交響曲第49番 (ハイドン)
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交響曲第49番 ヘ短調 Hob. I:49 は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが1768年に作曲した交響曲。﹃受難﹄︵イタリア語: La passione︶の愛称で知られている。
概要[編集]
いわゆる、ハイドンの﹁シュトゥルム・ウント・ドラング︵疾風怒濤︶期﹂に書かれた短調の交響曲の一つであり、自筆原稿から1768年に作曲されたことがわかっている。 ハイドン自身の命名ではないものの、現在は﹃受難﹄という愛称で呼ばれており、これはおそらく第26番﹃ラメンタチオーネ﹄と同様の﹁受難交響曲﹂であったとH.C.ロビンス・ランドン[1]や大宮真琴[2]は考えているが、古くは﹃陽気なクエーカー教徒﹄︵イタリア語: Il Quakero di bel´humore︶という、今とは全く異なる愛称で呼ばれていることをエレーン・シスマンは指摘した[3]。 ジェームズ・ウェブスターは﹃受難﹄の愛称が真正のものではなく、また受難週や復活祭と関連する証拠は何もないとして、むしろ劇付随音楽に由来する可能性があるとしている[4]。楽器編成[編集]
オーボエ2、ホルン2、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、低音︵チェロ、ファゴット、コントラバス︶。曲の構成[編集]
全4楽章、演奏時間は約20分。ハイドンの交響曲としては、緩徐楽章から始まる教会ソナタ風の構成を持つ最後の作品であり[1]、すべての楽章が同じヘ短調の調性を持つ[5]。- 第4楽章 フィナーレ:プレスト
- ヘ短調、2分の2拍子(アラ・ブレーヴェ)、ソナタ形式。
- 弦楽器が主体で、管楽器は和音を伸ばすのがほとんどだが、再現部の手前でオーボエが8小節にわたって主題を演奏するのが目立つ。
脚注[編集]
- ^ a b デッカ・レコードのドラティによるハイドン交響曲全集、ランドンによる解説
- ^ 大宮(1981) p.176
- ^ Sisman (1990) pp.332-333 によれば、『陽気なクエーカー教徒』は当時のウィーンで人気のあった芝居で、またの名を『若いインディアン娘』ともいい、エステルハーザと関連の深いカール・ヴァール一座の出し物でもあった。もともとイギリスの教訓話をフランスのシャンフォール(Nicolas Chamfort)が戯曲化したもので、原作ではイギリス人のインクルが命の恩人であるインディアン娘のヤリコに恋をするが、後に彼女を奴隷に売り飛ばすという話であり、シャンフォールの劇ではハッピーエンドになっている。
- ^ デッカ・レコードのホグウッドによるハイドン交響曲全集第6巻のウェブスターによる解説、1994年
- ^ 緩徐楽章で開始するハイドンの交響曲では通常すべての楽章は同じ調を持つ(第34番を除く)。
参考文献[編集]
- 大宮真琴『新版 ハイドン』音楽之友社〈大作曲家 人と作品〉、1981年。ISBN 4276220025。
- 『ハイドン 交響曲集IV(41-49番) OGT 1592』音楽之友社、1982年。(ミニスコア、ランドンによる序文の原文は1967年のもの)
- Sisman, Elaine (1990). “Haydn's Theater Symphonies”. Journal of the American Musicological Society 43 (2): 292-352. JSTOR 831616.