ラテン文字

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ラテン文字
類型: アルファベット
言語: ロマンス諸語西ゲルマン語群西欧中欧の諸言語、ほか世界各地の言語
時期: 紀元前7世紀から現在
親の文字体系:

原カナン文字

姉妹の文字体系: キリル文字
コプト文字
ルーン文字
ISO 15924 コード: Latn
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音素文字の歴史

メロエ 前3世紀
カナダ先住民 1840年
注音 1913年

: abecedarium Latinum: Latin alphabet: alfabeto Romano: Roman alphabet使

[]


space: period: full stop: ligature: diacritical mark

西使使#191928使[1]

[2]

[]




 (JIS) 26: basic Latin alphabet[ 1]

26alphabet

26

使用言語[編集]

古代から中世まで[編集]

古代のラテン文字は、最初期の古ラテン語から共和制ローマ以降の古典ラテン語において用いられた。また、中世のラテン文字は、ローマ帝国の東西分裂以降ゲルマン人の言語やキリスト教典礼言語の表記に用いられることで、さらに広まっていった。

古代[編集]


使使

395西西使使

[]


西退476使西西

西西使
18世紀までにラテン文字を使用していたヨーロッパの諸言語の例(五十音順)
系統 言語
ロマンス諸語
ゲルマン語派
スラヴ語派
バルト語派
ケルト語派
ウラル語族
  ラテン文字のみ使用
  ラテン文字と他の文字を併用

近代以降のラテン文字化[編集]


西19使使西西

[3][4]26便[ 2]

21調

西西便


この例外はトルコ語であり、オスマン帝国は植民地化を受けていなかったものの、これに代わってトルコ共和国を建国したケマル・アタチュルクがトルコの近代化を目指して使用文字の変更を決定し、1928年にアラビア文字から置き換えられたものである[5][6]

またそれとは別の例外として、すべての植民地において必ずしも宗主国がラテン文字化を推進したり、あるいはラテン文字化を完了したりしたわけではなく、南アジアインド地域やキリスト教化できなかったイスラム世界にあるアラブ圏の各国などのように植民地支配を受けたが、用いる文字を変更しなかった地域も多い。

植民地となった地域がラテン文字を用いるようになるのとは別に、ヨーロッパにおいても18世紀以降、西方教会地域でない地域においてもラテン文字化が一部で進められるようになった。ルーマニア語ルーマニア正教会のもとで正教会圏であったため文語においてキリル文字を使用していたが、16世紀ごろには一部地域でハンガリーの言語であるマジャル語をまねた筆記法が用いられ、18世紀には民族主義の高まりによりロマンス諸語であることが強く意識され、ラテン文字化運動が広がっていき、1859年から1860年にかけて正式にラテン文字が採用されることとなった[7]アルバニア語においてはラテン文字をはじめギリシア文字やアラビア文字など各種表記法が混在していたが、1908年にラテン文字による表記が正式に決定した[8]

旧ソビエト連邦地域におけるラテン文字化[編集]

ソビエト連邦の諸言語の表記は、当初ラテン文字を採用していたものの、1940年キリル文字が採用され、ソビエト連邦内の多くの言語でキリル文字化が進められた。しかしソビエト連邦の崩壊後、これら諸言語のいくつかにおいてふたたびラテン文字を再導入する動きが活発になった。元来、アラビア文字を用いていた地域においてはウズベク語トルクメン語アゼルバイジャン語が、初期のソビエト連邦にラテン文字に切り替えられ、その後1940年に連邦政府の言語政策の変化によりキリル文字に再び切り替えられた[9]が、ソビエト連邦の崩壊後、ウズベク語とトルクメン語とにおいてラテン文字表記の導入が決定され、以前定められたものとは異なるものの、再びラテン文字への切り替えが行われることとなった。


使201710[10]2018使[11]2025[12][13]

このほか、ロマンス諸語に属し、ルーマニア語[注 3]ときわめて似ている関係にあるモルドバ語においては、従前のラテン文字から1940年にキリル文字化されたものの、1989年には再度表記をラテン文字に改めることが決定され、ふたたびラテン文字を用いる国となった[7][注 4]

日本におけるローマ字論[編集]


1946使 (GHQ) 便調1948GHQGHQ10[14][15]

使[]


使1867188519372

12使西沿[]西西使

[ 5]使

1954[16][17]沿西[ 6]

成立[編集]

個々のラテン文字の成立について詳細は、該当する文字ごとの記事も参照されたい。

4

[ 7]71

西4𐌅 /v/F /f/3𐌔SGKC𐌂 (: Γ)21GJUWYZ[20]

/k/CKQ3C/g/Z𐌆GCGZFH

33沿ΥΖ使[20]
書体の移ろいを簡易化して示した図。次第に大文字から小文字へと近づいていくことが確認できる。

ラテン文字を表すため、様々な書体が流行したが、3世紀ごろにはアンシャル体と呼ばれる書体が広く使用されるようになり、さらにそれから半アンシャル体と呼ばれる書体ができた。これらの書体は、元となったの大文字からはやや離れた形をしていたが、各地で広く使用されるなかで書体の乖離が激しくなったため、あらためて相互に通じる統一された書体を制定する必要になっていた。そこで8世紀頃にカロリング朝フランク王国カール大帝の庇護を受けたカロリング小文字体が普及した。このカロリング小文字体は、フランク王国のみならずラテン文字圏全体で広く使用されるようになったが、一方で従来の大文字もそのまま残存しており、これが大文字のほかに小文字が新しく成立する起源となった[21]


11/w/ǷwynnP/w/U2UU: double U

UVV2VVWVW2V[20]

UVJIII15JI17[20]

使用される文字[編集]

ラテン文字は、大きく分けて基本字と追加字に分類される。

基本字[編集]


196023JUW26調
基本字
大文字 A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z
小文字 a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z

追加字[編集]

ラテン文字はもともとラテン語を表すための文字であり、他の言語に用いるには表記できない発音も存在していた。こうした状況を解決するために、現在の基本字にはいくつかの文字が付け加えられたものの、それでも表記できない発音に対しては、こうした音を表記するために基本字に発音を区別する符号を付けたり、2つ以上の文字を結合したり、さらに文字を追加したりする言語が多く表れるようになった。

ダイアクリティカルマーク[編集]

ラテン文字の発音区別符号は、総称してダイアクリティカルマークなどと呼ばれる。ドイツ語やスウェーデン語などではウムラウト、フランス語やポルトガル語、トルコ語などではセディーユ、スペイン語やポルトガル語ではティルデが多く使用されるなど、ダイアクリティカルマークを採用しているラテン文字使用国は多数存在する。日本語のローマ字表記においては、サーカムフレックスマクロンが長音の表記に使用される場合がある。

合字[編集]

ラテン文字において、2つ以上の文字の合字は、リガチャーとも呼ばれる。代表的な合字としては、ドイツ語の「ß(エスツェット)」や、アイスランド語デンマーク語ノルウェー語の「Æ」、デンマーク語やノルウェー語の「Ø」などが挙げられる。なお、現在では基本字のひとつとなっているが、本来「W」も合字であり、多くの言語において「ダブルU」、または「ダブルのV」を意味する名称で呼ばれる。

その他[編集]

また、現代では消滅したが、アングロ・サクソン語の「Ƿ」のようにルーン文字など、基本字にさらに他の文字から取り入れられた文字も、一部では用いられる[注 8]

併用される記号の例[編集]



併用される記号の例
約物 記号
. , : ; ? ! & @ #

文字の名称[編集]

主な言語での文字の名を以下に示す。

他言語の文字のラテン文字表記[編集]

他の文字との関係[編集]

ラテン文字はギリシア文字から派生した文字であり、ラテン文字が新たな字を追加し大きく変化した現代においてもいくつかの文字は共通する。また、同じくギリシア文字を祖とするキリル文字ともいくつかの文字が共通している。

ラテン文字は他言語に適用される場合は綴りを工夫したり文字に記号を加えるなどしたうえでそのまま導入されることが多く、ラテン文字から派生した文字はそれほど多くはないが、アイルランド島などで5世紀から8世紀にかけて用いられたオガム文字はおそらくラテン文字から影響を受けて作られたと考えられている[23]

脚注[編集]

注釈[編集]



(一)^ 使調

(二)^ 2224

(三)^ 

(四)^ 1996

(五)^ tsuMicrosoft  IMEl

(六)^ [18][19]

(七)^ 338

(八)^ 

出典[編集]



(一)^ 14112009420266ISBN 9784469012798 NCID BA89745081 

(二)^ 120111115124-128ISBN 9784469213355 NCID BB07474128 

(三)^   2005430102ISBN 9784309760629 NCID BA71677265 

(四)^   ︿2009123019ISBN 9784309761336 NCID BB00577235 

(五)^   ︿2005430105ISBN 9784309760629 NCID BA71677265 

(六)^   ︿2009123061ISBN 9784309761336 NCID BB00577235 

(七)^ ab 6621︿2016131272ISBN 9784750342986 NCID BB20639903 

(八)^  6621︿2016131269-270ISBN 9784750342986 NCID BB20639903 

(九)^  601︿2003310104ISBN 9784750331379 NCID BB01243734 

(十)^ Zhang, LintaoReuters2017103020239182023419

(11)^ Yahoo!20176212017621

(12)^ Yahoo!20176212017621

(13)^ Global News View20239192018125202361

(14)^ 70201711420239192021616

(15)^ ""202212303-420239192023919

(16)^ . .   (1955129). 201911212023919

(17)^ . . . .  . 20239192023918

(18)^  Yahoo!201732120239192017322

(19)^ ︿ - Yahoo!201732220239192023919

(20)^ abcdKhalaf, Salim. The Phoenician Alphabet (). Encyclopedia Phoeniciana.  Salim George Khalaf. 20233212008214

(21)^  120111115255ISBN 9784469213355 NCID BB07474128 

(22)^ 1998

(23)^ ,   :  : 12012415284-285ISBN 9784903530574 NCID BB09123769 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]