世界首都ゲルマニア
(ゲルマニア計画から転送)
世界首都ゲルマニア︵せかいしゅとゲルマニア、ドイツ語: Welthauptstadt Germania︶とは、ドイツ首都ベルリンが広く国内外で﹁世界の首都﹂と讃えられるよう、アドルフ・ヒトラーがグランド・デザインを考え、建築家アルベルト・シュペーアが細部デザインを任された都市改造構想である。戦時下であっても土地収用や工事は並行して行われていた。
ゲルマニア計画ジオラマをアルベルト・シュペーアと共に眺めて細部を 見直すアドルフ・ヒトラー
青年画家時代のヒトラーが1925年に描いた巨大凱旋門スケッチ画
小規模で設計・建造を進めながらも後に1933年にアルベルト・シュペーアが総合建設計画﹁ゲルマニア﹂(Germania) 計画として本格的に具体化設計・建設総指揮を担ったベルリン改造計画の名。欧州有数の大都会ながら建築の面では地方的であり見劣りのしたベルリンを、ロンドンやパリをしのぐ世界の首都にふさわしい外観と規模のものにしようとした大計画であった。シュペーアの回想録によれば独ソ戦開始時点のヒトラーの考えでは、1945年に戦争に勝利した後、1950年に世界首都ゲルマニアを完成させて自身は引退する予定であったと記述されている。肝心のドイツが敗戦した事もあり、完成を迎える事は無かった。
概要[編集]
建設予算[編集]
計画初年である1939年より完成予定年である1950年までの11年間にて、年に国家予算の約4%にあたる5億マルク︵即ち総額55億マルク︶を拠出・資金投入する見積もりが立てられていたとされる[1]。 膨大な支出に対する批判について、ベルリン市関係者に対しては既存首都再開発案とは別案︵メクレンブルク遷都計画案︶の存在も示唆して牽制を行なったり、或いは部分的に別名目化可能な工事には個別の財源から支出させる︵例えばベルリン鉄道網再編成に関する工事はドイツ帝国鉄道予算から、交通整備に関する工事はベルリン市予算から︶事で国家財源支出負担額を減らす等、問題化を避ける方策を実行している。フリードリヒ通りに取って代わる新たな南北縦貫メインストリートについても建設予定地の大半は比較的地価が低く、沿道に社屋建設を望んでいた企業からも支持された[1]。 それでも閣内不一致覚悟で反対の姿勢を崩さないルートヴィヒ・シュヴェリン・フォン・クロージク蔵相に対しては、﹁大蔵大臣には、この建築が︵将来のドイツ︶国家にとってどんなに凄い︵観光収入︶財源になるか分からないのだ。ルートヴィヒ2世はどうだ。城︵ノイシュヴァンシュタイン城︶の建設費で常識はずれの浪費家と言われた︵詳細は﹁ルートヴィヒ2世の精神病について﹂参照の事︶が、外国人の大部分はそれがあるからバヴァリア︵バイエルン州︶に来るではないか﹂とヒトラーが反論し、一蹴されている[1]。幻に終わった建造物[編集]
完成部分[編集]
現存する建物︵現在、閉鎖中の建物も含む︶[編集]
●ベルリン・オリンピアシュタディオン︵1936年完成︶ ●航空省庁舎(de:Detlev-Rohwedder-Haus) - 途中から、ゲルマニア計画の一部に組み込まれる。現在は、連邦財務省ビル。 ●国民啓蒙・宣伝省庁舎 - 戦後は東ドイツ政府庁舎を経て、現在は連邦労働社会省が入居。 ●ライヒスバンクビル - 東ドイツ時代は支配政党の社会主義統一党本部。現在は外務省の一部庁舎。 ●ヘルマン・ゲーリング街 - 現在のゲルトルート・コルマー街。 ●戦勝記念塔 - 国会議事堂前の広場からティーアガルテン中央部へ移転。ベルリン・オリンピアシュタディオン
ドイツ航空省庁舎
ライヒスバンク
旧ベルリン・テンペルホーフ国際空港
フェーアベリナー広場近くのビル
現存しない建物[編集]
ゲルマニアを扱った作品[編集]
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●小説・映画﹃ファーザーランド﹄ - 原作:ロバート・ハリス、映画作品名は﹃ファーザーランド~生きていたヒトラー~﹄︵1994年︶。ナチス関連の記録ドキュメンタリーや伝記作品の映像中で、縮尺ジオラマ模型のゲルマニアを眺めるヒトラーの様子が数多く登場しているが、本作ではドイツが第二次世界大戦で勝利した後の並行世界︵1960年代後半︶が舞台である為、制作当時の最新特撮技術﹁マットペインティング﹂を駆使してそこに実在する実物都市としてのゲルマニアの景観を随所で映像化している。
●小説・TVドラマ﹃高い城の男﹄ - 原作:フィリップ・K・ディック、TVドラマ版は﹃高い城の男 (テレビドラマ)﹄。前述の﹃ファーザーランド﹄同様、本作でもドイツ︵および日本・イタリア︶が第二次世界大戦で勝利した後の並行世界︵1962年︶が舞台であり、最新の特撮技術﹁3次元コンピュータグラフィックス﹂を駆使した実物都市として映像化している。
●小説﹃ヒトラーの建築家﹄ - 原作‥東秀紀、NHK出版。
●ドキュメンタリー﹃失われた世界の謎﹄シリーズ 第6回﹃ヒトラーの巨大都市﹄︵ヒストリーチャンネル︶
●ドキュメンタリー﹃ナチスの素顔﹄シリーズ 第4回﹃ヒトラーの建築家﹄︵ナショナルジオグラフィックチャンネル︶
●ドキュメンタリー﹃ヒトラー完全ガイド﹄シリーズ 第6回﹃破滅へのカウントダウン﹄︵ディスカバリーチャンネル︶
●ドキュメンタリー﹃ナチス・ドイツの巨大建造物﹄シリーズ シーズン4︵同シーズン公式HP︶ 第3回﹃プロパガンダ・マシーン (原題: Hitler's Propaganda Machine) ﹄︵ナショナルジオグラフィックチャンネル︶
●漫画﹃月の海のるあ﹄ - 原作‥野上武志、少年画報社。本作では全世界の1/3を統治する大ドイツ帝国の首都として登場する。ただし総統はヒトラーではなく、SSやナチズムも排斥されている模様。
●アニメ﹃終末のイゼッタ﹄ - 監督‥藤森雅也、脚本‥吉野弘幸。本作ではナチスドイツに酷似した︵但し、一党独裁国家ではなく帝政親政軍事国家︶ゲルマニア帝国の首都として登場する。
●映画﹃アドルフの画集﹄ - 若かりし日の画家ヒトラーが、持ち歩いてるスケッチブックに夢想した都市風景・建造物︵フォルクスハレの原型など︶を描き溜め、友人になっていた富豪ユダヤ人画商に才能を認められる描写が登場する。
●アニメ﹃ストライクウィッチーズ﹄シリーズ シーズン3﹃ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN﹄ 第12回︵最終話︶﹁それでも私は守りたい﹂ - 敵生命体側の最終兵器として登場する。
脚注[編集]
注釈[編集]
(一)^ 参考‥赤の広場︵ロシア連邦モスクワ市︶広場敷地幅130m、大通公園︵北海道札幌市︶公園幅および両側道路幅105.45m、通称﹁100m道路﹂︵﹁若宮大通﹂および﹁久屋大通﹂︵愛知県名古屋市︶、﹁平和大通り﹂︵広島県広島市︶︶道幅100m、カール=マルクス=アレー︵ドイツ・ベルリン︵旧東ベルリン地区︶︶道幅90m、柳町公園︵北海道釧路市︶公園幅および両側道路幅83m
(二)^ 参考‥シャンゼリゼ通り︵フランス・パリ︶道幅70m、ヴァーツラフ広場︵チェコ・プラハ︶広場敷地幅および両側道路幅70m、人民大街︵旧﹁満州国新京市﹂時代の呼称は﹁大同大街﹂。中華人民共和国・吉林省・長春市︶道幅54m、青葉通り︵東半分︶︵宮城県仙台市︶道幅50m、昭和通り道幅44m、御堂筋︵大阪府大阪市︶道幅43.6m
出典[編集]
- ^ a b c 『ナチスの発明 知られざるナチスの真実 -特別編集版-』内『第4章 夢の残骸』内『1 世界首都ゲルマニア構想』内『◆莫大な予算』(著:武田知弘、彩図社 ISBN 978-4-88392-633-6)参考。
- ^ ゲルマニア計画完成後のベルリンおよび現ベルリン比較地図
- ^ 眠りから覚めたシュプレーパーク(1枚の写真から始まるベルリン発掘の散歩術/中村真人)