出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
| この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。（このテンプレートの使い方）
出典検索?: "クマ下目" – ニュース · 書籍 · スカラー · CiNii · J-STAGE · NDL · dlib.jp · ジャパンサーチ · TWL（2022年8月） |
クマ下目︵クマかもく、Arctoidea︶は、食肉目のうち、クマ科、鰭脚類、イタチ上科からなる単系統群。始新世︵4600万年前︶に現れた[6]。本系統群の最古のグループはクマで、CMAH︵英語版︶遺伝子が繋がったまま残っている。︵この遺伝子はイタチ小目︵イタチ上科+鰭脚類︶では非機能遺伝子である︶[7]。イヌ科︵イヌ下目︶やアンフィキオン科とともにイヌ型亜目を構成する[8]。
1869年にウィリアム・ヘンリー・フラワー︵英語版︶により、クマ科と現在のイタチ上科の範囲を含む分類群として記載された[1]。PhyloCodeでは、クマ科とイタチ上科のクラウングループとして定義されている[9]。1976年にクマ小目Ursidaとイタチ小目Mustelidaの2群に区別する説が提唱されたが、この説では鰭脚類が多系統とされ、アシカ上科がクマ小目、アザラシ科がイタチ小目に分類された[2]。1997年のMcKenna & Bellによる分類では鰭脚類がアザラシ上科としてクマ小目にまとめられた[3]。2000年代以降は鰭脚類をイタチ小目に含める説も提唱されている[10]。
絶滅群であるアンフィキオン科を本下目に含める説もあるが、イヌ型亜目の基部系統とする説もある[8]。また現生群のクマ科・イタチ上科・鰭脚類は約4100万年前 - 3800万年前に分岐したと推定されている[11]。鰭脚類の系統関係には様々な説があったが、2000年代以降では複数の分子系統解析によりイタチ上科と単系統群を形成する説が支持されている[10][11][12]。
鰭脚類のステムグループとしてエナリアルクトス類︵エナリアークトス類、enaliarctines︶として知られるエナリアルクトスEnaliarctos・ピナルクティディオンPinnarctidion・Pacificotaria・Pteronarctosなどの絶滅属があり、エナリアルクトス類と現生群は鰭脚形類Pinnipedimorphaとしてまとめられる[5][13][14]。このうちより原始的形質を持つエナリアルクトスはクラウングループの共通祖先より以前から段階的に派生した側系統群と考えられており、エナリアルクトスよりも後に派生したと考えられるピナルクティディオンなどを含む系統は鰭脚型類Pinnipediformesとして区別される[15][16][14]。またアロキオンAllocyon・コルポノモスKolponomos・ポタモテリウムPotamotheriumなどの鰭脚類の姉妹群とされるが四肢が鰭状ではない絶滅属もあり、これらを含めたトータルクレード︵PhyloCodeを参照︶としてPan-Pinnipediaが2020年に提唱されている[5]。アロキオンは最も初期に分岐した系統と考えられているが、クマ科の姉妹群である可能性もある[16]。
下の分岐図はFlynn (2005) [12][出典無効]の6遺伝子による分子系統樹である[要出典]。
(一)^ abWilliam Henry Flower, “On the Value of the Characters of the Base of the Cranium in the Classification of the Order Carnivora, and on the Systematic Position of Bassaris and other disputed Forms,” Proceedings of the Zoological Society of London, Volume 37, Issue 1, Zoological Society of London 1869, Pages 4-37.
(二)^ abRichard H. Tedford, “Relationship of Pinnipeds to Other Carnivores (Mammalia),” Systematic Biology, Volume 25, Issue 4, Society of Systematic Zoology, 1976, Pages 363–374.
(三)^ abcMalcolm C. McKenna & Susan K. Bell, “Infraorder Arctoidea,” Classification of Mammals: Above the Species Level, Columbia University Press, 1997, Pages 247-272.
(四)^ 日本哺乳類学会 種名・標本検討委員会 目名問題検討作業部会﹁哺乳類の高次分類群および分類階級の日本語名称の提案について﹂﹃哺乳類科学﹄第43巻2号、日本哺乳類学会、2003年、127-134頁。
(五)^ abcde Queiroz, Kevin; Cantino, Philip D.; Gauthier, Jacques A. (2020). “Pan-Pinnipedia M. Wolsan, A. R. Wyss, A. Berta, and J. J. Flynn, new clade name”. Phylonyms: A Companion to the PhyloCode. CRC Press. pp. 1015-1018. doi:10.1201/9780429446276-242. ISBN 0429821212
(六)^ "Paleobiology Database: Arctoidea Basic info"[リンク切れ].
(七)^ Preston S.K. Ng, Raphael Böhm, Lauren E. Hartley-Tassell, Jason A. Steen, Hui Wang, Samuel W. Lukowski, Paula L. Hawthorne, Ann E.O. Trezise, Peter J. Coloe, Sean M. Grimmond, Thomas Haselhorst, Mark von Itzstein, Adrienne W. Paton, James C. Paton & Michael P. Jennings, Ferrets exclusively synthesize Neu5Ac and express naturally humanized influenza A virus receptors, Nature Communications, Volume 5, Article number: 5750, (2014) Nat Commun 5, 5750, Springer Nature, 2014.
(八)^ ab江木直子・荻野慎諧・高井正成﹁ミャンマー中部の新第三系イラワジ動物相‥食肉目﹂﹃化石﹄第104巻、日本古生物学会、2018年、21-33頁。
(九)^ “Arctoidea W. H. Flower 1869 [M. Wolsan, H. N. Bryant, J. J. Flynn, and A. R. Wyss], converted clade name,” In: Kevin de Queiroz, Philip D. Cantino, Jacques A. Gauthier (eds.), Phylonyms: A Companion to the PhyloCode, CRC Press, 2020, Pages 1009-1013.
(十)^ ab佐藤淳・Mieczyslaw Wolsan﹁レッサーパンダ︵Ailurus fulgens︶の進化的由来﹂﹃哺乳類科学﹄第52巻1号、日本哺乳類学会、2012年、23-40頁。
(11)^ ab米澤隆弘、甲能直樹、長谷川政美﹁鰭脚類の起源と進化﹂﹃統計数理﹄第56巻第1号、統計数理研究所、2008年、81-99頁。
(12)^ abFlynn, J. J.; Finarelli, J. A.; Zehr, S.; Hsu, J.; Nedbal, M. A. (2005). “Molecular phylogeny of the Carnivora (Mammalia): Assessing the impact of increased sampling on resolving enigmatic relationships”. Systematic Biology 54 (2): 317–37. doi:10.1080/10635150590923326. PMID 16012099.
(13)^ 甲能直樹﹁鰭脚類における系統進化, 食性の多様化, 古環境変遷の連鎖﹂﹃化石﹄第77巻、日本古生物学会、2005年、34-40頁。
(14)^ ab甲能直樹・安藤佑介・楓達也﹁市道戸狩・月吉線工事現場︵瑞浪市明世町︶の下部中新統瑞浪層群明世層より鰭脚類の頭蓋を含む骨格化石の産出﹂﹃瑞浪市化石博物館研究報告﹄第47号、瑞浪市化石博物館、2020年、125-135頁。
(15)^ Annalisa Berta, Morgan Churchill & Robert W. Boessenecker, “The Origin and Evolutionary Biology of Pinnipeds: Seals, Sea Lions, and Walruses,” Annual Review of Earth and Planetary Sciences, Volume 46, Annual Reviews, 2018, Pages 203-228.
(16)^ abRyan S. Paterson, Natalia Rybczynski, Naoki Kohno & Hillary C. Maddin, “A Total Evidence Phylogenetic Analysis of Pinniped Phylogeny and the Possibility of Parallel Evolution Within a Monophyletic Framework,” Frontiers in Ecology and Evolution, Volume 7, Frontiers Media, 2020, Pages 1–16.
