暗室 (映画)
表示
この項目には性的な表現や記述が含まれます。 |
﹃暗室﹄︵あんしつ︶は、吉行淳之介の長編小説。1969年1月-12月号の﹃群像﹄に連載され、1970年単行本化。第6回︵1970年︶谷崎潤一郎賞受賞。1983年、にっかつ創立70周年記念作品として映画化された︵後記︶。
概要[編集]
語り手︵私︶は43歳の作家、中田修一である。屋根裏部屋でひっそりと暮らす精神障害者の兄妹や、東北の貧しい村で行われていた間引き、水面に叩きつけられた150匹のメダカなど、不穏なエピソードを挿みながら、作家と周囲の女たちとの様々な性のあり方を描いている。あらすじ[編集]
古い友人で編集者の津野木から私に電話がある。 津野木はかつて同人誌仲間で新進作家だった。20年前のある日、津野木が私の留守宅を訪れ、妻の圭子にお土産を届けたことがあった。私は妻と津野木との関係を疑った。ほどなく妻は妊娠したが、中絶した。その妻も10年前に交通事故死した。 津野木に誘われた酒場で、私はマキという女と知り合いになる。マキは同性愛者で、男が隣りに来ると吐いてしまうのだが、私が体にふれても吐き気がしないという。 私には多加子、夏枝という女がいる。多加子は28歳の華道教授で、4年ほどの関係になる。夏枝は数か月前に偶然知り合った。他にパトロンがいるが、避妊をしようとしない。﹁子供ができて、それを引張りだしてもらうのが大好き﹂だという。 やがて多加子は普通の結婚をして、私の前から去る。マキはインテリアの勉強でアメリカに行くことになるが、出発直前、妊娠していることを私に告げる。アメリカで産んで育てるつもりだという。 夏枝から連絡があり、男に殺されかけて、逃げ出したと聞く。夏枝が私を必要としていることを知り、﹁男の意地﹂でぬかるみに入って行く覚悟をした。私は1年間、鬱状態になり、ほとんど仕事もできなくなるが、夏枝の部屋に通い、体に溺れた。 夏枝は﹁子供はできない躯になったらしい﹂という。生殖と切り離された性行為は﹁新しい生に受継がれるものではなく、死に近づいてゆく行為を烈しく繰り返している﹂という思いが浮かぶ。私は今日も夏枝のいるあの薄暗い部屋に行く。モデル[編集]
- 吉行の没後、愛人だった大塚英子が夏枝のモデルだと名乗り出ている。大塚は『暗室のなかで 吉行淳之介と私が隠れた深い穴』(1995年)、『夜の文壇博物誌 吉行淳之介の恋人をめぐる銀座「ゴードン」の憎めない人々』(1997年)、『暗室日記』(1998年)を公表している。
- 多加子のモデルを主人公にした小説『特別な他人』(中央公論社、1996年)を高山勝美が公表している。
映画[編集]
暗室 | |
---|---|
Dark Room | |
監督 | 浦山桐郎 |
脚本 | 石堂淑朗 |
原作 | 吉行淳之介 |
出演者 | 清水綋治、三浦真弓、木村理恵 、芦川よしみ |
音楽 | 松村禎三 |
撮影 | 安藤庄平 |
編集 | 井上治 |
製作会社 | にっかつ |
配給 | にっかつ |
公開 |
![]() |
上映時間 | 122分 |
製作国 |
![]() |
言語 | 日本語 |
﹃暗室﹄︵あんしつ、英題‥Dark Room ︶は、1983年公開の日本映画。にっかつ創立70周年記念作品として製作されたにっかつロマンポルノ・エロス大作。カラー / ビスタ / 122分。
浦山桐郎監督、清水綋治、木村理恵主演。
ストーリー[編集]
作家の中田と周囲の女たち︵亡妻、多加子、マキ、夏枝など︶の関係を、おおむね小説の設定、ストーリーに沿って描いている。次の点は大きく異なっている。
●中田は、かつて妻の浮気を疑ったこと、妻が交通事故死したことを小説に書いて発表する。
●ラストで、中田は夏枝の部屋でパトロンの竹井に出くわし、暴行を受ける。夏枝は傷ついた中田を、母と弟がいる群馬の実家に連れて行く。夏枝はもう東京へは帰らないと言い、中田に別れを告げる[1]。