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八千代座︵やちよざ︶は、熊本県山鹿市にある芝居小屋。1910年に建設され、1988年に国の重要文化財に指定された[1][2]。その後復元修理が行われ、2001年に竣工した。
1910年、山鹿の旦那衆が組合を作り、町の繁栄を図るために1株30円の株を募って建てた。設計者は回船問屋の主人で灯籠師でもあった木村亀太郎。当時の山鹿は菊池川の水運、豊前街道を利用した水陸交通の要所で、物資の集散地、屈指の温泉場として賑わっていた。同年10月上棟式、12月竣工。その後、歌舞伎、浪花節、活動写真、新劇、邦楽やクラシックのコンサート、小学校の学芸会と様々な催しものに利用された。
昭和になると第二次世界大戦を経て、人々の嗜好の変化、映画からテレビと娯楽の変遷があり1973年︵昭和48年︶の老人会の総会を最後に八千代座は閉館、1980年︵昭和55年︶八千代座組合は建物を山鹿市に寄贈した。その後雨漏りにより屋根が裂けるなど、建物の老朽化が進んだ。
1986年︵昭和61年︶八千代座復興期成会が発足して、特に高齢者を主に、募金活動などが行われた。1989年︵平成元年︶から一般公開が始まり、1996年︵平成8年︶、平成の大修理が始まり、2001年︵平成13年︶5月、竣工式が行われた。
●1910年:山鹿の実業界が八千代座組合を作り、八千代座設立を決定。
●同年10月:棟上式、12月:竣工。
●1911年:こけら落としは松嶋家一行による大歌舞伎。
●1914年:森永ミルクキャラメル活動写真。天中軒雲月による﹃桜島遭難談﹄。
●1915年:森峰吉率いる﹁少女歌舞伎﹂が流行る。
●1916年:﹁目玉の松ちゃん﹂︵尾上松之助︶が流行る。
●1917年:芸術座の松井須磨子、島村抱月による﹃カチューシャ﹄の公演。
●1919年:小井出登以師︵三味線︶追善演奏会。
●1925年:松竹活動写真節劇連鎖、中村歌三郎。
●1932-33年:新国劇奇術、天勝一行ほか。
●1934年-1935年:新派劇八雲一行。
●1935-1936年:忠臣蔵連鎖劇。
●1937-1947年:松本幸四郎、長谷川一夫ほか。
●1948年:福岡フィルハーモニー、レクイエム演奏会。
●1951年:辻久子バイオリンリサイタル。
●1952年:谷桃子、伊藤京子バレエを招く。
●1954年:淡谷のり子、北村タンゴを招く。
●1963年-1972年:映画、学芸会、市職員大会に利用される。
●1973年:経営不振で閉鎖。
●1975年:熊本大学工学部による調査報告があった。
●1980年1月:八千代座組合は建物を山鹿市に寄付。
●1985年:山鹿市は八千代座を市指定文化財に指定。雨漏りがひどくなる。
●1986年8月:八千代座復興期成会が発足。
●1987年:屋根の吹き替えなどが行われる。
●1988年:松竹歌舞伎一行が見学。12月、国の重要文化財に指定。
●1989年:一般公開と活用を再開。
●1990年-:坂東玉三郎舞台公演。
●1996年10月:平成の大修理始まる。
●2000年8月:NHK朝の連続テレビ小説﹃オードリー﹄のロケが行われる。
●2001年5月:平成の大修理竣工式。片岡仁左衛門一行による大歌舞伎。
●2006年:管理を指定管理者制に移行。
●2010年:八千代座建設100周年。
●2011年:八千代座開業100周年。
●1910年に地元有志の組合によって建てられた芝居小屋で、設計施工は地元民によって行われた。木造2階建、正面17.2 m、側面25.8 m。
●間口29.49 m、奥行35.40 m、延べ面積1,487.4 m2とした資料もある。舞台規模ポロセニアム4.256 m、間口13.38 m、奥行10.50 m、廻り舞台直径8.45 m、収容能力約650名[5]。
●入母屋造妻入、瓦葺の本屋の周囲に瓦葺の庇を設けている。内部は、廻り舞台やスッポンなど、現在でも使用可能な設備を備えている。葡萄棚︵舞台上部にあり、道具などを吊り下げる︶、天井広告、花道、桟敷席、桝席、奈落など歌舞伎小屋の特徴を伝える芝居小屋である。基本的には伝統的木造建築であるが、小屋組は様式のトラス︵クイーン・ポスト・トラス︶を用い、2階席を支える鋳鉄製の柱、廻り舞台を支えるドイツ製のレールなど、一部に西洋建築の技法が用いられている。廻り舞台のレールには﹁KRUPP1910﹂の文字があり、ドイツのクルップの製品である[6][7]。
類似劇場[編集]
●嘉穂劇場 - 福岡県にある。
●旧金毘羅大芝居 - 香川県琴平町にある。
●康楽館 - 秋田県にある。
●永楽館 - 兵庫県にある。1901年に創立された。
●内子座 - 愛媛県にある。
アクセス[編集]
●熊本桜町バスターミナルから九州産交バス山鹿温泉ゆきに乗車し﹁山鹿温泉︵八千代座入口︶﹂下車徒歩4分︵330 m︶。
●九州自動車道植木ICから12km、菊水ICから9.5 km。
(一)^ 昭和63年12月19日文部省告示第127号
(二)^ “八千代座”. 国指定文化財等データベース. 文化庁. 2024年5月3日閲覧。
(三)^ おむすびおかかほか 2011, ﹁やちよざこれまでの100年﹂.
(四)^ おむすびおかかほか 2011, pp. 30–311, ﹁あとがき﹂および﹁八千代座これまでの100年﹂.
(五)^ 八千代座大解剖パンフレット2014年[要文献特定詳細情報]
(六)^ ﹁新指定の文化財﹂﹃月刊文化財﹄第304号、第一法規、1989年、2,36,37頁。
(七)^ “枡席︵平土間︶・桟敷・楽屋・奈落・ドイツクルップ社製のレール”. 八千代座︵国指定重要文化財/熊本県山鹿市︶. 2014年5月22日閲覧。
(八)^ 永石 2001, p. 88.
参考文献[編集]
●おむすびおかか 文、はらがりゅういち 絵﹃よみがえれ!八千代座﹄八千代座100周年記念事業実行委員会、2011年12月。全国書誌番号:22038441。
●永石秀彦﹃芝居小屋八千代座 永石秀彦写真集﹄海鳥社︿海鳥フォト・ブックス﹀、2001年10月。ISBN 978-4-87415-366-6。
関連項目[編集]
●九州・沖縄地方にある建造物の重要文化財一覧
外部リンク[編集]
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