デジタル大辞泉 「ものから」の意味・読み・例文・類語 ものから[接助] ﹇接助﹈︽形式名詞﹁もの﹂+格助詞﹁から﹂から︾活用語の連体形に付く。 1 逆接の確定条件を表す。…けれども。…のに。…ものの。 ﹁月は有明にて光をさまれる―、影さやかに見えて、なかなかをかしきあけぼのなり﹂︿源・帚木﹀ 2 理由・原因を表す。…ものだから。…ので。 ﹁莵(う)道(ぢ)の王(きみ)…みづから宝(よは)算(ひ)を断たせ給ふ―、やんごとなくて兄の皇子御位につかせ給ふ﹂︿読・雨月・白峯﹀ [補説]2は﹁から﹂からの類推により中世末に生じ近世擬古文に多く用いられる用法。 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「ものから」の意味・読み・例文・類語 もの‐から (一)〘 接続助詞 〙 ( 名詞﹁もの﹂に名詞﹁から﹂の付いてできたもの。→語誌(1) ) 活用語の連体形を受ける。 (二)① 逆接を表わす。けれども。ものの。のに。→語誌(2)。 (一)[初出の実例]﹁見渡せば近き物可良(ものカラ)岩隠りかがよふ玉を取らずは止まじ﹂(出典‥万葉集︵8C後︶六・九五一) (二)﹁いたましうするものから、下戸ならぬこそをのこはよけれ﹂(出典‥徒然草︵1331頃︶一) (三)② 順接を表わす。ので。ものだから。→語誌(3)。 (一)[初出の実例]﹁只乙(かなつる)手のさきさきに、目をかけつれば魂はありて見ゆるものからともの姿も見ゆるなり﹂(出典‥教訓抄︵1233︶七) (二)﹁遊びつかれる物から、朝は日のたける迄眠る﹂(出典‥俳諧・おらが春︵1819︶) ものからの語誌 (1)﹁から﹂を助詞とする説もある。しかし、上代・中古において、このような意に用いられた﹁から﹂は名詞である。 (2)この語が逆接を表わすことについては、それを﹁もの﹂に求める考えと、﹁もの﹂を形式名詞とし、﹁から﹂に中心的意義を求める考えとがある。 (3)平安時代に盛んに用いられた①の用法は、その後次第に衰え、擬古的な文以外にはあまり使われなくなる。しかも、中世には②の順接用法が現われ、近世に至ってはこちらが一般的となる。これは接続助詞﹁から﹂の影響と考えられる。 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例