谷崎潤一郎賞
谷崎潤一郎賞︵たにざきじゅんいちろうしょう︶は、中央公論社が1965年の創業80周年を機に、小説家谷崎潤一郎にちなんで設けた文学賞である。中央公論新人賞︵1956年開始︶を発展解消させる形で開始された︵なお、中央公論新人賞は1975年に復活し20年間続いた︶。
時代を代表する優れた小説・戯曲を対象とし、発表は年1回、受賞作発表と選評の掲載は﹃中央公論﹄誌上で行われる。受賞は選考委員の合議によって決定される。受賞者には正賞として時計、副賞として100万円が授与される︵なお、当初の正賞は賞牌で、副賞は第15回まで50万円であった︶。
受賞作一覧[1][編集]
第1回から第10回[編集]
●第1回︵1965年︶ ●受賞作‥小島信夫﹃抱擁家族﹄ ●候補作‥安部公房﹃榎本武揚﹄、井上靖﹃楊貴妃伝﹄、梅崎春生﹃幻化﹄、遠藤周作﹃留学﹄、永井龍男﹃一個その他﹄、森茉莉﹁甘い蜜の部屋﹂、吉行淳之介﹃不意の出来事﹄ ●第2回︵1966年︶ ●受賞作‥遠藤周作﹃沈黙﹄ ●候補作‥井上光晴﹃荒廃の夏﹄、宇野千代﹃刺す﹄、島尾敏雄﹃日のちぢまり﹄、丹羽文雄﹃一路﹄、野坂昭如﹃エロ事師たち﹄、 三島由紀夫﹃サド侯爵夫人﹄ ●第3回︵1967年︶ ●受賞作‥安部公房﹃友達﹄︵戯曲︶、大江健三郎﹃万延元年のフットボール﹄︵最年少受賞︶ ●候補作‥石川淳﹃至福千年﹄、 中村光夫﹃贋の偶像﹄ ●第4回︵1968年︶ ●受賞作‥なし ●候補作‥伊藤整﹃変容﹄、稲垣足穂﹃少年愛の美学﹄、開高健﹃輝ける闇﹄、河野多恵子﹃不意の声﹄、椎名麟三﹃勤人の休日﹄、島尾敏雄﹃日を繋けて﹄、福田恆存﹃解ってたまるか!﹄ ●第5回︵1969年︶ ●受賞作‥円地文子﹃朱を奪うもの﹄﹃傷ある翼﹄﹃虹と修羅﹄ ●候補作‥石川淳﹁若菜﹂、宇野千代﹃風の音﹄、倉橋由美子﹃スミヤキストQの冒険﹄、清水邦夫﹃狂人なおもて往生をとぐ﹄ ●第6回︵1970年︶ ●受賞作‥埴谷雄高﹃闇のなかの黒い馬﹄、吉行淳之介﹃暗室﹄ ●候補作‥瀬戸内晴美﹃蘭を焼く﹄、野坂昭如﹃骨餓身峠死人葛﹄ ●第7回︵1971年︶ ●受賞作‥野間宏﹃青年の環﹄ ●候補作‥石川達三﹃解放された世界﹄、北原武夫﹃霧雨﹄、倉橋由美子﹃反悲劇﹄ ●第8回︵1972年︶ ●受賞作‥丸谷才一﹃たった一人の反乱﹄ ●候補作‥宇野千代﹃或る一人の女の話﹄、開高健﹃夏の闇﹄、河野多恵子﹃骨の肉﹄、佐多稲子﹃樹影﹄、舟橋聖一﹃妖魚の果て﹄ ●第9回︵1973年︶ ●受賞作‥加賀乙彦﹃帰らざる夏﹄ ●候補作‥上林暁﹃ばあやん﹄、河野多恵子﹃双夢﹄、中村光夫﹃平和の死﹄、古井由吉﹃水﹄、丸山健二﹃雨のドラゴン﹄ ●第10回︵1974年︶ ●受賞作‥臼井吉見﹃安曇野﹄ ●候補作‥阿川弘之﹃暗い波濤﹄、小川国夫﹃彼の故郷﹄、中村光夫﹃ある女﹄、舟橋聖一﹃滝壺﹄第11回から第20回[編集]
●第11回︵1975年︶ ●受賞作‥水上勉﹃一休﹄ ●候補作‥中村真一郎﹃四季﹄、野坂昭如﹃生誕の時を求めて﹄、古井由吉﹃櫛の火﹄、安岡章太郎﹃私説聊斎志異﹄ ●第12回︵1976年︶ ●受賞作‥藤枝静男﹃田紳有楽﹄ ●候補作‥河野多恵子﹃血と貝殻﹄後藤明生﹃夢かたり﹄、坂上弘﹃優しい人々﹄、高橋たか子﹃誘惑者﹄、古井由吉﹃聖﹄、丸山健二﹃火山の歌﹄、和田芳恵﹃抱き寝﹄ ●第13回︵1977年︶ ●受賞作‥島尾敏雄﹃日の移ろい﹄ ●候補作‥大庭みな子﹃浦島草﹄、黒井千次﹃五月巡歴﹄、中上健次﹃枯木灘﹄、野呂邦暢﹃諫早菖蒲日記﹄ ●第14回︵1978年︶ ●受賞作‥中村真一郎﹃夏﹄ ●候補作‥小田実﹃円いひっぴい﹄、開高健﹃ロマネ・コンティ一九三五年﹄、田久保英夫﹃触媒﹄ ●第15回︵1979年︶ ●受賞作‥田中小実昌﹃ポロポロ﹄ ●候補作‥李恢成﹃見果てぬ夢﹄、三木卓﹃野いばらの衣﹄、山崎正和﹃地底の鳥﹄ ●第16回︵1980年︶ ●受賞作‥河野多惠子﹃一年の牧歌﹄ ●候補作‥田久保英夫﹃雨飾り﹄、中上健次﹃鳳仙花﹄、大西巨人﹃神聖喜劇﹄(辞退) ●第17回︵1981年︶ ●受賞作‥後藤明生﹃吉野大夫﹄、深沢七郎﹃みちのくの人形たち﹄ ●候補作‥宇野千代 ﹃青山二郎の話﹄、司馬遼太郎﹃ひとびとの跫音﹄、林京子﹃無きが如き﹄ ●第18回︵1982年︶ ●受賞作‥大庭みな子﹃寂兮寥兮﹄ ●候補作‥富岡多恵子﹃遠い空﹄、古井由吉﹃山躁賦﹄、三浦哲郎﹃おろおろ草子﹄ ●第19回︵1983年︶ ●受賞作‥古井由吉﹃槿﹄ ●候補作‥古山高麗雄﹃断作戦﹄、富岡多恵子﹃波打つ土地﹄、中上健次﹃地の果て至上の時﹄ ●第20回︵1984年︶ ●受賞作‥黒井千次 ﹃群棲﹄、高井有一﹃この国の空﹄ ●候補作‥阿部昭﹃緑の年の日記﹄、中上健次﹃日輪の翼﹄第21回から第30回[編集]
●第21回︵1985年︶ ●受賞作‥村上春樹﹃世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド﹄ ●候補作‥長部日出雄﹃映画監督﹄、日野啓三﹃夢の島﹄、三浦哲郎﹃白夜を旅する人々﹄ ●第22回︵1986年︶ ●受賞作‥日野啓三﹃砂丘が動くように﹄ ●候補作‥小林信彦﹃僕たちの好きな戦争﹄、阪田寛夫﹃まどさん﹄、富岡多恵子﹃水獣﹄ ●第23回︵1987年︶ ●受賞作‥筒井康隆﹃夢の木坂分岐点﹄ ●候補作‥青野聰﹃翼のない鳥﹄、倉橋由美子﹃アマノン国往還記﹄、澁澤龍彦﹃高丘親王航海記﹄ ●第24回︵1988年︶ ●受賞作‥なし ●候補作‥尾辻克彦﹃贋金づかい﹄、富岡多恵子﹃白光﹄、吉村昭﹃仮釈放﹄ ●第25回︵1989年︶ ●受賞作‥なし ●候補作‥青野聰﹃七色の逃げ水﹄、池澤夏樹﹃真昼のプリニウス﹄、田久保英夫﹃氷夢﹄、中上健次﹃奇蹟﹄ ●第26回︵1990年︶ ●受賞作‥林京子﹃やすらかに今はねむり給え﹄ ●候補作‥田久保英夫 ﹃しらぬひ﹄、中上健次﹃讃歌﹄ ●第27回︵1991年︶ ●受賞作‥井上ひさし﹃シャンハイムーン﹄ ●候補作‥金井美恵子﹃道化師の恋﹄、津島佑子﹃大いなる夢よ、光よ﹄、山本道子﹃愛の遠景﹄ ※以後候補作が公表されなくなる。 ●第28回︵1992年︶ - 瀬戸内寂聴﹃花に問え﹄ ●第29回︵1993年︶ - 池澤夏樹﹃マシアス・ギリの失脚﹄ ●第30回︵1994年︶ ●受賞作‥辻井喬﹃虹の岬﹄ ●候補作‥青野聰﹃友だちの出来事﹄、村上龍﹃五分後の世界﹄、山田詠美﹃快楽の動詞﹄︵候補作は日野啓三の選評より推定︶第31回から第40回[編集]
- 第31回(1995年) - 辻邦生 『西行花伝』
- 第32回(1996年) - 受賞作なし
- 第33回(1997年) - 保坂和志 『季節の記憶』、三木卓 『路地』
- 第34回(1998年) - 津島佑子 『火の山―山猿記』
- 第35回(1999年) - 高樹のぶ子 『透光の樹』
- 第36回(2000年) - 辻原登 『遊動亭円木』、村上龍 『共生虫』
- 第37回(2001年) - 川上弘美 『センセイの鞄』
- 第38回(2002年) - 受賞作なし
- 第39回(2003年) - 多和田葉子 『容疑者の夜行列車』
- 第40回(2004年) - 堀江敏幸 『雪沼とその周辺』
第41回から第50回[編集]
- 第41回(2005年) - 町田康 『告白』、山田詠美 『風味絶佳』
- 第42回(2006年) - 小川洋子 『ミーナの行進』
- 第43回(2007年) - 青来有一 『爆心』
- 第44回(2008年) - 桐野夏生 『東京島』
- 第45回(2009年) - 受賞作なし
- 第46回(2010年) - 阿部和重 『ピストルズ』
- 第47回(2011年) - 稲葉真弓 『半島へ』
- 第48回(2012年) - 高橋源一郎 『さよならクリストファー・ロビン』
- 第49回(2013年) - 川上未映子 『愛の夢とか』
- 第50回(2014年) - 奥泉光 『東京自叙伝』
第51回から第60回[編集]
- 第51回(2015年) - 江國香織 『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』
- 第52回(2016年) - 絲山秋子 『薄情』、長嶋有 『三の隣は五号室』
- 第53回(2017年) - 松浦寿輝 『名誉と恍惚』
- 第54回(2018年) - 星野智幸 『焰』
- 第55回(2019年) - 村田喜代子 『飛族』
- 第56回(2020年) - 磯崎憲一郎 『日本蒙昧前史』
- 第57回(2021年) - 金原ひとみ 『アンソーシャルディスタンス』
- 第58回(2022年) - 吉本ばなな 『ミトンとふびん』
- 第59回(2023年) - 津村記久子 『水車小屋のネネ』
歴代選考委員[編集]
- 第1回から第5回 - 伊藤整、円地文子、大岡昇平、武田泰淳、丹羽文雄、舟橋聖一、三島由紀夫
- 第6回 - 円地文子、遠藤周作、大岡昇平、武田泰淳、丹羽文雄、舟橋聖一、三島由紀夫
- 第7回 - 円地文子、遠藤周作、大岡昇平、武田泰淳、丹羽文雄、舟橋聖一
- 第8回から第12回 - 円地文子(第12回病気欠席)、遠藤周作、大江健三郎、大岡昇平、武田泰淳(第12回病気欠席)、丹羽文雄、舟橋聖一
- 第13回 - 円地文子(海外旅行中のため欠席)、遠藤周作、大江健三郎、大岡昇平、丹羽文雄、吉行淳之介
- 第14回から第16回 - 円地文子、遠藤周作、大江健三郎、大岡昇平、丹羽文雄、丸谷才一、吉行淳之介
- 第17回から第22回 - 円地文子(第21回病気欠席)、遠藤周作、大江健三郎、丹羽文雄、丸谷才一、吉行淳之介
- 第23回から第24回 - 遠藤周作、大江健三郎、丹羽文雄(第23回病気欠席)、丸谷才一、吉行淳之介
- 第25回 - 大江健三郎、丸谷才一、吉行淳之介
- 第26回から第27回 - 大江健三郎、河野多恵子、ドナルド・キーン、丸谷才一、吉行淳之介
- 第28回から第29回 - 井上ひさし、河野多恵子(第29回書面参加)、ドナルド・キーン、中村真一郎、丸谷才一、吉行淳之介(第28回病気欠席)
- 第30回から第33回 - 井上ひさし、河野多恵子、ドナルド・キーン、中村真一郎、日野啓三、丸谷才一
- 第34回から第38回 - 池澤夏樹、井上ひさし、河野多恵子、筒井康隆、日野啓三、丸谷才一
- 第39回から第41回 - 池澤夏樹、井上ひさし、河野多恵子、筒井康隆、丸谷才一
- 第42回から第45回 - 池澤夏樹、井上ひさし、川上弘美、筒井康隆
- 第46回から - 池澤夏樹、川上弘美、桐野夏生、筒井康隆、堀江敏幸
脚注[編集]
- ^ “各賞紹介|中央公論新社”. www.chuko.co.jp. 2022年2月6日閲覧。