第2話ではノーマルスーツ着用でサイド7に潜入した後、ファルメルから射出されたザクに宇宙空間で乗り込んだにも関わらずコクピットでは軍服姿であり、わざわざ機内でノーマルスーツから着替えたことになる。これは特に何時コクピットの気密が破れるか判らず撃墜時の脱出も困難になる宇宙・水中戦においては危険極まりない行為であり、他のパイロットは地球上においてもほぼ例外なくMS搭乗時にノーマルスーツを着用していたことから軍規で義務付けられていた可能性が高いが、彼はその名声と実力から黙認されていたものと考えられる。後にこれを安全性の点から見咎めたマリガンがノーマルスーツを着用するように懇願した際、理由について﹁必ず生きて帰るという信念があるため、撃墜時の備えであるノーマルスーツは着ない﹂といったことを語っており、ララァが願った際に了解はしたものの結局直後の出撃でも軍服姿であった。ただし着用しないまでもノーマルスーツ自体はコクピット内に常備していたらしく、ジオング搭乗時は戦闘の合間にコクピット内で着替えている︵この時点でガンダムとの相討ちを覚悟したと考えられる︶。 エゥーゴ時代以降は一転して出撃時はノーマルスーツを着用している[3]。シャア専用モビルスーツ
機体色
赤いモビルスーツ いわゆる﹁シャア専用﹂のモビルスーツは、若干ピンクがかった赤︵アニメの色指定上は、ガンダムの白とバランスを取るために胴体がワインレッドないし小豆色、手足がサーモンピンク︶で塗装されていることで有名である。現在でもアニメファンにとって﹁赤=シャア専用﹂のイメージは強い。ただしこのピンクを主体とした配色は監督の富野の意図に沿うものではなく、むしろ後のリック・ディアスやサザビーのような赤をイメージカラーと考えていたと後年監督は語っている。ピンクの使用はそのカラーの塗料が当時サンライズで余っていたため。 非公式設定だが、ゲーム﹃ギレンの野望﹄では、士官学校を首席卒業したシャアを妬んだ機材担当者により、赤系の下地塗装しか施されていない機体をあてがわれたのが起源とされている。 赤以外のカラー シャアの乗った機体のカラーリングが、すべて﹁赤﹂だったわけではない。例えば、開発途中だったジオングは、グレーとダークブルーである︵角の色は赤︶。また、正体を隠していたためか百式は、金色で塗装されていた。また逆に﹃Ζガンダム﹄以降はシャア機以外にも赤いMSが多数登場しており、あさのまさひこは当時﹁モデルグラフィックス﹂誌上にて﹁﹃ガンダム﹄における﹁赤﹂のシンボル性が解っていない﹂﹁シャアはダカールで正体をバラした後に、百式を赤く塗り替えるべきだ﹂と発言している。この赤いMSの乱発は、またしても単にサンライズ内にて、赤の塗料が大量に余っていたのが理由とも言われている。 劇中では、紺と黒の﹁ティターンズ・ブルー﹂を嫌ったエゥーゴのパイロット達が、リック・ディアスの制式塗装を紺から﹁評判の高い﹂︵クワトロ機の︶赤に変更したことになっている。また、前述のとおりティターンズ側にも︵マラサイなど︶赤色系統の機体が多くなり、シンボルカラーとしての効果が薄くなってしまったため、百式は新たなシンボルカラーとして金色に輝く機体となった、との説もある。 頭の角 彼の登場する機体には多くの場合角が装着されている。これは彼専用という訳ではなく、ジオン軍の小隊長仕様のMSにほぼ共通しているものであり、後に﹁指揮通信用ブレードアンテナ﹂という設定が付与されているが、作中では彼が搭乗するザクIIが初めての角ありMSとして描写されたため、﹁シャアの機体=赤くて角付き﹂という印象が強く持たれることとなった。 実際には、シャア専用の機体で純粋に角つきといえるものはザクIIとゲルググの二種類しかない。角ありのジオングやサザビーは角なしの量産機がないため区別が出来ず、ズゴックはそもそも角がない︵付けられない︶機体である。 パーソナルマーク 彼のパーソナルマークはしばらく設定されず、映画﹃機動戦士ガンダム 逆襲のシャア﹄にてキャスバル・ダイクン︵もしくはシャア・ダイクン︶の頭文字である﹁CD﹂を機体に描いたのが公式設定としては最初である。のち、MGモデルのMS-06SにおいてA︵アズナブルの頭文字だが、この名で彼を呼ぶ者は殆どなく、富野作品に共通するファーストネーム重視の原則にも外れている︶の文字上に鷲が翼を広げているマークが設定されるが、漫画﹃機動戦士ガンダム THE ORIGIN﹄では文字どおりの尾を引く彗星が機体に描かれているのが見られる。3倍の速度差
シャア専用ザクは、通常のザクに比べて3倍近い速度で移動すると恐れられた。そのためシャアといえば通常の3倍、というのもファンの間でよく言われる言葉である。この解釈は、テレビ・シリーズ﹁機動戦士ガンダム﹂第2話内で、ホワイトベースのオペレーター、オスカー・ダブリンが、同艦に迫るシャアのザクを﹁一機のザクは、通常の三倍のスピードで接近﹂と報告したことに始まる。
スペック面での考察
﹁3倍の速度﹂を文字通りに解釈して宇宙空間での等加速度直線運動の式を立てると、同じ距離の加速で3倍の速度を得る、もしくは同じ距離を3分の1の時間で移動するためには、初期状態が観測者に対して相対位置で静止している場合、9倍の加速度が必要となる。これは単純には同じ時間で3倍の速度を得る、あるいは同じ加速度を3倍の時間継続することなどで可能となる。初期の接近速度が観測者に対して正であれば、必要な加速度はさらに少なくてよい。もちろん、本当に3倍、あるいは9倍以上もの加速度にチューンされたザクでは、機体・パイロットとも耐久力が保つはずなく、実際は3割増し程度のスペックである︵これは放映後に出版された﹃ガンダムセンチュリー﹄で記述された非公式な後付け設定︶。
﹃機動戦士ガンダム THE ORIGIN﹄でも、ルウムで他のパイロットがシャアの機動を見て﹁バーニア強化型でない普通の機体なのに何故あんなに速いんだ?﹂と驚く場面がある︵しかもカラーリングや角をカスタマイズした彼の機体と同時期に、彼より階級の低い黒い三連星が高機動型ザクを受け取っていることから、シャアはわざと高機動型を避けて通常スペックの機体を選んだフシがある︶。
宇宙空間では、ある相対速度に対する3倍の速度を得るためには3倍の加速︵燃焼︶時間をもてばよく、いちどその相対速度を得てしまえばザクは等速度直線運動をおこなうため、空気抵抗のある地球上とはことなり以降の加速︵燃焼︶は必要ない。この場合性能の差・加速能力の差そのものはさほど重要ではない。スペースシャトルの船外活動などを見て分かるように母船から離れて活動することは本来非常に危険な作業であり、宇宙空間でむやみな加速度を得れば母船から永遠に切り離され宇宙の果てまで飛ばされてゆく危険性がある。
シャアの﹁通常の3倍﹂は、人間が対応できるモビルスーツでの戦闘可能な相対速度として設定されているだろう安全性の限界︵﹁通常の﹂︶を、遥かに越える接近速度と考えるのが妥当だろう。
テクニック面での考察
また、例え同じスペックでも、操縦者の技量の差により、3倍程度の移動力・功績の差は必然的に現れるだろう。﹃機動戦士ガンダム 第08MS小隊﹄の映像特典﹃宇宙世紀余話﹄では、﹁ルウム戦役でのシャアは、攻撃した戦艦をザクの脚で蹴る事によってその反動で驚異的な加速力を得ていた﹂と説明がなされている。撃破した艦体は爆散の恐れもあるから、このような加速が可能になるのもシャアの危険を見極める判断力と卓越した技量あってこそといえる。
後に﹃MS IGLOO﹄において、爆散する戦艦に背中を向け、ザクⅡに爆発の衝撃を加える描写が描かれている。脚で蹴った反動に爆発の衝撃力を加える方法が驚異的な加速力となっていたと思われる。が、一歩間違えば爆発に巻き込まれる恐れがある為、それを見極める技量も大きく問われる。
そもそも、通常の戦闘においては、周囲を索敵しながら進行するため、必ずしもスペック上の最大速度で進むことができるわけではない。モビルスーツ戦において重要なのは、スペック的な速度差よりも、自機の視野を確保しながら安全に、かつ効率的に素早く移動することである。この索敵能力にシャアがずば抜けていることが、3倍の速度差の要因ともされている。
また、敵の視野外から攻撃したり、わざと視野に入ることで誘導したりするなど、敵の視野を利用すれば、相手に3倍の速度差を感じさせることは、十分可能であろう。
主な搭乗機
機動戦士ガンダム ●MS-06S 指揮官用ザクII︵シャア専用ザク︶ ●MSM-07S ズゴック後期型︵シャア専用ズゴック︶ ●YMS-14 (MS-14S) ゲルググ先行量産型︵シャア専用ゲルググ︶ ●MSN-02 ジオング ●その他 ●ルッグン︵第11話にて︶ ●MS-05 旧ザク︵専用機、漫画﹃THE ORIGIN﹄に登場︶ ●YMS-07B グフ︵専用機、絵本版に登場︶ ●MS-09RS リック・ドム ビームバズーカ試験型︵専用機、小説版に登場︶ ●MSM-04 アッガイ︵岡崎優の漫画版﹃機動戦士ガンダム﹄に登場︶ ●キケロガ︵トミノメモより︶ ●MAX-03アッザム︵﹁トミノメモ﹂より。宇宙仕様、キシリアと同乗︶ ●MS-17 ガルバルディ ︵﹁トミノメモ﹂より︶ ●ガラバ︵﹁トミノメモ﹂より︶ 機動戦士Ζガンダム ●RMS-099 リック・ディアス ●RX-178 ガンダムMk-II ●MSN-00100 百式 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ●MSN-04 サザビー ●MSN-04-2 (MSN-04II) ナイチンゲール︵小説﹃ベルトーチカ・チルドレン﹄に登場︶ その他 ●モビルスーツバリエーション (MSV) ︵設定のみ︶ ●MS-06C 初期量産型ザクII︵専用機︶ ●MS-06F 量産型ザクII︵専用機︶ ●機動戦士ガンダム 最期の赤い彗星︵ゲームブック︶ ●MS-06R-2 高機動型ザクII後期型 ●MS-09R リック・ドム ●機動戦士ガンダム THE ORIGIN︵漫画︶ ●ガンタンク ●機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像︵漫画︶ ●ゼロ・ジ・アール ●MS-14 ゲルググ改︵専用機︶ ●パーフェクト・ジオング ●JUPITER[ZEUS] IN OPERATION TITAN U.C.0083 ●MS-15PLUS (MS-15S) ギャンEX ●大河原邦男コレクション (M-MSV) ︵小説﹃モビルスーツコレクション・ノベルズAct.5 宿敵の幻影﹄に登場︶ ●RX-098 プロトタイプ・リック・ディアス︵シミュレーター︶ ●機動戦士Ζガンダム 宇宙を超える者︵漫画︶ ●MSA-099-2 リック・ディアスII ●機動戦士VS伝説巨神 逆襲のギガンティス︵漫画︶ ●スザク ︵S・ザク・ザクIII 改・改︶ など、例を挙げればきりがない。 また、以下のようにシャア専用機として開発されたが実際に搭乗していないとされるものもある。 ●SDガンダム GGENERATIONシリーズ︵ゲーム︶ ●AMA-002S ノイエ・ジールII ●機動戦士ガンダムΖΖ ●RMS-099B (RMS-099RS) シュツルム・ディアス さらに、以下のようなif設定︵架空戦記設定︶も存在する。 ●機動戦士ガンダム ギレンの野望シリーズ︵ゲーム︶ ●YMS-15 (MS-15S) ギャン先行量産型︵専用機︶ ●RX-78/C.A. キャスバル専用ガンダム主な搭乗艦
﹃機動戦士ガンダム﹄ ●ファルメル︵シャア専用ムサイ、専用艦として︶ ●マッドアングラー︵艦隊旗艦として︶ ●ザンジバル︵専用艦として︶ ﹃機動戦士Ζガンダム﹄ ●アーガマ︵搭乗員として︶ ●ラーディッシュ︵搭乗員として︶ ●アウドムラ︵搭乗員として︶ ﹃機動戦士ガンダム 逆襲のシャア﹄ ●レウルーラ︵艦隊旗艦として︶シャアに関する知識
キャラ設定の経緯 シャア・アズナブルは、テレビアニメ﹃機動戦士ガンダム﹄の企画が、﹃十五少年漂流記﹄を元にした少年宇宙戦記物﹃フリーダム・ファイター﹄からロボットアニメ﹃ガンボイ﹄に至った際に、敵キャラクターのエースとして誕生した。ライバルキャラには因縁を付ける必要があるため、仮面を付けることとなり、また、ジオン・ズム・ダイクンの遺児という設定がつけられた。 名前の由来 仮面を付けたライバルといって、サンライズの企画部デスクであった飯塚正夫がすぐに思い浮かべたのが、﹃勇者ライディーン﹄のプリンス・シャーキンであった。シャアという名は、人気キャラであったシャーキンにあやかって付けられたものである。それに富野由悠季が当時ファンであったという、シャンソン歌手シャルル・アズナヴールの名前をもじって組み合わせ、シャア・アズナブルという名が誕生した。また、別の説として、NHK﹁BSアニメ夜話﹂において、﹁シャー﹂と言う効果音と共に現れることから﹁シャア﹂と名付けたと富野自身が発言している。いずれにせよ、サンライズのキャラクター名はダジャレのようなもじりでつけるのが慣習となっている。 左遷からの復帰 本来は最終話まで登場するライバルとして設定されていたシャア・アズナブルであったが、視聴率不振によるてこ入れにより、ガルマ・ザビが戦死し、その責を問われてドズル・ザビに左遷されたことで12話以降は一切出る予定がなくなっていた。しかし、サンライズに届いた﹁ガンダムの最初のファンになってくれた︵富野夫人の談︶﹂女子中学生の葉書と、プロデューサー・関岡渉の﹁一番人気であったシャアを殺すことなく敵役として出し続けて欲しい﹂という富野への直談判[1]で、シャアは26話で復活を果たすこととなる。 ララァとの出会い 原作者・総監督である富野由悠季が後々に書き下ろした小説﹃密会 アムロとララァ﹄によれば、ララァと初めて出会ったのはガンジス川の畔に建つ売春宿である。詳しくはララァ・スンの項にて。なお、﹃THE ORIGIN﹄では一年戦争以前にすでに出会っている。 ﹃機動戦士ガンダム﹄のアフレコ時、シャアの声優である池田秀一が役作りのために監督の富野に﹁シャアはララァと寝たんですか?﹂と尋ねたところ、富野は﹁そう考えてもらって結構です﹂と答えたという。全研が以前出していた漫画情報誌﹁Comnavi﹂VoL.9︵1998年︶でのガンダム特集での池田へのインタビューによれば、﹁富野監督ははっきりとは答えなかったけど、ララァと寝たと思って演技した﹂とコメントしている。 テーマ曲 TV版終盤では挿入歌として彼のテーマ曲﹃シャアが来る﹄︵作詞‥井荻麟︵富野︶ 作曲‥渡辺岳夫 編曲‥松本祐士 唄‥堀光一路︶が作られ、戦闘シーンで流された。﹁シャア!シャア!シャア!﹂と連呼するなどノリの良い曲である。ただし流れていたシーンはシャアがガンダムに苦戦し、ララァにも邪魔だと言われていた屈辱的な場面だった。 クワトロのサングラス クワトロ・バジーナは劇中、戦闘時以外はサングラスをしているのが特徴であるが、2005年5月に﹃機動戦士Ζガンダム﹄が映画化されたことにより、﹁クワトロ・バジーナ サングラス﹂が公式に販売された。 雑誌のネタ テレビアニメ版﹃機動戦士Ζガンダム﹄終了後に、月刊アウトのネタとしてアルテイシア・ソム・ダイクンが兄であるシャア・アズナブルを討つためにスーパー・ジオンを結成、シャア・アズナブルは別に軍を編成し、一方アムロ・レイは子供が出来、赤ん坊のニュータイプが連邦軍として活躍するという話があった。 シャアの綴り 上記の通りシャルル・アズナヴール (Charles Aznavour) が元ネタであるため、後にシャアの綴りはフランス語風にCharと付けられた︵なお、アズナブルの綴りが固まったのは90年代後半である︶。しかし富野はそれを知らなかったため、﹃機動戦士ガンダム 逆襲のシャア﹄における主役モビルスーツをHi-Sガンダムと名付けようとしていた。これは﹁シャアを超える﹂という意味であったが、前述の通りシャアの頭文字はCであると指摘されたため、この案は立ち消えとなった。 結局主役ガンダムの名前はもめにもめ、最終的に次回作に登場するガンダムであったため、NEWガンダムという仮称で呼ばれていたのがちょうどギリシア文字のνとうまく合致したため、そのままもじってνガンダムと名付けられた。小説﹃機動戦士ガンダム ハイ・ストリーマー﹄というタイトルや、﹃CCA-MSV﹄に登場するHi-νガンダムの名称はここから来ている。 スーパーロボット大戦 ゲーム﹃スーパーロボット大戦﹄シリーズでは原作を倣って味方だったり敵だったりと立場の変わり方が激しいため、スーパーロボット大戦MXでは﹁今回は裏切りません﹂と発売前に開発者が発言した事がある。 ﹁逆襲のシャア﹂ 1984年頃、﹁逆襲のシャア﹂のタイトルで富野によるファーストガンダムの続編小説が企画されていたが、翌年の﹃Ζ﹄制作決定により、企画はそのまま﹃Ζ﹄小説版へとシフトする事となった。その後そのタイトルは映画﹃機動戦士ガンダム 逆襲のシャア﹄にて使用された。また﹃ガイア・ギア﹄も当初は﹁逆襲のシャア﹂のサブタイトルが付けられていた。 評伝 シャア・アズナブル 2006年11月、シャアを実在の人物になぞらえて著した上下分冊本﹃評伝 シャア・アズナブル﹄︵皆川ゆか著 講談社刊︶が出版された。この本にコメントを寄せた作家・福井晴敏はシャアについて﹁自意識過剰でマザコン、自分しか愛せなかった男﹂であり、反面教師とするべきと述べている。類似したキャラクター
シャア・アズナブルというキャラクターの印象は非常に強く、後のガンダムシリーズにも彼の特徴の一部あるいは多くを併せ持ったキャラクターが多数登場している。すなわち﹁仮面をかぶった謎の人物﹂﹁強固な信念と冷徹さを併せ持った男﹂﹁赤いモビルスーツに乗るライバル﹂といったキャラクター達である。ガンダムがシリーズ化される以前における例
聖戦士ダンバイン ガンダムがシリーズ化される以前の人物で最もシャアに似ているのは、﹃聖戦士ダンバイン﹄に登場するバーン・バニングスである。バーンは当初、主人公のライバルとして活躍し、失脚後は﹁黒騎士﹂という正体を隠した仮面の男として登場した。 モビルスーツバリエーション アニメ﹃機動戦士ガンダム﹄には、シャア以外にはパーソナルカラーを持つエースパイロットは存在しなかった︵ランバ・ラルや黒い三連星は量産機と同じカラーリング︶。そのため、シャア以外にパーソナルカラーをもつ人物として初めて設定されたのは、﹃モビルスーツバリエーション﹄のジョニー・ライデンである。ジョニー・ライデンは赤い機体に乗ったためにシャアと誤認されたといわれ、その設定が人気を博した。プラモデルがアニメの登場人物である黒い三連星の機体の売り上げを超えてしまったことにより、その後も﹃モビルスーツバリエーション﹄をはじめとする各作品でパーソナルカラーをもつ人物が多数設定されるようになった。のちにグフやドムも、試験機はランバ・ラルや黒い三連星のパーソナルカラーであったものを量産機に制式採用した、という設定が付け加えられている。宇宙世紀における例
機動戦士ガンダムUC ﹃機動戦士ガンダムUC﹄に登場するネオ・ジオン軍の首魁であるフル・フロンタルは﹁シャアの再来﹂と呼ばれる。シャアと同じく仮面をつけ、赤いモビルスーツシナンジュを駆る。素顔や口調もシャアに酷似しており、自らを﹁ジオンの理想を受け継ぐものたちのための器﹂と定義し、望まれればシャア・アズナブルとなる、と口にしている。劇中でのシャアとの類似性が最もはっきりしている人物であり、﹁シャア本人ではないのか﹂という疑惑も示唆されている。なおアニメ版ではシャアと同じ池田秀一が演じる予定である。 機動戦士ガンダムF91 ﹃機動戦士ガンダムF91﹄に登場した﹁仮面の男﹂はそのものずばり﹁鉄仮面﹂の異名を持つ強化人間カロッゾ・ロナで、素手でモビルスーツのハッチをこじ開ける上ノーマルスーツなしで宇宙空間に出られる怪人物であった。クロスボーン・バンガードを率い連邦に抗した。 なお、仮面の将校ではないが特徴的なアイパッチと黒のパーソナルカラーを持ち、クロスボーン・バンガードに属しながら必ずしもその命令に服しないザビーネ・シャルも、立ち位置のシャアに近い存在と言える。彼は機体を黒く染めたエリート部隊﹁黒の戦隊︵ブラックバンガード︶﹂を率いるエースパイロットであった。 機動戦士クロスボーン・ガンダム ﹃機動戦士クロスボーン・ガンダム﹄に登場した新生クロスボーン・バンガードのエースパイロットキンケドゥ・ナウ︵シーブック・アノー︶とトビア・アロナクスの関係はシャアとカミーユ・ビダンの関係に似ている︵キンケドゥに関しては偽名を使っている事、一時期マスクをつける事も類似点といえる︶。ただし、キンケドゥはシャアとは違い、最後まで﹁大切な人を守りたい﹂という確固たる信念を貫き、トビアもカミーユに比べると明るく、またニュータイプ論者としては今までのニュータイプとは違う方向に道を見出した。 機動戦士Vガンダム ﹃機動戦士Vガンダム﹄に登場したザンスカール帝国のクロノクル・アシャーも赤をパーソナルカラーとし、︵地球上では︶常に白いマスクを付けていた。しかし、クロノクルは地球の大気を﹁埃っぽい﹂と嫌っている描写もあることから、デザインや用途からしても、むしろキシリア・ザビのものに似ている。ちなみにこのマスク、シャアの物とは隠す顔の部分がほぼ逆になっている(頭と目周り以外を覆っている)。宇宙世紀以外における例
機動武闘伝Gガンダム ﹃機動武闘伝Gガンダム﹄のガンダムファイトにおいては、ネオドイツ代表シュバルツ・ブルーダーがドイツ国旗風の配色の覆面を付けて登場し、その正体を隠しつつ他の登場人物を叱咤していた。 新機動戦記ガンダムW ﹃新機動戦記ガンダムW﹄では、書籍﹁モデルグラフィックス﹂の見解によれば、ヒイロ・ユイ、ゼクス・マーキス、トレーズ・クシュリナーダがいずれもシャアの側面を受け継いでいると考えられている。中でも仮面の男・ゼクス・マーキスはシャアと設定、行動が酷似し、偽名を使ったこと、そしてその妹リリーナ・ドーリアンの関係も、シャアとセイラの関係に酷似している。また地球に絶望して﹁地球に何かを落とそうとした﹂というのはアクシズ落としを彷彿させ、共通点が見られる。ただし、ゼクスは最終的にはシャアとは逆に人類に救いを見出した。また、女性関係もシャアとは逆にルクレツィア・ノインくらいしか相手が出てこなかった。また、高い指導力を持つカリスマ的存在という部分においてはトレーズ・クシュリナーダが、他を圧倒するエースパイロットという部分はヒイロ・ユイがそれぞれ受け継いでいる。 機動新世紀ガンダムX ﹃機動新世紀ガンダムX﹄のランスロー・ダーウェルとジャミル・ニートの関係は、乗機のフェブラルとガンダムXも含めシャアとアムロのオマージュであるが、第7次宇宙戦争で死闘を繰り広げてから15年後、ジャミルの真意を知ったランスローは敵ながら彼やガロード・ランに協力するようになった。 ∀ガンダム ﹃∀ガンダム﹄のハリー・オードは赤いサングラスを着用し、金色の専用機に乗るエースパイロットである。が、主人公と敵対関係になることは少なかった。また、コレン・ナンダーはガンダムを目の仇にし、赤をパーソナルカラーとしているなど、シャアとの関連を想像させる演出がなされている。 機動戦士ガンダムSEED ﹃機動戦士ガンダムSEED﹄ではコーディネイターとナチュラルの最終戦争を引き起こそうとしたラウ・ル・クルーゼがやはり素顔を隠すための仮面を付け続けていた。﹃機動戦士ガンダムSEED DESTINY﹄では新たな仮面の男ネオ・ロアノークが正体不明の敵として登場した。また、赤いモビルスーツに乗るライバルの例として主要人物のアスラン・ザラが挙げられる。彼の乗るガンダムの配色はシャア専用機のそれに近い。ただし劇中に登場した赤いザクは彼の搭乗機ではなくルナマリア・ホーク専用機であった。その他のライバルキャラ
機動戦士ガンダム 第08MS小隊 ﹃機動戦士ガンダム 第08MS小隊﹄に登場したノリス・パッカードはシャアよりむしろガトーやランバ・ラルと同じ方向性を持った人物で、サハリン家への忠義を信条に鬼神のような死闘を繰り広げた。 機動戦士Ζガンダム ﹃機動戦士Ζガンダム﹄のパプテマス・シロッコは思想家としてシャアの跡を受け継ぐライバルキャラといえるが、シャアとは異なる演出がなされている。シロッコは、あらゆる面で当時のクワトロ・バジーナ︵シャア︶を上回っており、ニュータイプとして開花したカミーユによって倒された。 機動戦士ガンダムΖΖ ﹃機動戦士ガンダムΖΖ﹄では、マシュマー・セロがパイロットとしてのシャアの位置に来るライバルキャラであろうが、一風変わった演出がなされている。ちなみに、マシュマーのパーソナルカラーは緑である。また、ハマーン・カーンも思想家としてのシャアやシロッコの跡を継ぐライバルキャラといえる。 機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY ﹃機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY﹄に登場したデラーズ・フリートのアナベル・ガトーは、﹁強固な信念と冷徹さを併せ持った男﹂の代表格である。ジオン公国への忠義を信条に激戦を戦い散っていった彼は、機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORYの登場人物の中で別格の人気を誇る。 ブレンパワード 物語中盤にバロン・マクシミリアンという仮面で正体を隠したキャラが登場する。しかし主人公と争った事はほとんどなく、主人公のライバルのジョナサン・グレーンに新しい乗機を与えたり、彼を鍛えようとしたりするなど、シャアとはかなり異なっている。ちなみに本作では、主人公の姉が赤い機体に乗り、偽名を名乗っている(本名は皆知っているが)。 機動戦士ガンダム00 ﹃機動戦士ガンダム00﹄ではシャアに近いキャラとしてグラハム・エーカーが挙げられる。思想面等でシャアと類似していないものの、自信と高い戦闘力を兼ね備えており、敵対するガンダムに強い関心と興味以上の好意すら抱き、打倒ガンダムに燃える姿はどことなくシャアの存在を感じさせる。また劇中でシャアの名台詞﹁モビルスーツの性能の違いが戦力の決定的な差ではない﹂に似た発言をしている。作中後半ではそれまでの名前を棄てて仮面をつけ、よりシャアらしい立ち位置になった。 その他 シャア自身の原点としては﹃勇者ライディーン﹄のプリンス・シャーキン、﹃超電磁ロボ コン・バトラーV﹄の大将軍ガルーダ、﹃超電磁マシーン ボルテスV﹄のプリンス・ハイネル、﹃闘将ダイモス﹄のリヒテル提督が挙げられる。因みに彼らの声優は、当初シャア役にほぼ決まりかけていた、という話もある市川治である[4]。ガンダムシリーズ以外の作品における例
シャアの影響はさらに、後のアニメ、漫画、特撮作品にも影響を与え、ガンダムシリーズ以外の作品にも、シャアに類似したキャラクターが多く見られる。
忍風戦隊ハリケンジャー
﹃忍風戦隊ハリケンジャー﹄に登場する敵幹部、暗黒七本槍・七の槍サンダールは、担当声優がシャアと同じ池田であり、所持している刀は﹁赦悪彗星刀︵シャークすいせいとう︶﹂︵キャラクターのモチーフが鮫であることに加え﹁シャア﹂+︵赤い︶彗星︶という名前である。また、本編から退場するエピソードである50話ではシャアの台詞をアレンジした台詞が多く登場した。他にも劇中で、同僚である五の槍サーガインを誅殺したり、上官である首領タウ・ザントを殺害した場面は、それぞれガルマ・ザビ、キシリア・ザビを殺害した場面と似通っていた。なお、サーガイン登場前にすでに死亡しているが二の槍・チュウズーボの最後の台詞は、ガルマのものとほとんど同じであった。
名探偵コナン
﹃名探偵コナン﹄の登場人物の1人である赤井秀一。こちらもアニメでは池田が演じている。詳しくはFBI (名探偵コナン)を参照。
ゆけゆけ!!トラブルメーカーズ
﹃ゆけゆけ!!トラブルメーカーズ﹄の敵キャラの一人であるキャア。外見がガンダムに似ており、名前はシャアをもじっている。自称である﹁赤い怪声﹂も﹁赤い彗星﹂から来ている。
超鋼戦紀キカイオー
﹃超鋼戦紀キカイオー﹄の中ボスキャラクター、シャドーレッド。本作はロボットアニメをモチーフとした対戦型格闘ゲームで、シナリオにより設定は若干異なるが、赤い機体を操る仮面のエースであり、シャアがモデルである事、声優もそれに合わせて池田を起用したことをムックなどでスタッフが明言している。
なお、このゲームには、アムロをモチーフにしたナカトというキャラクターと、ガンダムをモチーフにした﹁特務機兵ディクセン﹂というメカが登場する。
ケロロ軍曹
﹃ケロロ軍曹﹄には、多くのガンダムのパロディやガンプラものが登場する。その中で、西澤桃華の父、梅雄︵ばいお︶がアニメ版ではシャアのパロディキャラとして登場する。声優はもちろん池田秀一である。
シャドウハーツII
PS2ゲーム﹃シャドウハーツII﹄に登場する狼ブランカの声を池田秀一が担当しており、ブランカが戦う﹁ウルフバウト﹂においてガンダム関連の台詞を口にする。﹁坊やだからさ﹂﹁地球の重力に魂を引かれたか﹂など。
書籍
●永遠のガンダムシリーズvol.2 語ろうシャア! 株式会社カンゼン ISBN4-901782-26-6 ●評伝シャア・アズナブル ︽赤い彗星︾の軌跡 上・下 ISBN 978-4063646757 ISBN 978-4063646764 ●シャアへの鎮魂歌 わが青春の赤い彗星︵池田秀一、ワニブックス、2007年1月7日初版︶ ISBN 4-8470-1700-5脚注
(一)^ 初期の資料ではスペルがQuattro Vaginaとなっていた。
(二)^ 現実にドイツ語圏の大学には伝統的にMensurあるいはAcademic fencingと呼ばれる慣習があり、真剣をもちいたフェンシングの試合とそれによる向う傷を名誉なものと称揚する慣習がある。くわしくは決闘を参照。
(三)^ 正式な出撃でないケースでは、カミーユの父フランクリンが逃亡を図った際にノーマルスーツなしでガンダムMk-IIに搭乗した描写がある。なお、この場面は正史とされるアニメ版の中でシャアが﹁ガンダム﹂を称するモビルスーツに搭乗した唯一の例でもあった。
(四)^ 池田秀一の自伝﹃シャアへの鎮魂歌 わが青春の赤い彗星﹄によれば、広告代理店やプロデューサー、スポンサーも了承済みであり、それが覆ったのは音響監督の松浦典良の強力な推しによるものだったらしい。