義経記
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﹃義経記﹄︵ぎけいき︶は、源義経とその主従を中心に書いた作者不詳の軍記物語で、南北朝時代から室町時代初期に成立したと考えられている。能や歌舞伎、人形浄瑠璃など、後世の多くの文学作品に影響を与え、今日の義経やその周辺の人物のイメージの多くは﹃義経記﹄に準拠している。
なお、﹁源義経︵みなもとのよしつね︶﹂の読みは訓読みで﹁よしつね﹂であるが、本書では音読みで﹁ぎけいき﹂と読む。森銑三は中世・近世期には個人に対する敬意を表す意味で人名を音読みする習慣があったことを指摘し、同様の事例には織田信長の半生を記した﹃信長記︵信長公記、しんちょうき︶﹄の例を挙げている。
概説
義経及びその主従などの登場人物たちがよく感情を表し、生き生きと書かれている。しかしながら彼らの死後二百年以上経ってからの成立であるため、﹃義経記﹄の作者は当事者たちの人柄を、直接的にも間接的にも知っていたとは考えられない。また、軍記物語の下地となりうる軍注記を利用したとも考えられていない。その上、作中の行動のあちこちに矛盾が生じており、当時の伝説と作者の創作によって成立したと考えられている。よって﹁史料﹂としての価値は低く、今日ではあくまで﹁史伝物語﹂として扱われている。 分類は軍記物語ではあるが、﹃平家物語﹄のように華々しい合戦の時期に重点が置かれているのではなく、義経の幼少期・出世・没落の時期に重点が置かれている︵実際、平家は合戦がはじまって数ページ程度で滅んでしまう︶。言い換えれば、実在の合戦を話の軸として周りの人間模様を描いているというより、源義経という人物が話の軸となっている。まさにタイトル通り﹃義経記﹄である。全体的に中世前期の他の軍記物語とは大きく趣が異なり、軍記物語というより伝奇物語とも言える。義経記関連画像
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義経鞍馬山之図。鞍馬山での天狗との修行(月岡芳年画)
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義経記五条橋之図。五条の大橋で戦う義経と弁慶(月岡芳年画)
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関連書籍
●岡見正雄校注 ﹃日本古典文学大系37 義経記﹄ 岩波書店、初版1959年。 ●新装版 ﹃日本古典文学大系 歴史文学シリーズ 義経記﹄ 岩波書店 1992年。 ●梶原正昭校注・訳 ﹃日本古典文学全集31 義経記﹄ 小学館、初版1971年。 ●﹃新編 日本古典文学全集62 義経記﹄ 小学館、2000年。 ●佐藤謙三訳 ﹃義経記﹄︵全2巻︶ 平凡社東洋文庫、1979年、ワイド版2003年。 ●高木卓訳 ﹃現代語訳 義経記﹄ 河出文庫 2004年。 ●元版 ﹃古典日本文学全集17 義経記 曽我物語﹄ 筑摩書房 1966年。 ●角川源義、高田実 ﹃源義経﹄ 角川新書 1966年、講談社学術文庫 2005年。 ●高橋富雄 ﹃義経伝説 歴史の虚実﹄ 中公新書、1966年。 ●五味文彦 ﹃源義経﹄ 岩波新書、2004年。 ●五味文彦 ﹃物語の舞台を歩く 義経記﹄ 山川出版社 2005年。 ●菱沼一憲 ﹃源義経の合戦と戦略 その伝説と実像﹄ 角川学芸出版﹇角川選書﹈ 2005年。 ●大塚ひかり﹃大塚ひかりの義経物語﹄ 角川ソフィア文庫 2004年。 ●西津弘美訳、西沢正史監修 ﹃義経記 現代語で読む歴史文学﹄ 勉誠出版 2004年。 ●近藤好和 ﹃源義経 後代の佳名を貽す者か﹄ ミネルヴァ書房︿ミネルヴァ日本評伝選﹀ 2005年 ●藪本勝治 ﹃義経記 権威と逸脱の力学﹄ 和泉書院 2015年能音楽劇 義経記
義経記を題材とし、三味線、朗読、歌、能舞で構成された舞台。2013年から年に数回開催されている[1]。 ●音楽・演奏‥上妻宏光 ●朗読・歌・脚本監修‥デーモン閣下 ●能舞‥山井綱雄[2] ●地謡‥髙橋忍[3]関連項目
●十郎権頭兼房 ●源平盛衰記 ●平家物語 ●勧進帳 ●義経千本桜 ●橋弁慶 - 義経と弁慶を題材にした能の作品 ●源義経が登場する大衆文化作品一覧外部リンク