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腹 痛 ︵ ふ く つ う 、 は ら い た 、 a b d o m i n a l p a i n ︶ と は 、 腹 部 に 感 じ る 痛 み と し て 自 覚 さ れ る 症 状 で あ る 。 主 に ﹁ 内 臓 性 腹 痛 ﹂ 、 ﹁ 体 性 痛 ﹂ 、 ﹁ 関 連 痛 ﹂ 、 ﹁ 心 因 性 腹 痛 ﹂ な ど に 分 け ら れ る 。 腹 痛 を 発 生 さ せ る 要 因 も 様 々 な も の が あ り 、 体 内 で 発 生 し た 何 ら か の 異 常 を 知 ら せ る 情 報 が ま ず 痛 み と し て 自 覚 さ れ る 。 ま た こ れ ら の 痛 み は 、 異 常 に 対 す る 一 種 の 防 御 反 応 と も 言 え る も の で あ る 。
痛 み の 症 状 が 著 し い 場 合 は 、 人 体 に 対 し て 二 次 的 に 生 理 的 ・ 心 理 的 影 響 を 及 ぼ す 可 能 性 が 高 く な る た め 、 速 や か に 要 因 を 突 き 止 め 、 医 療 機 関 で 適 切 な 処 置 を 受 け る 必 要 が あ る ︵ 急 性 腹 症 、 疼 痛 を 参 照 ︶ 。
鑑 別 診 断 [ 編 集 ]
腹 痛 の 最 も 一 般 的 な 原 因 は 、 胃 腸 炎 ︵ 13 % ︶ 、 過 敏 性 腸 症 候 群 ︵ 8 % ︶ 、 尿 路 の 問 題 ︵ 5 % ︶ 、 胃 炎 ︵ 5 % ︶ 、 便 秘 ︵ 5 % ︶ で あ る 。 約 30 % の ケ ー ス は 原 因 は 特 定 さ れ て い な い 。 そ の 他 約 10 % は 、 胆 嚢 ︵ 胆 石 ま た は 胆 道 ジ ス キ ネ ジ ア ︶ 、 膵 臓 の 問 題 ︵ 4 % ︶ 、 憩 室 炎 ︵ 3 % ︶ 、 虫 垂 炎 ︵ 2 % ︶ 、 癌 ︵ 1 % ︶ な ど 、 よ り 深 刻 な 原 因 で あ る [ 1 ] 。 高 齢 者 で は 、 さ ら に 腸 間 膜 虚 血 、 腹 部 大 動 脈 瘤 な ど が 一 般 的 で 深 刻 な 原 因 で あ る [ 2 ] 。
腹 痛 を 起 す 産 科 的 疾 患
正 常 妊 娠 、 子 宮 外 妊 娠 、 流 産 、 胞 状 奇 胎 な ど は 腹 痛 を 主 訴 に 来 院 す る こ と が 多 い 。 こ れ ら は 妊 娠 第 一 期 に 属 す る 疾 患 で あ り 患 者 は 妊 娠 に 気 が つ い て い な い こ と が 多 く 、 一 般 病 院 を 受 診 し や す い 傾 向 に あ る 。 こ の よ う な 受 診 パ タ ー ン か ら 腹 痛 の 女 性 を み た ら 妊 娠 を 思 え と い う 格 言 が で き た の で あ ろ う 。 頸 管 無 力 症 、 早 産 、 前 置 胎 盤 、 常 位 胎 盤 早 期 剥 離 、 出 産 、 偽 陣 痛 な ど で も 腹 痛 は 起 き る が 、 大 抵 は 産 婦 人 科 に 受 診 す る の で 一 般 医 が 診 る 機 会 は 少 な い 。 特 に 子 宮 外 妊 娠 破 裂 、 常 位 胎 盤 早 期 剥 離 は 緊 急 手 術 に な る の で 注 意 が 必 要 で あ る 。
腹 痛 を 起 す 婦 人 科 的 疾 患
器 質 的 疾 患 と し て は 卵 巣 捻 転 、 卵 巣 嚢 胞 出 血 、 感 染 症 、 腫 瘍 、 子 宮 腺 筋 症 、 子 宮 内 膜 症 が あ げ ら れ る 。 非 器 質 性 疾 患 と し て は 月 経 困 難 症 、 骨 盤 鬱 血 症 候 群 、 機 能 的 性 器 出 血 な ど が あ げ ら れ る 。 特 に 卵 巣 捻 転 、 卵 巣 嚢 胞 出 血 、 卵 巣 膿 瘍 破 裂 な ど で は 緊 急 手 術 の 適 応 と な る の で 注 意 が 必 要 で あ る 。 大 抵 は 下 腹 部 の 体 性 痛 を 主 訴 に 来 院 し 、 画 像 検 査 で 診 断 で き る 。
腹 痛 を 起 す 外 科 的 疾 患
特 に 緊 急 手 術 が 必 要 な 非 外 傷 性 疾 患 を あ げ る 。 急 性 虫 垂 炎 、 腸 重 積 症 、 絞 扼 性 イ レ ウ ス 、 消 化 管 穿 孔 、 急 性 腸 間 膜 動 脈 閉 塞 症 ︵ 心 房 細 動 か ら 起 き や す い ︶ 、 腹 部 大 動 脈 瘤 破 裂 、 感 染 症 性 シ ョ ッ ク を 伴 う 腹 腔 内 膿 瘍 、 出 血 性 シ ョ ッ ク を 伴 う 腹 腔 内 出 血 、 精 巣 捻 転 、 鼠 径 ヘ ル ニ ア 頓 挫 な ど が あ げ ら れ る 、 特 に 小 児 の 下 腹 部 痛 で 精 巣 捻 転 が み つ か る こ と が あ る の で 小 児 の 場 合 は 睾 丸 ま で み る 習 慣 が 必 要 で あ る 。 診 断 が つ か な く て も 、 筋 性 防 御 、 進 行 す る 低 血 圧 や ア シ ド ー シ ス 、 低 下 し 続 け る Hb な ど が 認 め ら れ れ ば 緊 急 手 術 を 考 慮 す る 。
腹 痛 を 起 す 内 科 的 疾 患
腹 腔 、 胸 腔 の 全 て の 臓 器 が タ ー ゲ ッ ト と な る の だ が 、 特 に 見 逃 し が ち な の は 全 身 性 疾 患 に よ る 腹 痛 で あ る 。 具 体 的 に は 糖 尿 病 性 ケ ト ア シ ド ー シ ス 、 ア ル コ ー ル 性 ケ ト ア シ ド ー シ ス 、 急 性 副 腎 不 全 、 高 カ ル シ ウ ム 血 症 、 尿 毒 症 、 急 性 間 欠 性 ポ ル フ ィ リ ン 症 、 家 族 性 地 中 海 熱 、 伝 染 性 単 核 症 、 リ ウ マ チ 熱 、 ア レ ル ギ ー 性 紫 斑 病 、 鉛 中 毒 、 麻 薬 離 脱 な ど が あ げ ら れ る 。
緊 急 性 の 高 い 疾 患 と し て は 虚 血 性 心 疾 患 ( 心 筋 梗 塞 な ど ) が 挙 げ ら れ る 。
慢 性 の 腹 痛 で 注 意 す べ き は 悪 性 腫 瘍 で あ る 。
診断アプローチ [ 編集 ]
急 性 腹 痛 で は 次 の よ う な 順 序 で 行 う と 誤 診 が 少 な く な る 。 ま ず は 外 傷 性 か ど う か を 調 べ る 。 病 歴 を も と に 考 え 、 腹 部 エ コ ー で 臓 器 損 傷 を 確 認 す る 。 次 に 産 科 的 疾 患 、 婦 人 科 的 疾 患 、 外 科 的 疾 患 、 内 科 的 疾 患 と 考 え て い く 。 ど う し て も 診 断 が つ か な け れ ば L Q Q T S F A を 全 て 埋 め る よ う な 問 診 を し て 、 精 神 的 疾 患 ま で 考 え て い く 。 診 断 を つ け る 際 は 緊 急 手 術 が 必 要 か ど う か を 常 に 考 え る 。 た い て い の 場 合 、 腹 痛 の 緊 急 性 は 、 心 肺 血 管 系 の 緊 急 疾 患 で な い 場 合 、 原 因 に よ ら ず 、 腹 膜 炎 に な っ て い る か ど う か で 決 ま る 。 緊 急 性 を 感 じ た ら 、 術 前 に 必 要 な 検 査 を 行 い 、 静 脈 確 保 も 手 術 に 耐 え ら れ る よ う な も の に し な け れ ば な ら な い 。 具 体 的 に は 、 胸 部 X 線 写 真 で は PA 像 で 撮 影 、 腹 部 X 線 写 真 は 立 位 、 臥 位 の 二 方 向 撮 影 、 凝 固 機 能 、 ク ロ ス マ ッ チ テ ス ト 、 針 は 1 8 G に す る と い っ た こ と を 行 わ な け れ ば な ら な い 。 原 則 と し て 背 部 痛 を 伴 う 場 合 は 後 腹 膜 臓 器 の 疾 患 を 考 え る 。 ブ ス コ パ ン で 反 応 す れ ば 内 科 系 疾 患 で あ り 、 反 応 し な け れ ば 外 科 系 疾 患 で あ る と い う 経 験 則 も 使 え る 。 救 急 で は 診 断 が つ き 、 バ イ タ ル サ イ ン が 安 定 化 す る ま で は 鎮 痛 薬 を 使 用 し な い と い う 原 則 が あ る 。 ブ ス コ パ ン は 鎮 痙 薬 で あ る の で 使 っ て も 診 断 は 行 う こ と が で き る 。 ま た た と え 診 断 が つ い て も モ ル ヒ ネ は 膵 、 胆 管 系 の 疾 患 を 増 悪 さ せ る の で 禁 忌 で あ る 。
慢 性 腹 痛 で は 、 機 能 性 の 疾 患 ( 過 敏 性 腸 症 候 群 、 便 秘 、 機 能 性 胃 腸 症 な ど ) が 多 い が 、 見 逃 し て は な ら な い の は 腸 閉 塞 と 悪 性 腫 瘍 で あ る 。
重 要 な 問 診 事 項 は 以 下 の よ う な も の で あ る 。
● 腹 痛 の 位 置
痛 い 場 所 は は っ き り し て い る か 。 は っ き り し て い る な ら そ の 場 所 。 あ る い は 、 腹 部 全 体 が な ん と な く 痛 い の か 。
● 放 散 痛 は あ る か
例 え ば 胆 道 系 の 疾 患 で は 右 の 肩 甲 骨 に 放 散 痛 を 感 じ る し 、 膵 臓 の 疾 患 で は 背 部 に 、 虚 血 性 心 疾 患 で は 肩 に 放 散 痛 を 感 じ る と い う 具 合 で あ る 。
● 腹 痛 は い つ ご ろ 始 ま っ た か
急 激 に 発 生 し た 腹 痛 は 潰 瘍 の 穿 孔 や 動 脈 瘤 の 破 裂 、 子 宮 外 妊 娠 の 破 裂 な ど に 関 連 す る 。 ま た 、 食 後 に 起 こ る の か 、 空 腹 時 に 起 こ る の か と い う こ と も 重 要 な 情 報 で あ る 。
● 腹 痛 の 性 質 は
痛 み は 持 続 す る の か 、 ま た は 軽 く な っ た り ひ ど く な っ た り を 繰 り 返 す の か 。 就 寝 中 に 痛 み で 目 が さ め る こ と が あ る か 。
● 腹 痛 以 外 の 症 状
下 痢 、 嘔 吐 、 便 秘 、 下 血 、 発 熱 な ど の 症 状 は 見 ら れ な い か 。
特 に 、 腹 痛 と 同 時 、 ま た は 後 に 嘔 吐 が 見 ら れ る 場 合 は 緊 急 性 が 高 い 可 能 性 が あ る 。
● 女 性 の 場 合 は 月 経 周 期
● 既 往 歴
腹 部 手 術 の 既 往 が あ る と 腸 管 の 癒 着 を 起 こ し て い る 可 能 性 が あ る 。
病 態 生 理 学 [ 編 集 ]
腹 痛 の メ カ ニ ズ ム を 急 性 腹 症 で 有 名 な 虫 垂 炎 を 例 と し て 説 明 す る 。 虫 垂 炎 ︵ 盲 腸 と 一 般 に は 言 わ れ る ︶ は 知 名 度 の わ り に 診 断 が 難 し い 疾 患 で あ る 。 診 断 学 の 世 界 で は 虫 垂 炎 の 病 態 生 理 は 次 の よ う に 理 解 さ れ て い る 。 ま ず 虫 垂 に 異 物 な ど が 貯 留 し 細 菌 が 繁 殖 す る こ と で 管 腔 内 圧 が 上 昇 し 、 心 窩 部 の 鈍 痛 と い う 形 で 関 連 痛 が 発 生 す る 。 さ ら に 腸 管 粘 膜 に 炎 症 が 起 こ る と 右 下 腹 部 の 鈍 痛 と い う 形 で 内 臓 痛 が 発 生 す る 。 さ ら に 進 行 す る と 炎 症 が 管 腔 の 内 側 か ら 外 側 、 す な わ ち 臓 側 腹 膜 に 波 及 す る 。 腸 管 の 動 き な ど で 臓 側 腹 膜 が 壁 側 腹 膜 と 接 触 し 、 炎 症 が 壁 側 腹 膜 に 波 及 す る と 右 下 腹 部 の 鋭 い 痛 み と し て 体 性 痛 が 発 生 す る 。 こ の 頃 に は 、 反 跳 痛 と い っ た 腹 膜 刺 激 症 状 が 出 現 す る 。 こ れ は 概 念 上 の 話 で あ り 、 炎 症 が 激 し く な り 組 織 障 害 が 強 く な れ ば 、 関 連 痛 、 内 臓 痛 、 体 性 痛 と い う 順 に 進 行 し て い く 。 十 二 指 腸 潰 瘍 な ど で 穿 孔 を お こ す と 体 性 痛 が 発 生 す る が 大 網 に よ っ て 穿 孔 が ふ さ が れ る と 圧 痛 が な く な る こ と も あ る 。 こ う い っ た こ と が お こ る と 身 体 診 断 学 は 無 力 で あ り 、 造 影 CT な ど 画 像 診 断 を 行 わ ざ る を え な く な る 。
虫 垂 炎 に 限 っ て 言 え ば 、 痛 み が 関 連 痛 で あ る 心 窩 部 痛 の 時 点 で は 特 に 診 断 せ ず 、 痛 み が 下 腹 部 に 移 動 し た り 、 治 ら な け れ ば 再 受 診 と い う 形 に し 、 下 腹 部 の 鈍 痛 で あ っ た ら 抗 菌 薬 で 保 存 的 に 治 療 す る 。 腹 膜 刺 激 症 状 ま で 出 現 し た ら 手 術 を 検 討 す る と い う 方 法 が 考 え ら れ る ︵ 手 術 が 可 能 な 施 設 な ら ば 、 こ の 時 点 で は 外 科 を 紹 介 す る だ け で 十 分 な こ と が 多 い 、 腹 膜 刺 激 症 状 が 限 局 し て い る 場 合 は 保 存 的 に 治 療 可 能 な こ と が 多 い が 、 そ の 所 見 が 広 が っ て き た と き は 手 術 が で き る 状 況 で な い と 危 険 で あ る 。 い ず れ に せ よ 、 虫 垂 炎 の 診 断 は 総 合 的 に 行 わ れ る 。 そ し て な じ み 深 い 疾 患 で あ る の も か か わ ら ず 誤 診 率 も 極 め て 高 い ︶ 。
虫 垂 炎 に 関 し て は L Q Q T S F A の 病 歴 と 身 体 所 見 で 疾 患 の 局 在 と 病 因 、 疾 患 の 進 展 度 と 重 症 度 、 疾 患 の 治 療 と 判 断 を 行 う こ と が で き る 。 A l v a r a d o ス コ ア と い う も の も あ り
項目
内容
点数
Migration of pain
心窩部、臍周囲部から右下腹への移動
1
Anorexia
食思不振
1
Nausea
嘔気、嘔吐
1
Tenderness of RLQ
右下腹部圧痛
1
Rebound tenderness
反跳痛
2
Elevated temperature
発熱>37.3℃
1
Leukocytosis
WBC>10000/ul
2
Shift of WBC count
白血球の左方移動
1
7点以上で虫垂炎が疑わしいとされている。画像診断では造影CTが望ましいとされている。外科のcope's early diagnosis of the acute abdomenによると急性虫垂炎は食思不振からはじまり、徐々に心窩部あるいは臍周囲の痛みが出現し、悪心、嘔吐が出現する。食思不振が高頻度(95%)に先行するため悪心、嘔吐は程度が軽い場合が多く、嘔吐はあっても数回程度である。その後右下腹部痛が出現し、微熱を伴い白血球の増加が起こるとしている。この順序で出現しなければ虫垂炎以外の疾患を考慮する必要があるとされているが非典型例も多い。
腹部症状との関係 [ 編集 ]
悪心・嘔吐 [ 編集 ]
悪心・嘔吐を起こす疾患 [ 編集 ]
悪心 、嘔吐 は延髄 にある嘔吐中枢によって制御されている。消化器、心臓、前庭 、脳実質の障害によって嘔吐は誘発される。中枢神経系の障害による嘔吐は悪心を伴わないのが一つの特徴である。消化器の異常が最も多いがそれ以外の疾患も数多い。特に急性冠症候群が悪心、嘔吐のみしか認められないことがあり注意が必要である。診断学上は下痢といった下部消化器症状の有無が重要である。下部消化器症状が認められる場合は中毒(特に薬物ではジゴキシン やテオフィリン が有名)によるもの以外は消化器疾患である可能性が高い。特に見逃すと重篤な疾患としては脳内病変としては脳出血や髄膜炎 があげられる。無痛性心筋梗塞は糖尿病患者や高齢者で多いとされている。糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)、アルコール性ケトアシドーシス(AKA)、腎盂腎炎 、妊娠 、敗血症、絞扼性イレウス、急性胆嚢炎、急性膵炎などが重要である。これらの疾患は下痢といった下部消化器症状を伴わないことが多い。
悪心、嘔吐を起こす疾患としては具体的には以下のような疾患が考えられる。
悪心・嘔吐のマネジメント [ 編集 ]
診 断 の 手 掛 か り と な る 情 報 と し て は 24 時 間 以 内 に 摂 取 し た 食 物 や 旅 行 歴 の ほ か 、 腹 痛 、 下 痢 、 便 秘 と い っ た そ の 他 の 腹 部 症 状 、 排 ガ ス の 有 無 や 冷 や 汗 の 有 無 な ど 重 要 で あ る 。 排 ガ ス 、 排 便 が な け れ ば 閉 塞 性 の 消 化 器 疾 患 が 疑 わ れ る 。 既 往 歴 に 腹 部 の 手 術 歴 や 心 疾 患 、 糖 尿 病 、 産 婦 人 科 的 な 疾 患 歴 な ど が あ る 場 合 は そ れ が 影 響 し て い る 可 能 性 が あ る 。 周 囲 に 同 様 の 症 状 の 人 が い れ ば 食 中 毒 の 可 能 性 も あ り 、 ア ル コ ー ル 多 飲 歴 は A K A の 手 掛 か り と な る 。 内 服 薬 も 嘔 吐 の 原 因 の 手 が か り に な る 。
バ イ タ ル サ イ ン で は 意 識 障 害 、 呼 吸 不 全 が 認 め ら れ る 場 合 や 、 高 血 圧 な 割 に 徐 脈 と い う ク ッ シ ン グ 徴 候 が 認 め ら れ る 場 合 は 中 枢 性 疾 患 を 疑 う 。 発 熱 が 認 め ら れ れ ば 感 染 症 、 徐 脈 や 不 整 脈 が 認 め ら れ れ ば 心 血 管 疾 患 、 呼 吸 不 全 が 認 め ら れ る と き は D K A と い っ た 代 謝 性 疾 患 も 疑 う 。 発 熱 、 嘔 吐 を 伴 い 消 化 管 感 染 を 特 に 疑 う 下 痢 の 症 状 が な い 場 合 は 髄 膜 炎 も 疑 わ れ る 。 髄 膜 炎 を 疑 う 不 随 意 運 動 や 皮 質 症 状 、 高 熱 、 髄 膜 刺 激 症 状 が 認 め ら れ る 場 合 は 頭 部 CT 撮 影 後 、 腰 椎 穿 刺 を 行 う 。 特 に 細 菌 性 髄 膜 炎 は 緊 急 疾 患 で あ る 。
経 口 摂 取 、 経 口 薬 の 内 服 が 不 可 能 で あ り 、 脱 水 し て い る 場 合 が あ る た め 原 則 と し て は 採 血 、 点 滴 を 行 う 。
検 査 で は 閉 塞 性 疾 患 を 考 え る 場 合 は ま ず は 腹 部 単 純 X 線 撮 影 を お こ な う 。 排 ガ ス や 排 便 の 停 止 が 認 め ら れ る 場 合 は 非 常 に 重 要 な 検 査 と な る 。 重 篤 な 疾 患 の 見 落 と し を 避 け る に は 頭 部 CT や 心 電 図 、 尿 検 査 を 行 う 。 血 糖 値 が 2 5 0 m g / d l で あ れ ば D K A を 疑 い 、 動 脈 血 液 ガ ス や 尿 中 ケ ト ン 体 を 測 定 す る 。 機 能 的 な 閉 塞 は 腹 部 単 純 X 線 撮 影 が 分 か り や す い 。 こ れ は 必 ず 立 位 と 臥 位 で 撮 影 を 行 う 。 機 械 的 な 閉 塞 、 大 腸 癌 や 絞 扼 性 イ レ ウ ス を 疑 う 場 合 は 造 影 CT を 検 討 す る 。 絞 扼 性 イ レ ウ ス の 場 合 は 腹 水 の 貯 留 が 認 め ら れ る こ と が 知 ら れ 、 単 純 CT で も 見 分 け る こ と が で き る こ と も あ る 。
悪 心 ・ 嘔 吐 の 治 療 [ 編 集 ]
基 本 的 に は 心 筋 梗 塞 で は P C I と い っ た 原 因 療 法 を 行 う 。 対 症 療 法 と し て は 制 吐 薬 、 グ リ セ オ ー ル と い っ た 脳 圧 降 下 薬 、 胃 内 容 物 の 除 去 と し て NG チ ュ ー ブ の 挿 入 な ど が 行 わ れ る 。 制 吐 薬 と し て は 消 化 器 疾 患 が 疑 わ れ た 場 合 は ド パ ミ ン 拮 抗 薬 や 抗 コ リ ン 薬 が 用 い ら れ る 。 ド パ ミ ン 拮 抗 薬 と し て は メ ト ク ロ プ ラ ミ ド ︵ プ リ ン ペ ラ ン ︶ 、 ド ン ペ リ ド ン ︵ ナ ウ ゼ リ ン ︶ な ど が よ く 用 い ら れ る 。 こ れ は 消 化 管 蠕 動 運 動 を 亢 進 さ せ る こ と で 内 容 物 が 通 過 す る こ と で 嘔 気 が 軽 減 す る 。 静 注 、 筋 注 、 坐 薬 、 経 口 と い っ た 各 種 薬 剤 が 市 販 さ れ て い る 。 点 滴 静 注 で は 即 効 性 が な い こ と が 知 ら れ て い る 。 心 窩 部 の 不 快 感 で は な く 腹 痛 が 認 め ら れ る と き は 蠕 動 の 亢 進 で 症 状 が 悪 化 す る こ と が あ り 注 意 が 必 要 で あ る 。 こ の 場 合 は 抗 コ リ ン 薬 で あ る ブ チ ル ス コ ポ ラ ミ ン ︵ ブ ス コ パ ン ︶ が 好 ま れ る 傾 向 が あ る 。 抗 コ リ ン 薬 は 腸 管 蠕 動 を 抑 制 す る こ と で 悪 心 、 嘔 吐 を 軽 減 す る 作 用 が あ る 。 胆 管 や 尿 管 に も 同 様 に 作 用 す る 。 ま た 内 視 鏡 的 に 潰 瘍 、 炎 症 所 見 が 認 め ら れ な い 機 能 性 デ ィ ス ペ プ シ ア の 場 合 は セ ロ ト ニ ン 5 - H T 4 受 容 体 刺 激 薬 で あ る モ サ プ リ ド ︵ ガ ス モ チ ン ︶ が よ く 用 い ら れ る 。
ま た 制 吐 薬 に 分 類 さ れ る ド パ ミ ン 拮 抗 薬 は ス ル ピ リ ド ︵ ド グ マ チ ー ル ︶ を 除 き 中 枢 神 経 作 用 は ほ と ん ど な い と さ れ て い る が 稀 に 錐 体 外 路 症 状 が 出 現 す る こ と が あ る 。 振 戦 、 無 動 、 固 縮 と い っ た パ ー キ ン ソ ン 症 候 群 の か た ち を と る こ と が 多 く 、 こ の 場 合 は 抗 コ リ ン 薬 で あ る ビ ペ リ デ ン ︵ ア キ ネ ト ン ︶ な ど が よ く 用 い ら れ る 。 ま た 胃 潰 瘍 や G E R D に よ る 悪 心 、 嘔 吐 に 関 し て は H 2 ブ ロ ッ カ ー や P P I が 用 い ら れ る 。 そ の ほ か 、 種 種 の 原 因 で お こ る 悪 心 、 嘔 吐 に 対 す る 制 吐 薬 を 以 下 に ま と め る 。
疾患分類
用いる制吐薬
片頭痛
5-HT1B /1D 受容体作動薬
前庭系・心因性
抗ヒスタミン薬 +抗不安薬
機能性ディスペプシア
5-HT4 受容体作動薬
便秘
瀉下薬
抗がん剤 によるacute emesis
5-HT3 受容体拮抗薬やステロイド
治 療 に 反 応 し な か っ た 場 合 は 経 口 摂 取 不 可 能 で あ る こ と が 多 く 入 院 の 適 応 と な る 。 治 療 薬 の 変 更 よ り も 原 因 疾 患 の 再 検 索 重 要 と な る 場 合 が 多 い 。
し ゃ っ く り [ 編 集 ]
し ゃ っ く り は 横 隔 膜 や 横 隔 神 経 へ の 刺 激 に よ っ て 起 る と さ れ て い る 。 対 処 法 と し て は 息 を 止 め て 水 を 飲 む の が 第 一 の 対 応 法 で あ る 。 機 械 的 刺 激 が 存 在 す る 場 合 は そ の 原 因 除 去 を 行 い 、 薬 物 療 法 と し て は 抗 ド パ ミ ン 薬 の 投 与 を 行 う 場 合 が 多 い 。 ま た 抗 精 神 病 薬 で あ る ク ロ ル プ ロ マ ジ ン ︵ ウ ィ ン タ ミ ン ︶ が 用 い ら れ る こ と も あ る 。 ク ロ ル プ ロ マ ジ ン 2 5 m g を 生 理 食 塩 水 5 0 m l に 溶 解 さ せ 、 30 分 で 点 滴 な ど は 難 治 性 の 場 合 は 用 い ら れ る こ と が あ る 処 方 で あ る 。
下 痢 と は 24 時 間 以 内 に 2 0 0 g 以 上 の 頻 回 の 軟 便 、 あ る い は 水 様 便 が 認 め ら れ る 状 態 で あ る 。 ア プ ロ ー チ と し て は ま ず は 脱 水 所 見 の 有 無 の 確 認 か ら 入 る 皮 膚 の ツ ル ゴ ー ル 、 粘 膜 の 乾 燥 と い っ た 身 体 所 見 、 嘔 吐 や 経 口 摂 取 不 可 能 と い っ た エ ピ ソ ー ド 、 腹 部 診 察 に よ る 腹 痛 な ど 随 伴 症 状 の 有 無 、 採 血 に お け る 電 解 質 異 常 な ど か ら 判 断 す る 場 合 が 多 い 。 脱 水 が 認 め ら れ る が 場 合 は 点 滴 な ど に よ る 脱 水 の 解 除 を 行 う 。 特 に 高 齢 者 や 小 児 で は 容 易 に 脱 水 が 起 こ し や す い 。
そ の 後 、 感 染 性 、 非 感 染 性 の 区 別 を 行 う 。 体 外 毒 素 型 の 感 染 の 場 合 は 発 熱 が 認 め ら れ な い こ と に 注 意 が 必 要 で あ る 。 血 が 混 じ っ て い る か と い っ た 便 の 性 状 、 過 去 2 日 か ら 3 日 の 食 事 歴 、 旅 行 歴 、 同 様 の 症 状 を 伴 っ た 人 が 周 り に い る か 、 抗 菌 薬 の 使 用 の 有 無 、 ア レ ル ギ ー な ど が 重 要 な 問 診 事 項 と な る 。 食 物 ア レ ル ギ ー ︵ カ キ な ど の 食 物 に よ る 嘔 吐 、 下 痢 な ど ︶ な ど の 存 在 に も 留 意 す る 。 嘔 吐 な し の 軽 症 患 者 で は 検 査 な し 、 重 症 患 者 、 脱 水 患 者 で は 採 血 、 点 滴 の 施 行 、 特 殊 患 者 で は 便 培 養 を 施 行 す る こ と が 多 い 。
重 要 な こ と は 感 染 性 下 痢 症 で あ っ て も ほ と ん ど の 場 合 は 抗 菌 薬 の 投 与 は 不 要 で あ る 。 通 常 で あ れ ば 排 泄 に よ っ て 起 炎 菌 の 排 出 で 自 然 治 癒 を す る と い う こ と が 第 一 に あ げ ら れ る 。 さ ら に 抗 菌 薬 投 与 に よ っ て 増 悪 す る こ と も あ る 。 例 え ば サ ル モ ネ ラ 菌 に よ る 腸 炎 の 場 合 は 抗 菌 薬 の 投 与 に よ っ て 保 菌 者 と な る こ と が あ る 。 腸 管 出 血 性 大 腸 菌 ︵ O 1 5 7 な ど ︶ の 場 合 は 溶 血 性 尿 毒 症 症 候 群 ( H U S ) を 誘 発 す る こ と が あ る 。 止 瀉 薬 に 関 し て も 感 染 性 下 痢 、 出 血 性 下 痢 と い っ た 器 質 性 下 痢 に 対 し て は 使 用 し な い 。 消 化 管 の 排 菌 機 能 を 抑 え て し ま う か ら で あ る ︵ 特 に O 1 5 7 や 志 賀 毒 素 を 産 生 す る 赤 痢 菌 の 感 染 に よ る 下 痢 の 場 合 は 止 瀉 薬 の 服 用 に よ っ て 重 篤 に な る こ と も あ る ︶ 。 こ う い っ た 事 情 か ら 原 則 は 乳 酸 菌 な ど の 整 腸 剤 の 投 与 を 行 う 。 魚 介 類 に よ る 下 痢 、 出 血 性 下 痢 、 感 染 性 胃 腸 炎 で 頻 度 の 多 い E . c o l i O 1 5 7 : H 7 、 C a m p y l o b a c t e r s p p . ︵ カ ン ピ ロ バ ク タ ー ︶ 、 V i b r o p a r a h e m o l y t i c u s ︵ 腸 炎 ビ ブ リ オ ︶ な ど に は 抗 菌 薬 が 不 要 で あ る 。 逆 に 抗 菌 薬 を 使 用 す る 感 染 性 胃 腸 炎 に は 敗 血 症 、 重 症 感 の あ る 場 合 、 旅 行 者 下 痢 症 、 偽 膜 性 大 腸 炎 、 性 感 染 症 、 肝 硬 変 の 患 者 の V i b r i o v u l n i f i c u s な ど で あ る 。 V i b r i o v u l n i f i c u s は 生 魚 な ど に 含 ま れ る 細 菌 で あ る が 、 肝 硬 変 患 者 が 感 染 す る と 致 死 率 が 高 い 。 こ の 場 合 は テ ト ラ サ イ ク リ ン 系 の 抗 菌 薬 を 用 い る 。 下 痢 の 患 者 に 抗 菌 薬 を 使 用 す る 場 合 は ラ ッ ク ビ ー R や ビ オ フ ェ ル ミ ン R と い っ た 抗 菌 薬 耐 性 の 整 腸 剤 を 併 用 す る 。 よ く 用 い る 抗 菌 薬 は 点 滴 で あ れ ば セ フ ァ マ イ シ ン 系 で あ る セ フ メ タ ゾ ン な ど で あ る 。 経 口 薬 で は ニ ュ ー キ ノ ロ ン 系 で あ れ ば ト シ ル 酸 ト ス フ ロ キ サ シ ン ︵ オ ゼ ッ ク ス ︶ を 1 5 0 m g 錠 で 3 錠 分 3 で 5 日 間 や 、 ホ ス ホ マ イ シ ン 系 で は ホ ス ホ マ イ シ ン ︵ ホ ス ミ シ ン ︶ を 5 0 0 m g 錠 で 6 錠 分 3 で 5 日 間 な ど が よ く み る 処 方 で あ る 。 起 炎 菌 は 市 中 と 院 内 で は 大 き く 異 な る こ と が 知 ら れ て お り 、 入 院 後 3 日 経 過 し て い れ ば 抗 菌 薬 投 与 中 と い っ た 特 殊 な 事 情 が な け れ ば 便 培 養 は 不 要 で あ る 。 こ れ は ほ と ん ど の 場 合 は 感 染 性 で は な く 別 の 原 因 で 起 る 下 痢 で あ る か ら で あ る 。 対 症 療 法 が 必 要 な ら ば こ の 場 合 も 整 腸 剤 を 用 い る 。
入 院 中 の 下 痢 、 発 熱 の 場 合 は ク ロ ス ト リ ジ ウ ム ・ デ ィ フ ィ シ ル 腸 炎 を 疑 い CD ト キ シ ン の 測 定 が 必 要 と な る 。 診 断 し た ら メ ト ロ ニ ダ ゾ ー ル ま た は 経 口 バ ン コ マ イ シ ン で 治 療 す る 。
止 瀉 薬 は 機 能 性 下 痢 症 に の み 原 則 用 い る 。 潰 瘍 性 大 腸 炎 に 塩 酸 ロ ペ ラ ミ ド な ど 腸 運 動 抑 制 薬 を 投 与 す る と 中 毒 性 巨 大 結 腸 を 起 こ す こ と な ど が 有 名 で あ る 。 非 感 染 性 器 質 性 下 痢 に は 炎 症 性 疾 患 、 血 管 疾 患 、 吸 収 不 良 疾 患 、 乳 糖 不 耐 症 、 手 術 後 、 内 分 泌 疾 患 、 放 射 線 、 腫 瘍 、 ア レ ル ギ ー 疾 患 、 中 毒 、 薬 物 、 便 秘 、 レ ジ オ ネ ラ 肺 炎 の 随 伴 症 状 と 多 数 知 ら れ て い る 。
消 化 管 出 血 [ 編 集 ]
消 化 管 出 血 は 腹 痛 を 伴 う こ と が あ る 。 消 化 管 出 血 で 特 徴 の あ る 症 候 と し て は 、 吐 血 、 メ レ ナ ︵ 別 名 タ ー ル 便 ︶ 、 下 血 、 血 便 と い っ た も の が あ げ ら れ る 。 症 候 に よ っ て 出 血 部 位 の 予 測 が あ る 程 度 で き る と さ れ て い る 。 一 般 に ト ラ イ ツ 靱 帯 よ り 口 側 を 上 部 消 化 管 、 肛 門 側 を 下 部 消 化 管 と い う 。 上 部 消 化 管 出 血 は 消 化 性 潰 瘍 の 場 合 が 多 く 胃 痛 を 伴 う こ と が 多 く 、 下 部 消 化 管 出 血 は 下 腹 部 痛 を 伴 う こ と が 多 い 。
名称
原因
吐血
上部消化管出血
メレナ
別名タール便、ほとんどが上部消化管出血
下血
下部消化管出血、
上部消化管出血の原因疾患を以下にまとめる。
病態
疾患
上部消化管出血
消化性潰瘍
マロリーワイス症候群
胃食道静脈瘤
動脈瘤や急性大動脈解離と消化管とのfistula
Hemobilia
炎症性腸疾患(上部消化管のクローン病など)
AVM
脳血管疾患や心血管疾患の合併症による上部消化管出血、
頻度としては消化性潰瘍、マロリーワイス症候群、胃食道静脈瘤の3つが圧倒的に多い。脳血管疾患や心血管疾患の合併症としては脳出血後のクッシング潰瘍 や熱傷受傷後のカーリング潰瘍 が有名である。意識障害や認知症がある場合は重要である。上部消化管出血にはrule of fiveという法則がある。これは上部消化管出血量と症候を対応させたものである。
出血量
症候
5ml
便潜血陽性
50ml
メレナ
500ml
鮮血の下血
黒 色 便 の 原 因 と し て は 消 化 管 出 血 以 外 に い か す み 料 理 、 鉄 剤 、 赤 ワ イ ン な ど で も 起 こ る こ と が 知 ら れ て い る 。
吐 血 、 メ レ ナ [ 編 集 ]
吐 血 と 区 別 が 必 要 な 症 候 に 喀 血 が あ る 。 喀 血 が 気 道 出 血 で あ る の に 対 し て 、 吐 血 は 消 化 管 出 血 で あ る 。 吐 血 の 場 合 、 胃 潰 瘍 な ど に よ る 胃 あ る い は 十 二 指 腸 か ら の 出 血 で 、 血 液 が 胃 液 に よ る 酸 化 を 受 け て 黒 色 と な る 。 コ ー ヒ ー の 滓 に 似 て お り ﹁ コ ー ヒ ー 残 渣 様 ﹂ と 表 現 さ れ る 。 コ ー ヒ ー 残 渣 様 吐 物 ︵ c o f f e e - g r o u n d e m e s i s ︶ は 吐 血 で 特 徴 の あ る 所 見 で あ る 。 た だ し 吐 血 で も 肝 硬 変 な ど に 伴 う 食 道 静 脈 瘤 か ら の 出 血 は 胃 液 と 接 触 し な い た め 赤 い 。 吐 物 に 対 し て 尿 潜 血 検 査 が な さ れ る こ と が あ る が 、 テ ス テ ー プ 検 査 で は 胃 酸 に 触 れ た だ け で 潜 血 陽 性 と な る た め 出 血 の 有 無 は こ の 検 査 か ら は 分 か ら な い 。 喀 血 を 飲 み 込 み 、 そ れ を 後 に 吐 血 す る こ と も あ る た め 、 両 者 の 区 別 は 時 に 難 し い こ と も あ る 。 喀 血 と 吐 血 の 区 別 が つ か な い 場 合 は 呼 吸 器 と 消 化 器 の 両 方 の 精 査 が 必 要 で あ る 。
喀血
吐血
出血状態
咳に伴う
嘔吐に伴う
性状
泡沫を伴う
食物残渣混入
pH(テステープ)
中性
酸性
随伴症状
胸痛、呼吸困難など
腹痛、嘔吐、嘔気、下血など
吐 血 、 メ レ ナ が 認 め ら れ た 場 合 は 、 ま ず は 窒 息 の 可 能 性 が な い か を 評 価 す る 。 吐 物 に よ る 閉 塞 が 酷 い 場 合 は 気 管 内 挿 管 を 考 慮 す る 。 そ の 後 血 圧 に て 循 環 動 態 の 評 価 を す る 。 静 脈 路 確 保 や 輸 液 を 行 う 。 そ し て NG チ ュ ー ブ に よ る 胃 洗 浄 、 食 道 静 脈 破 裂 を 疑 う 場 合 は SB ] チ ュ ー ブ の 挿 入 を 行 う ︵ 2 0 1 0 年 現 在 は 行 わ な い こ と が 多 い ︶ 。 そ し て 上 部 消 化 管 内 視 鏡 に よ る 診 断 と 止 血 を 行 う の が 大 ま か な 流 れ と な る 。 吐 物 が 赤 か 黒 か 、 イ カ 墨 や 赤 ワ イ ン と い っ た 黒 色 便 の 原 因 と な る 食 事 の 摂 取 の 有 無 、 腹 痛 、 背 部 痛 と い っ た 症 候 の 有 無 を 確 認 す る 。 既 往 歴 と し て は 消 化 性 潰 瘍 歴 、 ピ ロ リ 菌 除 菌 歴 、 肝 疾 患 に つ い て 調 査 し 、 ア ル コ ー ル の 飲 酒 歴 、 ア ス ピ リ ン 、 N S A I D s 、 抗 凝 固 薬 、 S S R I 、 ス ピ ロ ノ ラ ク ト ン 、 鉄 剤 の 使 用 歴 を 調 査 す る 。 慢 性 肝 疾 患 の 合 併 の 確 認 の た め に く も 状 血 管 腫 、 手 掌 紅 斑 等 も 確 認 す る 。 肝 炎 ウ イ ル ス 検 査 陽 性 で あ り 凝 固 異 常 が 認 め ら れ 食 道 静 脈 瘤 破 裂 が 疑 わ れ れ ば 鼡 径 静 脈 で 中 心 静 脈 確 保 を 行 い 、 感 染 予 防 、 NG チ ュ ー ブ の 挿 入 を 行 う 。
ま ず は バ イ タ ル サ イ ン の 測 定 を 行 い 、 循 環 動 態 の 評 価 を 行 う 。 静 脈 路 確 保 を 行 い 、 輸 液 を す る 。 肛 門 鏡 検 査 に て 痔 出 血 の 有 無 を 確 認 す る 。 痔 出 血 で あ っ て も 大 量 出 血 の 場 合 は 緊 急 手 術 が 必 要 で あ る 。 少 量 な ら ば 座 薬 や 軟 便 剤 の 処 方 に て 経 過 観 察 が 可 能 で あ る 。 痔 出 血 で な け れ ば 内 視 鏡 検 査 に て 出 血 源 の 同 定 を 行 う 。 下 血 を 起 こ す 疾 患 の 頻 度 で は 下 部 消 化 管 の 方 が 多 い が 大 腸 内 視 鏡 で は 前 処 置 が 必 要 で あ り 、 下 剤 の 大 量 投 与 は 誤 嚥 の リ ス ク が あ る こ と 、 上 部 消 化 管 出 血 で 下 血 が 起 こ る 場 合 は 大 量 出 血 の 可 能 性 が あ る こ と か ら 上 部 消 化 管 内 視 鏡 検 査 か ら 行 わ れ る こ と が 多 い ︵ 場 合 に よ っ て は S 状 結 腸 内 視 鏡 、 シ グ モ イ ド ス コ ピ ー を 用 い る こ と が あ る 。 ︶ 。 上 部 消 化 管 、 下 部 消 化 管 と も に 出 血 源 が 認 め ら れ な か っ た 場 合 は 小 腸 出 血 の 可 能 性 を 考 え る 。 か つ て は 出 血 シ ン チ グ ラ フ ィ ー や 血 管 造 影 が 行 わ れ て い た 。 出 血 シ ン チ グ ラ フ ィ ー で は 造 影 CT に て 所 見 が な い 場 合 は 検 出 で き る 可 能 性 が 低 い 。 近 年 は 小 腸 内 視 鏡 で あ る ダ ブ ル バ ル ー ン 内 視 鏡 や カ プ セ ル 内 視 鏡 が 用 い ら れ る こ と も あ る 。
代 表 的 な 疾 患 に は
● 大 腸 癌
● 虚 血 性 腸 炎
● 憩 室 炎
● 潰 瘍 性 大 腸 炎 ・ ク ロ ー ン 病
● 出 血 性 大 腸 炎
● 偽 膜 性 大 腸 炎
● 腸 重 積 症
● 腸 間 膜 動 脈 閉 塞 症
な ど が あ る 。
漢 方 薬 治 療 [ 編 集 ]
腹 痛 の 治 療 は 原 疾 患 の 治 療 が 原 則 で あ る が 症 状 の 緩 和 に 漢 方 薬 が 効 果 的 な こ と が あ る 。 漢 方 薬 治 療 を 胃 の 不 調 、 腹 痛 、 便 秘 ・ 下 痢 に 分 け て 述 べ る [ 3 ] 。
胃 の 不 調
胃 の も た れ や 心 窩 部 の 違 和 感 は 腹 痛 の 訴 え に な り や す い 。 こ の よ う な 症 状 で 用 い る 漢 方 薬 に は 半 夏 瀉 心 湯 ︵ は ん げ し ゃ し ん と う 、 ツ ム ラ 14 番 ︶ 、 安 中 散 ︵ あ ん ち ゅ う さ ん 、 ツ ム ラ 5 番 ︶ 、 人 参 湯 ︵ に ん じ ん と う 、 ツ ム ラ 32 番 ︶ が あ る 。 半 夏 瀉 心 湯 は 実 証 向 き で あ る が 、 腹 中 雷 鳴 と も 言 わ れ る 下 痢 、 胃 も た れ 、 口 内 炎 な ど に 有 効 で あ る 。 虚 証 で な け れ ば 胃 の 不 調 に は 半 夏 瀉 心 湯 が 使 い や す い 。 虚 証 の 場 合 は 安 中 散 や 人 参 湯 を 用 い る 。 人 参 湯 は 止 瀉 薬 が 無 効 で あ っ た 場 合 に 下 痢 止 め と し て も 用 い る こ と が で き る 。
腹 痛
過 敏 性 腸 症 候 群 の 症 状 に は 桂 枝 加 芍 薬 湯 ︵ け い し か し ゃ く や く と う 、 ツ ム ラ 60 番 ︶ が 用 い ら れ る 。
便 秘 ・ 下 痢
過 敏 性 腸 症 候 群 で 腹 痛 で は な く 便 秘 が 主 な 訴 え に な る と き は 桂 枝 加 芍 薬 大 黄 湯 ︵ け い し か し ゃ く や く だ い お う と う 、 ツ ム ラ 1 3 4 番 ︶ が 下 剤 の 代 わ り に 用 い ら れ る 。 老 人 の 便 秘 に は 麻 子 仁 丸 ︵ ま し じ ん が ん 、 ツ ム ラ 1 2 6 番 ︶ が 用 い ら れ る 。 抗 精 神 病 薬 内 服 中 お よ び 透 析 中 の 患 者 の 頑 固 な 便 秘 に も 麻 子 仁 丸 は 効 果 が あ る 。 サ ブ イ レ ウ ス に は 大 建 中 湯 ︵ だ い け ん ち ゅ う と う 、 ツ ム ラ 1 0 0 番 ︶ を 用 い る 。 下 痢 の 症 状 緩 和 に は 実 証 の 場 合 は 半 夏 瀉 心 湯 ︵ は ん げ し ゃ し ん と う 、 ツ ム ラ 14 番 ︶ 、 虚 証 の 場 合 は 真 武 湯 ︵ し ん ぶ と う 、 ツ ム ラ 30 番 ︶ を 用 い る 。 真 武 湯 が 無 効 の 場 合 は 人 参 湯 ︵ に ん じ ん と う 、 ツ ム ラ 32 番 ︶ を 用 い る 。 人 参 湯 と 真 武 湯 は 併 用 し て も よ い 。 そ れ で も 無 効 の 下 痢 に 対 し て は 大 建 中 湯 ︵ だ い け ん ち ゅ う と う 、 ツ ム ラ 1 0 0 番 ︶ が 効 果 を 示 す こ と が あ る 。 急 激 な 腹 痛 、 激 し い 下 痢 、 し ゃ っ く り に 芍 薬 甘 草 湯 ︵ し ゃ く や く か ん ぞ う と う 、 ツ ム ラ 68 番 ︶ が 有 効 な こ と が あ る 。
参考文献 [ 編集 ]
関連項目 [ 編集 ]