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この項目では、キリル文字のІについて説明しています。ラテン文字については「I」をご覧ください。 |
І, і は、キリル文字のひとつ。ギリシャ文字の Ι︵イオタ︶に由来し、ラテン文字の Iと同形。スラヴ語では現在はウクライナ語やベラルーシ語でのみ用いられるが、1918年まではロシア語でも用いられていた。スラヴ語以外ではカザフ語、ハカス語、コミ語でも用いられる。また、対応するグラゴル文字は︵i、イ︶である。
●ウクライナ語: І десятеричне︵10のІ︶
●ベラルーシ語: І
●︵1918年まで︶ロシア語: І с точкой︵点付きのІ︶、І десятеричное︵10のІ︶、І латинский︵ラテン語のІ︶
原則として非円唇前舌狭母音 [i] (IPA) およびその類似音を表す。
アルファベット上の位置[編集]
ウクライナ語の第12字母、ベラルーシ語の第10字母、カザフ語の第38字母である。
ロシア語旧正書法におけるІ[編集]
ロシア語旧正書法︵1918年まで︶では、以下の場合に І が用いられていた。
●母音および Й の前 (исторія, русскій, Іерусалимъ)。ただし合成語となった結果Иが母音の前に来る場合はІとはしない (пяти + угольникъ → пятиугольникъ → пятиугольникъ)。
●﹁世界﹂を意味する мир (міръ)。なお、﹁平和﹂を意味する мир は миръ。
また、語頭に来る場合や母音に挟まれている場合はしばしば Й ([j]) のように発音された (іодъ, маіоръ)。
古代教会スラヴ語におけるІ[編集]
古代教会スラヴ語では、前述のロシア語旧正書法と同様の使い分けの他、更にギリシア語に由来する単語において、元々のギリシア語での Ι︵イオタ︶とΗ︵イータ︶の使い分けを І とИに反映させていた。各言語で﹁10のイ﹂と呼ばれるのは古代教会スラヴ語で10の数値を持っていたためである。
Іに関わる諸事項[編集]
●І とИは、元々はスラヴ語における音の違いを表すものというより、ギリシア語からの外来語での Ι︵イオタ︶とΗ︵イータ︶の区別を表すものだった。現在いくつかの言語で見られる І とИの使い分けは、後世に導入されたものである。
●ウクライナ語ではИは [ɪ] を表し、この文字が [i] を表す。ただし、ロシア語のИよりもさらに軟化の度合いが強いとされる。
●ベラルーシ語では [i] はこの文字で表す。Иは用いられない。
●ロシア語では1918年の文字改革でИに統合された。
符号位置[編集]
大文字 |
Unicode |
JIS X 0213 |
文字参照 |
小文字 |
Unicode |
JIS X 0213 |
文字参照 |
備考
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І
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U+0406
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‐
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І
І
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і
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U+0456
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‐
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і
і
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