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「赤道儀式架台」の版間の差分

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[[ファイル:Vixen_GP-DX_equatorial_mount.jpg|thumb|250px|ドイツ式赤道儀]]

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'''赤道儀式架台'''︵せきどうぎしきかだい、{{Lang-en-short|Equatorial mount}}︶とは、極軸=[[赤経]]軸と、それに[[直交]]した[[赤緯]]軸の2軸で構成された架台である<ref name="allteresco1975-48">﹃天体望遠鏡のすべて'75年版﹄p.48-53﹁マウンティング構造の生し方﹂。</ref><ref name="telescopeguidebook-ch22">﹃天体望遠鏡ガイドブック﹄pp.145-168﹁第2部第2章 架台のメカニズム﹂。</ref>。

'''赤道儀式架台'''（''Equatorial mount'' ）は[[天体望遠鏡]]専用の架台である。


== 概要 ==

== 概要 ==

天体の[[日周運動]]を追尾するための回転軸をもった、天体望遠鏡（用）の架台<ref name="sekaidaihyakka">世界大百科事典 第２版</ref>。[[天体望遠鏡]]専用の架台であり、[[フィールドスコープ]]（地上のものを見るための望遠鏡）には用いない。
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極軸=赤経軸と、それに直交した赤緯軸の2軸で構成された架台である<ref name="allteresco1975-48">『天体望遠鏡のすべて'75年版』p.48-53「マウンティング構造の生し方」。</ref>。



極軸は水平に対してある程度傾けられる<ref name="allteresco1975-48"/>。この角度を観測地の緯度と等しい角度に傾け<ref name="allteresco1975-48"/>、地球の自転軸と平行に据え付け<ref name="allteresco1975-48"/>、極軸を星の運動と同速で回転させると星の日周運動を打ち消すことができ<ref name="allteresco1975-48"/>、長時間の観測や写真撮影を楽にできる<ref name="allteresco1975-48"/>。特に写真撮影は赤道儀なしではほとんど不可能に近い<ref name="allteresco1975-48"/>。極軸の目盛りは1周24時間の目盛りが刻まれている場合が多い。時角目盛りと赤経目盛りがあり、北半球で望遠鏡を西に回した時に数字が増えるなら時角目盛り、減るなら赤経目盛りである。両方刻んだ製品もある<ref name="allteresco1975-48"/>。極軸は[[ウォームギヤ]]で全周微動になっている<ref name="allteresco1975-48"/>。

極軸は水平に対して観測地の緯度と等しい角度に傾け<ref name="allteresco1975-48"/><ref name="telescopeguidebook-ch22"/>、地球の自転軸と平行に据え付け<ref name="allteresco1975-48"/><ref name="telescopeguidebook-ch22"/>、極軸を星の運動と同速の23時間56分4秒/周<ref name="telescopeguidebook-ch22"/>で回転させると星の[[日周運動]]を打ち消すことができ<ref name="allteresco1975-48"/><ref name="telescopeguidebook-ch22"/>、長時間の観測や写真撮影を楽にできる<ref name="allteresco1975-48"/>。︵なお﹁打ち消すことができる﹂と言う表現は、やや分かりにくい表現でもあろうかと思われるので、念のためにもう少し分解して解説すると、空の星が実際に動かなくなる、というわけではなく、﹁日周運動に沿って望遠鏡の[[視野]]を動かすことで、その視野内での星の位置を動かないようにできる﹂といった意味である。︶特に[[天体写真]]の撮影は赤道儀なしではほとんど不可能に近い<ref name="allteresco1975-48"/>。極軸の目盛りは1周24時間の目盛りが刻まれている場合が多い。時角目盛りと赤経目盛りがあり、北半球で望遠鏡を西に回した時に数字が増えるなら時角目盛り、減るなら赤経目盛りである。両方刻んだ製品もある<ref name="allteresco1975-48"/>。極軸は[[ウォームギヤ]]で全周微動になっている<ref name="allteresco1975-48"/>。



極軸の回転には微動ハンドルを手動で行う場合のほか、錘と振り子による運転時計や、[[モータードライブ (望遠鏡)|モータードライブ]]<ref name="allteresco1975-48"/>を使用する場合もある。両軸ともモーターを取り付け、コンピューターにより赤経赤緯を指定することにより目標天体を比較的簡単に導入できる装置も販売されている。

極軸の回転には微動ハンドルを手動で行う<ref name="telescopeguidebook-ch22"/>場合のほか、錘と振り子による運転時計や、[[モータードライブ (望遠鏡)|モータードライブ]]<ref name="allteresco1975-48"/><ref name="telescopeguidebook-ch22"/>を使用する場合もある。両軸ともモーターを取り付け、コンピューターにより赤経赤緯を指定することにより目標天体を比較的簡単に導入できる装置も販売されている。



赤緯軸は極軸と直角である必要があるが、小型望遠鏡で誤差があってもそれほど大きな問題にはならない<ref name="allteresco1975-48"/>。据え付け式の大型赤道儀では天の北極近辺の観測に支障が出る<ref name="allteresco1975-48"/>。赤緯軸は[[ウォームギヤ]]で全周微動になっている場合とスプリング式で部分微動にとどまる製品がある<ref name="allteresco1975-48"/>。

赤緯軸は極軸と直角である必要があるが、小型望遠鏡で誤差があってもそれほど大きな問題にはならない<ref name="allteresco1975-48"/>。据え付け式の大型赤道儀では天の北極近辺の観測に支障が出る<ref name="allteresco1975-48"/>。赤緯軸は[[ウォームギヤ]]で全周微動になっている場合とスプリング式で部分微動にとどまる製品がある<ref name="allteresco1975-48"/>。


== 極軸合わせ ==

移動できる望遠鏡の場合、極軸には小型の極軸望遠鏡が組み込まれている場合がある<ref name="allteresco1975-48"/>。観測前にこれで極軸を北半球の場合天の北極へ、南半球の場合には天の南極に向けて据え付ける必要がある<ref name="allteresco1975-48"/>。

観測前に極軸を北半球の場合天の極へ向けて据え付ける<ref name="allteresco1975-48"/>必要がある。{{main|極軸合わせ}}


== 種類 ==

== 種類 ==

主に以下のような種類がある。

主に以下のような種類がある。
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[[ファイル:Maksutov-Cassegrain Intes M703 mounted.jpg|200px|thumb|ドイツ式赤道儀]]

=== ドイツ式赤道儀架台 ===

=== ドイツ式赤道儀架台 ===
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[[ファイル:Maksutov-Cassegrain Intes M703 mounted.jpg|200px|thumb|ドイツ式赤道儀]]

小型の望遠鏡で赤道儀式架台を使う場合ほとんどこれである。{{main|ドイツ式赤道儀}}

小型の望遠鏡で赤道儀式架台を使う場合ほとんどこれである<ref name="allteresco1975-48"/>。{{main|ドイツ式赤道儀}}

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[[ファイル:Zeiss_di_Merate_-_incrocio_assi.jpg|200px|thumb|イギリス式赤道儀]]

=== イギリス式赤道儀架台 ===

=== イギリス式赤道儀架台 ===
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[[ファイル:Zeiss_di_Merate_-_incrocio_assi.jpg|200px|thumb|イギリス式赤道儀]]

ドイツ式の極軸方向を延長して2点で極軸を支える方式。大型となり設置スペースを要するため小型望遠鏡では使われない<ref name="allteresco1975-48"/>。日本の[[国立天文台]][[岡山天体物理観測所]]の188cm望遠鏡の架台はイギリス式である。

ドイツ式の極軸方向を延長して2点で極軸を支える方式である<ref name="telescopeguidebook-ch22"/>。{{main|イギリス式赤道儀}}

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[[ファイル:Warszawskie_Obserwatorium_Południowe_Teleskop.jpg|200px|thumb|フォーク式赤道儀]]

=== フォーク式赤道儀架台 ===

=== フォーク式赤道儀架台 ===
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[[ファイル:Warszawskie_Obserwatorium_Południowe_Teleskop.jpg|200px|thumb|フォーク式赤道儀]]

U字型のアームの間に鏡筒を取り付け、U字アームが極方向に回転する方式。鏡筒が短い望遠鏡に適する。最近の50cmクラス公共天文台のほとんどはフォーク式赤道儀である。また、一般的なフォーク式では鏡筒を左右両側で支持するが、片側のアームを省略し、1箇所で支持する﹁片持ちフォーク式﹂も存在し、軽量な鏡筒の望遠鏡に用いられることがある。{{main|フォーク式赤道儀}}

U字型のアームの間に鏡筒を取り付け、U字アームが極方向に回転する方式。鏡筒が短い望遠鏡に適する。最近の50cmクラス公共天文台のほとんどはフォーク式赤道儀である。また、一般的なフォーク式では鏡筒を左右両側で支持するが、片側のアームを省略し、1箇所で支持する﹁片持ちフォーク式﹂も存在し、軽量な鏡筒の望遠鏡に用いられることがある。{{main|フォーク式赤道儀}}

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=== ヨーク式赤道儀架台 ===

=== ヨーク式赤道儀架台 ===

フォーク式のU字を極方向に延長し極軸を2点で支持する形。大型となり設置スペースを要するため小型望遠鏡では使われない<ref name="allteresco1975-48"/>。また極方向とその周辺が観測できない。

フォーク式のU字を極方向に延長し極軸を2点で支持する方式である。大型となり設置スペースを要するため小型望遠鏡では使われない<ref name="allteresco1975-48"/>。また極方向とその周辺が観測できない。

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[[ファイル:HaleTelescope-MountPalomar.jpg|200px|thumb|馬蹄式赤道儀]]

=== 馬蹄式赤道儀架台 ===

=== 馬蹄式赤道儀架台 ===
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[[ファイル:HaleTelescope-MountPalomar.jpg|200px|thumb|馬蹄式赤道儀]]

ホースシュー式ともいう。[[パロマー天文台]]200[[インチ]]望遠鏡がこの形式である。フォーク式の変形であり鏡筒の自重による極軸のたわみを軽減している。

ホースシュー式ともいう。ダブルヨーク式の極付近の死角をなくすよう工夫された形式である<ref name="telescopeguidebook-ch22"/>。[[パロマー天文台]]200[[インチ]]望遠鏡がこの形式を採用した。


=== フランス式赤道儀架台 ===

=== フランス式赤道儀架台 ===

[[ナスミス式望遠鏡]]、クーデ式望遠鏡など望遠鏡の耳軸に光線を導いて観測する形式の望遠鏡に使われる。

[[ナスミス式望遠鏡]]、クーデ式望遠鏡など望遠鏡の耳軸に光線を導いて観測する形式の望遠鏡に使われる<ref name="telescopeguidebook-ch22"/>。{{main|フランス式赤道儀}}


== 関連項目 ==

== 関連項目 ==

*[[経緯台式架台]]

* [[経緯台式架台]]

* [[ねじ]]

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* [[雲台]]

== 注釈 ==

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== 出典 ==

== 出典 ==

{{脚注ヘルプ}}{{Reflist}}

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== 参考文献 ==

== 参考文献 ==

*天文と気象別冊『天体望遠鏡のすべて'75年版』地人書館

*天文と気象別冊『天体望遠鏡のすべて'75年版』[[地人書館]]

*西条善弘・渡辺和明著『天体望遠鏡ガイドブック』[[誠文堂新光社]] ISBN 4-416-28909-X


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[[Category:望遠鏡の形式]]

[[Category:望遠鏡の形式]]

[[Category:天体写真]]

[[Category:天文学に関する記事]]

[[Category:天文学に関する記事]]

2022年4月8日 (金) 06:24時点における最新版

ドイツ式赤道儀

赤道儀式架台︵せきどうぎしきかだい、英: Equatorial mount︶とは、極軸=赤経軸と、それに直交した赤緯軸の2軸で構成された架台である[1][2]。

概要[編集]


天体の日周運動を追尾するための回転軸をもった、天体望遠鏡︵用︶の架台[3]。天体望遠鏡専用の架台であり、フィールドスコープ︵地上のものを見るための望遠鏡︶には用いない。

極軸は水平に対して観測地の緯度と等しい角度に傾け[1][2]、地球の自転軸と平行に据え付け[1][2]、極軸を星の運動と同速の23時間56分4秒/周[2]で回転させると星の日周運動を打ち消すことができ[1][2]、長時間の観測や写真撮影を楽にできる[1]。︵なお﹁打ち消すことができる﹂と言う表現は、やや分かりにくい表現でもあろうかと思われるので、念のためにもう少し分解して解説すると、空の星が実際に動かなくなる、というわけではなく、﹁日周運動に沿って望遠鏡の視野を動かすことで、その視野内での星の位置を動かないようにできる﹂といった意味である。︶特に天体写真の撮影は赤道儀なしではほとんど不可能に近い[1]。極軸の目盛りは1周24時間の目盛りが刻まれている場合が多い。時角目盛りと赤経目盛りがあり、北半球で望遠鏡を西に回した時に数字が増えるなら時角目盛り、減るなら赤経目盛りである。両方刻んだ製品もある[1]。極軸はウォームギヤで全周微動になっている[1]。

極軸の回転には微動ハンドルを手動で行う[2]場合のほか、錘と振り子による運転時計や、モータードライブ[1][2]を使用する場合もある。両軸ともモーターを取り付け、コンピューターにより赤経赤緯を指定することにより目標天体を比較的簡単に導入できる装置も販売されている。

赤緯軸は極軸と直角である必要があるが、小型望遠鏡で誤差があってもそれほど大きな問題にはならない[1]。据え付け式の大型赤道儀では天の北極近辺の観測に支障が出る[1]。赤緯軸はウォームギヤで全周微動になっている場合とスプリング式で部分微動にとどまる製品がある[1]。

極軸合わせ[編集]


観測前に極軸を北半球の場合天の極へ向けて据え付ける[1]必要がある。
詳細は「極軸合わせ」を参照

種類[編集]

主に以下のような種類がある。

ドイツ式赤道儀架台[編集]

ドイツ式赤道儀

小型の望遠鏡で赤道儀式架台を使う場合ほとんどこれである[1]。

詳細は「ドイツ式赤道儀」を参照

イギリス式赤道儀架台[編集]

イギリス式赤道儀

ドイツ式の極軸方向を延長して2点で極軸を支える方式である[2]。

詳細は「イギリス式赤道儀」を参照

フォーク式赤道儀架台[編集]

フォーク式赤道儀
U字型のアームの間に鏡筒を取り付け、U字アームが極方向に回転する方式。鏡筒が短い望遠鏡に適する。最近の50cmクラス公共天文台のほとんどはフォーク式赤道儀である。また、一般的なフォーク式では鏡筒を左右両側で支持するが、片側のアームを省略し、1箇所で支持する﹁片持ちフォーク式﹂も存在し、軽量な鏡筒の望遠鏡に用いられることがある。
詳細は「フォーク式赤道儀」を参照

ヨーク式赤道儀架台[編集]


フォーク式のU字を極方向に延長し極軸を2点で支持する方式である。大型となり設置スペースを要するため小型望遠鏡では使われない[1]。また極方向とその周辺が観測できない。

馬蹄式赤道儀架台[編集]

馬蹄式赤道儀
ホースシュー式ともいう。ダブルヨーク式の極付近の死角をなくすよう工夫された形式である[2]。パロマー天文台200インチ望遠鏡がこの形式を採用した。

フランス式赤道儀架台[編集]


ナスミス式望遠鏡、クーデ式望遠鏡など望遠鏡の耳軸に光線を導いて観測する形式の望遠鏡に使われる[2]。
詳細は「フランス式赤道儀」を参照

関連項目[編集]

出典[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 『天体望遠鏡のすべて'75年版』p.48-53「マウンティング構造の生し方」。
  2. ^ a b c d e f g h i j 『天体望遠鏡ガイドブック』pp.145-168「第2部第2章 架台のメカニズム」。
  3. ^ 世界大百科事典 第２版

参考文献[編集]

望遠鏡の形式
光学望遠鏡の分類

屈折式

反射式

反射屈折式

架台の分類

赤道儀式架台

経緯台式架台

観測波長帯別の分類

光学望遠鏡

その他

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